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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第2章 哀しみ
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第76話 覚悟


 9:00



 俺達はやけに美羽が明るいなと思いながら、ソファの上でカズが作っている朝食が今か今かと待っていた。


「美羽、何かあったのか?」


 一樹は美羽がなんでそんなに明るいのか質問すると、美羽は「べっつに〜」と答える。

 でも皆、絶対何かあったから明るいんだと思った。


「待たせたな、朝食だ」


 そこにカズが朝食を運んで来ると美羽は走って行き、「私も手伝う」と言って運ぶのを手伝う。


 おかしい……、いつもなら手伝いもせずにただカズが持って来てくれるのを待っているだけだと言うのに……。


 俺は美羽の行動が何時もと違う事に着目した。


「はいノリちゃん、カズ特製の食パンだよ」


「あ、うん、サンキュー美羽」


 なんだこの違和感……、なんでこんなに朝から明るい?


 そう思っている中、テーブルの上にはカズが作った朝食が並べられる。


「んじゃ、頂きます」


「「頂きます」」


 カズの号令に皆が皆、食べ始めると。


「美羽、そこの ーー」


「はい醤油」


「んっ」


 カズが言い終わる前に美羽が醤油を手渡す。

 そして、よく見てみると美羽はカズにベッタリとくっついて、食事をしているじゃねえか。

 何時もならもっと感覚を開けて食べるはずだ。だが美羽は右手がカズにぶつからない様に静かに食べる。

 カズはカズで何も言わずに黙って食べている。


 おかしい……、何かがおかしい……。


 そう思いながら2人を見て、俺も食べる。

 それは他の皆んなも一緒だった。

 唯一違うのはBだ。Bは昨日、美羽と沙耶に買ってもらった服を着ている。昨日とは違い、今日は白いワンピース姿。

 そんなBもカズにくっついて食べる姿にヤッさんが何かに気づいたみたいで、その瞬間、目を血走らせて大きく見開いた。


 ヤッさん何か気付いたのか?!


「あっ、しょ ーー」


「ん」


「ありがとうございます和也さん」


 Bも醤油が欲しかったのか醤油を取ろうとするとカズが素早く渡す。


 これはBが来てから毎日の様に見る光景だな。

 ……ん? 毎日?


「あっ、わた ーー」


「ん」


「ありがとうカズ」


 今度は美羽も欲しくなったのか、醤油を貰おうとするとまたカズが素早い動きで手渡す。


「……あっ、俺も醤油欲しいなぁ」


「はい」


 一樹がそう言うと、美羽は手渡すのではなくテーブルに普通に置いた。

 一樹は醤油を受け取ろうと左手を出したが、そこへ美羽は渡さずに【置く】を選択。

 その事で、一樹は何かを確信したような顔になり、そのまま変な顔で固まる。


 か、一樹、お前も気付いたのか?!

 いったい何がおかしいと言うんだチクショー!! 俺にはさっぱり解らねえぞ!!


「ん? 美羽、口元にパン(くず)ついてるぞ」


「え?」


 カズが美羽の口元に付いたパン(くず)を取ると、普通に自分の口の中へと入れる。


「んふふ」


「ほらB、お前は口元に醤油が付いてるじゃねえかよ」


 今度はBの口元に付いた醤油を指で取ると、そのまま舐めて食事を続ける。

 それを見て、今度は沙耶がそれで何かに気が付いて、横に座る美羽を見て口を開けて固まった。


 そんな馬鹿な?! 沙耶まで気づいてなんで俺だけが解らねえんだよ?!


 俺は頭を抱え、黙ってその場で目を(つむ)って考えた。


 なんなんだよいったい?! なにがおかしいんだ?!


 俺だけが解らないまま朝食は終わり。カズが皿を下げて洗いに行くと、Bと美羽が手伝うと言って部屋を出た。

 それを見て、ヤッさんが両手で頭を抱えて頭を(うつむ)かせる。

 一樹は両手の指を組み、口元に持っていくと膝をテーブル上に乗せて何か考え込んでいる。

 沙耶は自分の長い髪をクシでとかした後、ヘアゴムで何時もの髪型であるラビットスタイルのツインテールにしながらなにやら動揺。


 皆んなに分かってなんで俺だけが解らないんだ……、チクショー、なんかムカつく……。


 俺は自分だけが解らずにいたから苛立っちまっていた。


「ちょっと行ってくる」


「「待てい!!」」


 俺は洗い物をしている3人の元へ行き、直接何時もと何かが違う事を聞こうとしたが、そこを他の3人に捕まって行けなくなった。


 その後、4人でテーブルを囲み、まるで碇ゲ○○ウ風にして指を組むと顔を突きつけ合わせて話し合うことにした。


「まず、これは確定事項と(とら)えても過言じゃ無い」


 先に切り出したのは一樹だ。


「あぁ、間違い無い……、確定だ」


 ヤッさんは誰よりもいち早く気づいたのでそれが間違い無いと確定。


「だが我々は以前から彼女の気持ちには気が付いていた筈だ」


 沙耶は俺達3人に伝えると、ヤッさんが沙耶に問いかけた。


「お前はそれで良いのか? お前だってそうじゃないか」


「問題無い。元より覚悟の上だ」


 するとヤッさんは黙った。


「それに彼女は私の親友の1人。そんな彼女の幸せなら致し方無いだろ。だが、何も諦めた訳じゃ無い。私もあの中に入れるチャンスがあれば入るつもりだ」


「そうか……、ならばこれ以上は何も言うまい」


 ヤッさんが引き下がろうとすると、今度は一樹が沙耶に問いかけた。


「だがお前はそれで良いのか? 相手はあの美羽とBだぞ? その中に飛び込むと言うのは、流石に難しいんじゃないのか?」


「問題無い。それは美羽とBちゃんも承知の上だ」


「そうか……」


 そして暫く沈黙が訪れるが、その沈黙を破ったのは……、俺だ。


「だがこの戦局をどう見る?」


「「戦局?」」


 俺がそう聞くと、3人は不思議そうな顔になった。


「憲明、お前の目から見てどうなんだ?」


 そこでヤッさんがそう聴くから、俺はニヤリと笑って言った。


「前から思っていた事が一つある。それはカズとサーちゃんが結婚したらどうなるかだ」


 それを聞いた3人は雷が落ちた様な顔になった。


「貴様、なんて恐ろしい事を妄想していたんだ」


 一樹は動揺しながらも平静を保つ。


「誰も考えた事が無い? 違うな、誰もが考えた未来の筈だ。極道の妻となったサーちゃんを誰もが想像した筈だぞ? 違うか?」


「確かに想像した事はある。しかし、今となってはそれは現実に有り得ない」


「確かにそうかも知れん。しかし、今はそうじゃ無いだろう?」


 俺が何を言いたいのか全く理解出来ていない3人に、俺が何を言おうとしているのか話した。


「アイツの正妻は誰になる?」


 その言葉に更なる衝撃が襲った。


 ようするに、美羽とBがカズを巡った争いが始まったんだろ?


 でも本当はそうじゃなく、カズと美羽がBに続いて関係を持ったんじゃないかと話をしているのにも関わらず、俺1人だけズレていた為に話をややこしくさせてしまったことに、俺はまったく気がついていなかった…。


「そこに沙耶、お前も参加するって? 確かにお前もカズが好きだって事は知っていた。だがよく考えた方がいいんじゃないのか?」


「そ……それは?」


「あのBと美羽だぞ? そこにお前が加われば、より激しい火花が散るんじゃないのか?」


「うっ……」


 親友の美羽やダチになったBを敵に回した状況を想像したのか、顔が強張っていやがる。


「憲明、お前、なんて恐ろしい事を……」


 ヤッさんがたまらずって感じで俺を軽く睨む。しかし、この時の俺はそれは真剣に考えての事だった。


 このまま沙耶まで参戦すれば、きっと三つ巴の戦争が勃発(ぼっぱつ)しかねない。それはどうにか避けるべきだ。


「下手に刺激すれば今度はカズを激怒させる事に繋がるかも知れない。そうなれば俺達にまで被害が出るぞ」


「そ、それは不味いな……」


「今のカズはニアちゃんの事で動く火薬庫状態。いや……、下手をすれば核兵器並だ。表面上は楽しくしているが、その裏ではかなり危険な状態になっている。だからアイツは昨日、ゴジュラスを手に入れてかなり際どいところまで暴走していたんだぞ? だからここは出来るだけ手を出さない方が身の為なんじゃないのか?」


 その言葉は一樹とヤッさんには効果的面だったのか、黙り込んだ。


「うっ……ぐっ……、で……でも……」


 だがしかし、沙耶はそうじゃなかった。


「諦めちゃダメだ諦めちゃダメだ諦めちゃダメだ諦めちゃダメだ……。行きます、チャンスがあるなら行かせて下さい!」


 沙耶……。


「確かにそうかも知れない。だけど、やはりここは私もチャンスがあれば……」


「ふっ、お前にそこまでの覚悟があるなら俺はもう止めはしねえよ」


 沙耶がそれでもチャンスがあればカズの女の1人になる決意を固めた。

 確かに正妻の事を考えるといずれは誰かが身を引かねばならないだろう。しかし、それはそれで今じゃ無い。だから3人仲良くカズの女でいられるんじゃないかと考え、その時が来てもきっと仲良くしていられると言う自信が沙耶にはあったのかも知れねえ。


「それにカズが暴走しそうなら尚更でしょ。Bちゃんや美羽だけで止められると思う?」


「確かに、一本の矢だと簡単に折れるが三本の矢を同時に折るのは難しいって言うからな」


 ヤッさんは沙耶の気持ちを尊重そんちょうする事にし、応援する事にしたようだ。

 そうこう話していると、カズが美羽とBを連れて戻って来た。

 カズ達3人は、俺達4人が異様な雰囲気を放っているのを見て思わずビクリとしたように見える。


「何してんだお前等」


「ん? いや別になんでも無い。あは、あは、あはははははは!」


「あぁ?」


 あ、あっぶね~!


 俺は冷や汗を流し、話を聞かれなくてよかったと安堵した。


「出かけるぞオメーら。そんな格好してねえで私服に着替えて来い」


 カズにそう言われ、俺達はそそくさと着替えに行く。

 カズ達は既に私服姿だから、今度はその3人が俺達を待つ事になった。


皆さんどうも、Yassieです✨

今回は如何だったでしょうか? 一部、パロディを思いきってブチ込んでみましたがどうだったでしょう?

皆さんが楽しんで頂けるならなによりです✨

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