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Dear.1102〜咎人と赦しの聖女〜  作者: 座良 あかね


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第四章BAD GIRL〜ep10「何する気…」〜

※登場人物紹介※

本作に登場する人物の簡単な紹介です。

本編をより楽しんでいただくための補足となりますので、すでに読んでくださっている方は読み飛ばしていただいても大丈夫です。


アリア・ゴールデンベリル

サザーク聖十字架修道院のシスター。修道服に母親の形見である『着物』を着崩して纏い、『赦しの能力』で七つの大罪と呼ばれる脅威『ヘプタ』に立ち向かう。


レヴィ・ラルド

サザーク聖十字架修道院の修道士。元ヘプタのメンバーで組織内では『エンヴィ』と呼ばれていた。プライドの反感を買い、組織から追われることになった彼はアリアから『レヴィ』という名前を与えられ志同じく『ヘプタ』を倒すため行動を共にしている。


アレクサンダー・オブシディアン

サザーク聖十字架修道院の修練長。近年、憑かれた(ポゼスト)悪霊(フィーンド)の事件にシスターや修道士が関与することがあまりにも増えてきたため、彼はせめて教え子たちが無事で帰ってこれるようにと祈りを込め、護身の術を授けている。


パトリシア・オブシディアン

CIDの刑事警部補。アレクサンダーの実姉で、切れ者のくせ者。アリアやレヴィとも関わりが深い人物。ドリス・ブラウンとは昔からの馴染みで一方的に頼りにしている。


ドリス・ブラウン

サザーク聖十字架修道院の修道院長(マザー・アベス)。アリアやパトリシアに振り回され、厄介事の絶えない日々に眉間に苦労の皺を寄せるが、その実、厳しくも誠実で温厚な人。


ウィリアムズ・ヘイズ

CIDの刑事軍曹。パトリシアの部下で、彼もまた彼女に振り回され苦労している。正義感が強く優秀なのだが、唯一の欠点は『待つ』ことが出来ないこと。


ヨーゼフ

マジシャンを思わせる奇抜な衣装に身を包んだ、正体不明の技術者。

アリアやレヴィに対し、高度な科学技術を操り武器や道具を提供する。

その技術や、目的、素顔についてはすべて謎に包まれており、アリアやレヴィ、修道院の面々ですら全容を把握していない。

「そういえば、アリア。昨日、レヴィ君が凄く慌てた様子でアリアのこと捜してたみたいだったけど、……何かあったの?」


ルーシーの唐突な問いに、アリアの肩がぴくりと跳ね上がる。


「あー……。ちょっと、事件に巻き込まれて警察で事情聴取を受けてたの。」


平静を装いながら、アリアは首の傷跡を覆うように巻いたマフラーの端へ、無意識に指をかけた。


「え?!」と、驚きの声を上げるルーシーを余所に、カイルはニヤニヤとからかうような視線をこちらへ向けてくる。


「お前ってよく警察にお世話になるよな。」


「変な言い方しないでよね、カイル。こちとら普段は警察からの依頼で動いてるの!今回は、本当に……稀なケースよ。」


アリアの言う通り、彼女たちは普段、警察の要請を受けて任務に就く。


しかもそれは、必ずレヴィとバディを組むことが絶対条件だ。


それ以外でも、常にレヴィの感知能力によってアリアの安全は護られていた。


今回のように、彼の守護網を潜り抜けて事件に巻き込まれるのは、まさに異常事態だった。


「でも、無事で良かったよ〜。レヴィ君も顔真っ青にしてたし……。あ、でも迎えに来てくれたんだよね?」


「……うん。」


レヴィの取り乱し様を第三者の口から聞かされると、彼にどれだけの心労をかけたのかが改めて身に染み、流石のアリアも申し訳なさで身が縮む思いだった。


「ちゃんとお礼言った?」


「う、……」


図星を突かれ、言葉に詰まるアリア。

そんな様子を見て、ルーシーは「もぉ〜」と呆れたようにお説教を始めた。


「あんなに誰かのこと大切に想ってくれる人なんて滅多にいないんだから。当たり前のことだと思わないで、アリアもちゃんとレヴィ君のこと大事にしてあげなよ〜?」


"Always say thank you – even to your nearest and dearest."


1番大切な人たちに対しても、必ず「ありがとう」と言いなさい。


親しいからこそ、そこを疎かにしたら、相手を傷付けるし、関係がマンネリ化しちゃうよ。


ーーというイギリスでよく使われる教訓の言葉だ。


「コイツらの場合は"A hedge between keeps friendship green."だろ。」


カイルが引用したのは、イギリスで古くからあることわざだった。


人間関係を長続きさせるためには、適度な距離感や節度が必要だという教えである。


つまり、過度に干渉したり、プライベートを無視すると、摩擦が生じて関係性が枯れてしまうということだ。


「でも、羨ましい〜よ。ハムレットみたいに、ちょっと影のあるクールなイケメンに守ってもらえるなんてさ。」


「そうか〜?…てか、アイツ、今幾つだよ?会った時から見た目変わらな過ぎだろ。」


その言葉に、アリアの肩が再び跳ね上がる。


普段、皆が触れなさすぎてすっかり忘れてしまっていたが、レヴィは外見で歳をとることがなかった。


今もずっと、彼だけは時間が止まったように、アリアと森で出会った頃と同じ姿のままだーー。


「確かに〜。でも、それを言うなら、修練長もじゃない?あの人も変わったと言えば髪の長さくらいで、外見はずーっと変わらないよね〜。善行に努めたら、美貌も保てるようになるのかな〜?」


返す言葉を何も用意できていなかったアリアは、ルーシーの放ったナイスなパスに、心中でグッと親指を立てた。


「いーや、それはないな。だったら、アリアなんて今頃、絶世の美女になってるはずだろ?こんだけ任務に駆り出されてんだ。なのに、このちんちくりん具合……これじゃあ、可哀想だろう。」


レヴィの外見から話題が逸れたのは良いが、今度は自分に矛先が向けられる。


「アンタねぇ、さっきから黙って聞いてれば好き勝手言ってくれるじゃない!」


「そうよ!アリアは"格好こそ変"だけど、それを除けば超絶美人なんだから!」


またもや、アリアに助け(パス)を出す、ルーシー。……だが。


「……何か複雑な気分ね。」



どうやら、今回はファインプレーには至らなかったようだ。


++++++++++++++


1937年12月25日 17時23分。


聖堂で行われるクリスマスパーティに向けて、シスターたちはそれぞれの部屋で身支度に勤しんでいた。


「パーティドレスでクリスマスなんて、珍しいわよね。」


「オブシディアン姉弟たっての希望だそうだ。」


「ってことは、姉さまも来るのかしら?」


アリアはパトリシアから贈られたペールグリーンのイブニングドレスを身に纏い、首元にはそれに合わせたオフホワイトのふんわりとしたストールを巻いていた。


レヴィの部屋の椅子にアリアはちょこんと腰をかけていると、その背後から彼の長い指先が伸びてくる。


レヴィは慣れた手つきで彼女の髪に触れる。絹のように艶やかな金色の髪を、アリアがお願いした雑誌のモデルのように、一つ一つ丁寧に、そして綺麗に束ねていった。


「そう聞いてるけど…。ーーはい、出来たよ。」


髪を整え終えたレヴィが、傍らに置いてあった銀製の手鏡をアリアの前に差し出した。


アリアは手鏡を受け取ると、洗面台の鏡の前へと移動した。


そして、手鏡に映し出された自分の姿を、色んな角度から覗き込む。


「うん!バッチリ!」


想像以上の出来栄えに、キャッキャとはしゃぐアリア。


その様子を眺めながら、レヴィはやれやれといった表情で小さく息を吐いた。


「こういうのは、女の子どうしでやるのが楽しいんじゃないの?」


「み〜んな、自分のことを着飾るので忙しそうだもの」


シスターたちの共用スペースに、謎にずらりと並べられたドレスとスーツの数々。


ーーそれは、オブシディアン姉弟の厚意で修道院に贈られた物だった。


そして、それを見た普段お洒落に縁のないシスターたちは、その輝きを前に、それはそれはこの上ないはしゃぎようで……何故だか殺気立ってすらいた。


そんな彼女たちに自分の身支度の手伝いなどお願いできるはずもなく、アリアはいつものようにレヴィの部屋を訪れたのだったーー。


アリアは鏡を覗き込みながら、いつも身に付けている、レヴィから貰ったエメラルドグリーンのイヤリングを大事そうに、丁寧な手付きで耳元へと飾っていく。


「じゃあ、次はアンタの番ね!」


そう言って、アリアはクルッとレヴィの方を向き、満面の笑みを浮かべて見せた。


「何する気…」


アリアの浮かべる笑顔を前に、一瞬、背筋に悪寒が走るーー。






レヴィは嫌な予感しかしていなかったーー。


この作品はフィクションです。

作中の地名、施設名、団体名はすべて架空のものであるか、あるいは実在のものを部分的に参考にしています。登場する人物や出来事は、すべて架空のものです。

This work is a work of fiction. Names of places, facilities, and organizations are either fictional or partially based on real ones. All characters and events depicted in this work are entirely fictional.

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