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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第2章 哀しみ
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第79話 魔道書


 ……数日後。


 8月12日


 ー 夜城邸 ー



「こっちにおいで! ()()()!」


<キュア!>


 美羽が楽しげな顔で"アクア"と呼ぶと、小さなモササウルスの子供が美羽の元へ()()()()()

 と言うより、飛んでいるんじゃ無く、()()()()()って言ったほうが正しいな。

 名前は"アクア"って付けられて、普段はカズの部屋にある広いプール兼、水槽の中で暮らし、美羽がいなければカズが面倒を見ている。

 今は美羽がいるから、その美羽がアクアの遊び相手をしている。

 どうして空を泳ぐのかって言うと、カズがアクアの餌に魔結晶を少しづつ混ぜて与えた事で魔力を手に入れ、その後にカズが"創造"の力でアクアに能力を与えたらしく、スキル"遊泳"で水の中じゃなくても自由に、好きな様に泳ぐことが出来るようになった。

 そのアクアは十分に育っていなかった状態で母親の胎内から出され、その大きさは約80センチと小さかった。

 でも、美羽がこまめに面倒を見ている為なのか、たった数日で約90センチにまで育っている。


「おい美羽、アクアと遊ぶのも良いがそろそろ魔導書(グリモワール)で何か魔法を発現させる努力をしたらどうだ?」


 ……カズの言う通り、今だ俺達に魔導書(グリモワール)がなんの反応を示さない事に、カズは戸惑いを感じ始めていた。


「確かにそうだね。ゴメンねアクア、(しばら)く他の子と遊んでて」


「おい憲明、お前のクロと遊ばせてやれよ」


「そうだな。クロ、アクアと遊んでやってくれ」


<ガウッ!>


 俺はパートナーの1匹であるクロと遊ばせることにすると、クロはアクアとボール遊びを始める。


「んじゃトッカーも遊んできな」


 ヤッさんも大人しいトッカーにアクアと遊ぶように言うと、トッカーもその輪に加わった。

 それを見ていたピノとソラとダークスも参加して、体の大きいカノンがまるで保護者みてえにアクア達の遊びを優しそうな目で見守る。


「しかしだいぶデカくなったんじゃねえか? お前のクロ。それにちっちゃかったダークスはかなりデカくなって遊びに参加出来る様になってるじゃねえか一樹」


 クロは初めて会った時に比べ、体がだいぶ大きくなっている。それにクロの頭にある小さかった角がかなり伸びてもいる。

 一樹のダークスもそうだ。初めは一樹の肩に乗っても小さかったのが、今じゃ何時の間にか成長してて一樹の肩じゃ無く背中を隠せるくらいにまで大きくなっていた。


「クロはこれからが成長期だし当たり前か。どんどん色んな事を教えた方が良いぞ憲明。ダークスはあれでもまだ子供だ。完全な大人になりゃ俺達全員を乗せれる位にまでデカくなるぞ。んで、そのくらい大きくなったのならこれからはもっと栄養価のある物を与えたほうが良い。それとだ一樹。ダークスは毒耐性に強いから色々な毒をあえて与えても良いぞ。そうすりゃダークスはその毒を吸収し、より強力な毒を作り出す事が出来る様になる。戦力的にはかなり良い感じになるからオススメだ」


 カズはクロとダークスを見て、俺と一樹にアドバイスをしてくれた。

 だからそれを忘れないために、俺達2人はメモを取り出すとそのアドバイスを書き記すことにした。


「沙耶、お前のピノはどっちかと言うと防御魔法が得意な種だ。だからこれからの戦力を考えるならもっと高等魔法が扱える様に覚えさせた方が良い。自然魔法は二の次で構わねえ」


「成る程、え〜っと、防御系の高等魔法か〜」


 沙耶もメモを取り出して書き記す。


「ヤッさん、お前のトッカーは防御特化に見えるが実は凄え頭が良いからよ。トッカーの場合は攻撃系統の魔法なり攻撃技をもっと覚えさせるとかなり手強い存在になる。取り敢えずタックルとかを強化しつつ、足をもっと鍛えさせてみろ」


「分かった!」


 ヤッさんはトッカーに、後で一緒に体を鍛えるぞと伝えると、トッカーはやる気に満ちた目になった。


「んで美羽、アクアはまだ産まれたばかりだからって訳にもいかねえぞ? 産まれたばかりだからこそ、今のうちに鍛えりゃ直ぐに最強クラスのモンスターに()ける。バウはありゃ例外だから今は取り敢えず良いとしてだ。ギルがもう時期羽化するからその後は今までの戦い方やサポートをするんじゃなく、きちんと状況判断ができる様に色々とお前が教えてやれ」


「うん!」


 そっかぁ、ギルがもう時期羽化するのかぁ、それは楽しみだな。


 羽化する兆候(ちょうこう)がある為、カズは羽化したギルに上から見た戦局を考えさせると良いとも話し、その都度、状況判断が出来る様にしろとアドバイスを送った。

 カズのアドバイスは今後の為にもなるので、俺達はそのアドバイスを確実に実行に移す。

 そしてそんなアドバイスを貰いつつ、俺達はなんとかして魔導書(グリモワール)で自分だけの魔法を手に入れる為に頑張ることにした。


「だけどよカズ。美羽には"歌魔法"ってスキルがあるんだし、美羽はそこまでして他の魔法を手に入れなくても良いんじゃね?」


「確かに美羽には"歌魔法"ってアルティメットスキルを持ってる。だがいざって時にそれが出来なかったら話になんねえだろぅがこのバカが」


「た、確かに……」


 馬鹿馬鹿言うなよ……、マジで馬鹿になったらどうすんだよ……。


「そんな事を考える前に、なんで魔導書(グリモワール)が反応しねえのかを考えたらどうなんだ?」


「す、すまん……」


 でもなんで反応しねえんだ? 何が悪いって言うんだよいったいよぉ……。


 俺達はカズに言われた通り、閉じた状態の本の上に両手を置き。目を(つむ)りながら本に問いかける。


 魔導書(グリモワール)よ、我に力を。魔導書(グリモワール)よ、我に力を。


 何度も何度も繰り返すけど、それでも反応がまったく無い……。


 ……泣いて良いですか?


 「ちゃんと自分の魔力とも向き合い。自然と頭の中に出て来る魔法をイメージするんだ」


 イメージ。イメージ。イメージ。イメージ……。


 イメージしようにも全然イメージが()かなかったらどうすれば良いんだろ?


「ん? どうやら先に沙耶が1番乗りみたいだな」


 なんですと?!


 目を開けて見ると、沙耶の体が薄い青色みたいな光に包み込まれていた。


「うお〜! 凄え〜良いな〜!」


 めちゃくちゃ羨まし~!


 すると沙耶を中心にして強い風が吹き始め、その風で宙に舞い上がっていき、沙耶が目を開くとそれまで強かった風が優しくなって、ゆっくり降りて来る。


 クソ~! 沙耶に先越されちまったか~!


「どんな感じだ?」


 カズが優しい笑みになって聴くと、沙耶は何度も(まばた)きしながらカズを見つめ、徐々に頬を赤くさせて喜んだ。


「やっと手に入れた〜!!」


「沙耶、お前がどうやって手に入れたのか説明してやれ」


「は〜い!」


 沙耶は喜んだ後、俺達に説明してくれた。

 自分が何を考え始めたら出来たのか、説明を聴いた俺達4人は同じ様に自分の属性を思い浮かべる。


 沙耶は風属性に適正がある。だからそこで風をイメージした訳なんだけどよ、その風を感じた後に、体の周りに風を集めるイメージとかをしたらしい。

 そう聞いた俺は火属性なんだから、だったら手に火が着くイメージをしようと思った。


 皆を守れる炎が欲しい。明るく、皆を照らせる炎が。


 そう思いながら俺は、両手にランプの火みたいなのをイメージした。

 全身に流れる魔力は火だとイメージしつつ。その火を手の上に灯れって。

 沙耶の話によると強く念じるんじゃなく、自然の流れで感じてそれだけに意識すると良いらしい。だから俺は火が体の中を流れるイメージをしつつ、手に火が着くことだけを考え続けた。

 すると少しずつなんだか暖かくなってきたはいいけど、まだ火が着いた感じがしない。


 どうすれば良い……。あっ。


 そこで俺はあるイメージに切り替わった。

 それはカズがタバコを吸う時に、ジッポライターや指先に火を着ける時だ。

 だから俺は手じゃなく、指先に火が着くイメージにした。


 まずは人差し指に……。……なんか、暖かい?


 そう思った俺は一本一本の指に火が着くイメージをすると、更に暖かく感じた。


 んじゃ、これでどうだ?


 両手で火を集めるイメージに切り替え、火の玉を作るイメージをした。

 すると、もっと暖かい何かが俺の右手に集まる。

 ゆっくりと目を開けて見てみると、そこには野球ボールぐらいの火が浮いていた。


「やった……、出来た……、出来た!」


 目の前に魔道書(グリモワール)が光って浮いていたけど、俺が火を操る力を手にしたからか、書かれていた文字が消えてその光も消えてゆっくりと下に落ちた。

 同時に、俺の頭の中に何か、火を使った技が流れ込んでくる。


 成る程……、これが俺の始めての技か!


 しかもそれは1つだけじゃなく、2つ。

 1つは俺に合った技だ。でももう1つは正に魔法と言える技も流れてきて、思わずその技が()()()()()()()()()って思った。


「2番目は憲明か、練習すればもっと強い炎を出せるようになるから頑張れ」


 思わず感動で泣きそうになっちまったけど、カズの言う通りこれからもっと練習しようと思った。

 それから少しした後。

 一樹は水、ヤッさんは土、そして美羽は雷。

 なんで今まで魔導書(グリモワール)が反応しなかったのかは謎だけど、これで全員が魔法を使える事に喜んだ。

 でも、それで終わりじゃ無かったんだ。


「あれ?」


 美羽は雷の魔法を手に入れたから、魔導書(グリモワール)の中に書かれていた文字が消える筈だ。なのに何故かまた反応をし始めると、美羽は黒い(きり)のようなモヤに包み込まれて行く。


「え?! なになに?!」


「お前マジか美羽」


 なんだかカズも驚いた表情を見せると、何が起きているのか口にした。


「ごく(まれ)にひとつの魔導書(グリモワール)で2つの属性を手に入れるって話を聞いたことがある。しかもそれは超が付くほどの極稀(ごくまれ)なケースだ。俺でもそれを見るのは初めてだ。美羽は雷の他に、闇属性をたった今手に入れた。正直凄い……」


 マジか?!


 カズは話を聞いた事しか無いらしく、それを実際に目の当たりにしてビックリしていた。


「雷と闇か。いったいどんな魔法を手にしたのか気になるな。よし、取り敢えず今から向こうに行って戦闘訓練するか」


 カズの提案に俺達は久しぶりにカズが相手をしてくれる事に胸が躍り、早速ゲートを潜ると訓練所へ足を向けた。



ついに魔法を手に入れた憲明達。同時に、彼らはそれぞれの能力に合った技を手にすることになります。

さて、彼らはどんな技を手に入れる事が出来たのでしょうか。


憲明は"炎" 美羽は"雷"と"闇" 沙耶は"風" 一樹は"水" 玲司は"土"


そして、化け物と呼ばれる和也は"闇"と"無"。


ここで疑問です。美羽が2つの属性を手に入れたのを、初めて見たと和也は言っていました。

では、和也はどの様にして2つの属性を手に入れたのでしょう? 魔道書を2つ使って手に入れたのでしょうか? しかしそれは謎であり、その答えはまだ先の話。

よかったら次回も読んで下さると嬉しいです♪

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