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Dear.1102〜咎人と赦しの聖女〜  作者: 座良 あかね


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第四章BAD GIRL〜ep8 「……よかったよ。お前にも、ちゃんと痛覚が存在して。」〜

※登場人物紹介※

本作に登場する人物の簡単な紹介です。

本編をより楽しんでいただくための補足となりますので、すでに読んでくださっている方は読み飛ばしていただいても大丈夫です。


アリア・ゴールデンベリル

サザーク聖十字架修道院のシスター。修道服に母親の形見である『着物』を着崩して纏い、『赦しの能力』で七つの大罪と呼ばれる脅威『ヘプタ』に立ち向かう。


レヴィ・ラルド

サザーク聖十字架修道院の修道士。元ヘプタのメンバーで組織内では『エンヴィ』と呼ばれていた。プライドの反感を買い、組織から追われることになった彼はアリアから『レヴィ』という名前を与えられ志同じく『ヘプタ』を倒すため行動を共にしている。


アレクサンダー・オブシディアン

サザーク聖十字架修道院の修練長。近年、憑かれた(ポゼスト)悪霊(フィーンド)の事件にシスターや修道士が関与することがあまりにも増えてきたため、彼はせめて教え子たちが無事で帰ってこれるようにと祈りを込め、護身の術を授けている。


パトリシア・オブシディアン

CIDの刑事警部補。アレクサンダーの実姉で、切れ者のくせ者。アリアやレヴィとも関わりが深い人物。ドリス・ブラウンとは昔からの馴染みで一方的に頼りにしている。


ドリス・ブラウン

サザーク聖十字架修道院の修道院長(マザー・アベス)。アリアやパトリシアに振り回され、厄介事の絶えない日々に眉間に苦労の皺を寄せるが、その実、厳しくも誠実で温厚な人。


ウィリアムズ・ヘイズ

CIDの刑事軍曹。パトリシアの部下で、彼もまた彼女に振り回され苦労している。正義感が強く優秀なのだが、唯一の欠点は『待つ』ことが出来ないこと。


ヨーゼフ

マジシャンを思わせる奇抜な衣装に身を包んだ、正体不明の技術者。

アリアやレヴィに対し、高度な科学技術を操り武器や道具を提供する。

その技術や、目的、素顔についてはすべて謎に包まれており、アリアやレヴィ、修道院の面々ですら全容を把握していない。

「アリアの話からすると、…その者は恐らく、『暴食(ヴォラトニー)』でしょうね。」


テーブルに肘をつき、指を組みながら、彼女はどこか遠くを見つめるようにして言葉を放った。


「それも、あのヨーゼフという男からの情報ですか。」


アレクサンダーの問いかけに、マザー・ドリスは静かに首を横に振った。


「いいえ、これは私の見解です。

貴方にも以前少しお伝えしたように、私にもアリアと同じく『聖女』に関する陳述記憶が存在します。ですが、それはアリアのように体験や出来事についてまつわるような『エピソード記憶』ではなく、私の場合は知識や言葉によって記憶される『意味記憶』のになるのですが……。」


マザー・ドリスは当初、この記憶を自分の空想に過ぎないとずっと考えていた。


あまりにも作り込まれた妄想ーー。


だが、突如として目の前に現れた男が"ヨーゼフ"と名乗ったことで、空想が実在を主張しはじめ、彼はこれから現れるであろう「聖女」と「咎人」について、ーーその二人を支える『七つの美徳』についても"新しく"語り始めた。


そして、後に知人であるパトリシアがアリアとレヴィを連れてきたことで、それらは一気に抗いようのない現実味を帯びてきた。


ーーそんな過去の出来事を思い出しながら、マザー・ドリスは自身の持つ『意味記憶』についての話を続けた。


「私の所持する記憶には、ヘプタの外見や能力に関するモノは勿論、常に聖女に寄り添う存在としてヨーゼフという男の名前がどの聖女の記憶の中にも"共通"して存在するのです。」


情報があっても理解が追いつかないーーそんな表情で小さく溜息をつくと、彼女はいつものように眉間に皺を寄せた。


「それも背格好や性格の特徴まで……私たちの知る彼とまったく"同じ"。」


マザー・ドリスという人物を深く知っているからこそ、彼女の言葉に嘘偽りがないことをアレクサンダーは、理解していた。だからこそ、アリアとレヴィの置かれた現状が、もはや自分たちの知る理を超えた、異次元の宿命の渦中にあるのだと、彼は改めて再認識するーー。


「彼は一体何者なんですか……」


「私にもさっぱり。何度聞こうにも上手く話をかわされ、いつもはぐらかされてしまうのです。」


どうして、こうも自分の周りは厄介事ばかりなのか。マザー・ドリスは尽きることない悩みの種に頭を悩ませながら、再び溜息をついた。




「……そして、先ほどそのヨーゼフ本人から直接謝罪がありました。」



++++++++++++++++++++++++++++++++++


23時46分。


おとぎ話の秘薬のごとく鮮やかな液体を湛たたえたフラスコが並び、どこか浮世離れした空気が漂う不思議な空間。


そこに突如として現れたその蛇は、音もなく、この部屋の主である男の背後へと忍び込んだ。


蛇は、瞬時に相手の首を腕でホールドすると、自らの体を後方へと投げ出すように倒れ込んだ。そして、その柔軟な関節を活かし、指先から手首へと波状に締め上げた。


血液が逆流し、指先からじんわりと紫色へと染まっていくーー。


次は、肘、そして肩と伝播する収縮の波で、静脈が内側から押し広げられ、心臓へ血液が雪崩込む。


そして、そこから畳み掛けるように、相手の両腕を背中で交差させ腰と脚で相手の胴をがっちり絡め取った。


膝から足首へ連鎖する圧迫。全身の内圧が急上昇し、粘膜が破れ、口からは行き場を失った血が溢れ出すーーー。


「……これは、……ヤバ……」


悶絶の呻き声を上げながらも、ヨーゼフの唇は歪んで恍惚と笑みを浮かべていた。


意識が遠のきかけたその瞬間、蛇は締め上げていた力をゆっくりと緩め始めた。肺に新鮮な空気が流れ込み、皮肉にも意識が明瞭になったことで、全身を焼くような激痛が鮮烈に跳ね回る。


「…ハハ、蛇の圧壊ってこんな感じなんだねー。……あー、ハハ、すごく痛い……!」


蛇は蛇でも「嫉妬」の蛇。自分の大切な人を傷付けられ、彼は大層腹を立てていた。


レヴィはヨーゼフの体から離れると、近くにあったテーブルの端に腰をかけ、腕を組み、のたうち回る彼を、冷たく見下していた。


彼が「エンヴィ(嫉妬)」と呼ばれていた頃。その類いまれなる感知能力と繊細さを駆使して、当時、レヴィがよく"折檻係"を任されていたことをヨーゼフは今更ながら思い出すーー。


「……よかったよ。お前にも、ちゃんと痛覚が存在して。」


そう吐き捨てた彼は、普段"レヴィ"として見せることのない、不敵な笑みを浮かべてみせたーー。

この作品はフィクションです。

作中の地名、施設名、団体名はすべて架空のものであるか、あるいは実在のものを部分的に参考にしています。登場する人物や出来事は、すべて架空のものです。

This work is a work of fiction. Names of places, facilities, and organizations are either fictional or partially based on real ones. All characters and events depicted in this work are entirely fictional.

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