表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/36

結界への攻撃ふたたび?

夜明けの砦を包む結界が、突如としてきしみを上げた。

水晶板に映し出された波形が乱れ、ひび割れのような揺らぎが広がっていく。


「結界が……破られる!」

兵士の叫びと同時に、外壁の光の膜がぱりんと砕けるように散った。

石畳に走る魔力のきらめきが弾け、地面に火花が降り注ぐ。


リィナは思わず立ち上がった。

「ソーマさん! 急いで補修を!」


エルドランも険しい表情でうなずく。

「奴らめ……また偽ノードの類か。早急に繋ぎ直さんと、砦が丸裸じゃ!」


しかし、ソーマは水晶板から目を離さず、ただ波形を凝視していた。

「……待って」


リィナが制御盤に手を伸ばしかける。

「待ってじゃない! このままじゃ砦が落ちます!」


ソーマは水晶板を拡大し、指で示した。

「これは……偽ノードの侵入じゃない。PUFで認証してるから弾かれてる。

外から“無関係の信号”を叩き込んで、結界同士の同期を乱してるんだ。

互いに干渉し合って、波形がぶつかり合ってる……そのせいで外壁の一部だけが崩れてる」


リィナはすぐに切り返した。

「結界同士の干渉なら、共振部の位相をずらせば一時的に安定します。

手動ででも調整すれば持ち直せるはず!」


エルドランも腕を組み、低く唸った。

「あるいは結界の一部を遮断して孤立させるか……そうすれば干渉は減る。

その間に補強回路を差し込めば、ひとまず守れるじゃろう」


ソーマは二人を制して首を振った。

「待って、それじゃ波形の“模様”を消しちゃう」


リィナは一瞬手を止め、眉をひそめる。

「模様……? でも、このまま放っておいたら犠牲が出ます!」


ソーマは視線を水晶板に戻した。

「見てください、この干渉縞……ただの雑音にしては整いすぎてます。

壊すためだけじゃなく、何かを“伝えようとしている”……そんな気がするんです」


言葉を口にした瞬間、ソーマの脳裏にある顔がよぎった。

(……ヴァルグ。これは、あなたの仕業なのか?)


エルドランは重々しい声で言った。

「技術者としての直感は尊重する。……じゃが、結界を守るのも我らの責務じゃぞ、ソーマ」


リィナも強い目で食い下がる。

「犠牲を出すわけにはいきません。私たちができる手立てもあるんです!」


ソーマは二人の視線を受け止めながら、それでも首を振った。

「違う……これは“メッセージ”だ。

誰かがわざと、この波形を通じて何かを伝えようとしてる。

……俺たちに、いや……俺に」


研究室に重苦しい沈黙が落ちた。

結界の外で光が砕け、空気が震える。

反撃か、解読か――。

三人の思惑は交わらぬまま、緊張だけが高まっていった。



お読みいただきありがとうございます。

耳慣れない技術用語もあるかもしれませんが、そんなものかと読み流していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ