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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第2章 哀しみ
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第60話 悲しき姿


「ガイア?!」


 セッチはまさかここまでガイアが苦戦するとは思ってもいなかったみたいで、驚いている。それは俺達全員同じだ。

 でも、流石はSランクのモンスター、エンシェント・フォレスト・ドラゴンってだけあって、ガイアは頭を振りながら直ぐに立ち上がった。

 でも殴り飛ばされたカノンやクロ、ギルは立ち上がりたくても体が思うように動けないでいる。

 足をガクガクと震わせながら何度も立ちあがろうとするけど、立てない……。

 そんなパートナー達が心配だけど、俺達はヘカトンケイルに(いど)み続けた。


「どうした?! 形勢逆転じゃなかったのかあ?!」


 嫌味タップリなゲス顔をしやがって!


「さっさとくたばっちまえよガキ共! 女は皆んな俺達がタップリと可愛がってやるからよお!!」


 どうする?! どうすればニアちゃん達の苦しみを救ってやれる?!


 俺は必死になって、どうニア達を楽にしてやれるか考えた。

 そこでBが言っていた『アレの弱点は頭だからね?』の言葉を思い出す事が出来た。


 でもどうやって頭を狙えば良い?!


 全部で22本もある腕で攻撃をガードされたり弾かれたりしている。それに腕を1つにまとめると、その腕は伸びたり攻撃力が増したりする。

 その時に隙を狙って攻撃しても、生半可な攻撃でじゃ直ぐ再生し、1つだった腕がまた幾つもの腕に戻って俺達は反撃を食らうことになる。


「……はっ!」


 そこで俺はある作戦を思いついた。


「ガイアはまだまだいけそうだ。でも……」


 チラッとカノン、クロ、ギルを見ると。


 カノン達はキツイか?! どうする……、どうすれば上手く行く? 考えろ俺!


 俺が思い付いた作戦には、遠距離からの攻撃も必要だ。

 考えている間にも、ガイアとヘカトンケイルはルーナファーレの花畑の中で殴り合いの攻防が続いていて、綺麗なルーナファーレの花がその度に舞い散り、それが逆に美しい光景にも思えた。

 下手に手を出せばガイアの邪魔になる様な激しい攻防。

 その時、偶然にも都合が良い状況がやってきた。

 ヘカトンケイルは右腕と左腕をそれぞれ1つにし、強力な2本の腕でガイアに攻撃を仕掛けたのを見て、俺は思わず叫んだ。


「ガイア!! "植物魔法"でなんとかその2本の腕をそのまま(おさ)えてくれ!!」


 ガイアは俺のパートナーじゃ無い。でもガイアは俺の意図に気づいてくれたのかその指示に(したが)ってくれると、体から無数のツタを伸ばしてヘカトンケイルの両腕を縛り上げた。


「そのままブレス!!」


 ガイアは言われるまま強力な炎のブレスをヘカトンケイルに浴びせる。

 ガイアの他に、俺の意図に気づいた美羽達が俺と一緒にガイアの背中にジャンプして、そのままツタを伝ってヘカトンケイルに向かって全力で走った。


「うおおおおおお!!」


 俺は雄叫びを上げ、ツタの上からジャンプすると剣をヘカトンケイルの頭に突き刺す。

 続いて美羽達も次々と突き刺していく。

 剣を持っていないヤッさんは、途中でセッチに刀を1本借りて突き刺し、その後俺達はその場から直ぐに離れてヘカトンケイルの様子を見ることにした。


 頼む、再生しないでくれよ?!


 するとヘカトンケイルは突き刺された頭が溶け落ち、もがきながら苦しみだす。その分、腕も溶けて無くなったのか、さっきよりも半分近く細くなった。


「な、なんて事しやがるこのクソガキ共があ!!」


 ジュニスが目を大きく見開いて驚きつつ、怒りを(あらわ)にしている。

 ヘカトンケイルに囚われていた冒険者やハンター達の魂なのか、霊感がまったく無い俺達ですら見えるレベルでその姿が見えると。解放されたからなのか、「ありがとう」と何度も言いながら夜空へと消えて行く。

 でもまだ囚われている人達がいる。その中に、まだニアちゃんが残っている。


「今、解放してやるから……」


「おねがい」「早く殺して」

    「殺して、殺して、殺して」

「楽にして」「助けて」


 それぞれの頭が想いを伝えてくる……。


「かずや……様……」


 その名を聴いた瞬間、俺達の目から涙が溢れ始めた。

 ニアちゃんはずっとカズの名前を呼び続けている。最初は殺してと言っていたのに、途中から誰かの名前を呼んでいる頭があることに気付いていた。

 その名前をちゃんと聞いてる暇など無い俺達は、今になってそれがニアちゃんがカズの名前を呼んでいたことに気がついて、涙が溢れてくる。

 その後ろでBも涙を流していた。


「この失敗作が!! さっさとそいつらを()れよ!! おいお前ら!! あのクソガキ共を殺して来い!!」


 ジュニスが後ろにいる兵士達にそう命令した。

 その数、約30人。


「まあまだ材料は残っているからまた作れば良いだけの話だ」


 流石に我慢の限界を迎えようとしていたBが、俺達に代わって30人の兵士達をその場で殺してジュニスも殺そうと動こうとした。


 その時。


 嗅いだ事のある甘い匂いが辺り一面に広がると、一瞬で世界が静寂(せいじゃく)に包まれた感覚を感じた……。

 その匂いがなんなのか俺達全員は気づき、余計涙が溢れ出てくるのを止められない。


「やってくれるじゃねえか……、この腐れ外道が」


 聞き覚えのある声が、静寂な空間を破る。

 その声の方にゆっくりと顔を向けると、そいつは森の中からゆっくりと出て来た……。

 音を立てずに一歩、また一歩と歩いてくる……。俺はそいつに恐怖を感じるよりも先に、申し訳なさでいっぱいになっちまってた……。

 そいつが泣いてるBの直ぐ後ろに立った時、俺はようやく謝ることが出来た。


「悪い……、俺達でじゃあの子を救ってやれねぇよ。()()……」


 3匹の殺戮兵器を連れ、ついにカズがやって来た。


どうにかヘカトンケイルから解放させたい憲明達。しかし、それでも彼らはニアの命までは奪えず躊躇しているとついに、化け物と呼ばれ恐れられる男がそこに現れ、悲しい対面をすることになる。

次回、「愛ゆえに」

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