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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第3章 蠢きだす闇
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第88話 決勝前の息抜き


 カズに連絡したけど、やっぱ連絡が取れなかった。しかも美羽もだ。


 あぁ、2人でデートでもしてんのか? 邪魔したら悪いな。


 そう思って俺は沙耶に連絡すると、ちょうど一樹とヤッさんの2人と合流したらしく、俺にも連絡しようとしてたとこだったと言われた。

 それで控え室を出て。闘技場からも出た俺は、待ち合わせ場所に行く途中で。


「ねえカズ! 金魚掬い!」


「なんだ? やりたいか?」


「うん!」


 そこにカズと美羽が仲良く手を繋いで、金魚掬いの屋台にいる。

 しかもそこにはセッチが店番していた。


「何してんのお前?」


「仕事」


 周りを何気なく見ると、ほとんどの店に夜城組の組員の人達がいる。


 きっとカズが今回のイベントを主催したから、親父さんが屋台を出して盛り上げようとしてんのか。


「デート?」


 無粋なことを聞くんじゃありません。


 解りきった事をセッチが聴くと、美羽は満面の笑みで頷いた。


「どおりで刹那ちゃんが見当たらないなって思ってたけど、まさか屋台を出してたなんて思わなかったよ」


「組長が盛大にやるぞって」


「あぁそうなんだ、あはははは」


 やっぱりな。


 そこで美羽が周りを見ると、夜城組の組員の人達がやってる事に気がつき、同時に俺と目があって苦笑いを浮かべる。


「仲が宜しいですな~」


「ノリちゃん……」


 2人のデートを邪魔したら悪いと思い、その場から離れようとすると、カズが「勝負するか?」と聞いてきた。

 俺は「しねーよ」って言って行こうと思ったけど、美羽には悪いと思いつつ、「少しだけ2人に付き合うかな」って言って見学した。


「お前の好きにすりゃいいさ」


 カズは笑って許してくれるけど、美羽はやっぱ俺を軽く睨んでいた……。


「まっ、せっかくだからやろっかな」


「ぽい? 最中(もなか)?」


「う〜ん、ぽいで」


「へいまいど」


 美羽はセッチからぽいを受け取り、どの金魚を救おうかと中を覗く。

 俺も覗くと、そこには金魚とは名ばかりの魚が泳ぐ。


「え……、これ……、金魚?」


 困惑する美羽にセッチは親指を立てた。


「これ金魚じゃないでしょ?! どうみてもモンスターじゃない!」


 うん、モンスターだな……。


「金魚」


「いや違うでしょどう見ても!」

「どう見ても違うだろ!」


 俺と美羽の反応にカズが教えてくれた。


「コイツは"パラニス"。どちらかと言うとピラニアに似たモンスターだ」


「ピラニア……」


「その見た目はピラニアだが性格は大人しく、前ヒレが大きいのが特徴のモンスターだ。大きさは5センチにしかならない小型で、餌はなんでも食べる。観賞用としてそれなりに人気があるモンスターだ。俺の部屋にある川にもコイツら泳いでるぞ?」


「えっ?!」


 カズの説明を聴いた美羽は悩んだものの、「取ったらカズの部屋に流れる川に入れても良いか」と言って、金魚の概念(がいねん)を捨てて1匹だけ掬ってみる事にした。

 しかし残念なことに、紙が破れて1匹も掬えない。


「どうする? 1匹オマケするけど」


 セッチがせっかくだから1匹だけオマケすると言うけど、美羽はやめとくと言って、その場を後にしようとした時だ。


「どうした?」


「ご、御報告があり、参上致しました」


 ん? この人誰だ?


 カズがその人の気配に気がついて声をかけると、物陰から現れた。


 なんだか緊張してる?


「今は祭りの最中。余程の事が無い限り、報告は後で聴く」


 セッチがそう伝えるも、その人は余程の事なのか、セッチの耳元に顔を近づけると小声で報告する。


 セッチの部下なのか。


「……え?!」


 どんな報告を聴いたのか、珍しくセッチが目を大きく見開いて驚いた。


「わ、わかった。報告感謝」


 すると部下の人はスッと消えていなくなる。


「セッチ? どうしたんだ?」


「あっ、その……」


 俺が聞くと動揺した目でカズを見ていた。

 何かを伝えたいけど、どう伝えたらいいか解らないって感じだ。


「とりあえず、俺達はこれで行くとするか。刹那、話しは後で聞く」


「は、はい……」


 なにがあったんだ?

 カズも微妙に機嫌が悪くなったな。


 なにがあったか追及しても、カズはきっと、もっと機嫌が悪くなる。そう思って何も聞かず、俺もその場を後にした。



 その後直ぐ、セッチの所にまさかの人物が現れるとも知らずに。


「こんにちは、()()()()()


 ()()()()()()()()()()()()2()()が、この異世界に来ていたことをまだ、俺は知らなかった。


 その後直ぐ、俺達3人は沙耶達3人と出くわしていた。


「なんだよ? お前らも来てたのかよ?」


 カズがそう言うと、一樹はカズと美羽が仲良く手を繋いでいるのを見てニヤニヤしている。


「そう言うお前は美羽とデートかぁ? 仲がよろしい様ですなお二人さん」


 おい、一応俺もいるぞ。


 そう言われたカズはイラついたのか、その場で美羽を抱き寄せると唐突(とうとつ)にキスをする。

 しかも濃密なキスをだ。

 さすがにそれは無いと思って俺はカズに抗議しようとした。


「お、おま?!」


「あ? なんか文句あんのか? あ?」


「お、俺達に彼女がいないからって。み、見せつけやがって……」


 それは俺だけじゃなく一樹とヤッさんも、いきなり目の前でキスをしたのを見てイラッとした。

 しかし、美羽はいきなりのキスで驚き、まだキスに慣れていないからか顔を真っ赤にして固まっている。

 沙耶は沙耶で羨ましそうに見ているし……。


「まっ、お前らはお前らで祭りを楽しめ。行くぞ美羽」


「うん……」


 驚いて固まっていた美羽は、カズにキスをされた事が余程嬉しかったのか。まだ頬を赤く染めながら一緒にその場を離れて行った。


「羨ましい!」


 そしてヤッさんはいつもの如く泣き出す。


「泣くなよヤッさん。俺達もいつか可愛い彼女が出来るさ!」


 一樹も涙目になりながらヤッさんの肩に手を置き、慰め合う。


「まぁなんだ。なんだかんだで美羽とカズがようやくくっ付いた事に、俺はホッとしてるけどな」


「な〜に〜? ノリちゃんそんな事言ってて涙目じゃ〜ん」


「う、うるせっ! 目にゴミが入っただけだ!」


 からかってくる沙耶は置いといて、俺は嘆いている男2人を引っ張りながら焼きそばの屋台に入って行く。

 そこで焼きそばを買い、人混みから抜けると静かな場所で話し合うことにした。


「でも美羽の奴、マジで強かったなぁ」


 ヤッさんは美羽との対戦を振り返り、一樹が質問をする。


「実際にどうだったんだヤッさん?」


「ん〜、なんて言うか、まるでカズみたいだった」


 それを聴いて俺達全員が冷や汗を流す。


「だってさ、目の前に美羽がいるのに急に後ろを取られたんだよ? そんなの、あのカズの速さじゃなきゃ真似出来ないって」


 それを聴いた俺達は疑問を感じて、俺がヤッさんに話した。


「何言ってんだよヤッさん。あの時、お前の前には()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「……は?」


 俺は控室で、ヤッさんと美羽の戦闘を画面越しに見ていた。そしてそれは沙耶も一緒で、別の控室で同じ様に見ていたって話す。

 俺と沙耶はヤッさんに、前には()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()と説明する。

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってな。

 それを聴いたヤッさんは確かに目の前には美羽がいたって言って混乱する。それなのに真後ろに美羽が突然現れ、短剣を首に当てられた瞬間、目の前の美羽が消えたって。

 最早訳が分からないとヤッさんは頭を抱えた。


「でもヤッさんの話は貴重だよ〜ノリちゃん」


 沙耶は冷や汗をかきながら俺に目を向ける。


「私達が見たのと、ヤッさんが直接見ていたのとでは対策が変わってくるよ?」


「そうだな。ましてや、美羽は昔から身体能力は俺達なんかよりも良かった」


「そうだね。だから護身の為にって美羽はカズに頼んで、()()()()()()()()()()()()()()()


 俺と沙耶は昔の事を思い出して話す。同時にそれを思い出して、今の美羽がどれだけ強いのか再確認出来る。

 美羽は身体能力が高く、武術を習っていた経歴を持っている。

 そこで沙耶が言った、()()()()が関わってくる。

 その人の事は取り敢えず今は良いとして。正直、俺達にとって今の美羽は不気味な存在になっていた。


 一気に背筋が寒くなってきたな……。



 ……その日の夜。


 他にもゼオルクの街にいちゃいけねえ2人が来ていたのを、俺達はまだ知らなかった。

 その2人は黒い軍服を着用し、1人は黒い軍帽を被っている。


「なんだか騒がしい街だな」


 黒い髪はオールバック、口元と顎には整えられた髭のある、目つきの悪い男。

 身長はだいたい190センチ。体型は痩せ型だが体格が良い、見た目は30代後半。


「今夜は祭りだそうだ。我々がこの街に容易に入れたのもそのお陰だ」


 もう1人はどこか中性的でクールビューティーな女性。

 黒髪のショートヘアーで、前髪で左目が完全に隠れているのと、右側の顔には目の上から大きな逆十字の黒いタトゥー。

 身長は170センチ程。体型はスリム。20代前半ってところか。


「バルメイアと戦争するって言うのに、呑気な連中だぜ」


「何を言うんだ貴様は。どうして祭りになっているのか知らないのか?」


 しかめっ面で言う男に対して女は睨む。


 俺達はこの2人組と後から出会うことになる。


さて、ここにいてはいけない2人とはいったい、誰の事なんでしょうかね?

ではまた次回をお楽しみに♪

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