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Dear.1102〜咎人と赦しの聖女〜  作者: 座良 あかね


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第四章BAD GIRL〜ep11「……君って、ほんと、ずるい人だ。」〜

この作品はフィクションです。

作中の地名、施設名、団体名はすべて架空のものであるか、あるいは実在のものを部分的に参考にしています。登場する人物や出来事は、すべて架空のものです。

This work is a work of fiction. Names of places, facilities, and organizations are either fictional or partially based on real ones. All characters and events depicted in this work are entirely fictional.

「…………。」


そして、気が付くとレヴィは椅子に座らされていた。


ジリジリと距離を詰められ、逃げ場のないその真っ直ぐな眼差しに、彼は結局折れるしかなかったのだーーー。


「せっかく、ちゃんとした服貰ったんだから髪もセットしなきゃね。」


「…できるの?」


普段、自分の髪型にすら苦戦し、身支度もままならない人間が、他人の、それも異性の髪をセットできるほどの技量を持ち合わせているとは思えない。


ーーレヴィは不安でしかなかった。


「ワックスを手につけて髪を流すだけでしょ?"簡単"じゃない」


「……」


ーーやはり、不安だ。

アリアが"簡単"と口にする時は、決まって良くない結果を招く。


本人は無自覚なようだが、長年それを傍で見てきた彼は、この"法則"を嫌というほど理解していた。


「ほら、早く。目、閉じてよ」



アリアのように微塵もセンスを持ち合わせていなければ、これほど憂鬱な気分にはならなかったことだろう。


だが、職場の上司でもあるパトリシアとの付き合いも長い分、レヴィの美的センスは一般市民を遥かに凌駕するレベルに達していた。


だからこそ、センスが絶望的に欠如している彼女に委ねるということは、まだ幼い子供に化粧を施させて街へ繰り出すようなものだ。


「……はぁ。」と、半ば諦めたように溜息をつくと、レヴィは促されるままそっと目を閉じた。


「ふ、ふ〜ん♪」


「…………」


「ん〜……」


「…………」


最初こそ意気込んでいたアリアだが、いざ実践となると手際がわからないらしい。


とりあえず、レヴィの髪を綺麗にとき、ワックスを手にとる前に、まずは素手で前髪を掻き上げてみた。


「……う、」


露わになった彼の整った素顔を見て、アリアの頬が赤く染まる。


急に恥ずかしさが込み上げ、隠すように前髪をバサっと戻すと、遊ばれていると勘違いしたレヴィが痺れを切らした。


「……貸して。」


自分でやるからと、アリアからワックスを取り上げ、彼は慣れた手つきでさっと髪を整えてみせた。


「…これでいい?」


「ふ、ふん。……いいんじゃない。」


照れ隠しに、そっけない態度を取りながら、アリアは彼に向かって手のひらを差し出した。


「手、出して」


「……なんで?」


「次は何をするつもりなんだ」という、疑り深い視線がアリアに向けられるーー。


「いいから、」


「…………。」


レヴィが渋々その手を差し出すと、アリアは彼の袖口へと手を伸ばした。


そして、どこに隠し持っていたのか、黄金色の宝石が施されたボタンを取り出すと、手際よくそれを留めていく。


「はい、クリスマスプレゼント!」


それは、パトリシアにドレスを贈られたハロッズで、アリアが一目で心を奪われたものだった。


"ゴールデンベリル"の宝石が埋め込まれた、気品あるカフスボタンーー。


レヴィが黙ってその輝きを見つめていると、アリアが急にもじもじと身をよぎり、消え入りそうな声で言葉を紡ぎ出した。


「その……いつも、ありがとう。昨日は、心配かけて、ごめん……。」


お昼にルーシーに言われた言葉を思い出しながら、アリアは改めて、レヴィに感謝の気持ちを伝えた。


ーーその健気な姿に、レヴィはこの上なく優しい眼差しでアリアに微笑んで見せる。


「じゃあ、僕からも…。」


そう言って彼がベストの内ポケットから取り出したのは、赤いリボンが結ばれた、手のひらサイズの白い箱だった。


「……開けていいの?」


「どうぞ。」


レヴィからプレゼントの箱を受け取ると、アリアは丁寧にリボンを解き、箱の蓋を開けた。


そこに収まっていたのは、彼女の誕生石であるガーネットをあしらった、シルバーの愛らしいブレスレットだった。


「わぁ、可愛い!」


服などには無頓着なアリアだが、キラキラと輝く宝石やアクセサリーには目がなかった。


そんなところは、年相応の女の子らしくて微笑ましい。


レヴィは、先ほどアリアがしてくれたように、今度は自分が彼女の左手を取り、ブレスレットを優しく着けてあげたーー。


「綺麗〜」


レヴィと同じように、アリアもまた、手首で揺れる深紅の輝きにすっかり目を奪われていると、ふとして、一つ気付いたことがあった。


「……ん?」


よく見ると、ガーネットを囲むシルバーの意匠は、一匹の蛇がハートを描いているような形になっていた。


ーー蛇は、「嫉妬(エンヴィ)」を象徴する生き物だ。そして、それを相手に贈る意味は……自分のモノを決して離さないという強い「独占欲」ーー。


そのことを、彼が知らずに選んだとは到底思えない。


「ねぇ、これって…」


「……言わないでくれ。」


アリアが言いかけた瞬間、レヴィは耳を真っ赤にして口元を片手で覆い、彼女の言葉を遮った。


だが、その過剰なまでの反応が、彼女を調子づかせることになる。


レヴィはアリアの顔に浮かんだ"からかうような表情"を見て、自分の発言が逆に失言であったことを即座に理解し、後悔する羽目になった。


「え、何をぉ?何を"言わないでくれ"って〜?」


ジリジリと詰め寄ってくるアリアに、レヴィは「う、……」と呻いて後ずさった。


そして、恥ずかしさを隠すようにそっぽを向いて、一言、こう呟いた。





「……You’re such a "BAD GIRL".」





第四章BAD GIRL

〜ep11「……君って、ほんと、ずるい人だ。」〜[完]


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この作品はフィクションです。

作中の地名、施設名、団体名はすべて架空のものであるか、あるいは実在のものを部分的に参考にしています。登場する人物や出来事は、すべて架空のものです。

This work is a work of fiction. Names of places, facilities, and organizations are either fictional or partially based on real ones. All characters and events depicted in this work are entirely fictional.

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