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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第3章 蠢きだす闇
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第96話 違和感


「弾やミサイルも無限にある訳じゃねえ。こっからはそれぞれの力でクソッタレ共を殲滅すんぞオイ」


 ようやく俺達の出番だな!


 カズのその言葉に皆は待ってましたと言わんばかりに雄叫びを上げ。武器を握りしめて突撃を始める。

 自衛隊と夜城組はアサルトライフルで援護射撃。AH-64アパッチ数機も、上空から援護射撃を始めてくれた。


「ではそろそろ(わたくし)達も出るとしましょうか。さぁ思う存分暴れなさい、"サルドアム"」


 ネイガルさんは後ろに控えさせていた巨大なモンスターを、遂に動かす。


 "サルドアム"。

 大型爬虫類モンスターで、種族名は"バルマルティナス"って名前なんだとか。

 見た目は薄い水色の体に赤い模様がある、プレシオサウルスとか、太古の首長竜みたいな姿のトカゲで、口先にはタコの足みたいな触手、又は髭が何本もある。

 後ろ足よりも発達した前足は大きく、両肩には魚みたいな背ビレ。尾は太くて長く、奇妙な形をしたヒレが尾の付け根から先端まで生えている。

 そのサルドアムは口先に生えているタコの様な触手をウネウネと動かして、バルメイア軍の兵士達に向けていっせいに伸ばすと鎧を突き破り、突き破られた兵士達は見る見る干からびていく。

 サルドアムが血を(すす)り始めたからだ。


「久しぶりの血の味は如何ですか? 堪能するのも良いですが、仕事を(おろそ)かにしてはいけませんよ? ふふふっ」


 サルドアムは低く唸り声を上げると大口を開け、口の中から真っ赤な塊を大砲みたいに次々と吐き、射線上にいるバルメイア軍の体をバラバラにしながら吹き飛ばす。

 それはサルドアムが(すす)った血を利用した攻撃、"血塊弾(けっかいだん)"。

 体内で生成される特殊な液体と血を混ぜる事によって血を固め、まるで砲弾の如く攻撃する技なんだってさ。


「私達も行こう。ガイア」


 サルドアムばかりに見せ場を持って行かれてたまるかと、今度はセッチがガイアと他数体の"エンシェント・フォレスト・ドラゴン"達を引き連れて前線に出る。


「攻撃開始」


 その合図でエンシェント・フォレスト・ドラゴン達は一斉に、炎攻撃の"ブレス"や、体に寄生している植物、又は強靭な後ろ足や尾で攻撃を始める。


「おかしい」


 そんな中、前線で戦う俺はなんか違和感を感じた。それを聴いていた一樹が「何が?」と聴くから、「弱過ぎる」と答えた。

 確かに戦場は圧倒的な武力の前に、バルメイア軍が一方的に倒れていく。それに冒険者やハンター達は自分達がテイムして、パートナーにしているモンスター達と一緒に戦っている。でもその一方でバルメイア軍の兵士達はモンスターを引き連れていない。


「なんでコイツらはモンスターを連れてないんだ?」


 遠くに見える兵士達は狼型のモンスターとかを連れているのに、なんでコイツらは連れてねえんだ?


 そこで更にその後ろにいる、巨大なヘカトンケイルは動く事なく、ただ黙って静観している。


 それが不気味でならなかった。 ーー



 ーー<守行side>


「この程度で戦争を仕掛けてきたにしてはおかしくないか?」


「確かに、なんか嫌な予感がするな……」


 戦况を見た俺と浩和は、何か嫌な予感めいたものを感じていた。


「奴ら……、どうもおかしくないか?」


「そうだな。まるで捨て駒も同然だ。それにヘカトンケイルが今だに反撃してこないってのが、どうもな……」


 戦况は断然有利なのは変わらない。それでも不安が拭いきれず、2人して険しい表情で見ていた。


「それに反撃をする為の魔法攻撃が一度も使われていない。一度何人か拘束し、話を聞いてみるべきじゃないか?」


 ここはその提案をのみ、浩和に目を向けると俺は軽く頷いた。


 それから程なくした後、3人のバルメイア兵士を拘束に成功し、一度椅子に座らせる。


「単刀直入に聞くが、君達は何を企んでいる?」


 相変わらず嫌な笑みだな。


 薄気味悪いと言うかなんて言うか。とにかく、浩和は穏やかな顔をしながら落ち着いた雰囲気で口を開く。しかし、3人の兵士達は口を開こうとしない。


「困ったな、話してくれないと君達がつらい時間を(みずか)ら伸ばす事になるんだがな……」


 はぁ……、やっぱ()()()()()()()()


 それでも口を開こうとはしない為、浩和の雰囲気が変わるのを気づいた俺は先に動いた。

 俺は銃を取り出すと、1人の兵士の足を何発も撃つ。


「ぎゃあああああああ!!」


「ギャーじゃねえんだよボケが、話さねえなら話したくなる様にしてやんぞ?」


 ドスを効かせた口調と睨みでまずは脅す。

 その後はまぁ色々と考えたが、とりあえず、シンプルに指を1本ずつ切り落とそうかと考えた。


「おいおい守行、それはいくらなんでも無いだろ」


「あ? それはこっちの台詞だ」


 コイツが担当した奴は、最終的に悲惨な目にあう。いくら戦争しているからとは言え、コイツは俺より残虐な事を普通にしやがる。


「まあ取り敢えず鎧を外して上げなさい」


 浩和の指示の下、2人の部下達が急いで鎧を外すと、その浩和は持ってきた鞄のなかを漁りだした。


「確かここにアレがあったと思うんだけど……、おっ、あったあった」


「ちっ、おい浩和、あんまりやり過ぎんじゃねえぞ」


「大丈夫大丈夫、口を割らせるだけだから」


 そう言って取り出したのは(かんな)だ。

 こんな時に大工仕事をしようって訳じゃねえ、(かんな)を使って口を割らせる為だ。


「んじゃ話してくれないとこうなるよ?」


 そう言ってニコやかな顔をしながら、浩和は俺が撃った兵士を2人の部下に立たせると。

 勢い良く顔面を(かんな)で皮膚や肉を削る。


「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ッ!!」

「うん、良い悲鳴だ」


 そう言いながら顔や体を何度も何度も(かんな)で削る。


 相変わらず見てて気分が悪くなるな。


 そんな光景を他の兵士2人が歯を鳴らしながら恐怖で震え上がっている。

 一方で、体を(かんな)で削られてる奴は、その痛みで気絶しそうになってでも再び激痛によって意識が強制的に戻される、ある種の拷問だ。


「話す気になってくれたかな?」


 浩和の笑顔はどこか気持ち悪い。

 そんな状況を目の当たりにして、残りの2人が口を割るのはそこまで時間を必要としなかった。


「わ、我々は、たんなる捨てゴマでしか、ない」


「捨てゴマ?」


「我々の殆どは奴隷と下級兵士で、本隊が到着するまでの時間稼ぎ。それに、本隊到着後は、あのヘカトンケイルの壁となって守る為であり、……餌でしかない。……我々奴隷には、後方にいる魔道部隊の攻撃をその場に誘導する為に、特殊な印も付けられている。それは、我々もろとも貴様らを木っ端微塵にし、本隊が蹂躙しやすくするためにだ……」


 ……そう言うことか。

 つまり、コイツらは後退を許されない特攻隊って訳か。


「だが残念だったな。そんな程度の低い作戦なんかでじゃ、俺達を倒すどころか、全員生きて帰れねえぞ?」


「……は?」


「今まではヘカトンケイル無しでも、それで上手く行ってたんだろうよ。だが残念なことにそんな程度の低い作戦はこれまでにいくらでも見ていれば聞いている」


 だが胸糞悪いのは平気で捨てゴマにするところだ。

 命をなんだと思っていやがんだバルメイア王はよ。


「俺達の世界にはな、お前ら以上に恐ろしい作戦を立てて戦争を仕掛けてくるような国がいるんだ。だから可愛いって言ってんだよ」


「そ、そんな……」


 その瞬間3人の首が一瞬で宙を舞った。それは陰で話しを聴いていた和也が、太刀を抜いて切ったからだ。


「あのバルメイアらしいじゃねえか。どうするよ親父? 稲垣さん?」


 さて、どうしたもんかな。


「別に考える必要は無えだろうが?」


 和也は眉を八の字にしたしかめっ面で軽く睨み、オペレーターの女性隊員から無線マイクを奪う。


 まったく、そのしかめっ面、誰に似たんだか。


「全()()()に継ぐ、速やかに後退せよ。繰り返す。速やかに後退せよ」


 なんの説明もする事なく、勝手に特殊作戦群にただ後退するよう指示を出す。

 流石に浩和が怒ると思ったが、何も言わずにただ何度も軽く頷くだけだ。


 自衛隊の最強部隊、それは第一空挺団と言われるだろう。だが、そんな空挺から化け物と呼ばれる部隊が存在している。それが"自衛隊特殊作戦群"だ。

 特殊作戦群はあのグリーンベレーですら壊滅させられる程の実力を持っている。

 しかし、そんな特殊作戦群ですら和也1人に怯えちまう。

 それはタイラント・ワーム戦でも自衛隊が来ていたが、それ以前から色々な場面で特殊作戦群も参加している。その為、和也が如何に危険な存在なのかを良く知っているからだ。

 我が息子ながら末恐ろしい奴だまったく。

 それに特殊作戦群とは、自衛隊の中でも選ばれた者だけしか入る事が出来ず。その選ばれた者は俺が組長をしている夜城組で修行をして育てられた者達でもある。

 故に、特殊作戦群であろうと和也に指示を出されれば素直に聴いちまう。


「取り敢えずは街の冒険者やハンター達で雑魚共を一掃して貰う。特戦をまた前に出すのはそれからだ。後はランクの高い連中で交代すると良いだろ」


 和也はそう言うと外へ出ていった。


「まあ確かにそうなんだけど……。せめて一言言ってから特戦に指示を出して欲しかったなぁ……」


「だったら本人にちゃんと言えちゃんと」


 そして浩和は溜息を吐いた。

 とりあえずここで整理しよう。俺達が聴き出した情報は、今戦場に出ているバルメイア軍の殆どが下級兵と奴隷で構成された部隊であり。そろそろ正真正銘の本隊が到着するだろう。その本隊が到着すれば、静観しているヘカトンケイルを前線に出し、自国の下級兵でヘカトンケイルの為に肉の壁となりつつ、下級兵諸共ヘカトンケイルが攻撃してくる。

 次に、下級兵や奴隷達には特殊な印を施され、そいつら目掛けて後方から魔法攻撃が開始される。印を付けられた奴を中心に、周りの連中を道連れにした攻撃をだ。


 まったく、胸糞悪い作戦だな。

 だが喧嘩を売ってきた相手が悪かったなバルメイア。お前らがどれだけ逆立ちしても勝てる見込みがねえ。

 それに、お前らはやり過ぎた……。

 お前らは、あの和也を完全に敵に回した。それがどれだけ怖ぇことか思い知るだろうさ。

 "地獄"が目を覚まさなけりゃ良いんだが、な……。


 暫くした後、本隊と思われる白い旗を掲げた騎馬隊が姿を現し。その後ろには数えきれない程の軍隊が姿を現すと今まで静観していたヘカトンケイルがついに動き出す。

 だがこの時のバルメイア軍は一つの誤算が発生していた。


「ようやく本番ってか?」


 それは殆どの下級兵達が既に殲滅させられていた事。

 その中心にいるのが俺の(せがれ)、和也が指示を出しながら動いていたことだ。

 その和也は懐からタバコを口に咥えて吸いながら本隊とヘカトンケイルを眺めていた。


「舐められたものね」


 その横に朱莉が既にヴァンパイア・モードとなり、骸、ベヘモス、犬神達の戦闘体制が出来ている状態になっている。

 俺達にとっての最高戦力であり、最強のカードが今か今かと待ち受けていた。


「ヘカトンケイルは俺達が相手をする。その他の雑魚共は任せる」


 そう言って和也は無線で特殊作戦群に伝えつつ、周りにまだ控えている冒険者やハンター達にも伝えると赤い信号弾を空へと撃つ。

 それは全線にいる連中と交代する為の合図。


「和也」


「あ? なんだよ?」


 俺は和也に、ただ一言だけ言って作戦指令室に戻ることにした。


「蹂躙しろ」


「……クカカッ、了解、親父」


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