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第8話 初めての戦闘

 ゼノはリシェルのために作った鎧の性能を試すべく、リシェルを連れて町の外へとやって来た。

 そしてそこでゼノはマジックバッグの中から一体のゴーレムを取り出した。

 それは、犬を模したような姿ではあるがウサギのように長い耳も付いている、比較的小型な動物型ゴーレム。


「さあ五号、探すんだ」


 ゼノがその動物型ゴーレムにそう命令すると、その五号と呼ばれたゴーレムは本物の動物のような動きで辺りをうろつきだす。


 そしてそんな小動物のように動き回るゴーレムの姿を、リシェルはなんだかうれしそうにじっと眺めている…ように見えなくもない。

 全身鎧で頭もフルフェイスの兜なため、ものすごくわかりにくいが。


「ゼノさん、あの子…は?」

「あれは探索用ゴーレムの五号だ。戦闘力はほとんどないが、犬並みの嗅覚とウサギ並みの聴覚が備わっているため、何かを探すのには極めて有用なゴーレムだ」


 それからしばらくして……


「わんっ!」


 五号が犬のような鳴き声を上げた。


「どうやら見つけたようだな。行くぞ、リシェル」

「どこへ?」

「行けば分かる」


 そしてゼノはリシェルを連れて五号の後を追っていく。

 すると二人の前に姿を現したのは小鬼の魔物…ゴブリンであった。



「っ!」


 リシェルは目の前に現れたゴブリンに怯えている様子。

 ゴブリンは魔物の中ではかなり弱い部類ではあるが、それでもごく普通の一般人にとっては危険な存在であるため、リシェルが怯えるのもある意味当然のことと言える。

 だがそんなリシェルにゼノは告げる。


「さあリシェル、あのゴブリンを倒すんだ」

「む…無理、絶対に無理」


 リシェルはゴブリンに怯え切っているため、当然の答えである。

 だがしかし…


「無理なわけないだろう。この鎧で身体能力は大幅に強化されているんだ。ゴブリン程度の魔物、倒せないわけがない」


 ゼノはこの鎧を着たリシェルなら余裕でゴブリンを倒せると信じ切っているため、逃げるという選択を一切許してくれない様子。


「さあ行くんだリシェル! さあ、さあっ!」

「うぅぅっ……」


 ゼノの圧に負け、リシェルは仕方なく剣を手に持ってとぼとぼとゴブリンに向かっていく。

 一方ゴブリンのほうは、まだリシェルの存在に気づいていない様子。

 そこでリシェルは向こうに気づかれる前に先手を打って勝負を決めるべく、駆け足でゴブリンのもとへと向かおうとした。


 するとついに、この鎧が真の機能を発動させる。

 装備者であるリシェルが普通の速度、普通の力で体を動かそうとしているときは、この鎧もリシェルの動きと全く同じ速度、平均的な一般人の力程度でしか動かない。


 だがリシェルが少しでも早く動こうとすると、この鎧はそのリシェルの体の動きよりもはるかに速い速度、そして普通の人間の力をはるかに凌駕するパワーで動き出す。


 これによって大幅に身体能力が強化されたリシェルは、ゴブリンのもとまであっという間に間合いを詰めていく……かと思われたのだが…


「あっ…あわっ…きゃっ! あうぅ……」


 走り出そうとしたリシェルは、思いっきりその場で転倒したのである。

 どうやら上がり過ぎたスピードにリシェルの感覚が全くついていけず、体のバランスを思いっきり崩してしまったものと思われる。


 そしてリシェルが思いっきり大きな音を立てて転んだことで、どうやらゴブリンもリシェルの存在に気づいてしまったようだ。


「ゴギャ、ゴギャギャギャ」


 転倒して身動きの取れない人間、これはおいしい獲物だ…とでも言わんばかりに、ゴブリンはにたにたと気持ち悪い笑みを浮かべながらリシェルのもとに迫ってくる。


「あわっ…わわわっ!」


 自分のもとへと向かってくるゴブリンの姿を見て、一刻も早く立ち上がろうとするリシェルであったが、この鎧の動く速度が自身の感覚と全く合わないせいで、リシェルはうまく立ち上がることが出来ず、その場でただ手足をばたばたと動かしている。


 そして、もう立ち上がって逃げることは無理だと悟ったリシェルは、おそらく涙目(フルフェイスの兜で顔は見えないが)でゼノのほうに視線を向けて助けを求めた。


「ゼノさん……」


 だがしかし…


「大丈夫だ。その鎧の防御力なら、ゴブリン程度の攻撃では一切ダメージを受けない」


 自分が作った鎧の頑丈さに絶対の自信があるゼノは、ただそう答えて一切何も動かなかったのである。


「うっ…うぅっ……」

「ゴギャギャギャギャ」


 ゴブリンに迫られているリシェルは、これからどうなってしまうのか?

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