第80話 最強カップル爆誕
「おっ、今日は誰もいないのか。んじゃ、久しぶりにやるか」
訓練所に到着すると、カズは眉を八の字にしてニヤリと微笑み、寒気と共に俺達全員鳥肌が立った。
それはカズから言い知れない空気が出始めたからだ。
するとカズが闇の衣を纏い始めると、闇が曼蛇へと変わり、背中の闇がゼイラムへと徐々に変わって行く。両足の太腿からもゼイラムが現れると、カズは手首を動かして俺達を挑発。そしてただ一言。
「来い」
それは全員でかかって来いって言ってるんだ。
俺達は寒気を感じながら唾を飲み、緊張しながらカズの周りを少しづつ囲んで行く。
俺はカズの正面。美羽は右手側。一樹はカズの真後ろ。ヤッさんは左手側。沙耶は俺の真後ろの位置に立ち、何時でも動ける様にそれぞれの武器を握り締める。
あぁ、やっぱ凄えなコイツ……。あのヘカトンケイルが可愛く思えて来る。
正面に立った俺は、カズから出る独特な雰囲気を感じてそう思った。
そしてカズが両手を下にぶらりと垂らすと、両手の指に力を込めて鈍い不快な音を鳴らし、その音が静寂に包まれた訓練所に響き渡った後。
俺は叫びながらカズに向かって走り出した。
「うおぉぉぉおおおおお!!」
そんな俺に2本のゼイラムが襲ってくる。なんとか剣で弾くが、その2本のゼイラムが再び襲う。
美羽も2本の大きなナイフを持ち、2本のゼイラムと高速の速さで斬り合っている。
沙耶は遠くからアーチェリーで風で使った矢を何度もカズを狙い撃ちする。
「風の矢か、なかなか良いしお前らしいな。これなら普通の矢が無くとも次々に攻撃する事が出来る。だが残念」
カズは沙耶が放った風の矢を軽々と避けた。
「当たらなければ意味が無えぞ? 沙耶」
「甘く見ないで欲しいな〜」
沙耶はカズに対し、不敵な笑みを見せてそう言うと。カズが避けた風の矢が軌道を変えて再び襲う。
「成る程、追尾能力付きか」
そこで沙耶はすかさずガルを投げ、カズは思わずガルを左手で受け止めた。
「あ……」
「"ボム"!」
ガルを中心に大爆発が起こり、カズが炎に包まれる。その威力は家一軒ぐらい簡単に吹き飛ばせる程の威力。
「流石のカズでもガルちゃんの"ボム"をまともに受けて無事じゃないでしょ〜。ね〜ガルちゃん?」
<バ、イ……>
ガルはいくらか話せるようになっていた。でもまだぎこちない。
沙耶はカズにダメージを負わせたと思っているが、俺はそうは思えなかった。
「まだまだだな沙耶」
爆発の炎が晴れると、そこにはやっぱりカズが立っている。
しかも無傷で。
「うそ……」
沙耶はそんなカズを見て口元を引きつらせ、笑顔が徐々に崩れた。
「だが今のはなかなか良かった。憲明、美羽、一樹、ヤッさんの4人でゼイラムをなんとか引き付け、風の矢で俺を追跡攻撃させているかと思えばガルを投擲。実に良い戦略のひとつだと言える。俺じゃなければ死んでたな、クククククッ」
そう言って笑うお前は十分に化け物だよ。
爆発の威力は家一軒を吹き飛ばせる。それは、普通の人を含んだ動物ならバラバラに吹き飛んでる威力さ。それなのに無傷で立ってるんだからよ、そう思う他にねえだろ。
そこへヤッさんがハンマーを振り上げ、高くジャンプしてカズに振り下ろすけど、それすらもカズは片手で軽く受け止めた。
「おいおいヤッさん、そんな安直な攻撃が俺に通用すると思ってるのかよ?」
「ははっ、いぃや、全く思って無いね。なんせ狙いが外れてるからね」
「あっ?」
ヤッさんは冷や汗をかきながらも、上手くカズが引っかかってくれた事に笑みを溢す。
その理由が真後ろにいたからだ。
「美羽か」
そう、美羽だ。
美羽はカズの隙を見計らい、気配を殺して間合いを詰めていた。
「はあぁ!」
美羽はナイフで何度も斬りかかる。その動きは実に見事な動きだ、カズは両手に装備したデュアルでガードしつつ体を捻ってナイフを避ける。
でも、ただ美羽のナイフ使いが上達しただけじゃねえ。美羽はナイフ攻撃の他に、蹴り技を織り交ぜてカズに攻撃していた。
足払いからの回し蹴り、ナイフ攻撃、サマーソルトキック、カズに突っ込むとナイフによる大回転斬りから首元を狙って裏回し蹴りと言ったコンビネーション攻撃を立て続けにする。
しかし流石はカズだって言いてえ。美羽の攻撃をことごとく避けるかデュアルでガードしているんだからよ。
「美羽、今の動きは今までよりかなり良かったぞ!」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、当たんなきゃ意味ないよね。"未来視"を使ってカズが次にどう動くのか見えているのに、全然通用しないんだもん」
美羽は"未来視"のスキルでカズがどう動くのかが見えていた。それでも擦り傷ひとつつけられない。
やっぱ化け物だよお前!
美羽の動きより、カズの動きが速いから全然追いついていけてねえんだ。
「でも……、私も囮だったら?」
「あ?」
「バーニングーー!」
美羽に囮になってもらって、俺が両手を前にかざしながら叫ぶと、カズは俺に顔を向けようとした。
「フィストオォォォォォォ!!」
同時に、俺の両手と両足は炎に覆われた状態でカズに打撃を繰り出す。
"バーニングフィスト"。それが、俺が手に入れた攻撃魔法の技で、カズが俺の攻撃技をガードしようとすると。
「"ウォーター・プリズン"!」
一樹が水の魔法でカズを水の牢獄で動きを止めさせる。
"ウォーター・プリズン"は水の鎖でカズの両手両足に巻き付いて動きを封じ、更に凝縮された水の中に閉じ込める。そこへ俺が"バーニングフィスト"で攻撃だ。
でもカズは冷静に判断し、ゼイラムで全ての攻撃を防がれた。
「ちっ! やっぱそう簡単にはいかねえか!」
カズは俺に対し、それでお終いかと言いたげな顔で微笑むと、ゼイラムで一樹の"ウォーター・プリズン"を難なく破壊して出てくる。
「あぁあ、ずぶ濡れじゃねえか」
そう言うと一樹の腹にゼイラムがめり込んだ。
「カハッ……」
「だけどまあまあだな」
「チッ!」
そこから先は何時もの如く、俺達は軽く戦闘モードになったカズにこれでもかと言わんばかりに叩きのめされた……。
ゼイラム4本だけでも圧倒的強さだったのが、8本になるとそれは圧倒的を通り越して凶悪だ。
それでも最初の頃に比べ、カズに一方的にやられる様な事は無くなり。俺達はカズとの戦闘訓練をする事で、自分達の実力が高くなっているのを実感していた。
カズとの実力はまだまだ差がある。それでも着実に進歩していると言う事が、俺達の更なる飛躍を後押ししてくれている。
戦闘訓練が終わる頃にはカズ以外の全員が疲れ、地面に寝っ転がったり座ったりしていた。
「まっ、取り敢えずこんなもんか。お前ら、自分だけの技をもっと作って磨け。そうだなぁ……、ひとつ、お前達にある物を見せてやるか」
そう言うとカズから徐々に不気味な気配がする闇が広がる。
「なあ、お前らは闇が恐ろしいか?」
その質問に、俺は「いや、特には」と答えると。
「んじゃ何故怖くない?」
なんの為に聴いてくるのか分からない。けどそれには何か理由があるからこそ、俺達は真剣に考えたけど、カズはその答えを話した。
「昔の人々は闇を恐れた。だが、今はお前が言うように、人々はあまり闇を恐れなくなった。んじゃ何故、昔の人々は恐れ、今は恐れない? その答えは光。昔は夜が来る度に太陽の光が消える事だけで恐れた。そこへ足元を照らす光があるだけで心を落ち着かせる事が出来たし、光がある事で食事や仕事をまだする事が出来た。だが今ではあらゆる所に光がある。次第に人々はそんな環境で暮らす事に慣れ、闇を恐れなくなっていった」
そう話しながらカズの周りに広がる不気味な闇から、背筋が凍る様な気配へ一気に変わる。
そこで俺は先生の言っていた言葉を思い出した。
『実体の無い闇に実体を与える』
それに、闇の衣を"変換"の力で火薬に変えることも出来ると聞いて全身火薬庫だとも思った。
はっ……、先生……、確かに先生の言って通り、コイツの闇は俺達が思ってたよりも……、とんでもねえくらい怖ぇーよ……。
「今では闇属性魔法の殆どが補助魔法だ。だがお前達は聴いたよな? 俺は闇に形を与える事で攻撃する事が出来る事を。それは何故か? 闇の衣と言う特殊な能力を持っているからなのか? いや違う。人々は闇を恐れる余りに光に頼り、本当の闇の力を忘れてしまったからだ」
闇がカズの足元へ降りると、まるで影の様な円形へと広がる。
「美羽。お前も俺と同じ闇属性を持っている。だったら本当の闇って奴を教えてやる。これが、本来あるべき闇魔法であり、俺が作り出した攻撃魔法だ」
ー "ダークネス・ソード・ダンス" ー
足元の闇が不気味に光ると魔法陣が現れ、そこから黒い剣が15本、出てくる。
「この剣は闇で作られた闇の剣。俺が解除しない限り、これらは形を崩さずに敵を斬り続ける」
闇の剣は切っ先を下に向けた状態で宙に浮き、カズの周りに浮遊している。
やっぱレベルが違いすぎだ……。
「つまり俺は今、ゼイラムの他に闇の剣15本を同時に操れるって事だ。俺が何を言いたいか分かるな?」
十分理解出来る。理解する事が出来る俺達は冷や汗を流しながら頷くことしか出来ない。
「これはまだ序の口だ。俺が本当に見せたいのはこれだ」
闇の剣が5本ずつ、円を描く様にして集まると、切っ先を合わせて空へと向ける。
5本の闇の剣の切っ先を中心に、強力な力が不気味な光を放ちながら集まり始めた。
「"ダークネス・ロア"」
その言葉に合わせ、5本ずつ3つに分けられた闇の剣から、轟音と共に闇の弾丸が空へと撃ち放たれた。
いや、弾丸と言うより、むしろビームに近いな。
カズは撃ち出す角度を調整していたのか。3つの闇のビームがぶつかり合うと、大爆発を引き起こした。
その爆発は想像してたよりも凄まじくて、下手したら今、俺達がいるこの街全体が吹き飛ぶんじゃねえかって威力が遥か上空で爆発した……。
た~まや~……。
あまりの凄さに俺達は……、ニッコリとした顔で眺めていた。
「これが今の俺の最大出力だ。美羽、闇を恐れるなとは言わねえ、ただ闇の属性を持つならいつか俺みたいな事が出来る様になれるよう頑張れ」
頑張れと言われてもどう頑張れば良いのか分かんねーよ!!
そうだろ美羽?!
美羽を見ると、ニッコリした顔で固まっている。
そこでカズは右手人差し指で自分のこめかみに当て、「イメージが大切だ」と言った。
それは美羽だけじゃ無く、俺達全員にも言えることだ。
カズは指を鳴らすと、闇の剣が形を崩して消えた。
「カズお願い。どうすれば私もその闇の剣を作れる様になれるか教えて」
よりにもよってそう来たか……。
でも美羽は真剣な顔でカズにお願いをしている。
それを見たカズは軽く鼻で笑い、美羽の元まで行くと。
「さっき言った様にイメージが大切だ。だがお前なら闇の剣ぐらい直ぐに作れる様になる。俺の部屋に戻ったらまずどうすべきかを教えてやる。そうしたら焦らなくて良いからゆっくりと覚えていけば良い」
「うん!」
まっ、まぁ……、これでチーム戦力とかがアップするなら別に良いけどよ……。
そう思ってると、訓練所にとある人物が怒鳴り込んで来た。
「オイコラッ!! 今のお前かカズ?!!」
ウルガさんだ。
ウルガさんは血相を変えてかなり怒っている。
「アレをブッ放すなら事前に伝えろって前に言ったろうが!! お陰で街中が帝国が来たんだと勘違いして偉い騒ぎになっちまったじゃねえか!!」
「…………あ」
「あ、じゃねえんだよこのクソガキがああああああああああああああ!!!」
カズ……、そう言われてたならそれを忘れてんなよ……。
あ~あ、ウルガさん、顔を真っ赤にして怒っているじゃん、どうすんだよ。
しかもその後ろには多くの冒険者やハンター達が「やっぱカズだったか」と口々に言っては呆れている。
「美羽、野生のタコ入道が現れた。戦う? 逃げる?」
カズがそう言うとウルガさんの顔がますます赤くなる。
「だ、だ、誰がタコ入道だ誰が!!」
いや実際にタコ入道だから思わず笑いそうになっちまった。
んで、ますますウルガさんが怒り、大斧を持ってこっちに走って来る。
その後ろでは冒険者やハンター達が大笑いしているし。
「ここはやっぱり……。タコ入道を迎え撃つでしょ」
コラコラ美羽さん? そんな事言ったらもっと怒るぞ?
美羽がカズに微笑んでそんな事を言うと、それを聴いたウルガさんは唇を尖らせて、やっぱり激怒する。
「み、みみみみみみみみ〜ウ〜??! お、お前までええ!!」
美羽は2本のナイフを腰の鞘に仕舞うと、素手でウルガさんを迎え撃とうと構えた。
「良い度胸だ美羽!! 例えお前でも容赦しねえぞ!!」
ウルガさんは持っていた大斧を投げ捨て、素手に切り換える。
「痛い目を見たくなければ今なら許してやるぞ美羽!!」
「ウルガさんらしいなぁ。だが断る」
美羽はキリッとした表情で断った。
「ぐぬぅ、くらえい!! "ウルガ百烈拳"」
なんだそのダサい技名はって言いたいけど、その前になんかそれはマズイ気がする。
「ホ〜ワたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!!」
ウルガさんは空高くジャンプすると、美羽に対して凄まじい速さのパンチを次々と繰り出す。
「ふふっ、無駄よウルガさん。無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄アァァァァッ!!」
美羽はウルガさんの攻撃を阻止する為、カズと言う凶悪な"スタンド"のゼイラムで塞ぎつつウルガさんに攻撃する。
……それは反則ですよ?
「ば、バカな?!! グハァァァァ!!」
そして美羽は右手人差し指をウルガさんに向け、またしてもキリッとした顔になると。
「お前はもう、死んでいる」
それはやめい!
「いやお前は何もしてねえだろ。つうか俺の女に手|え出すんじゃねえよ、ウルガさん」
……ん?
カズは美羽に軽くツッコミを入れた後、とんでもない爆弾を口にしやがった。
「…………え?」
美羽はその言葉に思わず頬を赤くして、後ろにいるカズを見つめる。
俺達は温かい目でそんな2人を見ていたが、ヤッさんだけは涙を流しながら「羨ましいぃぃぃぃ!!」と叫んで泣いていた。
冒険者やハンター達の多くもヤッさんとほぼ一緒だ。
「チクショウ! 今度美羽ちゃんに告白しようと思ってたのに!!」
「またカズかぁぁぁぁぁ!!」
「こうなったら一度俺達でカズをぶちのめすぞ!!」
そう言って多くの男達が涙を流しながらカズを襲う。
「……あん?」
カズは眉毛を八の字にすると男達を睨み、返り討ちにしようとするが、カズよりも先に美羽が動いていた。
どうやら美羽は"未来視"の能力を使い、男達がどう動こうとするかを見てるらしく、簡単に蹴散らす。
「私の男に手え出さないでよ」
御馳走様です。
美羽はまるで告白の返事をするかの様に、カズと同じ事を言いやがった。
それを聞いた男達は余りの悔しさに色々と捨て台詞を吐いて去って行く。
「チクショウー!! 末永くお幸せにな!!」
「そのまま最強夫婦になっちまえ! チクショウ!」
「やっぱカズかよ!」
俺達は俺達でそんな2人を温かい目で見ていると、美羽がクルリと後ろを振り返り、カズに微笑んだ。
「さっきのセリフ。あれって私を受け入れてくれるって事だよね?」
「あぁ、ずっと考えてたんだ。お前があんな風に言ってくれた時、正直嬉しかったしよ。お前のその想いが変わってねえならの話だが」
あっ、カズの奴、照れてるな?
若干テレた顔をして、美羽としっかり目を合わせた。
「変わんないよ。私を不幸にするかも知れないのなら、不幸にしてよカズ。私をカズの側にいさせて」
どんな話をいつしてたのかしんねえけど、これでカズの心に空いた穴が埋まるなら良いな。
カズもどこか嬉しそうだし。
「はぁ……、お前は昔からそうだよ。口にした言葉は絶対に曲げねえもんな」
カズは溜息を吐き、美羽のその性格を理解していた上で、改めてその性格を口にして微笑んだ。
「帰るか」
カズはそう言うと左手を美羽に差し出した。
どうしてカズが左手を差し出したのか悟った美羽は満面の笑顔で走り寄り、2人は手を繋ぐ。
「行くぞお前ら。いつまでもニヤニヤしてっと次の訓練をもっと厳しくするからな」
ニヤけないほうが難しい。
だって俺達の目の前で、カズと美羽がカップルになったんだぜ? ニヤけないでどうするよ。
ただ1人、ヤッさんは今だに泣いているけどな……。
「あ〜あ、結局は美羽か〜。でも良いの〜? 他に女の子いるんでしょ〜?」
沙耶の質問にカズは面倒臭そうな顔をするが。
「ケジメはするさ。第一、別に他の女とは付き合ってる訳じゃねえんだからよ。大して問題には何ねえよ」
「へ〜、んじゃBちゃんとも終わらせるの?」
「私は別にBちゃんぐらいは良いかなぁ。だって、カズのお陰で私達はBちゃんと仲良くなれたんだし、友達になれた。それにBちゃんは物凄くカズを慕ってるでしょ? 下手に関係を終わらせたらなんだかBちゃんが可哀想だし」
それもあるけどよ。下手に関係を切ったらBが暴れねえか心配なんですけど?
まぁ言ってみれば美羽がカズを奪った様にも見えるがそれは違うとも言えるしな。
「Bには既に言ってある。美羽の気持ちが変わらないのなら、俺は美羽と付き合うってな。そしたらアイツ、なんて言ったと思う?」
「なんて言ったの?」
「俺の側に居られるだけで十分幸せだからちゃんと向き合えだってよ」
え? なにそれ、随分と大人な発言するじゃねえかB。
Bが意外な事を言ったのを知り、全員驚いた。
「まぁ……その、お前がそれでも良いって思ってるなら、そんなアイツを俺の側にいさせても良いか?」
「言ったでしょ? 私はBちゃんなら良いって。そう言えば朝からBちゃんと刹那ちゃんを見てないけど、何してるの?」
その質問に、カズは帰る前に2人がいったいどこにいるのか教えてくれる為に、ある場所へ俺達を案内してくれることになった。
美羽の想いに応える和也。
それを見て、憲明達はようやくかとも思います。
付かず離れずの状態から彼氏彼女へ。
本来であるならば、大事な女性を失ったばかりだと言うのに、それはどうなんだ? と思われることでしょう。
しかし、憲明達としては、これで和也の心に空いた穴が少しでも埋まってくれることを願った筈です。
では次回もお楽しみに✨