第1章 召喚と出会い
めぐみは机に突っ伏してため息をついた。
今日も宿題が終わらない。時計の針は夜十時を回っている。
「はぁ…もう無理かも」彼女は呟き、目を閉じた。
すると、突然、部屋中に強い光が差し込んだ。
まばゆい光に包まれ、めぐみは思わず目を開けた。
光は眩しすぎて、視界が一瞬真っ白になる。
気がつくと、彼女は見知らぬ場所に立っていた。
そこは現代の街とはまるで違う、幻想的な街並みだった。
空は薄紫色で、ふわりと光る花びらが舞っている。
「ここ…どこ?夢…?」めぐみは足元の舗道を見下ろす。
石畳の上には、小さな光の粒がきらきらと輝いていた。
目の前には小さなカフェがあり、看板には“CREAM MOON”と書かれている。
恐る恐る、めぐみはドアに手をかけた。
中に入ると、静かな音楽と甘い香りが迎えた。
カウンターの奥には、青年が一人立っていた。
「ここは…初めての人にはちょっと不思議な場所かもな」
彼の声は落ち着いていて、でもどこか警戒心が混ざっていた。
「え、あの…私、ここに来るはずじゃ…?」
めぐみは言葉を詰まらせながら、周囲を見渡した。
青年の瞳は深く、光を吸い込むように黒かった。
そのとき、街のざわめきが聞こえた。
一人の小さな子供が泣きながら駆け込んできたのだ。
「お母さんがいないよ~!」
めぐみは思わず手を伸ばして子供に近づく。
しかし、彼女の背後から青年がすっと立ち上がった。
「大丈夫、俺がついてる」
青年の声は低く、頼もしかった。めぐみは思わず心が安らぐ。
「なんか…この人、怖いけど頼れる…」心の中で呟いた。
青年は彼女の方に歩み寄り、軽く会釈をした。
「俺はクリス。ここは『クリームムーン』、君は?」
めぐみは一瞬戸惑ったが、正直に答える。
「中原めぐみです…今、現代から来たんです」
クリスは少し眉をひそめ、しかし穏やかに微笑んだ。
「現代から…か。面白い、歓迎するよ」
街の住人がカフェの中に入ってきた。
迷子の子供も彼らの間で落ち着きを取り戻し、泣き止む。
クリスは静かに指示を出し、めぐみも一緒に動いた。
「君、手伝えるか?」
「え…ええ、頑張ります!」めぐみは少し勇気を振り絞った。
彼女は初めて、異世界で役立つかもしれないという感覚を覚えた。
その夜、カフェの窓からは月明かりが差し込み、
街全体が淡い光に包まれていた。
めぐみはふとクリスの方を見る。
彼はカウンターの奥で、静かに彼女の様子を見守っている。
その瞳には、何か言葉にできない感情が宿っていた。
「…私、ここでやっていけるのかな」
めぐみの胸に、少しだけ希望が芽生えた。
異世界での、新しい生活――それは戸惑いと不安が入り混じる世界。
でも、彼女は確かに感じた。
この場所でなら、何かが変わるかもしれない、と。




