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パワードスーツ勇者 ~ゴーレム技師が最弱女勇者の装備を魔改造してみた~  作者: 小河白明夫


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第21話 四翼の飛竜

 ゼノとリシェルがフィルドルブの町の外へとやって来て空を見上げると、確かにそこには四枚の翼を持つワイバーンらしきものの姿があった。

 だが今はまだ町からそれなりに離れていて、ここからワイバーンのもとへ向かうには結構な距離がある。


「遠いな、歩くのしんどい」


 するとそこに、後を追ってやってきたルルカたちも到着する。


「ゴーレムさん、リシェルちゃん、ちょっと待って!」

「おお、ちょうどいいところに」


 ゼノは何かを思いついた様子。


「ルルカ…の弓じゃさすがに届かんだろうから、バラッド、魔法であれおびき寄せてくれ」

「いや、自分の魔法でも、さすがにあんな遠くまでは届かん…」

「届かなくてもいいんだよ。派手な魔法で注意さえ引いてくれれば、きっとあれも寄ってくるだろ」


 だがゼノにそんなことを言われても、バラッドはそれを実行するのには気が進まない模様。


「この場で戦闘を始めさせる気なのか? さすがに少し、町に近すぎるのでは?」

「どうせリシェルが勝つんだから問題ない」

「だが万が一…」

「じゃあ万が一の場合に限り、空中戦用のゴーレム、十七号を使ってやる。それで文句はないな」

「う…うむ」


 こうしてゼノに言いくるめられたバラッドは、杖を構えて魔力を研ぎ澄ましてゆく。

 そして…


「サンダーボルト!」


 バラッドは比較的見た目の派手な雷の魔法を発動させた。

 すると、その雷の魔法を目にしたワイバーンが、町のほうへと向かって動き出した模様。


「どうなっても知らんぞ、ゼノ」

「どうにもならんから安心しろ」



 それから大して時間もかからないうちに、ワイバーンは町の近くまでやって来てしまった。


「こいつがワイバーンの亜種か、でけえな。俺の剣ごときじゃ、手も足も出なさそうだぜ」

「あわっ…わわわっ! ゴーレムさんっ、本当にリシェルちゃんはこんなのと戦えるの?」


 自分たちの目と鼻の先を舞う巨大なワイバーンを目にして、ジンクもルルカも相当ひるんでいる様子。

 だがこの状況でもゼノは、全く怯えた様子を見せない。

 それどころか、どこかこの状況を楽しんでいるようにすら見える。


「これはいい。勇者の装備を試すのにはうってつけの相手だ。さあ行くぞ、リシェル!」

「……………」

「リシェ…ル?」


 しかし当の勇者リシェルは、装備の力でゴブリンを何体か倒しただけの、ろくな戦闘経験もない少女。

 当然Aランクの巨大な魔物を前にして正気を保っていられるわけもなく、完全に気を失っていた。


「もう無理だ、ゼノ! 早くゴーレムを出せ!」


 リシェルを戦わせることは完全に無理と判断したバラッドは、一刻も早くゴーレムで応戦するようゼノに要求した。

 しかし、ゼノはまだ動く気配はない。


 なぜならば、一見絶体絶命に見えるこの状況の中で、唯一ゼノだけがワイバーンの動きを冷静に観察していたからである。


 今現在リシェルは意識を失っている。

 だからこそワイバーンは、そんなリシェルを最も仕留めやすい獲物として、最初のターゲットに選んだ模様。


 そして空中を舞うワイバーンだからこそ、地上にいる人間を攻撃するのなら、当然狙うはその頭。

 リシェルに向かって急降下してきたワイバーンは、その鋭い足の爪をリシェルの頭へと向けてきたのである。


 すると当然あれがその攻撃に反応する。

 リシェルの頭に装備されていた蝶の髪飾りがワイバーンの脚の前に飛び出し、敵の攻撃の威力に合わせた大きな魔力の盾を発生させた。


「グッ…グガァァァァァッ!」


 その魔力の盾によって弾き飛ばされて、地面へと墜落するワイバーン。

 そして先ほどまで気を失っていたリシェルは、魔力の盾の輝きと、ワイバーンが地面に激突したときの音で意識を取り戻す。


「っ! ……?」


 今の状況がわからず、辺りをきょろきょろと見まわすリシェル。

 するとそんなリシェルにゼノは告げた。


「敵は伸びてるぞ。今なら余裕でぶっ倒せる。行けーっ!」


 だがそんなゼノの言葉を耳にして、ジンクはあることに気づいてしまった。

 それは、今のリシェルが剣を所持していないということである。


「お…おい、あんちゃん! 勇者の嬢ちゃん、武器持ってねえじゃねえか! まさか忘れちまってたのか?」

「いや、忘れてなんかいない。リシェルには専用武器を持たせてあるからな。魔物相手なら、もう普通の剣は必要ない」


 リシェルの所持している武器が普通の剣ではなかったためジンクは気付かなかったが、リシェルはワイバーンを倒すための武器をちゃんと所持している。

 それは、剣の柄のような形をした魔導具。

 リシェルがその魔導具を手にすると、魔導具は青白い光を放出した。


「あれは…魔法剣?」

「その通りだ、ジンク。あれこそが勇者専用の魔法剣。さあリシェル、それであいつをぶっ倒せ!」

「……うん」


 そしてリシェルは魔法剣を手に、まだ倒れたままのワイバーンへと向かっていくのであった。

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