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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第2章 哀しみ
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第66話 ようこそゼオルクへ


 その後、俺はまたカズに引きずられながら戻った。

 体には無数の噛み跡。それはアリス達に噛み付かれた跡だ……。


 その後は何事も無く、なんとか無事に戻る事が出来きた……。

 カズは街の中へ入るんじゃなく、自衛隊の駐屯地に真っ直ぐ走るみたいだ。

 するとジープに装備された無線機から誰かがカズを呼び、カズは無線機を取って応答した。


「こちら和也、どうぞ」


『こちら稲垣。随分と早かったね。取り敢えず、車は入り口の所に置いてくれれば後から回収する。必要な物だけ持って置いておけば、後で残ってる荷物を届けさせる』


「了解」


 カズはそれならと、街の南側ゲート入り口にジープを止め。街の中へ入る事にした。

 そこに連絡を聞いた自衛隊員が2人走り寄り、カズに車を持って行きますと言って駐屯地の方へ走って行く。

 街の南側ゲートには多くの行商人や、外にある畑仕事に行って戻って来た街の住人達が列を作っている。

 俺達も街に戻る時、必ずその列にはきちんと並ぶ。

 列にはここ最近、知り合う事になった顔ぶれの連中が「よう!」と言って声をかけて来てくれる。

 その内の1人、"マーク"っておっさんが俺達を見つけて、話しかけて来た。


「よっ、どうしたんだ? このおチビちゃん」


 歳は50近くの髭もじゃ。身長は2メートル近くで、めちゃくちゃガタイが良い男だ。

 おっさんがルカちゃんと手を繋ぐカズを見て気になってるみてえだ。


「ニアの妹、ルカだ」


 それを聞いて目を大きく見開いて驚いた。


「今日から俺の妹だ。街で見かけたら宜しく頼むよ、マーク」


 紹介されたルカちゃんは木の杖で地面を叩きながらおっさんに歩み寄り。


「ルカです。宜しくお願いします」


 ルカちゃんは微笑みながら挨拶をした。


「あぁ……、宜しく。俺はマークって言うんだ……。似てるな、あの子に……」


 目を細め、ルカちゃんとニアの顔が似ていると口にする。

 そしてルカちゃんが何故ずっと目を閉じているのかにも気づいた。


「カズ、この子は……」


「あぁ。だから何かあったら頼む」


「分かった。任せろ!」


 このマークって人は親父さんみたいに強面だ。でも、カズにとって数少ない、信頼出来る人物だからこそ頼むと言えるんだろ。

 マークのおっさんはルカちゃんの頭に大きな手を乗せ、その見た目とは裏腹に優しく撫でた。


「何かあれば大声でこう言うんだぞ? 助けて"黒竜"って叫ぶんだ。そうすりゃカズがいれば直ぐに駆けつけてくれるし。お嬢ちゃんに悪い事をしようとする奴がいれば、慌てて逃げるだろうぜ。グハハハハハハハ!」


「はい! そうしますねマークさん。教えてくれてありがとう」


 その純粋(じゅんすい)なお礼に、なんだかマークのおっさんが心を撃たれたみたいな表情になった。


「おいテメーらぁ、今後何かあったら絶対にこの子を守れえ。絶対だぞ? わあったか?」


「「はい! お頭!」」


 何やらそんな返事が返って来るのでそちらへ顔を向けると。

 世紀末に出て来そうなモヒカン頭の怖いお兄さん達がいた。


 ……誰?


「あれぇ? マークのおっさんって確かハンターだったよな?」


 そう聴くと、キョトンとした顔になった。


「あれ? お前達に話していなかったけか? アイツらは俺が引き連れてるハンターチームだ。チーム名は"マッドマックス"。総勢20人の小さいチームだが、その分腕は確かだぜ? グハハハハハハハ!!」


 いやマッドマックスってアンタ……。


 突っ込みたかったけど、なんだか面倒くなると思ってやめた。


「そういやカズ、お前さんは憲明達と一緒に行動してんだろ? だったらそろそろチーム名を考えた方が楽じゃねえか?」


「あぁ、確かにそうだな。すっかり忘れてた」


 チーム名か。そういや俺達って普通にパーティー組んで動いてっけど、どこかに申請を出したりすんのかな?


「チームって?」


 美羽も気になったのか、カズとマークのおっさんに聞いた。


「チームってのは誰が誰と行動を共にしているのか直ぐに分かる。例えばカズが俺のチームに入るなら、即座にマッドマックスの名前が出て来る。だがカズがマッドマックスから脱退するのであれば、カズはフリーで動いていると分かるんだが、カズが何処かにふらっと出掛けたら緊急の呼び出しをしたくても何処にいるのか分からないから連絡しようがねえんだ。だが俺達マッドマックスが何処かに行こうと、まとまって動くから誰かがあそこにいた、ここにいた、ってなる訳だ。まぁ簡単に言やぁ、チームで動いていた方が何かと便利ってこった」


 見た目の割には意外とそれなりに説明をしてくれるから、美羽はお礼の言葉を送った。


「そっか、なら私達でちゃんとチームを組もうよカズ」


 美羽にそう言われ、カズは(しばら)く考えると。


「そうだな、それも良いな。んで? チーム名は何にすんだ?」


 カズは賛成した。

 勿論、それは俺も大賛成だ。


「でもその前に、カズは黒竜って呼ばれたりするの?」


 美羽のその質問に、またマークのおっさんが教えてくれる。


「おうよ。コイツの二つ名、それが"黒竜"だ。上から下まで真っ黒だろ? それに足のえげつない武器。しかもあの氷帝竜・骸をひきつれていやがる。周りからは普通に名前で呼ばれちゃいるがよ、他の街や国なんかでコイツは黒竜って二つ名で通っているんだ。この街で悪さする連中の(ほとん)どが他の街や国からやって来た奴らだ。だから黒竜の名を聞けば慌てて逃げて行きやがる」


「うわあぁぁ」


 厨二病まっしぐらだなおい。


「二つ名は大事だ。二つ名を持ってるのと持っていないとでじゃ全然変わって来る」


 え? そうなのか?


「例えどんな二つ名にしろ、至る所で持ってる奴は優遇される。一緒にいりゃコイツがどんだけデタラメな奴か分かってんだろ?」


 まあ確かに、カズがデタラメなのはよく知ってる。


「だからよ。黒竜(イコール)最強最悪残忍残虐冷酷非道。ってなる訳だ。だから誰もその名を聴いて喧嘩を売りたい奴なんかいやしねえよ」


「おいマーク、言い過ぎじゃねえか?」


 いや別に? 全然言い過ぎだとは思わねえけど?


 そう思っても口が避けても言えねえんだけどな。

 だからよく分かると俺達全員は黙って大きく頷いた。


「それに二つ名を持ってるって事は、それだけの功績(こうせき)と強さを兼ね備えてるって事が解るしよ、持ってる奴はそう多くねえんだ。んで、ましてや二つ名に竜が入る奴なんて俺はコイツしか知らねえ。竜ってのはそもそもどれもこれもがめちゃくちゃ強え。最低でもBランクだ。全てのモンスター。いや、全生物の中で頂点に君臨する種族、それが竜、ドラゴン。つまり、コイツはそれだけ周りから化け物扱いをされてるって事でもあるんだ」


 うん、コイツが化け物みたいなのもよく分かる。

 俺達はそれも良く分かるために、また大きく頷いた。


「本来なら二つ名に竜を入れるのはどうかと言う連中もいる。理由はお前達も聴いた事があるだろ?」


 それは恐らく、あのドラゴンの事だろうな。


「ありとあらゆる全ての命の天敵、アルガドゥクスの事をよぉ」


 やっぱアルガドゥクスの事か……。


 俺はその名を聴いて、思わず顔が少し険しくなった。


「だが俺はそのアルガドゥクスが全部悪いんだとは思えねえんだ」


「……え?」


 まさかの言葉に俺達は驚いた。

 そこに、おっさんの手下が話すの止めようとするけど、それでもマークのおっさんはそんな手下を黙らせた。


「ありゃ今から5年も前のことだ。その日は酷い雨でな。俺達は一仕事(ひとしごと)終えた帰り道だった。俺は足を滑らせて崖に落ちた。全身が痛え、手も動かねえし足も動かねえ。こりゃもうダメかと思っていたら、段々眠くなって来てよ。俺は抵抗することもせず、そのまま寝ても良いと思って寝ちまった」


 そしておっさんは昔、何があったのか話してくれた。


「ところが。次に目を覚ますと俺は生きていた。しかも行ったこともねえ何処かの洞窟の中でだ。洞窟の中は魔鉱石やら光苔(ひかりごけ)が光ってて明るかった」


 俺はなんとなく、そこでドラゴンと出会って助けられたんじゃないかと思った。

 じゃなきゃ、その名を口にすることはねえ筈だ。アルガドゥクスって名前は誰もが忌み嫌う存在な筈だし。


「すると声がした……。俺は声がした方を見ると、そこにはバカデカいドラゴンがいた。しかもそいつは古のドラゴンで、喋る事が出来たんだ。起きたか人間。体は動くか? 動けるなら早々に此処から立ち去れ。ってな」


 やっぱドラゴンが。


「俺は驚いて思わず叫びたかった。だってよぉ、SランクどころかSSランクのドラゴンだったんだぜ? 生きた心地がしねえよ。だから思うように体が動かなかった。それを見たドラゴンは溜息を吐いて、俺にもう少し寝ていろと言ってきた。俺は寝た。きっとこれは夢だと思ってな。だが次に目を覚ましても、やっぱ洞窟の中で目の前にはドラゴンがいた」


 うん、俺も同じことあったら夢って思うだろうな。


「流石に俺は聴いたよ、なんで俺を助けたのか。そしたらそいつ、なんて言ったと思う? ただの気紛れだと言って来たんだぜ? なんか頭にきたからよ、そっからは死ぬ覚悟で文句を言ったら口喧嘩になってよ」


 よく口喧嘩できたなこのおっさん……。


「体はなんとか動くし、俺は帰るって言って帰ったんだ。そしたらそいつ、後ろから俺に気をつけて帰れよって言ってきたんだ。俺はその言葉に何も応えず、ただ手を上げてそっから帰った。(しばら)く山の中を歩いていたら手下共が俺を探してくれてたから嬉しかったぜ。それから俺は毎日そのドラゴンの事が気になっていた。なんで今の今まで誰もあのドラゴンがその洞窟にいる事を知らなかったんだと思った。それにだ、命を助けてくれたのに俺はそのお礼をちゃんとしていなかったと思い出し。飲むかどうか知らねえが大量の酒を用意して持って行った。そこにアイツはまだいた。アイツは俺の顔を見るなり、何しに来たんだと言うから俺は御礼に酒を持って来ただけだと言い、また口喧嘩を始めちまった」


 だからなんで口喧嘩できるんだよ?! 死にてえのかこのおっさん?!


「だがアイツは俺が用意した酒を旨いと言って呑んだ、その日から俺は酒をもってちょくちょく顔を出して共に呑んだよ。まっ、会う度に口喧嘩しながらだけどがよ?」


 逆にスゲェなこの人……。


「そんなある日、俺は手下共を連れてそのドラゴンと飲んでいた日の夜だ。……アイツは昔の事を思い出したのか、俺達に語ってくれた。そいつはその昔、アルガドゥクスの手下として多くの神々や人間、亜人達と戦ったんだとさ」


「まさか! その時の生き残りなのかよ?!」


「そのまさかだったらしい」


 俺は驚いた。いったいどんだけの年月を生きてきたって言うんだ?! ってな。

 ましてや、俺も仲良くしてえとは思ってるけど、あのアルガドゥクスの手下だったドラゴンなんだぜ? そう簡単に仲良くなれるならその方法を俺は知りたくなった。


「それで聞かされたんだ。元々アルガドゥクスはとても優しいドラゴンで、種族が違えど、どんな奴にでも優しかったと。アルガドゥクスは一つの国を持っていた。ドラゴンの国、"竜国"ってところさ。そこには神々に見捨てられた者や行き場を失った者達を、アルガドゥクスは見捨てずに、その国に招き入れて共に暮らしたそうだ」


 思った通りめちゃくちゃ優しい奴だな。

 でも……、そんな優しい奴を怒らせたからこそ、世界の敵になっちまったんだよな……。


「奴はその強さから四大冥王の1人、"冥竜王"として君臨していた。国は栄え、ドラゴンだけじゃ無く、堕天使や色んな奴らが幸せに暮らした。そんなある日、冥竜王・アルガドゥクスは、四大冥王の1人、精霊や妖精の女王との婚姻を発表をした。元々竜族と妖精族は仲が悪かったらしいんだ。だが、アルガドゥクスとその女王はガキの頃からの友人らしくてな。だから2人が王になり、どちらも四大冥王となったから周りを黙らせる事が出来た。だが誰も2人の婚姻を批判せず、逆に盛大に祝福したんだとよ」


 マジすげえ、周りの奴らを黙らせるなんて、マジかっけーよ。


「だが、それを面白く思わない奴がいた。あえてそれは言わないでおく。別に意地悪をしたい訳じゃ無いぞ? 聴けばきっと後悔するかもしんねえ。……その後、面白くないと思った奴が、アルガドゥクスの逆鱗を触れちまったんだ。そのせいで世界を巻き込む大戦争が始まっちまった……」


 その、どこのどいつかしんねえけど、そいつのせいで全部狂っちまったのか……。

 いったいなにをしたら優しかった筈のアルガドゥクスの逆鱗に触ったんだ?


「……その話を聴いて、俺はアルガドゥクスが可哀想に思えてならねえ。逆鱗に触れさえしなきゃ今でもきっと、全てのドラゴンと仲良く出来たんじゃねえかと俺ぁ思うんだよ。現に今でも心優しいドラゴンだっている。そう多くはねえが、どうにかテイムさせてくれるドラゴンだって実際にいる。それに俺自身がドラゴンに助けられ、仲良くなった。まっ、毎回会えば喧嘩をしていたけどよ。その話を聴いて、俺はアルガドゥクスを同情しちまった。悪いな、話が長くて。グハハハハハハハ!!」


 本当なら何があったのかもっと詳しくマークに聞きたかった。

 でもそれより、俺だけじゃなく、美羽達も世の中にはマークのおっさんみたいな人物がいる事が知れて良かったと思えた。

 それはとても貴重な体験をする事が出来たマークのおっさんだからこそ思えた価値観だしよ。

 でもいったい何処の誰がアルガドゥクスの怒りに触れたんだ? そして怒らせるきっかけになったのは、いったい何なんだ?

 「聴けば後悔する」と言った。つまり、マークのおっさんはそのドラゴンから全てを聴いている。

 きっとどれだけ頼もうと、おっさんは口を閉ざして教えてくれないだろ。そんな雰囲気を漂わせていた。

 聴くとするならBに聴くしか無い。でもそのBですら、まだ早いと言って教えてくれなかった。

 だから待つ事にした。

 Bが話してくれるその時を。


「あっ、そうだ。ねえカズ、ちょっと良い事を思いついたんだけど」


「ん?」


 美羽は何を思いついたのか、満面の笑みでカズにそう伝えた。


「チーム名の事だよ。カズの部屋に行ったら皆んなで話そ?」


「あぁ、チーム名か。そうだな。それに、俺もお前達に渡さなきゃなんねえのがあるからな」


 渡さなきゃならない物?

 ……まさか! それはきっと例のお金の事ですか?!


 そう思ったのは俺だけじゃないらしく、全員の目が()になって微笑み出していた。


「おっ、ようやく中に入れるな。んじゃなお前ら!」


 ようやく順番が来たみたいで、マークのおっさんは手を上げて俺達に挨拶すると、手下達を連れてギルド方面へと歩いて行く。


「あっ、そうだ。マーク! ちょっと!」


 するとカズが何かを思い出して直ぐに呼び戻した。


「どした?」


 呼び戻されたマークのおっさんはドスドスと足音を立てて走って来る。


「ん、ちょっと頼まれて欲しい事があるんだ」


「なんだ? 珍しいなお前が俺に頼み事なんてよ」


 そりゃそうなるよな。


 頼みがあるって言うから、マークのおっさんも普通に驚いた顔を見せた。


「ニアの事だ。帝国との事が落ち着いたら、南にある山脈に俺が管理している秘密の場所がある。そこにニア達の墓を作ったんだ。だから、ギルドの連中にその墓参りに皆んなで行かねえかと言って欲しいんだ」


「前にお前が言ってた場所か。分かった、ギルドにいる冒険者やハンター達には俺からそう伝えておく。勿論、お前に頼まれたって言っておくぞ?」


「勿論そうしてくれて構わない。言い出したのは俺なんだからな」


「分かった。んじゃな」


 マークのおっさんそう言ってカズの胸に拳を軽く当てる。


「頼んだ」


 カズもマークのおっさんと同じ様に、おっさんの胸に拳を軽く当てる。

 そしてマークのおっさんは笑顔を見せると、ギルド方面へと歩いて行った。


「んじゃ、俺達も行くか。アリス! ヒスイ! ダリア! 来い!」


 3匹のヴェロキラプトル達を呼び。南側の大通りからゲートがある建物へと歩いて行く。

 すると何処にいたのか、セッチがスッとカズの直ぐ右斜め後方に現れた。


「どうしたんだ刹那」


「先輩。謝罪」


 カズはセッチの顔を見ること無く聴くと、セッチは謝罪と言う言葉を口にした。


「何かあったのか?」


「独断で、ガイアを呼びました。数刻後に、他のエンシェント・フォレスト・ドラゴン達と共に来ます」


 どうやら俺達が留守にしている間、セッチはガイアを呼び出したみたいだ。しかも他のエンシェント・フォレスト・ドラゴン達を引き連れて。


「その事はちゃんと警備してる奴等には話したのか? 自衛隊には?」


「既に」


「なら問題無い。お前が必要だと思ってガイア達を呼んだんだろ」


「でも、……ガイアは先輩のパートナーの1体。本当なら私が呼ぶ事が出来ない」


「それでもガイアはお前の頼みを聴いてくれる。何故か分かるか?」


「……いえ」


「なら何故、あの時ガイアはお前の頼みを聴いて戦った? 何故、美羽の頼みを聴いた?」


 それは俺でもなんとなく解るかな。


「アイツが優しいからだけじゃねえぞ」


 俺達はモンスターをテイムする時に、基本的な事を教わっている。

 ガイアはカズがテイムしたモンスターで、基本的にテイムされたモンスターはテイムした奴の言う事しか聴かない。

 そこでどうしてガイアはセッチの言う事を聴いてくれたのか、それを分かっていなかった。

 主人が居ない場合、テイムされたモンスターは誰の言う事も聴かねえが、それでも味方を守る為ならば、モンスターは主人が居なくても戦ってくれる。それでも誰の言う事も聴きはしない。

 それなら何故、あの時ガイアはセッチの言うことを聞いてくれたのか。


「よく考える事だな。それと、いい加減お前も何かモンスターをテイムしろよ。そうすれば答えが分かるだろうさ」


 それは厳しい宿題になるんじゃねえか?


 聞けば、セッチはモンスターをテイムした事が無いらしい。それは、自分が本当に欲しいと思ったモンスターじゃなきゃテイムしたくないと、セッチが思っているからなんだと。


善処(ぜんしょ)


善処(ぜんしょ)じゃねえよったくお前は……」


 だからその宿題の答えにたどり着くには、かなり時間がかかるだろうな。


「あの……」


 すると、カズと手を繋いでいたルカちゃんが話しかけた。


「あぁそうそう。ルカ、コイツは刹那。ルカのもう1人のお姉ちゃんだ。んで、後でまた紹介するが、七海ってお姉ちゃんもいる。刹那、この子はルカ。宜しく頼む」


「ルカです、宜しくお願いします。刹那お姉ちゃん」


「!!」


 その瞬間、まるで雷に打たれたみてえな顔になった。


「どうした?」


 カズが珍しく固まっているセッチに声をかけると。


「……か、……か、可愛い」


 そう言ってセッチはルカちゃんを抱きしめた。


「え? え?」


 当然、抱きしめられたルカちゃんは突然の事でビックリしている。


「妹。可愛い」


 まるでぬいぐるみを抱く様にして、ルカちゃんの頭にセッチは頬を擦り付ける。


 め、珍しいな……。


 でも可愛いと言われ、ルカちゃんは頬を赤く染めながら喜んでいた。


「良かったなルカちゃん」


 ヤッさんがそう言いながら近づくと。


「ガルルルルルルルルル」


 セッチは歯を剥き出しに唸る。


 えぇ……、どうしてそこまで変わっちまうの?


 それを見た3匹のヴェロキラプトル達が互いの顔を見て、軽く喉を鳴らして何かを話しを始めると。


<<グルルルルルルルルルルルル>>


 3匹のヴェロキラプトル達もヤッさんに向かって唸った。


「な、なんでだよ?!」


「玲司先輩。ルカ。接近禁止」


「だからなんで?!」


 するとルカちゃんは笑い出し、それを見たセッチはニッコリと微笑んで手を繋ぐ。


「帰ろう。家に」


「……うん!」


 ルカちゃんを真ん中に、左がセッチ、右をカズが手を繋ぐ。


「納得出来ない!」


 ヤッさんが涙を流して本気で泣いてるから、俺はその肩に手を乗せて優しく微笑んだ。


「の、憲明」


「うん、きっとこの間の件を思い出したんだと思う。あは、はは、あはっはっはっはっはっ」


 この間の件。

 それは俺達男3人で美羽、沙耶、そしてその時はナッチの水浴びを覗こうとした時の事だ……。

 だからセッチはルカにもそうするかもと思い、警戒をしたんだと思う。

 そしてヤッさんもそれを思い出し、やっぱりするんじゃなかったと後悔した。


無事、ゼオルクに到着した憲明達は、そこでマークという名の新キャラと遭遇し、昔の話を聞くことになりました。

そして、刹那がゼオルクにガイア達、エンシェント・フォレスト・ドラゴン達を呼び、戦争の準備を始めようとしている最中でした。

それではまた次回をお楽しみに♪

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