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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第2章 哀しみ
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第59話 VSヘカトンケイル


「おやあ? ヘカトンケイルと戦うつもりかい? はははははは! そりゃ良い! 食い殺してもっと強くなれヘカトンケイル!」


「行くぞ!」


 俺達は武器を手にヘカトンケイルに向かって走り出すと、鎖から解き放たれたヘカトンケイルもこっちに向かって走り出す。


「てえやあああ!!」


 俺は両手剣を力一杯振り下ろし、ヘカトンケイルは右の片腕でそれを受け止めると、上と下から強烈なパンチを繰り出す。


「ちっ!」


 その時、俺の振り下ろした両手剣がヘカトンケイルの手に深々と斬ったけど、剣が抜けなくなる。

 だから俺は両手剣から一度手を離し。2つのパンチをどうにか避けるとヘカトンケイルの腕を斬った時にそのまま抜けなくなった剣をどうにか抜いてから後退することが出来た。


「ガル!」


 沙耶は俺が後退した瞬間にガルを投げ。魔力で軌道を読まれない様に変えながら頭を狙う。

 でもそのガルをヘカトンケイルは2本の腕でキャッチし、握り潰そうとする。


「ガル! "ボム"!」


 沙耶がボムって叫んだ瞬間、ガルは大爆発。

 しかし、ガルは無傷で沙耶の手元に戻って来る。

 実は、カズがガルことデモン・スターを作った時、とある呪文を書いていた。

 その呪文は爆発系魔法の"ボム"で、ガルを中心に周囲を爆発で吹き飛ばす魔法だ。

 沙耶はまだこれと言った魔法を手にしている訳じゃなく、ガル自体が生きた武器であり爆弾。

 でも爆発させる為には魔力を必要とする。その為に、沙耶はあらかじめガルに何度でも爆発攻撃が出来る様にと、毎日何度も自分の魔力をガルに貯めていた。

 だからそのストックがなくなるまでガルは何度でも爆発攻撃を繰り返し使用する事が出来る。


 ほんと、アイツはマジでとんでもねえ物を作ってくれたもんだ。


「へえ、面白い物を持ってるねえ。君を殺したら頂くとしよう」


 ジュニスは物珍しいガルを気に入ったのか、沙耶を殺して手に入れたいと言いやがった。


()れるもんなら()って見なさいよゲス野郎!」


 その通りだ!


 沙耶がジュニスに対してそう言うと、ジュニスは舌舐めずりしてから軽く笑う。


 そして。


「ますます欲しくなった。おいヘカトンケイル、その武器は壊すなよ? その娘を殺したらその武器を僕に渡すんだ。はは、はははははははは!!」


 ジュニスはヘカトンケイルにそう命令を出すと高笑いした。


 ちっ、マジでヘドが出る顔をしやがる。


「あぁでも君達可愛いからさあ、直ぐに殺すのも勿体無いし、君達も僕の相手をして貰おうかなあ。その後はお前達にも回してやるから好きな様に犯してやれ! はははははははははは!! だからヘカトンケイル。そこのお嬢ちゃん達は死なない様にしておけよ? 僕達が楽しめなくなるからなぁ」


 ……あ゛? なに言ってんだこのクソヤローは?


 当然、その言葉に俺だけじゃなく、全員がブチギレた。


「いやあ、でもそばかすの女の子はなかなか良かったなあ! 恋人でもいたのかなぁ? 泣きながら必死に男の名前を呼んでいたけど、体は実に正直でさあ」


 ……おい、ちょっとまて……、そばかすの女の子だと?


 その瞬間、俺達は凍り付いた。


「アソコの具合が本当に良くて気持ちよかったんだけど、直ぐ壊れちまったからそのヘカトンケイルの素材にしちまったんだよなあ。今考えたらちょっと勿体無かったな? まあ君達を手に入れれば別に大した事じゃないか。なあ?! ははははははははは!!」


「て、テメェ……」


 怒りを通り越し、俺はこの時こう思った。


 死んだぞ……コイツ……。


 そのジュニスが笑うと、後ろの兵士達も同様に笑い始める。

 ニアちゃんや他の女性冒険者やハンターはこんなゲスにレイプされた挙句、他の兵士達に壊れるまで犯され続け、最後にはヘカトンケイルを生み出す為の材料にされた。

 その余りの非道さに、俺達は言葉も出なかったし、戦慄を覚えた。

 泣きながら呼んでいたのはきっとカズの名前だ……。

 俺はジュニスを心の底から殺したくてたまらない。同時に後ろにいる兵士達を皆殺しにしたかった。

 でもそれには今、目の前にいるヘカトンケイルをどうにかしなければならない。

 ヘカトンケイルの攻撃をどうにか避けて、ジュニス達をどうやって殺してやろうかと本気で考えた。

 でもその怒りは冷静さを失い、動きを悪くさせた。


「ガハッ!」


 俺はまともにヘカトンケイルのパンチを腹に叩き込まれ、後ろへ大きく殴り飛ばされた。


 クソ痛くて息がまともに出来ねえ!


「ノリちゃん!」


 美羽が心配して走り寄ろうとしてくれる。そこをヘカトンケイルが(はば)んだ。


「そこを……、どけえ!」


 美羽はスピードを活かしてヘカトンケイルの攻撃を交わしつつ、2本のナイフで何度も斬ってから股下へ潜り、俺の元へと駆け寄って来てくれた。


「ノリちゃん大丈夫?!」


「スマン、平気だ……」


 意識はあるし、感覚はある。

 でも……。肋骨を何本かやられた……。


 腹を押さえ、なんとか立つとその間に沙耶、ヤッさん、一樹、セッチがなんとかヘカトンケイルの攻撃をかわしながら反撃をしていた。


「あんなパンチ1発で倒れる訳にいかねえだろ。ニアちゃん達は、俺なんかより、もっと苦しかった筈なんだからよ」


 そう言って俺は雄叫びを上げ、両手剣を持ち上げるとヘカトンケイルに再び挑んだ。

 そこでヘカトンケイルは高くジャンプすると、大地に向かって22本もある腕で渾身のパンチを叩き込む。その瞬間地表はその威力で破壊され、射撃波と共に俺達は吹き飛ばされた。


「ぐあああ!!」

「きゃぁぁぁ!!」


「ははははははは!! その調子だヘカトンケイル!! 男はいらねえからさっさと殺したまえ!!」


「クソッ!」


 ジュニスが笑いながらそう命令すると、ヘカトンケイルは吹き飛ばされて倒れている俺に、今度は11本の左手全てを使って振り下ろす。

 その時、思わぬ邪魔が入って俺は助かった。

 ガイアが俺の盾となって護ってくれたんだ。


「ガイア……」


 盾となって俺を護ると、今度は回転してヘカトンケイルに強力な尻尾を叩き込む。


<グアアァァァァァ!!>


 そして、ガイアはヘカトンケイルに噛み付くと、何度も振り回しながら地面に叩きつけ、それを見てジュニスは驚いていた。


「何故ここにエンシェント・フォレスト・ドラゴンがいる?!」


 ジュニス達はガイアに気が付いていなかった。その理由はガイアの体は苔や草、ツタ等の植物で完全に(おお)われているからってのもある。

 (おお)われていないのは下顎や喉と腹。ガイアはその場で腹を下にして寝そべる事で、自然とジュニス達を誤魔化していた。


「形勢逆転。この子はガイア。私の兄のモンスター」


 セッチがどこか誇らしげに助けてくれるガイアを見て言った。


「まさかそんな奴が隠れていたとはねえ、正直驚いたよ。でもぉ?」


 ジュニスは確かに驚いていたけど、また直ぐにゲスな顔へ戻った。


「まさか本物のエンシェント・フォレスト・ドラゴンを(おが)めるなんて思っても見なかったなぁ。そのランクはS以上。ヘカトンケイルでじゃ勝てない相手だけどさぁ、それでも勝てると思っているのかな? はは、ははは、はははははははははは!!」


 するとヘカトンケイルは起き出すと、ガイアに向かって全ての腕を使い、喉を2本の腕で締め上げながら更にガイアの両手を封じ、パンチ等の連続攻撃をし始めた。

 それにガイアが噛み付いた場所がもう再生している。


 再生能力系のスキルかなにかか?!


「僕達のヘカトンケイルは"自己再生"能力が高くてねぇ。幾ら攻撃しようとも再生して元通りになっちゃうんだよねぇ」


 それに腕も沢山ある為に、流石のガイアでも苦戦を強いられる状況になっちまった。


「ガイア!! "ブレス"!!」


 セッチがガイアにそう叫ぶと、口を大きく開いてそこから強力な炎が吐き出される。

 ヘカトンケイルはブレスで体を焼かれながらもガイアの首を締め上げ、今度は頭と顎を2本の腕で押さえつけた。

 ガイアは唸り声を上げながら必死に抵抗するが、ヘカトンケイルの幾つもある腕には敵わない。


「ガイア! "植物魔法"で応戦!」


 ガイアはセッチの指示に従い。体を(おお)う植物の中から(つる)性植物を何十本と伸ばすとそれを絡ませ、4本の大きな手を作ってから今度は拳の様に握りしめて攻撃。

 それを見た俺はカノンを呼んだ。


「ガイアを援護してくれ!」


 カノンは自身のツタを伸ばし。そこに咲く花に光が強く集まると、光のビームがヘカトンケイルの左腕に向けて発射し、爆発が次々と起こる。


 援護してくれと言ったけど、まさかそんな技を持ってたなんて……。


 それでもヘカトンケイルには余り通用していないのか、(わずら)わしそうに11本の内、9本の左腕が1つになりながらその腕をカノンに向かって伸ばす。

 カノンがその手に捕まりそうなところで、クロとギルが左右からチェーンや触手を絡ませて阻止。でも力量が違う為に、ヘカトンケイルは横に振ってクロとギルを殴り飛ばしてカノンも殴り飛ばされた。


「カノン! クロ!」

「ギル!」


 俺と美羽はパートナー達の名を呼んで、無事なのか心配になった。


「ははははは!! どうだい?! これがヘカトンケイルの力さ! ははははははははははは!! ははは!! はっ……ん?」


 ジュニスが笑っていると、足元に違和感を覚えたのか下へ視線を向ける。

 そこにはとある伏兵が潜んでいた。


「いってえぇぇぇぇ!!」


 一樹のパートナーであるブラックスコルピオのダークスだ。

 全身真っ黒だからか夜の闇に紛れ。ジュニスの足元まで簡単に近づけたから、ジュニスの爪先(つまさき)に尻尾の毒針を思いっきり突き刺していた。


「この糞虫があ!!」


 ジュニスはダークスを踏み潰そうとするけどよ、刺された痛さと毒の痛みでしゃがみ込んでダークスはそのまま一樹の元まで逃げた。

 一樹はジュニスにしてやったぜと言いたげな顔の微笑みだ。

 それを見たジュニスはゲスな顔から一変して、激怒した顔で睨みつけた。


「このクソガキが……、何していやがるヘカトンケイル!! さっさとブッ殺せ!!」


 命じられたヘカトンケイルは11本の右腕を1つにすると、ガイアの顎に強力なアッパーを叩き込まれ、それを食らったガイアは巨体を宙に浮かし、ルーナファーレが咲き誇る花畑へとその巨体を落とした。


「ガイア?!」


ゲスの極みとも言えるジュニス。

ヘカトンケイルの材料にする前に、ニアや他の女性冒険者やハンター達を弄んでいたことが発覚。

それを知った憲明達の怒りは最高潮に達し、ガイアもその戦いに参戦。

次回、「悲しき姿」に御期待下さい。

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