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Dear.1102〜咎人と赦しの聖女〜  作者: 座良 あかね


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第三章レヴィの煩悶〜ep2「パトリシアは言及するのをやめた」〜

++登場人物++


【アリア・ゴールデンベリル】

サザーク聖十字架修道院のシスター。黒の修道服の上から白地に赤い彼岸花が描かれている着物を片肌脱ぎと、何とも奇抜な格好をした少女。


【レヴィ・ラルド】

ヘプタと呼ばれる七つの大罪組織内ではエンヴィと呼ばれていた。

今はヘプタを離脱して、アリアから名前を貰いオブレートとして行動を共にしている。


【アレクサンダー・オブシディアン】

サザーク聖十字架修道院の修練長。サザーク聖十字架修道院が"戦う"と云われる所以を作った人物。


【パトリシア・オブシディアン】

CIDの刑事警部補。サザーク聖十字架修道院に所属するアレクサンダーの姉であり、アリアやレヴィとも仲が良い。


【ウィリアムズ・ヘイズ】

CIDの刑事軍曹。待つこと以外基本優秀。パトリシアの後輩で、よくオモチャにされて遊ばれている。

ナイツブリッジ・ハロッズ

ケンジントンから東に位置するこのエリアでは、ありとあらゆる高級品が揃い、ドレスや紳士服、宝石類などを購入するのに主要な場所の一つだった。

特にテラコッタで覆われたハロッズはロンドンの富と繁栄を示す象徴的な格式高いデパートとして知られていた。


再び帰宅ラッシュの渋滞をくぐり抜けることになった車は、アリアたちを乗せてどうにかハロッズまで辿り着き、正面玄関入り口付近で駐車した。



レヴィは車が止まったのを確認すると、先に車外へと降り、自分側のドアから降車を促すようにアリアへと手を差し伸べた。


アリアは差し出されたレヴィの手に自分の手を置いて車内から足を下ろすと、体を起こす際にレヴィの手に"わざと"全体重を乗せるようにして降車する。


「......、」

まだ絶賛ご機嫌斜め中のシスターに、「まいったな。」とでも言うような顔をしながら、アリアがちゃんと車から降りたのを確認するとレヴィは静かにドアを閉めた。


そして、エスコートしようとアリアの右側に立とうとしようとした、その時だった。


「それでは、参りましょうか。」

目の前で、まるで、お伽話の王子様のように颯爽と現れたパトリシアは、アリアの右側に立つと、左腕を曲げて見せた。

あまりにも板についた彼女の身のこなしに、アリアは少し照れたような様子で自分の左手をパトリシアの腕に添えると、とてもご機嫌そうに館内の正面玄関へと向かって行く。


「ありゃ〜、見事に持ってかれちまったな。」


運転席の窓から肩肘をついて、口に咥えたシガレットを一吸いするとヘイズ刑事軍曹は窓の外へと煙を吐き出した。


「...別にそんなんじゃないですよ。」


レヴィは、見た。

アリアが左手を添える瞬間。

彼女の愛を一身に受けることが出来て、彼女に一生の愛を誓うことを許された..."別の誰か"の存在を。


「...分かってるさ...」


まるで人間の皮を被った化け物の心を見透かすように、いずれ訪れる"別れ"の時を見せられた気がした。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


一方、アリアはというと。

正面玄関のドアマンに案内され、館内へと入り、


「大理石の床、豪華なステンドグラス...彫刻の趣味はよく分からないけど...大きな吹き抜けのホール、スーツにドレス...店員さんまで着飾ってて、はぁ...まるで舞踏会みたい....!」


レヴィの気も知らず浮かれていた。


「ふふ、そんなに喜んでくれるとはな。連れて来た甲斐があるというものだ。」


「...あ、ごめんなさい。」


アリアは、ついはしゃいで大声を出してしまったことに、みっともない真似をしてしまったとシュンと肩を落として体を丸めた。


「謝ることはない。アリアのその純粋な心が私は好きだぞ。」


パトリシアがニコッと優しく微笑んでみせると、アリアの顔が途端に赤く染っていく。


「...姉さまも、修練長と同じで意外と女ったらしなのね。」


パトリシアの弟である、アレクサンダー・オブシディアンは、サザーク聖十字架修道院の修練長であり、アリアたち第一期生は修道院初の試みである、護るために必要な戦闘訓練を彼から教えられてきた。

肩書きと実力だけだと、皆どうしても堅物をイメージするが、そんな彼を一言で云うとするならば、禁欲的な外面の内に奔放的な本性を隠した女ったらしのフェロモンお化けだった。


「何を言う。アレクと違って、私が特別扱いするのは、アリアだけだ。」


「うっ、...あ〜あ、姉さまが男だったら良かったのに。」


「ハハ、それも面白いな。だが、こんなジェントルマンな私が男になってしまっては、アレクとレヴィに勝ち目が無くて、あまりにも可哀想だ。」


+++++++++++++++++++++++++++++++++++


オブシディアン姉弟がアリアとレヴィに初めて会ったのは9年前のこと。

ある事件がきっかけでアリアとレヴィの身柄を一時的にサザーク聖十字架修道院で預かることになったことが全ての始まりだった。

丁度その頃に、アレクが修練長に就任。アリアもこの時はまだ正式なシスターではなかったが、少しでも気晴らしになればいいと、アレクの計らいで彼から戦術を学んでいた。

そして、アリアがサザーク聖十字架修道院の正式なシスターとして所属することになった頃。弟のアレクは、姉であるパトリシアに変な妄言を言うようになった。


「姉さん、アリアのことなんですが.....」


「何かあったのか。」


「あの子は、今後...」


「月が隠れ、花が恥じらう程の...それはまあ、美しい女性になりますよ。」


「...大丈夫か?...相手は9歳の女の子だぞ?」


「今まで数え切れないほどの女性と接してきた私が云うのです。この目に狂いはありません。」


「...何でもいいが、身内を捕まえるようなことはしたくない。...せめて、18歳になるまでは絶対に手を出すなよ。」


「ハハ、大丈夫ですよ。これでもサザーク聖十字架修道院の修練長ですよ?」


「...だから、不安なんだ。」


当時はついに弟の女好きに見境がなくなってしまったのかと心配したのだが、どうやら杞憂だったようだ。アレクやアリアの話を聞くにその様子は窺えない。寧ろ、アリアからは女ったらしとしてのレッテルを貼られ敬遠されているように感じる。



「えぇ、そうね!だって、姉さまは今でも強いもの!男になったら、筋肉量も今よりも〜っと増えて、修練長とレヴィをボコボコにするなんて蟻を踏み潰すより簡単になっちゃうわ。」


「......。」


何故、ボコボコにする前提なのだろうか...。

そして、...蟻以下なのか。

この時、パトリシアは初めてアレクとレヴィ、二人のことを少し不憫に思った。


「ね?お姉さま。」


そして、おそらくだが、アリアはパトリシアの言う"勝ち"についての話を理解していない。


...まぁ、面白いからいいか。


「あぁ、そうだな。」


パトリシアは言及するのをやめた。

+++++++++++++++++++++++++++

この作品はフィクションです。

作中の地名、施設名、団体名はすべて架空のものであるか、あるいは実在のものを部分的に参考にしています。登場する人物や出来事は、すべて架空のものです。

This work is a work of fiction. Names of places, facilities, and organizations are either fictional or partially based on real ones. All characters and events depicted in this work are entirely fictional.

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