第三章レヴィの煩悶〜ep4「よろしく頼むよ、戦闘教官(アレックス)君」〜
++登場人物++
【アリア・ゴールデンベリル】
サザーク聖十字架修道院のシスター。黒の修道服の上から白地に赤い彼岸花が描かれている着物を片肌脱ぎと、何とも奇抜な格好をした少女。
【レヴィ・ラルド】
ヘプタと呼ばれる七つの大罪組織内ではエンヴィと呼ばれていた。
今はヘプタを離脱して、アリアから名前を貰いオブレートとして行動を共にしている。
【アレクサンダー・オブシディアン】
サザーク聖十字架修道院の修練長。サザーク聖十字架修道院が"戦う"と云われる所以を作った人物。
【パトリシア・オブシディアン】
CIDの刑事警部補。サザーク聖十字架修道院に所属するアレクサンダーの姉であり、アリアやレヴィとも仲が良い。
【ウィリアムズ・ヘイズ】
CIDの刑事軍曹。待つこと以外基本優秀。パトリシアの後輩で、よくオモチャにされて遊ばれている。
レヴィはこれまでパトリシアには随分と世話になっていた。
9年前、とある事件によりアリアの母親は亡くなった。アリアの父親は最愛の人を失ったことへの喪失感から床に伏せることが多くなった。
当時は刑事軍曹としてこの事件を管轄していたパトリシアがそれを見兼ね、知人であるドリス・ブラウンが修道院長を務めるサザーク聖十字架修道院へと掛け合ってくれたお陰で、アリアは暫くの間、修道院で保護を受けることが出来た。
そして、アリアが修道院に馴染んできた頃に、修道院長はアリアの能力に気付くと、それを正しく扱う為に、アリアに正式に入修道することを勧めた。
すると、アリアは「レヴィの話を聞いた上で、彼も一緒じゃなきゃ私はシスターにはならない。」と断言した。
その過程で、レヴィは自分のことを、修道院長、アレクサンダー・オブシディアン修練長、パトリシア・オブシディアン刑事軍曹の三名に打ち明けることになった。
・人間の欲望を糧として"ヘプタ"が肉体を得る頃に訪れる"循環"について。
・憑かれた人と悪霊について。
・ヘプタの弱点について。
...そして、聖女について。
あまりにも衝撃的な事実に修道院長である、ドリス・ブラウンが頭を抱え込んでしまったことは言うまでもなかったが、
アレクサンダー・オブシディアン修練長は、何か思い当たる節があったのか「なるほど。」と指先で顎を摩りながら暫く考え込んだ。
一方でパトリシア・オブシディアン刑事軍曹はというと、新しい玩具でも見つけた子供のように目を輝かせ、レヴィに対して強い関心を示した。
結果として、サザーク聖十字架修道院はアリアをシスターとして迎え入れる為に、"レヴィも一緒に"というアリアの条件に対して許諾の意を示した。
だが、人成らざる者を...それも人を惑わし悪しき感情を糧として生きる"七つの大罪"の一味を、修道院に所属させる訳には行かず、修道院長は"オブレート"として行動を共にするということでそれを許可した。
形式上とはいえ、彼に対する扱いが些か冷遇な処置であることに、アリアは腹を立てていたが、「これは最大限の温情だよ。」とレヴィはアリアに言って聞かせた。
それとは別でパトリシアはというと、「貴女が持ってきた種なので、"彼の本質"を見定める為にも、暫くの間、レヴィという少年の監視をお願いします。」と修道院長に強く言われた後「これ以上の厄介事はごめんですよ。」と釘を刺されていた。
こうして、パトリシアはレヴィを暫く監視することになったのだが、
「監視と聞いていたので公然監視かと思っていたのですが、まさか密着監視だったなんて。...それも貴女の方に合わせる形で。」と、突っ込まれてしまうほど、ショッピングや、メンバーシップ制のビリヤードやダーツ、トランプ、読書といった娯楽を楽しめる社交クラブへとレヴィを連れ回していた。
「どうせ、アリアが修練中は暇なんだろう?お前のことをただ監視していても、正直つまらないからな。だったら、その間に社会勉強と行こうじゃないか。」
「CIDというのは随分と暇な職業なんですね。もっと過酷で多忙なものかと思ってました。」
「ハハ、実際はそうなんだが...今私が動かなくても済んでいるということは、それだけこの町が平和なのか...代理として置いてきた新人刑事が意外と優秀なのか、...まぁ何れにしてもお前が気にすることではない。」
「だとしても、監視がこんなにその監視対象を構ってていいんですか。」
「密着監視。さっきお前が自分でそう言ったんじゃないか。」
パトリシアはレヴィの発言の揚げ足を取るように、得意げにその言葉の足りない部分を指摘した。
「密着監視は、対象の動向に合わせて監視する意味に加え、対象に寄り添い、その行動と心理を把握することまで含まれているんだ。私のやっていることは何も別に不思議なことじゃない。」
そう言うと、「勉強不足め。」と少し挑発するように意地悪な笑みを浮かべて見せた。
「......。」
パトリシア・オブシディアン。
性格に多少なりとも難癖はあるが、彼女は自分が人成らざる歪な存在であると知っても尚、人間であるアリアと共に生きたいと決めたその道を一緒に考えてくれた。
「覚えておけ、レヴィ。人間はよく、愛さえあれば生きていけるというが、それも間違いではない。だが、人間社会における面倒事の大半はお金さえあれば基本どうにかなる。」
まず始めに、金銭面を確保すること。それが彼女の教えだった。
だが、ヘプタであるレヴィがそこら辺で働きたいと申し出たとて「はい、そうですか。」と修道院側で許可が下りるはずもない。
だから、パトリシアはレヴィに一つ提案をした。
「彼女は私に"責任を持ってお前を監視しろ"と言ったんだ。つまり、わたしの監視下であれば、お前は何をしても文句を言われない。」
「どうですかね...」
「いや、言わさないさ。」
悪魔のような笑みを浮かべながら、パトリシアは楽しそうに呟いた。
そして後日、レヴィがパトリシアの下で、偽名を使いCIDの戦闘教官として雇われることになった経緯については...言うまでもないだろう。
そうして、現在に至る。
「これからも部下たちへの指導よろしく頼むよ、戦闘教官君。」
先程とは明らかに違う、威厳ある空気を身に纏う彼女に対し、レヴィは上官として強い敬意と服従の意を示した。
「......Yes,Sir.」
この作品はフィクションです。
作中の地名、施設名、団体名はすべて架空のものであるか、あるいは実在のものを部分的に参考にしています。登場する人物や出来事は、すべて架空のものです。
This work is a work of fiction. Names of places, facilities, and organizations are either fictional or partially based on real ones. All characters and events depicted in this work are entirely fictional.




