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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第3章 蠢きだす闇
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第82話 プロローグ


 ー 場所不明 ー


 空は暗雲に覆われ、どことも知れぬ古城の廊下に靴音を響かせる人物がいた。

 黒いつば広ハットを被り、肩まであるパーマされた様なロングヘアー。白いマフラーを首から掛け、黒い超ロングコートを羽織った、まるでどこかのマフィアのボスの様な出立ちの人物が葉巻を(くわ)えて歩く。

 古城の真上で雷が光る事で、その人物が男だと分かる。

 男の目つきは鋭く、口髭と顎髭があり、歳的には40から50代だろうが、もう少し若く見える。

 男は廊下の先にある部屋のドアを開けると、その空間は真っ暗な暗闇で何も見えない。

 しかし、男がその部屋に入ると、暗闇の中にいる誰かに話しかけた。


「首尾は?」


「まずまずじゃないか?」


 男の質問に、暗闇の中から女性が冷静そうな言い方でそう答える。


「バルメイアが戦争を売ったそうじゃないか」


「そうみたいだな。馬鹿な連中だ、あの街には手を出したらマズイ相手がいると言うのに」


 すると今度は別の女性が男の質問に答える。


「報告では以前にも手を出した馬鹿がいると聴いたが?」


「そっちの件に関しては俺の方で現在調べさせている。現在解っている範囲だと、連中は"邪竜教"と名乗ってる様だ」


 そう話すのはどこか男口調が強い女性だ。


「邪竜教? 何を企んでいるか知らんが見つけ次第叩き潰せ」


「了解した」


 そこで雷が光った事で、その部屋には他にも数人いるのが見えた。

 皆、黒い軍服に黒いコートを羽織っている。


「約束の日は近い。誰であろうと我々の邪魔をする者は決して許さん。それで向こうはどんな様子だ?」


 男は男口調の女性へと視線を向けてそう尋ねた。


「フッ、問題無い。バルメイアのせいでかなりマズイ事になっていた様だが今はどうにか落ち着かれた御様子。此処へ来る前にちょっと見て来たが、なんとか大丈夫だろう」


「そうか、気づかれた様子は無いな?」


 その質問に、男口調の女性は黙ってしまい、(しば)しの間沈黙が訪れる。


「どうした?」


 男がそう聴くと、男口調の女性はまるで震えているかの様な口調になって再び口を開いた。


「正直言うと……気づかれた……。間違い無い……」


「そうか……。それで? 奴はどうしてるんだ? 会ったのだろう?」


「今は呼び名を変え、共に行動してる様だ。フッ、初めは昔より丸くなった様に見えたが違った、より研ぎ澄まされた牙と爪を隠し持っていたよ」


「ほう? それは再会するのが楽しみだ」


 話を聴いていた他の男がそう言うと、若干だが微笑でいる様に感じる。


「だが再会するにはまだ早い。再会を楽しみにしているのは何もお前だけじゃ無い、くれぐれも早まった行動は(つつし)む様にな」


「んなこた分かってるさ」


 黒いつば広ハットを被った男に、別の男はそうたしなめられる。


「それに許可無く暴れて目立つ様な事も今はするんじゃないぞお前達。下手な行動で御迷惑をお掛けする訳にはいかん。我々の行動は全て……、分かっているな?」


 男の言葉にはどこか重みが感じられる。


「もし、人間達と手を取り合うと言われるのであれば我々はそれに従う。滅ぼせと言われるのであれば我々は全力で滅ぼす。我々は剣だ。それを忘れるな」


 暗闇の中、その部屋にいる者達は黙って頷いた。



 ……その頃。


 ー バルメイア城 ー



 王都バルメイア、通称"帝国"にあるバルメイア城の地下に存在する広大な実験場では、多くの人間達が泣き叫びながら死んでいた。

 そんな状況を上にある橋の上から眺める1人の兵士の後ろから、とある人物が話しかけた。


「"ヘカトンケイル"はどうなってる?」


「ん? こ、これは"ジュニス"様! はっ! 現在! 順調であります!」


 兵士が後ろを振り返ると、そこにはジュニスがゲスな笑みを浮かべて立っていた。

 その両手には美しい女性を2人抱き抱え、これ見よがしに2人の胸を揉みしだく。

 だが、よく見るとその2人はどうやら奴隷の様で、目の前で行われている事から目を背け、いかにも嫌そうな顔を見せている。


 現在、そのヘカトンケイルはいったいどれだけの人々が犠牲になったのか不明だが、その大きさは今では30メートルは超えようかとしていた。


「おいおい、ちゃんと見ないとダメじゃ無いかぁ。なぁ? ……お前、もうつまんないから良いや」


 ジュニスがそう言うと、右手に抱いていた女性の背中を強く押し、兵士がその女性が橋から落ちない様に両手で捕まえた。


「ヘカトンケイルの材料にでもなれ! ヒャハハハハハハハハハ!」


「そんな! 助けて! お願い!」


「あ〜? それが人に頼む態度なのか?」


 ジュニスがそう言うと、女性はその場で土下座する形でお願いをする。


「お、お願いです、どうか、助けて下さい……」


「ん〜どうしよっかなぁ? んじゃよぉ、お前、俺の事心から愛してるって言えよ。俺がそれで心を動かされるのであれば助けてやる」


「愛してます! 心の底から貴方様を愛しております! だからお願いです!」


 女性は涙を流しながら必死で笑顔を作り、頭を下げてジュニスにとりつくろうとする。


「いいよ」


 ジュニスのその言葉に、女性が明るい顔で頭を上げた瞬間。


「なんて言う訳ないだろうが!」


「ゔぁっ!」


 ジュニスは女性の顎を力一杯蹴り上げ、橋から蹴り落とした。


「イヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


「ヒャッハハハハハハハハハハハ!! そのままヘカトンケイルに取り込まれたまえ!」


 橋の下にいるヘカトンケイルに頭からぶつかり、意識を失った女性はそのままヘカトンケイルに捕まるとそのまま飲み込まれて行く。

 それを目の当たりにしていたもう1人の女性は歯を鳴らして震えながら泣いていた。


「安心しなよ、僕をもっと愛してくれるなら助けてあげるからさ」


 そう言ってジュニスはまたゲスな顔で笑い、女性の胸を両手で揉みしだく。


「待ってろよあの忌々しいクソヤロー。まさかアイツがあの"黒竜"だったなんてよ、誰が知るかって言うだよ。あぁ、早くアイツの泣きっ面を拝みてえなあ! ヒャッハハハハハハハハハハハ!!」



ひっそりと、裏で動き始める闇。そして、バルメイアではあのジュニスも新たなヘカトンケイルを作っている最中。

バルメイアが動きだすのと同時に、裏で動いている闇はどこで出てくるのでしょう。

ではまた次回をお楽しみに!

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