第4章 異世界の祭り
街全体が祭りの装飾で彩られた日、めぐみはわくわくしながら
カフェの扉を開けた。屋台の明かりが昼の街を幻想的に照らしている。
「今日は忙しくなるぞ」クリスが笑みを浮かべ、手伝いを指示した。
「は、はい!」めぐみは元気よく返事をする。
特別メニューの準備があり、ケーキや魔法の飲み物が並ぶ。
普段よりも忙しく、手順を間違えられないプレッシャーがあった。
クリスはめぐみに近づき、静かに教える。
「焦らず、順番通りだ。慌てると失敗する」
めぐみは深呼吸をして、カップを慎重に手に取る。
午前中は準備であっという間に過ぎた。
外の賑やかな音や、街の子供たちの笑い声が響く。
めぐみの心も少しずつ高揚してきた。
「クリスさん、これで大丈夫でしょうか?」
「悪くないな。後は実際に提供してみろ」
めぐみはお客さんの列に向かい、少し緊張しながら笑顔を作る。
「いらっしゃいませ!ご注文は…?」
お客さんが魔法のランタンを手にして、楽しそうに笑う。
めぐみは手を震わせながらも、クリスに励まされ一歩踏み出した。
昼を過ぎると、祭りの最盛期がやってきた。
屋台の前には人が押し寄せ、カフェの周りは賑やかになった。
めぐみはドリンクを次々と提供し、手際よく動く自分に驚いた。
「君、成長したな」クリスが小声でつぶやく。
めぐみはその言葉を聞き、心の中で頬を赤くする。
「そ、そんな…まだまだです…」
夕方、二人は屋台の片隅で短い休憩を取った。
祭りの光に照らされ、クリスとめぐみの距離は自然と近くなる。
「クリスさん…なんで、そんなに落ち着いてるんですか?」
「俺も最初は緊張してたさ。でも君がいて助かった」
その言葉にめぐみは胸が少し高鳴る。
視線が合い、しばしの間、言葉を交わさずに二人は笑みを交わす。
祭りの灯りが二人を柔らかく包み、時間がゆっくり流れたように感じた。
夜が訪れ、街の空に花火が上がる。
色とりどりの光が空を染め、街中が幻想的な光景に包まれた。
めぐみはカフェの窓からその光景を見つめ、心を奪われる。
「すごい…まるで夢みたい…」
「そうだな、現実以上に美しい景色だ」
クリスが隣で静かに言う。めぐみは思わず手を握りそうになる。
「クリスさん…今日は楽しいです」
「俺もだ。君と一緒だから、余計に楽しい」
二人の心は自然に寄り添い、無言の時間の中で確かに通じ合った。
祭りが終わる頃、街の人々が満足そうに帰っていく。
カフェには穏やかな静寂が戻り、二人は後片付けを始める。
「今日は本当にありがとう、めぐみ」
「いえ、クリスさんが優しく教えてくれたから…」
外の月明かりが店内を淡く照らし、二人の影を長く伸ばす。
めぐみは胸の奥に芽生えた気持ちを静かに感じる。
異世界での生活が、少しずつ心地よく、楽しいものに変わっていくのを実感した。
夜の街の静けさの中、めぐみはそっと呟く。
「私…この街で、クリスさんと一緒にいたい」
クリスは微笑みながら、その言葉に応えるように静かに手を握った。
幻想的な祭りの夜は、二人の心をそっと近づけ、
異世界の日常が少しずつ形を作り始める。




