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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第2章 哀しみ
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第81話 異世界喫茶


 そこは街の一角。

 俺達はカズに連れられ、とある店の前までやって来ていた。

 看板には日本語で店の名前が書かれてもいる。


「カズ? ここはまさか……」


 俺と一樹はその看板を見て顔を赤く染め、ヤッさんは興奮した表情で早く入ろうとほざきやがる。

 ちなみに美羽と沙耶はカズの後ろを追って、普通に中へ足を踏み入れる。

 そこで、俺達男にして見れば刺激的な光景が眼前に広がっていた。


「「御帰りなさいませご主人様~」」


 多くの種族の女性達が胸を強調したとある格好で出迎えてくれる。

 人間、エルフ、キャット・ピープル、ゴブリナ、リザードマン、ハーピー、ラミアと多種多様。

 ここの店の名は。


 "メイド喫茶・モニカ"


 そう、ここはメイド喫茶!!

 多くの女性が胸を強調したメイド服に身を包み、俺達を出迎えてくれたんだ!

 すると、メイド服の女性達がカズが来た事に気づくと、エルフのメイドさんが緊張した面持ちでなんとか微笑みを崩さず、席へと案内してくれた。


()()とBは?」


 カズがメイド姿のエルフさんにそう声をかけると。


「はい、今は休憩を取っております。お呼び致しましょうか?」


「いや、休憩してるなら休憩をちゃんと取るべきだ。店長は?」


「店長は今来ると思いますので少々お待ちください」


「分かった」


 そこでカズと俺、一樹とヤッさんは取り敢えずコーラ、美羽はオレンジジュース、沙耶はピーチジュースを頼むと、エルフのメイドさんは厨房へと向かう。


 いやそれ以前に、なんか、様子がおかしい……。まさか……。


「お前、まさかここのオーナーだったりするか……?」


 すると「あ? 言ってなかったか?」とほざきやがる。

 俺達はもう、呆れるしかねえ……。


「ここはメイド喫茶だが他にも幾つか店を構えてる。行ってもお前らはまだ未成年だから摘み出されるけどな」


「どんな店だよそれ……」


 未成年と言うワードを耳にしてもしやと想像しちまう……。


「あ? んなもん決まってんだろうが」


 俺達男3人が顔を赤く染め、生唾を飲み込むと。


「"クラブ・シンデレラ"。美人なお姉ちゃん達が男の話を聴いてくれたり酒を飲む落ち着いた雰囲気のある店だ。"ストレリチア"。可愛いお姉ちゃん達とワイワイ騒ぎながら楽しく酒を飲んだりお姉ちゃん達と会話が出来るキャバクラ。他に飲食店もやってる」


 マジっすか……。


「お前……」


 まさかそんな店を経営してるとは全然知らなかった俺は言葉が出なくなった。

 しかし、美羽が微笑んだまま若干怒っているように見えるのは俺だけか? いや、気のせいじゃない。


「お店の子にまで手を出してないよね?」


「流石に出す訳ねえだろ。だが恋愛は自由にしてあるが、店に被害が出る様な事はするなと言ってある。そんな事があったら即刻クビだと伝えてある」


 被害とは恐らく店の利益等の事だろ。もし女の子とお客との間にトラブルが生じ、お客が減れば利益が減る。それは女の子達に給料を出せなくなるし、自分に入ってくる利益が無くなるのでそれはカズが困る事になるんだろ。


「もし、お客が女の子となんらかのトラブルになれば何とか対処しなきゃなんねえ。だが、こっちが悪く無いのに一方的に言われたりするのは面白くねえからな。その時は全力でそいつを叩き潰す」


 そう言うけどよ、店のオーナーがカズだとお客さんが知ってるなら誰もトラブルを起こさないだろ……。


 そこへ俺達6人の元にジュースが運ばれ。運ばれて来たジュースを飲んでいると、奥から1人の人物がやって来た。


「お待たせしまして申し訳ありませんオーナー」


 その人物を目にした俺達男3人は、一瞬で(とりこ)になった。

 その人物はなんとも(なまめ)かしい、美しいサキュバスのお姉さんだったからだ。


「いや、繁盛してて忙しいのなら仕方ないから良いよ」


「ありがとう御座います、オーナー」


「こちらはこのメイド喫茶の店長をしてもらっている、サキュバスの"ライラ"だ」


「サキュバスのライラです。オーナー率いる"夜空"の皆様の事はよくお話を耳にしております。どうぞ宜しくお願い致します」


 それはここに来る男性客が"夜空"の話をしているからなんだろ。

 ライラさんが自己紹介してくれたから、俺達がしない訳にいかない。俺達も自己紹介をして、それが終わるとすぐさまカズがライラさんに話しかけた。


「先月の売り上げ成績を見たけど、なかなか良い感じで伸びてるじゃん」


「はい、女の子達もオーナーに恩返ししたいと思って頑張ってくれております」


「別に恩返しなんて良いのによ。たまたまあの子達はここの店で働く事になっただけなんだし」


 テレ臭そうな顔をしながら店内で働くメイド姿の女の子達を眺めるから、俺も店内を眺めた。


 みんな……、めちゃ可愛い……。


「恩返しって、何かあったんですか?」


 美羽がライラさんに質問すると。


「それは私達全員が、元々は奴隷にされていたんです。そこをオーナーが乗り込んで来られ、助けられたんです。ふふっ、あの時、私はオーナーの夜遊びの相手になる事でしか恩を返せないと思っておりましたが、今ではこうして働く事で御恩を返せていると思うと、とても嬉しいものです」


 なにー! ライラさんを抱いたのかテメー!!


 でもライラさんは本当に嬉しいんだろ、その微笑みには嘘が全然見えない。

 するとそこへ休憩が終わったのか、ナッチとBの2人がメイド服の姿でやって来た。


「可愛い!」


 それを見た美羽にそう言われ、2人は恥ずかしそうにしているけど、確かに可愛い……。


「どうだ? 調子の方は?」


 カズが2人に声をかけると、カズと美羽が手を繋いで座っていることに目がいった。


「けっ、結局お二人はそ、その……、お付き合いする事になったんでぷか?!」


「「(噛んだ)」」


 ナッチが言葉を噛んだ事に、全員が温かい目で微笑んだ。


「は、はうぅぅ」


 恥ずかしそうに顔を真っ赤に染めて、下へ顔を(うつむ)かせたナッチだけど。


「まあボクは一応こうなるかもと話は聴いていたから問題ないけど。なんかここがモヤモヤする様な?」


 Bは事前に付き合うかもってカズが言ってたらしいから、それなりに覚悟はしてたんだろうけど、どうやら胸にモヤモヤっとした感情があるみてえだった。


「心配しないでよBちゃん。Bちゃんは今まで通りカズに可愛がって貰えば良いじゃん。まっ、私はそれ以上に可愛がって貰うけどね」


 美羽が満面の笑みでそう言うけどよ。

 ぶっちゃけ、さりげなくBに自慢したい様に聞こえるぞ?


「ほほう? だったらその時はもっと可愛がって貰うとしようか」


 なんかBから若干の焦りが感じるな。


 そこでカズがBを呼ぶと、右太腿(ふともも)にBを座らせ、右腕をBの首に回すと今度は顎の下などを優しく撫で始めた。


 な、……なにしてんのお前?


「B、あんまし美羽の言葉を間に受けるな。美羽が良いって言ってんだからお前の事もちゃんと可愛がるからよ」


「は、はい……、ご主人様……」


 コラコラコラ。コラコラやめい!


 Bが嬉しそうに頬を赤く染め、目がトロンとさせて喜んでいる。


「カズ、私も」


 美羽までカズの左太腿(ふとも)に座り、Bと同じ事をしろと要求。

 カズは両手に抱える花を愛でる事になった。


 なんだこれ……。

 なにを見せられてんだ俺達は?


 そこにもう1人、その中に交ざりたそうな顔を沙耶がしていた。


「沙耶さん沙耶さん、あの中に飛び込むのは危険かと」


 でも一樹が小さい声であの中に飛び込むのは危険だって沙耶に伝える。


「良いもん今じゃなくても。絶対に私もカズの女になってやるんだから!」


 そう言いつつ、今にも飛び込みたいって言いたげな顔をしてるじゃねえか。

 しかも少し気が立ってるしよ。


「それじゃ和也さん、これから寝る時は3人一緒ですか?」


 ちょっとBさん?

 なんだかとんでもない爆弾を投下しやがったんですけど?


「は? 何言ってんだ? 何で3人なんだよ?」


 カズは意味を分かってない。


「え? 寝る時はボクと美羽も一緒なんじゃ?」


「……は?」


 まだ理解していない。


「ボク達2人を同時に可愛がってくれるんじゃないんですか?」


 そこでようやくカズは理解した。

 カズはBの顎を軽く持つと、顔を近づかせる。


「B、お前達2人を同時に相手してやりてえけど、相手するなら一人ひとりを大切に感じながらの方が良くないか? 俺もお前達を相手にするならその方がタップリと可愛がれる。その方が集中出来るだろ?」


「は、はい……」


 こんなところでする話しじゃねえだろ!

 っと口に出せない俺はどうせチキンだよコノヤロゥ……。


 あと(わず)かな距離で唇が重なるって距離でカズがBにそう言うと、Bは唇を前に出した。

 だがしかし、ここはメイド喫茶だ。


 コラコラコラコラ、メイドさんやらお客さんが真っ赤な顔して見てるから! そうゆう事は帰ってからしましょうね!


 でも流石のカズでもそこまではしなかった。


「うぅ……」


「今は一応仕事中だろ? それに周りのお客に見られたらどうすんだ?」


 既に見られてるんですけどね!


「あっ、オーナー、それは大丈夫です」


 なんだかライラさんがものスッゴい笑顔でBの肩を持つ。


「Bちゃんがオーナーと関係を持っている事は周知の事実ですし、なによりそのBちゃんはここに来て下さるお客様にとってメイド姿の女王様としてかなり人気があるんです」


 なにやら聞き捨てならないワードが耳に入りましたよ?

 メイド姿の女王様? ん?

 いったいそれはどう言う事なのか興味が湧いて来ますねはい~。


 ライラさんは実際にその人気ぶりを見て貰う為に、Bを他のお客さんの所に着かせてその接客風景を見せてくれる事にした。

 まずBが向かったのはキャット・ピープルのメイドさんが接客している男性客だ。


「ねえ、何食べてんの?」


 Bが聴くとその男性客はオムライスをキャット・ピープルのメイドさんに食べさせて貰っている最中だ。


「お、オムライスです!」


「へぇ、美味しそうじゃん。ボクも食べさせてあげるよ」


 するとBはキャット・ピープルのメイドさんからスプーンを受け取り、男性客に食べさせ始めた。


「ほらもっと口を開けて、そんなんじゃ入らないじゃないか」


 Bは男性客の口を大きく開けさせると、オムライスの皿を口に付けさせて、スプーンでどんどん入れて行く。


「ほらほらもっともっと。食べっぷりの良い男がカッコいいとこを見せないでどうすんのさ。ねえ?」


「はい、Bちゃんの言う通り、食べっぷりの良い男の人はカッコいいですニャ」


 キャット・ピープルのメイドさんは凄く良い笑顔でBの言う通りだと言う……けどよ……。


「あが、あんあいあふ(がんばります)!」


 男性客が涙目になりながら食べてますけど……?


 なんとか食べ終えた男性客は……、そのまま力尽きた……。


「おや?」


 次にBが目をつけたのは人間のメイドさんに接客されている、眼鏡(メガネ)を掛けた冒険者風の男性客。


「やあいらっしゃい。昨日も来てたね」


「あ、こここここここんにちはBちゃちゃちゃちゃん」


 なんかものスッゴく動揺してません?


 でもよく見ると、眼鏡の男性客がBを見るや否や、頬を赤く染めて緊張している。


「あああああのびびびびBちゃん」


「ん?」


「よっよっよかっかっかか」


 眼鏡の男性客は1リットルは入っているであろうジュースをBに見せた。

 そこにはカップルストローが差してあるじゃねえか……。


「なんだい? 一緒に飲めって?」


 そう聴くと、眼鏡の男性客は何度も(うなず)く。


「良いよ? でも一口だけだからね?」


 そして2人がカップルストローを口に(くわ)えた瞬間。

 ……Bはジュースを本当に一口だけ飲んだ。いや、()()()()()……。


「ご馳走様」


「アッ………」


 眼鏡の男性客は声にならない声を出し、口を大きく開けて涙を流す。

 そしてBはそのまま別のお客へと足を向ける。


 哀れすぎる……。


「Bちゃんさん!」


 次に向かったのはちょっと厳つい風貌の若い男性客。


「やあ、来てたのかい?」


「そりゃ来ますよ! なんせあのBちゃんさんがメイドのバイトをしてるんすからね。シフトはばっちし把握させてもらってますよ!」


「あっそう」


 流石のBはどこかストーカー気質漂うこの男に若干引いた。


「Bちゃんさんマジでパネぇっすよ! マジで可愛いっす! あぁ、カズの兄貴が羨ましい過ぎる!」


 どう見てもカズより歳上だろ……。


 でもカズを尊敬しているみたいだ。


「でもそんなカズの兄貴に俺も一度は抱かれてみたい……」


 いや……、これは尊敬と言って良いのか?


「気持ち悪いからあの方をそんな目で見るな、頭を握りつぶすよ?」


「あ……ああ……」


 いや、もう意識が飛んでますよ? その……、すでにもう……、片手で握り締めてるんですけど?


「あの方でイヤらしい想像をした罰として料金倍額ね?」


 Bは目を見開き、怖い顔でその男にそう伝えると手を離し、男は体をビクビクと痙攣(けいれん)させながらどこか幸せそうな表情で気絶している……。


「B様! わ、私にもどうかご褒美を!」


 そんなBにオークの男性客が床を四つん這いで迫った。


「だから気持ち悪いって言ってるだろ!」


「ブヒッ!!」


 Bは迫り来るオークの男性客の頭を踏みつけると、暴言を吐き始めた。


「気安くボクの名を口にしないでくれるかい? それにそんな気持ちの悪い事はここではするなって言った筈だよ? なにかい? 君はそんなに頭が悪いのかい? まるでニワトリみないに3歩歩いたら忘れるのかな? そんなにご褒美が欲しいなら他の店に行ってよ。まっ、ボクはそんな店には行かないしやりもしないけどね? ボクは和也様に可愛がって貰う為にここにいるんだ。その邪魔をするなら容赦しないよ?」


「ブッ、ブヒィ……、さ、最高です。ブヒィ、ブヒィ」


 何もしないと言いつつオークの男性客の頭を踏みつけ、逆にそれで興奮して喜ばれてますよ?

 ……うん、ここはSMクラブかな?


「まったく。なんでボクが来ると変な奴しか来ないんだい?」


 お前の言動がおかしいからだろ……。


 そんな様子を黙って見ていたカズが口を半開きにしていると。


「ら、ライラ? これ……、Bが来ると毎回こうなのか?」


 ライラさんに思い切って聞いた。


「はい。皆さん大変喜んでおられまして、今いる(ほとん)どのお客様は皆、Bちゃんを指名されてるお客様です」


 嘘だろ?

 ライラさん、なんて良い笑顔でそんな恐ろしいことをいっちまうんだ?


 カズは聴きたくなかったフレーズだからか、ゲッソリとした顔になると何も言わなくなった……。

 俺達はもう笑うしかない。

 でもそこで、ライラさんがカズにトドメの一撃を放った。


「Bちゃんが来てくれる様になってから売り上げがグンと伸びました。本当にありがたいです」


「あっ、そおぅ……」


 それが良いのか悪いのか解んねえ。

 たぶん……、悪いんだろうけどよ。


 カズはこの後、Bにこの店の手伝いを辞めさせた……。


ベヘモスがやってることはもはやSMと言っても過言じゃなかったでしょう。

そんなベヘモスのお陰? で、開発されていた御客様。

はい、そう言った事は違うお店でしましょうねって感じですね。

さて今回はここまで。また次回、宜しくお願い申し上げます。

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