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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第2章 哀しみ
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第68話 封印解除


 部屋につくと、俺達のパートナーであるモンスター達が先に集まっていて、そこにはBと、まるで犬がお座りをしている様にして座る骸が待っていた。

 カズはルカちゃんを連れてきた事を話すと、骸は何処か安心した様に微笑んで、Bは「良かったですね」と言って微笑む。


「ルカが早く骸に会いたいって言ってたぞ。だから今度遊んでやってくれな」


<グルアッ>


 よっぽど嬉しいのか、骸が尻尾を振っていやがる。


「話を聞いてるかも知れねえが、あの子は目が見えない。だから何かあったら頼むぞ?」


 そう伝えると、骸はまた軽く鳴いた。


「キミの体は冷た過ぎるから気をつけないとね」


 そこでBが意地悪なことを言い、骸は瞳孔を大きく広げ、軽く口を開けて固まった。

 自覚していなかったのか、それに気づいて驚いているみたいだ。


「だってキミの近くにいるだけで寒くなるんだぜ? だから風邪を引かない様に注意しないとな」


<グルアッ?!>


 だからそんな意地悪なこと言うなよ……。


 追い討ちとばかりにBがまたそんなことを言うと、骸は本当に風邪を引かせた時の事を考えてしまったのか、カタカタと体を震わせ始める。


「おいB、あんまり骸をそうやって(いじめ)めるなよ」


「はい、和也さん」


 そう言いながらもカズは微笑んでいた。

 Bもカズに注意されつつも微笑みを崩さない。

 骸はカズが少しずつ立ち直っているとその顔を見てそう思ったのか、少しだけ安堵した様な表情を見せていた。

 骸も冒険者やハンター稼業をしている限り、命に関わっていることを知ってるんだろ。だからカズの明るい顔を見て、安心したんだと思う。

 俺には骸とBが、カズに気を遣ってるように見えていたからな。だからあえてそんな風な会話をして、場を(なご)ませようとしてたんじゃないかと思った。


 忘れろとは言わねえけど、それはお互い覚悟していたことでもあるし。だから出来るだけ早くカズには立ち直ってもらいてえな。


 それから俺達はソファに座り、チーム名をどうするか話し合いを始めた。

 カズは愛用のブローニングM2A1重機関銃を地べたに座って手入れを始め。クロやカノン達は広い部屋の中で思い思いの場所でくつろいでいる。

 俺達のパートナーはカズの部屋が珍しいのか、部屋に良く来るギル以外のモンスター達はくつろぎながらも珍しい植物や花を見て心を癒しているみたいだ。

 実際、何気にコイツらがカズの部屋に来るのは初めてだしな。

 でもそれは良いとして、俺達はチームのことで話し合いを始めた。


「取り敢えずチームカラーはやっぱり黒よね」


 真っ先にそう切り出したのは美羽だ。


「なんで黒なんだ? 別に良いけどよ」


 俺は何故、チームカラーが黒が良いのか聞くと。


「やっぱり私達のチームリーダーはカズしか居ないでしょ? 私達に的確な指示を出してくれたり、どう進めば良いか道を示してくれるから。そんなカズは上から下まで真っ黒な服装。だからチームカラーは黒が良いと思って」


「確かにそれは言えてるな。んじゃチームカラーは黒に決定な」


 呆気(あっけ)なくチームカラーが決まるが、その事について他の皆んなからは異議は無かった。


「そこでカズ、私達にも黒いスーツを用意してくれないかな? ほら、他の組員さん達が着てる様なスーツで良いからさ」


 美羽はチームカラーを黒に決定したからなのか、これからは同じ様な物を着て、一緒に行動したいからなんだと思う。

 その時俺は、確かになんか全員で合わせるとめちゃくちゃカッコいい気がすると思った。


「別に良いけどよ。オメーらは美羽の言う通りで良いのか?」


 すると全員「それでいい」と言って、簡単に決まっちまった。


「……わあった。直ぐに用意させるから後で寸法取らせる」


 よっしゃ!



 ……それから暫くしたあと。


「入るわよ?」


 先生が何やらアタッシュケースを持って部屋に来る。


「カズ、コレを」


 カズはただ黙ってそのアタッシュケースを受け取るけど、俺達にはそれに何が入っているのか分からなかったが、アタッシュケースには何かを封印する為の札がビッシリと貼られていた。

 正直、俺はそれを見ただけで気持ち悪くなる程の悪寒を感じていた。


 なんかあの中に入ってるもん、ヤバい気がする……。


「……良いのかよ?」


 カズがそう聴くと、先生は困った顔をしながら頷いた。

 そして、そのアタッシュケースを開いた瞬間。


「ウッ?!」

「アッ……?!」


 俺達全員、口に手を当てて吐き戻しそうになるのをなんとか(こら)えた。

 それにまともに息が出来ない。

 身の毛もよだつ、何とも言い表す事が出来ない程の気持ち悪い悪寒が俺達全員に襲った。

 中に入っている物はカズが放つ殺気とは違い、あらゆる命を(こば)み、近くにいる奴ら全てを食い殺すんじゃないかってぐらいの威圧感を放っている。

 しかも、目に見えるくらいのドス黒いオーラを放って……。

 正直、マジで耐えられない程の圧倒的な威圧感と殺気に、我慢の限界が来そうだった。


「やめろ"曼蛇(マンダ)"。ここでその殺気を放つな」


 カズがそう言うと、まるで今までの威圧感が嘘だったかの様に消える。


「ハァ……、ハァ……、ハァ……、ハァ……」


 カ、カズのお陰で助かった……。


 まともに息が出来る事に、俺は心の中でカズに感謝した。


「悪いな。久しぶりに解放されたもんだからコイツも喜んでたみたいだな」


 そう言うカズは平然とした顔でいる。

 でも、その時はあの先生ですら瞳孔(どうこう)を開き、左手で右手を掴みながら震えて怯えていた。


「カ、カズ、それって?」


 美羽が勇気を出してそれが何なのか聴くと、カズはアタッシュケースの中から、やっぱり黒くて長いファーが付いた黒いジャケットを出すと、その場で着る。

 その背中には大きな、青い彼岸花の刺繍(ししゅう)が入っていた。


「コイツの名前は"曼蛇(マンダ)"。俺が作った装備の中でも()()()()()()


 出たよぉ……。と思い、俺達全員がげっそりとした顔になったのは言うまでもない。


「カズ、組長が呼んでたわ。その曼蛇(マンダ)の事は私がこの子達に説明してあげるから行きなさい」


「あ? わかった」


 確かにそれがいったいどんな代物なのか知りたい。

 はっきり言ってあれはダメな奴だ。この世に存在してたらまずいって思う。


 でも親父さんが呼んでるってことでカズは部屋を出ていき、代わりに先生が俺達に説明をしてくれるみたいだ。


「ふうぅ……、さて、何から聴きたい?」


 先生は一息ついてから聴きたい質問に答えてくれると言うから、初めに質問したのは俺だ。


「アレはいったいなんすか? まるで蛇みたいな……爬虫類の模様があるから何かの皮だとは思うんすよ。アイツの背中に"ゼイラム"が4本も付いてたから、もしかして前に言ってたディラルボアってモンスターの皮かなって思ったんすけど……、それとは何か違う。もっと禍々しかった……」


 そう、アレにはゼイラムが4本付いていた。しかもとんでもなく禍々しい気配を(まと)って。

 どんだけ表現を和らげても、気持ち悪い。


 ……アレは間違いなく生きている。


朱莉が渡したアタッシュケースの中にあったもの、それは和也が作り出した最凶の代物でした。

果たして、"曼蛇"とはいったいどんな代物なんでしょう、次回をお楽しみに!!

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