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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第2章 哀しみ
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第58話 悪意


 ジュニスって奴の後にある森の中から、赤い色の鎧を装備した数人の兵士が出てくる。

 その内の1人がジュニスの耳元で何かを話すと。


「そうか。んじゃ手始めに彼女達に相手をしてもらおうかな」


 ゲスな顔で俺達を見下しながらそう言うと、森から多くの兵士に鎖で動きを封じられた何かを連れて来た。

 俺はそれを見て、目を(うたが)った。


「なんだありゃ……」


 頭が11個で腕が22本ある人間の様でいて、でもモンスターにしか見えない何か。

 身長約5メートル。オスかメス、どっちかしんねえけど裸だ。

 モンスターの頭ひとつひとつが奇怪な(うめ)き声で「たすけて」、「殺して」や。高笑いをしている頭もある。

 その頭には髪の毛があるのと無いのと様々。

 俺達はそのモンスターらしい何かを見ていて、気分が悪くなっていた。

 でもそれがモンスターだとしても、明らかに普通じゃねえってことはさすがの俺達でも解る。


「どうだいこの姿。力強そうなモンスターだろう?」


 ジュニスは両手を広げて嘲笑(あざわら)う。

 その時、俺はそのモンスターの頭の中からあり得ない顔があるのを見つけてしまった。


「おい……、なんであの子の顔があるんだよ……」


 偶然か? たまたま似ているだけか?

 それにしても似すぎてる……。


 俺達はそこまで知り合いじゃ無い。でも俺達はその人物が、どんな奴と仲が良いのか十分知っている。

 そして俺はある事を思い出し、もしかしてと考え始めた。


 予想が外れていてくれれば良い。恥ずれていなければ、……アイツを、アイツを完全に激怒させる事になっちまう! そうなりゃさすがの俺達ですら止めることが出来ねえ……。頼む、外れててくれ!


「なあ、そのモンスターはおっさん達が捕まえたのか? それとも……」


 俺はジュニスがどう言うのか緊張しながら返答を待った。

 ジュニスは首を傾げ、後ろにいるモンスターの方へクルリと回転して見たあと、上半身だけを動かし、俺とモンスターを何度も交互に見る。

 そして、ようやく口を開いた。


「ははぁ、もしかしてこの中に、()()()()()()()()()()()()()?」


 そう言って、ジュニスはよりゲスな顔で俺を見つめた。


「おい……、それって……、どう言う意味だよおっさん……」


 おい……、頼む……、嘘だって言ってくれよ? なぁ、嘘だよな?


 俺は既にジュニスが答えを言ったのと同じだと気づいたけど、それをどうにか嘘でしたと言ってほしかった……。

 俺は怒りをなんとか必死に押し殺そうとするけど、両手の拳が怒りで震えるのだけは止められない。

 よく見れば、他にも会ったことがある人達の顔……、頭もそこにはあった。


「このモンスターは()()()使()()()生み出されたんだよ。生み出す為には生きた人間が必要でねぇ、生み出すのに苦労したんだぁ。その為に、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。だから知り合いでもいたかな?」


 聴きたくなかったし、知りたくもなかった情報が耳に入ってくる。

 つまり、そのモンスターは()()()()()()()で、それもゼオルクの街の冒険者やハンター。

 俺は最悪な形の予想を当てちまった瞬間だった……。


「これは最早人間なんかじゃない。モンスターだ」


 ジュニスはそう言うと語り始める。


「君達は"ヘカトンケイル"を知ってるかい? 50の頭を持ち、100の手を待つとされる巨大な魔人を。僕達はそのヘカトンケイルをようやく作り出す事に成功してねぇ。このモンスターはそのヘカトンケイルなんだよねぇ、まぁまだ数が足りないから? これからまた冒険者やハンターを捕まえてコイツと更に合体させれば完璧なヘカトンケイルになるんだよねぇ」


 最悪だ……、どうしようもねえくらいの最悪が今、目の前にいる。

 俺達の怒りは頂点に達していた。


「よくも……、よくも()()()()()()……!」


 そう……、見知った顔の人物はニアちゃんだったんだ。

 ニアちゃんはまだ人格が残っているのか、俺達に「殺して」と泣きながら言ってくる……。


「んなこと……、んなこと俺達に出来るわけねえだろニアちゃん!!」


 俺は涙を流し、その怒りを爆発させた。


「なん……て、酷いことするのよ……。この人でなし!!」


 美羽も涙を流して泣き()きながら怒鳴る。

 沙耶とヤッさんとセッチの3人は、余りに衝撃的な事で絶句(ぜっく)しながら泣く……。

 俺、そして一樹と美羽はその怒りを押さえつけられないでいた。


「テメふざけんなよ!! なんでニアちゃん達をそんな姿にしやがった!! ニアちゃんがテメーらに何したって言うんだよ!!」


「流石に虫唾(むしず)が走るね……」


 一樹が怒鳴り終わると、Bが怒りを(あらわ)にして前へ出る。


「ヘカトンケイル。あぁ、よく知ってるさ。あの忌々(いまいま)しい神があの方を倒す為に生み出したモンスターだからね」


 神が生み出しただ?


「ヘカトンケイルを生み出すのに、100人の人間を犠牲にしてまで創り上げたんだよ。まさかその時の方法がまだ残っていたなんて……。せめてこのボクが終わらせてあげるよ」


 するとBは凶悪は形をした大斧をどこからともなく出した。


「待ってくれB……」


「……なんだい?」


 後ろから静かに来るBが横に来た時、俺はその手を掴んで止めた。


「お前は、手を出すな……」


「正気かい? アレは既にキミ達の手に余る存在だよ?」


 んなもん……、言われなくても解ってんだよ……。


 それでも俺は、顔を見ていなくても分かるくらいに怒っているBの手を掴んで離さなかった。


 その怒りは神への怒りなのか、それとも……。


「お前が出れば正体がバレるかも知れねえんだぞ。そうすればアイツが困る事になる。アイツが好きなら、アイツの許可無しで動くな……」


「でも憲明……」


 Bはその時、俺が顔を(うつむ)かせ、怒りと涙を必死に(こら)えている事に気がついてくれた……。


 悪いB……、ここはカズの為にも(こら)えてくれ……。


 俺のと言うより、Bは下手に手を出せばカズに迷惑をかける事になると思ってか、今回は下がる事にしてくれた。


「……アレの弱点は頭だからね? もしもの場合はボクは和也さんに怒られてでもキミ達を助けに入る」


「ありがとう」


 本当にありがとう。


 Bのその気持ちだけで俺は嬉しかった。


「今、俺達が君を楽にしてやる」


 俺の言葉に美羽達は泣きながらも、覚悟を決めた顔になって俺の横に並び立つ。


最悪の予想が的中してしまった憲明。

彼らにとって人生で初めて起きた最悪に、どう立ち向かうのでしょうか。

次回のヘカトンケイル戦をどうぞお楽しみに!

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