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Dear.1102〜咎人と赦しの聖女〜  作者: 座良 あかね


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第二章"赦し"の能力〜ep1「Get Ready......GO!!」〜

1937年11月2日。

ロンドン・ケンジントンで強盗致傷事件の犯人がとある有名な建物へと立てこもった。"人外案件"の通達を受けたサザーク聖十字架修道院はシスターであるアリアとそのサポート役であるオブレートのレヴィを派遣する。

第一章アリアとレヴィにて。>>>>>>

ロンドン・ケンジントン


日が沈み辺りが闇に包まれる酉の刻。

ロンドンの中でも高級住宅地として知られているこの場所には、ロンドンの中枢を担う銀行が幾つも並んでいた。中でも、最も有名なのはハイ・ストリート内で一番人目の引く場所に建てられた"ミンスター銀行"だ。


「はぁ、..奴の血中から薬物反応が無かったからって、"人外"扱いッスか。」


現場はミンスター銀行を取り囲むようにして"Police Line Do Not Cross"と書かれた黄色のテープで隔離されており、そこに配置された制服警官の一人が、何やらサザーク地区の聖十字架修道院から来たという二人をテープの内側へ案内する様子が窺える。男はそれを見て「しかも...まだ、ガキじゃねぇですか。」と赤毛を掻きむしった。

憔悴しきった顔をする部下...ウィリアムズ・ヘイズ刑事軍曹の隣で、彼女...CIDの刑事警部補であるパトリシア・オブシディアンは銀髪のアシンメトリーなショートボブを風になびかせながら、部下へと視線を向ける。


「私から見れば、お前も似たようなものだがな。」


すると赤毛の男は大きく肩を落として「勘弁して下さいよ。」と呟いた。

それを聴いて彼女はフッと笑う。

「まぁ、見ておくといい。これこそ、私の弟が所属するサザーク聖十字架修道院が"戦う"と言われる所以だ。」


そう言うと、彼女たちもまた、二人の後を追うように歩み出した。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++


「わー...まるで、お城ね。」

大理石の床にギリシャ式の柱。ホールには天井12m級の吹き抜けがあり、クリスタル製のシャンデリアが"銀行の象徴"を誇示していた。


「そりゃあ...支店数1000以上、資本金数億ポンドのビッグバンクだからね。」


トンネル状のヴォールトと呼ばれる左右の壁に架けたアーチを奥行き方向に平行に連続して押し出したような入り口から案内されて、二人は職員限定の通路から屋上へと向かう。


「今回の犯行ってステップニーから始まってるのよね。なんでケンジントンまで来てこんなわざわざ目立つ銀行にお金盗みに来たのかしら。」


階段を登りながら、アリアはレヴィに問いかける。


「まぁ、ステップニーで事件を起こした凶悪犯が裕福で身を隠しやすいケンジントンに逃げ込むなんてよくある話だからね。憑かれた(ポゼスト)だからというわけではないだろうが、こいつは動機も動線も滅茶苦茶。思いつきと手当り次第ってとこだろう。それに、だいぶ力を使ったようだ。このままだと肉体が朽ちて、直に悪霊(フィーンド)になるぞ。」


レヴィには、気配を探知してそれらを分析できるセンサーのような能力があり、それはかつて彼がエンヴィだった頃に習得した、戦闘を得意とする彼ならではの能力だった。


「それは、困るわね。」


アリアはぐっと唇を噛み締め、強い決意を瞳に宿しながら残りの階段を一気に駆け上がり、少し錆び付いた屋上への扉を力強く開けた。


そこには、三角屋根ではなく、メンテナンスや通信用設備などのために設けられた歩行可能な屋上スペースがあった。


アリアは頭に付けているゴーグルを目元に下ろし、右脚のスリットから38口径のエンフィールドNo.2リボルバー拳銃を取り出すと、再びレヴィに問いかける。


「始めてもよさそう?」


彼女にも、またレヴィと同じように特殊な能力があった。

彼女の場合は、"結界"という形が能力となり、サザーク聖十字架修道院はそれを活かすために、アリアから抽質した成分で特殊な弾丸を作った。これは着弾時に爆発して飛散されることで、内側と外側の干渉を一切遮断する彼女の結界の効果が広範囲に発動できるようになっている。


「あぁ、大丈...」

レヴィがGOを出そうとして、ふと彼は言葉を止めた。


「どうしたの?...え、まさか、犯人に気づかれちゃった?」

アリアが慌ててレヴィの顔を覗き込む。

「いや、...」

自分たち以外に、気配が二つ増えた。それも、二人が良く知っている人物の気配だ。レヴィは少し面倒臭そうに息を吐くと、あえてそれをアリアには言わず、そのまま話を続けた。


「...ごめん、何でもない。よし、結界を張ろう。」


何だか話をはぐらかされたような気分になり、アリアは少し不満そうな顔をするが、彼のことをよほど信頼しているのだろう。「わかった。」と特に言及することもなく結界を張るための射点の確保に急いだ。


「アリア、結界はどのぐらい持ちそう?」


レヴィは背中に担いでいた革張りのチェロケースを字面に置くと、サザーク聖十字架修道院の紋章が描かれた重厚な蓋を開けながらアリアに尋ねた。


「そうね、この広さだとせいぜい15分くらいね。ターゲットがポゼストになったのも最近って考えると私は3分あれば、多分いけるわ。レヴィは?」


「...十分だ。」


チェーンで繋がれた三節棍を取り出すと、レヴィは再びチェロケースを背中に担いでアリアを見た。まるでそれが合図のようにアリアは、銃口を頭上高く天に向ける。


「それじゃあ、いくわよ!Get Ready......GO!!」


掛け声と共に結界が放たれる。...気付けばそこにレヴィの姿はなく、屋上にはアリアだけが、残された。


+++++++++++++++++++++++++++++++++


この作品はフィクションです。

作中の地名、施設名、団体名はすべて架空のものであるか、あるいは実在のものを部分的に参考にしています。登場する人物や出来事は、すべて架空のものです。

This work is a work of fiction. Names of places, facilities, and organizations are either fictional or partially based on real ones. All characters and events depicted in this work are entirely fictional.

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