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月夜のカフェで  作者: 塩塚和人


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第9章 大切な選択


ある日の午後、めぐみはカフェの窓際に座り、

手元の魔法書を眺めながら思い悩んでいた。

心の奥に、現代に帰れるかもしれないという選択肢がちらつく。


「クリスさん…」

小さな声で呼びかける。クリスは奥で洗い物をしていたが、

めぐみの声に気づき、そっと手を止めて振り向く。


「どうした、めぐみ?」

その表情は優しく、でも少し緊張が混ざっている。

めぐみは深呼吸をして、覚悟を決めた。


「私…現代に帰ることもできるみたいです」

「…そうか」クリスの声は静かで、心の奥の揺れを隠すようだった。

「でも、私は…ここに残るべきか迷ってます」

言葉に詰まり、めぐみは視線を伏せる。


クリスはゆっくり歩み寄り、隣に座った。

「めぐみ、君が決めることだ。どんな選択でも受け止める」

その言葉に、めぐみの胸はぎゅっと締め付けられる。

「優しいけど…私は…どうしたら…」


しばらく沈黙が続く。

店内の静寂、外の風に揺れる木々の音、

全てがめぐみの心を静かに揺さぶった。


「私…クリスさんと一緒にいたい」

小さな声が自然に漏れる。心の奥でずっと考えていた答えが、

ようやく言葉になった瞬間だった。


クリスはゆっくりめぐみの手を取り、真剣な目で見つめる。

「めぐみ…君がここに残るなら、俺も嬉しい」

その瞳には安心と喜びが溢れ、胸に温かさが広がる。


めぐみは少し涙ぐみながら微笑む。

「はい…私、ここに残ります」

「よし、それでいい」クリスは小さく笑い、彼女の手を握り直す。


二人の心は完全に通じ合った。

現代への帰還という選択もあったが、

めぐみは異世界での生活を選び、クリスと未来を共にする決意を固めた。


その後、カフェの窓から見える街並みが、

いつもより輝いて見えた。

「私たち…これからどうなるんだろう」

「ゆっくり考えればいい。焦る必要はない」


めぐみは頷き、肩の力を抜く。

「はい…クリスさんと一緒なら、どんな未来でも楽しそうです」

クリスも同じ気持ちを抱き、静かに手を握り返す。


夜の街に月明かりが差し込み、二人の影を長く伸ばす。

選択の重みと決意が、心に確かな光を灯していた。

「私…クリスさんと、この街で生きていくんだ」


二人の間には言葉以上の信頼と愛情が流れ、

異世界のカフェでの新しい日常が静かに始まろうとしていた。



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