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繰り返される信号

ソーマは水晶板に映る波形を凝視していた。

「見てください……この信号、ランダムに見えるけど周期性があります。

長い文章じゃなく、短いメッセージを繰り返して送っているように見えるんです」


リィナが目を瞬かせ、小さくうなずいた。

「ありえそうですね。……以前もヴァルグさんから、通信みたいなコメントがありましたし」

彼女の声には、あの不気味な声を思い出す緊張が混じっていた。


「……そうとしか思えない」

ソーマは小さくうなずいた。

「ただの妨害にしては効率が悪いし、砦を壊すだけならもっと簡単な方法がある」


エルドランが腕を組み、しばし黙考する。

やがて、ゆっくりと口を開いた。

「……いまは詳細を解読する時間がない。まずはメッセージを保存しておくのはどうだ?」


ソーマは目を瞬かせ、それから小さく頷いた。

「……なるほど、それなら十分です。あとで解析できますから」


リィナは制御盤に指を走らせ、波形の記録を開始した。

水晶板の輝きが一瞬弱まり、保存完了を示す符号が点滅する。

「保存しました。これで後からでも解析できます」


エルドランが力強くうなずいた。

「よし、ならば砦を守る作業に移ろう。リィナ、基板を用意せい」


二人は手早く作業台に向かう。


リィナは小さな銅板を取り出し、素早く模様を描き込み始めた。

細かな線が次々と浮かび上がり、淡い光を帯びて回路を形作っていく。

「干渉を打ち消す逆位相のフィルタを……ここに組み込みます」


エルドランは別の基板を手に取り、豪快に大きな記号を書き加えた。

「儂はバイパス経路を作る。結界同士の直結を一部切り離して、外部からの雑音を逃がすのじゃ」


二人の基板が次々と仕上がっていく。

リィナは細やかな調整を担い、エルドランは大枠を切り替える役割を引き受けていた。


完成した基板が結界制御装置に差し込まれると、砦を覆う光の揺らぎがわずかに落ち着く。

ひび割れた結界が、応急処置ながらも再び砦を守り始めた。


ソーマは保存した波形を確認しながら、二人の背中を見つめる。

(……やっぱり、これはただの攻撃じゃない。

ヴァルグ……もしこれがあんたからのメッセージなら、必ず解き明かしてみせる)


結界の外ではなお光が揺れ、干渉の縞模様が砦を取り囲んでいた。

お読みいただきありがとうございます。

耳慣れない技術用語もあるかもしれませんが、そんなものかと読み流していただけると嬉しいです。

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