第8話 噛み合わない?
まさかコイツのダチの女なのかよ?
確かに、そんな感じの指輪をハメていた指が転がっていたと報告は聞いてる。
だが本当にそうなのか? ただの偶然か?
偶然だといいんだが……。
と、俺はそう願ってしまった。
「それと確か。ネックレスを付けてたな。それは自分が気に入って買ったとかって言ってた」
「ネックレス?」
「蝶をデザインしたネックレス」
……なんだと?
玲司が言う、蝶をデザインしたネックレス……。それは俺も確認しているネックレスに酷似していやがる……。
指輪にネックレス。こりゃ……ビンゴだぞおい……。
「そうか。聞かせてくれてありがとな」
まさかここで身元がわれるたあな。
だが一度それがその羽山って娘のものなのか調べてみないとな。後はDNAか。親とDNAが合致すりゃぁ害者の身元が早々に解るにこしたこたあないんだが……。
「ふぅ……、まっ、その娘が今回の被害者じゃなけりゃいいんだがな。まあなんだ。聞かせてくれたお礼と言っちゃぁなんだが、今日の勘定は俺が出させてもらうぜ」
「マジかおっさん!! んじゃ俺、ここの特大パフェに挑戦してみたかったからそれ頼むは!」
「ハハハハハッ! 良いぞ、なんでも好きなもん頼め!」
「っしゃっ!」
ハハハッ、全員目つきを変えやがった。見た目は変わっちまったが、やっぱ中身はまだまだあの頃のガキ共だな。
しかし、まさか憲明が特大パフェを食いたかったなんてな。
「んじゃ、俺もなんか頼むか。そうだ。なあマスター、俺もカフェマキアートを頼んでいいか?」
「カフェマキアートですか? ……わかりました。おひとつとつつでよろしかったですか?」
「あっ、んじゃ二つ。そっちに座ってるおやっさんにも出してくれるかい?」
「かしこまりました。では少々お待ちください」
やったぜ!! ここのカフェマキアートをようやく飲める日が来たぜ!
ん? なんだおやっさん? こっちをチラチラ見て。
はは〜ん、成る程、別に良いってことよ、おやっさんもカフェマキアートを飲んでみたかったんだろ?
その顔の割にカフェマキアートを飲んでみたかっただなんて。おやっさんも可愛いとかあんじゃねえか。ーー
ーー《おやっさんside》
な、なんて奴だ……。
まさかあのガキを手懐けちまうたあな……。
他のガキ共も随分と懐きやがった。ふっ、てえしたもんだよオメーさんはよ。
あん? このヤロー、なんちゅう嬉しそうな顔で親指立ててこっちを見やがる。
っとに。まだまだアイツもガキだなあまったく。だがそこが憎めねえんだよな。
そう思って暫くまた見守る事にしてから数分後だった。
「お待たせしました、カフェマキアートに御座います」
「ん? おおぅ。ありがとよ」
なんだこりゃ? か、か、かふぇまきああと? なんだか知んねえが出されたもんは飲まねえとな。
どれ……………ッ!! なんだこりゃ!! なんて上品な美味さだ!! こりゃ美味え!!
ん? またあのヤロー見ていやがる。なんだっつうんだ。
俺のことは良いから今はこっちを気にしないでガキ共と喋ってろ。
俺は今、静かにコイツを堪能してえんだ。ーー
ーー《御子神side》
へへっ、どうやら喜んでるようだなおやっさん。
こっちを気にすんなって軽く手をはらっていやがる。
まったく、昔から素直じゃねえんだからよ。
「お待たせしました。特大パフェに御座います」
「………は?」
「来た来た来た! これだよこれ! 前から一度食ってみたかったんだよ! あんがとなおっさん!」
「お……おう……」
なんだこれ? なんだこのデカさは……。
これが特大パフェだと? なんつぅデカさだよ! 高さ何センチ、いや、軽く1メートル超えてるよなあオイ!
これはいったい何人前、いや何十人前あるんだよ?!
ウエディングケーキじゃねえんだからもっと小さくてもいいだろうが!!
「流石に俺1人じゃ無理だから全員で食おうぜ!」
「そりゃ1人でじゃ食べ切れる訳ないでしょ?」
「お前1人で食おうとしてなかったっけか?」
「そ、そんなことある訳ねえだろ! 良いから取り分けようぜ!」
び、ビビったじゃねえかこのバカヤローが。これを1人で食うなんて、どこぞの関取でも無理な話だぞ!
「あっ、おっさん達も食うよな? マスター、取り皿あと2つ追加〜」
憲明、オメーいつの間にそんな気を使える奴に育ってたんだ?
俺、なんか嬉しくて涙出そう……。
「そう言えばこの特大パフェを考案したのって確かカズだったよね〜?」
「うん。いつの間にか考案しててビックリしたよね」
………何してんだアイツ、なに考案しちゃってんだよ!!
「これの他に裏メニューとしてカレーも考案してるよね」
「ノリちゃんカレー好きだから週に何回か食べてるよね〜」
「あ? 旨いんだから旨いカレーを食わずしてどうするんよ?」
なんでカレー? いや確かにカレーは美味いよ? 俺も好きだもん。
まぁカレー位あってもいいよな。
「アイツが作ったカレーは俺が言うのもアレかもしんねえけど……。俺はアイツが作ったカレー……す、好きだしよ。世界一、じゃね?」
なにお前、ツンデレか?! これが世に言うツンデレって奴なのか?! やめろ気色悪い!! お前はそんなタイプじゃないだろ憲明!!
「まあたそんな事言っちゃって」
そうだぞ憲明! 一樹の言う通りだぞ!
「素直に自信を持って世界一、カズのカレーが美味い! 大好き! って言えば良いじゃねえか」
なに言ってんだお前も!! おいおいおい!! 憲明の顔が真っ赤になってるじゃねえかよ!! どうすんだよ?!
「でもカズって実際凄いよね。私の楽曲なんかも作ってくれるし。ここの特大パフェに特製カレー。他にも結構あるもんね」
マジか?! ここ以外にも何か考案して出してるのがあるのか?! カズ……なんて恐ろしい奴。
ん? 楽曲?
「なあ美羽、久しぶりにここで一曲歌えよ」
「え? ん〜」
「宜しければ私がピアノで伴奏致しますよ?」
「え? いいんですか? マスター」
「構いませんとも」
「んじゃぁマスターがそう言ってくれるなら一曲だけ歌おうかな」
久しぶりに美羽の歌か。コイツの歌はスゲー上手いからな。ここはこのカフェマキアートを飲みながら聴かせてもらうとしよう。
「なににしようか?」
「ピアノに合うとすればやはりここはあの曲しかないかと」
「あっ、アレ」
「はい、アレです」
アレってなんだよ?
「では、ジャズクラシック風に演奏すると致しましょうか」
「あっそれ良いですね。んじゃお願いしますマスター」
……ほう? このマスターがピアノを引くところなんて初めてだが、なかなか良いじゃないか。だがこの感じの曲をどっかで聴いたような?
……ん? ん? ん〜?!! ーーーー
ーーーー
美羽の歌を聴いた御子神は、その曲が何なのか気がつき、美羽がMIYAだと気づいた。
圧倒的なまでの歌が、彼らの心に響く。
曲のタイトルは、【Blue Star】。つまり青い星と言うタイトル。
力強く歌い、そして時折シャウトを混ぜて歌う。
この曲を作ったのは憲明達の友人で、時折その名が出るカズが、美羽のために考えて作った曲。
その少年は何をやっても天才であり、怒らせたら誰であろうと恐怖を与えたりもする。
そんな中、御子神はすっかりカフェマキアートを飲む事を忘れ、美羽の歌を聴き入り。それから暫く経った後、御子神達は本庁に戻るために店を出る事にした。
「しかし、まさかここで有力な情報を得られるたあな」
「俺もビックリだぜ。取り敢えずこれで仏さんがその羽山って娘に間違いねえかもな」
「ショックだろうな、まさか自分達の周りの人間って可能性が高いんだからよ」
「そうだな……。ところでおやっさん、アレ、どうだった?」
「あ? ……あぁアレか、流石の一言だよまったく」
「へへへ。そいつぁよかった」
「だがあまり調子に乗るなよ? それでオメーは何度も失敗しそうになった事があるんだからよ」
「まあそう言うなよおやっさん」
「ったく。 (確かにオメーはスゲーよ。あの早瀬をああも手名付けちまうんだからよ)」
「また来ようぜ。 (ふん、カフェマキアートを飲めた事をもっと喜べば良いのに、このジジイは。まったく素直じゃねえんだから)」
奇妙と言えば奇妙な程に、この2人が考えてる事が噛み合わない。にも関わらず、何故か話が噛み合っていた。
ここまで読んでどうだったでしょうか?
この後の展開にワクワクして貰えたでしょうか?
さて、ここから先は雰囲気がガラリと変わる内容になっております。
度々出てくるカズが、次の内容から遂に出てきます。
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