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Dear.1102〜咎人と赦しの聖女〜  作者: 座良 あかね


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第四章BAD GIRL〜ep3「やっぱり、この中にいるのね。ごめん、ちょっとお邪魔させてもらうわ…って、あれ?」〜

※登場人物紹介※

本作に登場する人物の簡単な紹介です。

本編をより楽しんでいただくための補足となりますので、すでに読んでくださっている方は読み飛ばしていただいても大丈夫です。


アリア・ゴールデンベリル

サザーク聖十字架修道院のシスター。修道服に母親の形見である『着物』を着崩して纏い、『赦しの能力』で七つの大罪と呼ばれる脅威『ヘプタ』に立ち向かう。


レヴィ・ラルド

サザーク聖十字架修道院の修道士。元ヘプタのメンバーで組織内では『エンヴィ』と呼ばれていた。プライドの反感を買い、組織から追われることになった彼はアリアから『レヴィ』という名前を与えられ志同じく『ヘプタ』を倒すため行動を共にしている。


アレクサンダー・オブシディアン

サザーク聖十字架修道院の修練長。近年、憑かれた(ポゼスト)悪霊(フィーンド)の事件にシスターや修道士が関与することがあまりにも増えてきたため、彼はせめて教え子たちが無事で帰ってこれるようにと祈りを込め、護身の術を授けている。


パトリシア・オブシディアン

CIDの刑事警部補。アレクサンダーの実姉で、切れ者のくせ者。アリアやレヴィとも関わりが深い人物。ドリス・ブラウンとは昔からの馴染みで一方的に頼りにしている。


ドリス・ブラウン

サザーク聖十字架修道院の修道院長(マザー・アベス)。アリアやパトリシアに振り回され、厄介事の絶えない日々に眉間に苦労の皺を寄せるが、その実、厳しくも誠実で温厚な人。


ウィリアムズ・ヘイズ

CIDの刑事軍曹。パトリシアの部下で、彼もまた彼女に振り回され苦労している。正義感が強く優秀なのだが、唯一の欠点は『待つ』ことが出来ないこと。

柔らかな日差しを浴びながら彼女は大きく背伸びをする。


「んー、頭も使ったし、修練長(あのひと)にも何かお礼しなきゃね。」


すると、アリアは以前ヨーゼフから貰った小瓶をひょいっと取り出した。日差しに透かしたガラス瓶が、彼女の瞳のようにキラキラと輝いている。


「一人になるなって誰かさんに口煩く言われてるけど…お店近いし、コレを使っとけば大丈夫よね。」


そう言うと、アリアは小さく舌を出した。そこには、確かにレヴィの烙印が彼女の愛らしい舌の上に刻み込まれていた。


アリアは霧状になった液体をシュッっと自分の舌に吹きかけると、その小瓶をさっとしまい込む。そして、大好きなパイ屋を目指してルンルンと足取り軽く出かけていった。


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++



サザーク聖十字架修道院の路地裏には、アリアのお気に入りである『Kim’s Pie Shop』というお店があった。

石炭の煙に沈む薄暗い通りにおいて、そこから漂うパイ屋の匂いは、何とも罪深く食欲のそそる甘美なものだった。

特にアリアが愛してやまないのは、手のひらに収まるほどの小さな円形で焼かれたアップルパイだ。

扉を開ければ、焼きたての小麦の香ばしさと共に、店主の温かい声が響く。


「よぉ、シスターの嬢ちゃん。今日もいいリンゴが入ってるぜ。」


「こんにちは、キンバルさん。それじゃあ、アップルパイを10個、頂けるかしら。」


「はいよ。」


強面な見た目に反して、店主のキンバルは丁寧にパイを紙袋に詰めていく。


「少し早いが、これは俺からのクリスマスプレゼントだ。」


そう言って、彼はさらに5個のパイを袋に滑り込ませた。


「わぁ!ありがとう、キンバルさん!」


店を出るなり、我慢できずにアップルパイを口いっぱいに頬張るアリア。

サクッとした生地の中からカスタードクリームとリンゴの甘みが一気に広がり、アリアはとろけるような笑みを浮かべては、ステップを踏むように修道院までの帰り道を辿っていった。


「いやっ、離してっ…!」


突如響いた悲鳴に、アリアは弾かれたように声のする方へと視線を向けた。


「せっかく、あなたを私のように綺麗にしてあげるって言ってるのよ!おだまりなさい!」


ヒステリックな叫び声。褐色肌のアフロヘアーの女は、自分とは対照的な白い肌を持つ女性の、長いブロンドを引き摺るようにして暗い路地裏へと連れ去った。抵抗するその声は、そのまま闇の向こうへと消えていく。


「あ…ちょっと待ちなさいよ!」


一人で動くなとレヴィには強く釘を刺されていたが、ここで見過ごすわけにはいかない。アリアは急いで女性が連れ去られた路地へと駆け出した。


「あれ…居ない。…というか、この道にこんなお屋敷なんてあったかしら…」


突き当たりにあるはずの行き止まりには、見たこともない不釣り合いなほど豪華な屋敷が、まるで昔からそこにあったかのように佇んでいた。


屋敷の入り口、塀の上にはこちらに背を向けて座り込む一人の少年の姿があった。


「すみませーん、お屋敷の方ですか?ここに女性が二人、来ませんでしたか?」


アリアが声をかけると、少年はくるりとこちらを向き、軽やかに地面に着地した。そのままスタスタと迷いなく歩み寄ると、ピンク色に染まった鼻先をくんくんと動かす。


「…なんだ、この匂いは」


少し癖っ毛のあるミルキーピンクのショートヘアに、同じ色をした長いまつ毛の間からワインレッドの右目が不思議そうに、じっとこちらを覗いている。左目には白い眼帯を着けており10歳そこらに見えるその少年は天使のような愛らしい容姿に似合わず、ぶっきらぼうな口調でアリアに問いかけた。


「あぁ、これ?これはね、私イチオシのお店のアップルパイよ。……じゃなくて!…女の人、見なかった?」


「……。」


少年はアリアの問いかけが耳に入ってないのか、じーっと物欲しそうにアップルパイの入った紙袋を眺めている。


「た、…食べる?」


「いいのか?」


「…そりゃあ、そんな顔されちゃあね。」


アリアは苦笑しながら、袋の中からまだ温かいアップルパイを一つ取り出した。


「はい、どーぞ。」


「…誰かから何かを貰うのは初めてだ。」


少年は不思議そうな顔でパイを受け取り、口元へ運ぼうとする。


「それなら、せめて『ありがとう』くらい言いなさいよ。」


「…ありがとう?」


「そうよ。誰かから何かして貰ったらそう言うの。あなたのお顔がいくら天使みたいに可愛いからってお礼の一つも言えなかったら友達なんてできないわよ?」


「…友達」


感情の読み取れない少年の反応に、アリアはどこかレヴィと初めて会った頃のような懐かしさを覚えた。

ーーとその時、再び屋敷の奥から悲鳴が響く。


「やっぱり、この中にいるのね。ごめん、ちょっとお邪魔させてもらうわ…って、あれ?」


視線を戻すと、そこに少年の姿はなかった。



+++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

この作品はフィクションです。

作中の地名、施設名、団体名はすべて架空のものであるか、あるいは実在のものを部分的に参考にしています。登場する人物や出来事は、すべて架空のものです。

This work is a work of fiction. Names of places, facilities, and organizations are either fictional or partially based on real ones. All characters and events depicted in this work are entirely fictional.

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