ヴァルグのよびかけ
王城の作戦室。
若き王は玉座から高らかに命じた。
「次の攻撃を準備せよ」
ヴァルグは頭を垂れた。
「……仰せのままに。
ただ、今度は結界を揺らすだけでも十分かもしれません」
ヴァルグの提案に、王は頷く。
「ふむ……アルディナの反撃をあおっても仕方ないかもしれぬな。
私とて、アルディナの民をいたずらに傷つけたいわけではないのだ」
* * *
ヴァルグは光の管に干渉パターンを走らせる。
アルディナの矩形波と、ヴェルトリアの干渉縞。
本来なら相容れぬ二つを、一つの周期の中で重ね合わせた。
その一点で二つの波が交わり、まるで“橋”を架けるかのように光った。
(……これが、俺の望みだ。両国の技術を一つにする。そのために、アルディナに一度帰る)
そう胸に決めたあとで、ふと考える。
(……一度、か。そうか……俺はもうヴェルトリアの人間になっていたんだな)
思い返して、少し可笑しくなった。
* * *
砦の観測室。
水晶板に乱れる波形を見て、リィナが息を呑む。
「また妨害信号が……!」
だがソーマは手をかざして制した。
「……待って」
矩形のパルスに、干渉縞の曲線が重なり合っている。
しかも一周期ごとに必ず、二つの波が交わる“結合点”があった。
「これは……偶然じゃない」
ソーマの声が震える。
「アルディナとヴェルトリアの技術を重ね合わせている。
……“融合しよう”って、そう伝えてきてるのか?」
リィナとエルドランは顔を見合わせた。
「敵がそんな意図を?」
「いや、危険じゃ……」
それでもソーマの胸には、確かな直感があった。
(ヴァルグ……あなたは、平和を望んでいるんだな)
お読みいただきありがとうございます。
耳慣れない技術用語もあるかもしれませんが、そんなものかと読み流していただけると嬉しいです。




