第94話 訪問
「そのルシファーとダークスターがいったい何故、此処へ?」
先生のその質問に、ルシファーは笑顔のまま素直に答えた。
「別に大した用事じゃないさ。私は妹の様子を見に来ただけだったんだが、元気にしてる様でなによりだB」
そう言われ、Bが先生の横に立ってルシファーに挨拶をし始めた。
「お久しぶりです、ルシ姐様。それにダージュ。まさかダージュがルシ姐様と共に来るなんて思っても見なかったけど」
「けっ! 俺様だってコイツと行動するなんて思っちゃいなかったさ」
ダークスターが仏頂面になると、ルシファーを軽く睨んで悪態をつき、そのルシファーはそんなダークスターを睨み返す。
「文句があるなら来なければ良かっただろ。貴様が行かせろと五月蝿いからこうなったのではないか」
「あぁ? テメェなんかに任せられるかよ」
「なんだと?」
この2人……、そうとう仲が悪いみたいだな……。
このままでじゃ喧嘩が始まりそうな雰囲気になって行くと、そんな2人を見て、Bからとある言葉を聴いて大人しくなった。
「あの方がお怒りになるよ?」
たったそれだけの言葉でも効果的だった。
2人は目を見開き、恐怖の余りに冷や汗を流しながら体が小刻みに震えだしたからだ。
余程あの方って呼ばれるアルガドゥクスを怖がってんだろ。
BはBで、両手を腰に当て、溜め息を吐きながら困った顔になっている。
「ルシ姐様とダージュがこんなところで喧嘩をしたと聴いたら、きっと叱られるよ? それに、2人共あの方に嫌われてもボク知らないから」
Bのその言葉はルシファーとダークスターにとって、トドメの一撃になった。
「そ、それだけは絶対に、なんとしてでも避けねば……」
「そ、そうだな……」
ルシファーとダークスターの2人が、口元を引き攣らせている……。
「すまなかったな、ダージュ……」
「いや、俺様も悪かった……」
2人は素直に誤り合って、なんとかBの言葉で喧嘩は回避された。
「ところで、2人は何をしにこの街へ?」
Bがルシファーとダークスターにそう質問をすると、ルシファーがその質問に応える。
「私はお前の様子を見に来ただけさB。それと、何かあればこの街を守ってやれと、ゼストに頼まれたからな」
ゼスト? 確か、アルガドゥクスの実の弟だって言うドラゴンだよな?
ルシファーとダークスターはそのゼストに頼まれ、何かあればゼオルクの街を守れと2人に言っていたみたいだった。
でも、先生はなんか違和感を感じてるっぽいな。
何故、世界の敵である連中がゼオルクを護るのか。それは何の為なのか。Bは元々俺達を遊び相手にしたくてこちら側に連れて来る事を提案して、今じゃ友情が芽生えている。
それはカズの存在が大きいとも思える。
カズがいなきゃ、Bも凶星十三星座の1人なんだから、この街がどうなろうと無関心だった筈だ。
「和也……だったかな? B。私もその和也に会ってみたいものだ」
「俺様も同意見だ。テメェを大人しく従わせられる程の男なんだ、さぞ強えんだろうからな」
ルシファーとダークスターはカズに興味があるらしく、Bに会わせろと話す。その顔からは不敵な笑みが滲にじみ出ていた。
「はぁ……、こんな事を言ってるけど、キミはどう思う? 朱莉」
Bは溜め息を吐きながら、先生にカズとこの2人を会わせても良いものか聞いた。
カズがこの話を聴いて、この2人を会わせなかったらきっと怒るかも知れない。
かと言って、下手に会わせてそこで戦闘にでもなれば被害は甚大。カズですら負けて死ぬかも知れない…けど。
「Bが会わせたいなら別に良いんじゃねえっすか?」
不思議と、俺はルシファーとダークスターの援護射撃をしていた。
「Bの姉ちゃんとそのオッサンを会わせても平気だと思うなら、別にカズに会わせてやっても俺は良いと思うんすけど?」
俺は更に援護射撃をすると、先生は溜め息を大きく吐き、俺に顔を向けて何かを言おうとしたその時、地響きと共に骸がやって来た。
「骸…」
先生は骸を見て冷や汗をかいた。たぶん、Bと会った時に軽い戦闘があったからそれを心配したんだと思う。
「どうしたの骸〜?」
でもそこで沙耶が骸に声をかけると鼻先を撫でる。けど、骸はどこか何時もとは違う雰囲気だった。
「よう、随分と久しぶりじゃねえか」
「本当に、随分と久しぶりだ。元気そうでなによりだよ」
やっぱり、この2人も骸のことを知ってんのか。
ダークスターは不敵な笑みを見せ、ルシファーは嬉しそうな顔で微笑んでいる。
<グルルッ>
骸は軽く唸って2人に顎でついて来いと言っているのか、来た道を戻り始める。それを見たルシファーとダークスターは椅子から立ち上がり、そんな骸の後を追う。
先生は動揺しながらも、俺達も一緒に後を追った。
向かった先は街の外。そこに、カズと御堂さん達が何かをしていた。
「来たか。悪いな、わざわざ来てもらって。俺が和也。夜城和也だ、宜しく」
真っ先に自己紹介をしたカズに、ルシファーとダークスターは目を見開き、続けて自己紹介をする。
「初めまして、私は凶星十三星座ゾディアックのNo.Ⅶ-Ⅰ、ルシファー」
「同じくNo.Ⅵ、ダークスター」
「その凶星十三星座ゾディアックの2人がなんで此処に来たのか、俺は聴くつもりはねえ。どうせBの事が心配で来たんだろ?」
ルシファーは「はい」と一言言って肯定した。
「来るならもっと早く言ってくれよ。そうすりゃ俺だって久しぶりの再会なんだから時間を作ってやれるのによ」
「だよな。せっかくBが姉ちゃんや仲間と再会したんだから、それなりの時間を作ってやりたかったよな」
カズの考えに俺は賛成して、Bを見る。そんな俺を見てルシファーは不思議に感じたみたいだった。
「君達は我々が怖くないのか?」
「なんで怖がる必要があるんだよ? だって俺達はBとダチだし、Bの姉ちゃんと仲間なら俺達は仲良くしたいと思ってる。昔のことなんてよく分かんねえけど、今はこうして仲良く出来るならその方が良く無えか?」
んなことを言うと、ルシファーとダークスターが目を丸くした。
「クククッ……、クハハハハハハ!! こいつぁ面白え!! まさか人間にも俺様達と仲良くしたいと思ってる奴がいるなんてな!!」
ダークスターが笑い出したかと思うと、突然、俺の胸ぐらを掴んで睨み付けてきた。
「下等生物の分際で何言ってんだテメェ、この場で殺してやろうか?」
圧倒的な殺気と重圧。でも、不思議と俺は冷や汗をかきつつも、そんなダークスターに笑みを崩さなかった。
それには理由があるからだ。
「殺れるもんなら殺ってみろよ」
「なんだと?」
俺は軽く挑発し、ダークスターが更に睨む。
でも殺そうとはしない。
「俺は知ってるぜ? 俺は一度、Bの殺気や重圧を当てられた事がある。だから言える。アンタ……、全然本気じゃねえだろ」
一度だけBの殺気と重圧を直接当てられた事がある俺だからこそ、ダークスターが本気で殺そうとしているとは思えなかった。本気なら、その殺気だけで十分、周りの人間を殺せると思っているから。
「今のアンタはカズが軽く怒った時と同じぐらいなんだよ。って事は、アンタは全然本気じゃねえって事だ。違うか?」
そのまま暫く沈黙が流れる。
そしてその沈黙を破ったのは他の誰でも無い、ダークスターだ。ダークスターが笑うと、続けてルシファーまで笑い始め、今度はカズまで笑い出す。
「クハハハハハハ!! 本当に面白え奴だ!」
俺から手を離してダークスターは暫く笑う。笑い終わると、再び俺を軽く睨みつけた。
「だがこれだけは覚えておけ。俺様達はあの方の御命令とあらばお前達を殺すぞ?」
その時になって、ようやくダークスターの尋常じゃない殺気を全身に浴びた。
ほんの一瞬で体がバラバラにされた様な感覚。それは間違い無く"死"。
「おいダージュ、下手にそれだけの殺気を放つな。奴らに感ずかれる」
ルシファーのその言葉にダークスターが鼻で笑うと、圧倒的な殺気を抑える。
「すまなかったな。だがダージュの言った事は確かに忘れるなよ? 我々はあの方の剣なのだからな」
ルシファーのその言葉に、俺達全員は冷や汗を流しながら頷いた。
そんな中、そんな話なんざどうでも良いって顔をしているカズが、「暇なら手伝えよ」とルシファーとダークスターの2人に言って、今している作業を手伝わせる。
「おい、オメェらは御堂の手伝いをしてくれ」
「お、おう……」
俺達は御堂さんの所へ行き。それぞれ作業の手伝いをした。
ルシファーとダークスターの2人も、まさかカズにこき使われるとは思ってもいなかったのか。最初は驚いてはいたもののなんでかすんなりと手伝ってくれている。
カズ達が作業をしているのはミサイルの発射台。ミサイルはカズが開発した特殊ミサイルだって聞いた俺達は、"創造"とかのスキルを使って、またエグいもんを開発したんだろうなと思った。
そんなゼオルクの街は何時でも来いと言わんばかりの準備を整えている。
戦車、戦闘ヘリ、多くの銃火器とかで街は鉄壁の要塞へと姿を変える。
帝国が国境に到着するまで。
後、4日。
今回遂に、ルシファーとダークスター、2人のゾディアックが登場です。
そして、バルメイアとの戦争。
さて、この戦争の行き先は如何に?
そして今回から暫くの間、後書きを無しにして進めていきたいと思いますので、宜しくお願い申し上げます✨