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日常

エルは、ただの少女だった。


年齢も十五、背丈も人並みで、仕草や声も周囲と何ひとつ変わらない。


朝になれば皆と同じように食べ物を分け合い、夜には火のまわりで歌を口ずさむ。


エルの服装は、黒と白が切り替わった一着のシャツだった。動きやすく、少し伸びる生地でできていて、彼女のお気に入りだ。袖口は擦り切れていたが、外に出ても汚れが目立ちにくい布地だった。下には膝までの短いズボンを合わせ、足元は擦り減ったブーツ。どれも何度も手直しされながら長く使われている。


外に出るときは、色あせた帽子をかぶり、そしてその上から、古びたゴーグルをかけていた。レンズには細かな傷が残っていて、曇りやすさも含めて「使い込んできた証」だった。首元には、いつもドッグタグがぶら下がっている。


髪は肩より少し短い黒髪で、外に出ることが多いためところどころ茶色く日に焼けていた。肌も健康的に浅黒く、街の中で暮らす人々よりも明らかに陽に焼けている。街の人は知っている、外では放射線で人間が立ち入れば命を落としかねない場所だと。だから普通の人は決して外へは出ない。外に出られるのは、猛人類たち、そしてエルだけだった。


なぜ彼女が人間でありながら耐えられるのか⋯⋯

それでも、エル自身は特別視されることなく、ただの十五歳の少女として暮らしている。みんなと同じように食堂で食事を分け合い、笑い合い、ときに叱られる。彼女は猛人類たちと訓練したり遊んだりしながら、時にはふらりと街の外に出てしまうこともある。そんな奔放さを含めて、彼女は街の人々にとって「仲間のひとり」であり続けていた。

エルにはずっと一緒にいる、同じくらいの年の少女 エナと今日もいつもの日常を送る予定だった。


朝の光は灰色の雲に遮られ、窓の外はぼんやりとした明るさに包まれていた。

エルは大きな建物の一角、簡素なベッドから身を起こす。

部屋の隅には古びた日記帳と、防護用のゴーグルが置かれている。


扉を開けると、薄暗い廊下の向こうに人々の気配があった。

共同体の一日は、いつもと変わらず始まっている。

芋を煮る匂い、子供の笑い声、遠くで鳴る工具の音。

けれどエルの胸には、昨日から妙なざわめきが残っていた。


「おはよう、エル」


振り返ると、そこにエナがいた。

落ち着いた声、特徴的な目で片方は深い茶色、もう片方は淡く澄んだ光 を宿す色で、覗き込むと吸い込まれそうな奥行きを 感じさせる、細い肩に白に近い淡い色のワンピースをかけていた。

年はほとんど変わらないのに、いつも不思議と大人びて見える。


「……エナ。今日も一緒に行くの?」


「もちろん。あなたがどこへ行くにしても」

彼女は静かに微笑んだ。


その言葉は心強いようで、同時に少し曖昧でもあった。

エルはふと、問いかける。

「今何時?」

エナは少し考えるように目を伏せ、そして小さく笑った。「今はもう7時たよ、お寝坊さん」


結局、急いで彼女はいつも通りにゴーグルと帽子を手に取り、外に出る準備を始めた。


ご飯を食べ共同体の浴場に行きそして日課の⋯⋯

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