第51話 熊と鹿
カズは古生物にも詳しく、俺も好きだからよく本を借りて読んでることがある。
その中で、新生代のヨーロッパから中国にかけて生息していた古代種、"ユークラドセロス"と言うシカが存在していたらしい。
その角は最大2メートルにもなり。体高1.8メートル。全長2.5メートルになる大型の哺乳類。
最大の特徴は枝葉の如く、根本から幾重にも枝分かれしている様な角。
俺はそのユークラドセロスのイラストとかを見て、格好いいと思って好きになったいた。
中には"サーベルタイガー"とか格好いい奴もいて好きだけどな。
そのユークラドセロスに似たシカのモンスターを、俺はテイムし。デーモンズ・ベアーの子供もテイムしちまっていたから、皆それを見てビックリしていた。
特にセッチは興奮していた。
「このシカのモンスターはもしかすると。ユクトルセルア。こちらの世界では古代種として認知されているモンスターですが、今は絶滅してしまった種に似ています。化石として見つかっているユクトルセルアの角は。最大5メートル。もしかしたら、その生き残り。あるいはその子孫。またはそこから今の時代に適応して進化した新たな種」
セッチは目を輝かしながらスラスラと語り始めていた。
「ユクトルセルアとは、[神聖なる森]って意味だそうです。しかもどうしてそんな意味の名前で呼ぶのか、今では解らないそうなんです。そしてこのモンスターの体には、蔓性の植物が体に寄生。または共存でしょうか。首の根本と肩から生え、体を巻き付いたり角にまで伸びて巻き付いて垂れてますね。そしてこの植物に咲く大きい、白やピンク、濃い青や水色がまばらに入った不思議で綺麗な花。こんなの見た事ありません……。青とピンクが重なる部分は若干薄い紫色にも見えますね……。何でしょうか……。形からして"コルチカム"と言う、向こうの世界に咲く花に似てもいますけど……。美羽先輩。鑑定を使ってこの子の種族名を見てもらっても良いですか?」
「……う、うん」
セッチは興奮どころか大興奮状態だ、それがどこかカズに重なる。
だからなのか、あの美羽も若干引いてる……。
「鑑定……」
セッチに頼まれた美羽は、俺がテイムしたシカ型モンスターを鑑定で見る。
今の美羽ではまだ羊皮紙とかに転写する事は出来ないそうだけど、ある程度強いモンスターでも見る事が出来る様にはなったらしい。
そしてその結果。
「刹那ちゃん凄い。大当たりだよ! この子はユクトルセルア。性別はメス。レベル35のランクC! ステータスも結構凄いね。その中でも防御と敏捷が抜群に高い。あっ! しかもスキルもなかなか良さげなの待ってるよ! スキル。"防御強化"、"敏捷強化"、"宿木"、"気配探知"って持ってるし。ユニークスキルだと。"花魔法"、"月ノ女神ノ祝福"。これってどんなスキルだろ? でも凄い! 刹那ちゃんの言う通りだよ!」
それを聞いてセッチはますます目を輝かせてユクトルセルアを見つめる。
俺は俺で驚いていたけどな。
だって、絶滅したかもしんねえ古代生物を、俺はテイムしちまったんだ。
「凄い……、絶滅したと思われていた古代種が生きていた……。カズ兄いのヴェロキラプトルの方が凄いけど。まさかこんな……、まだ街に近い山の中で出会うだなんて……。感動で涙が出そうです……」
それは素かな? と思い。今のセッチを見て、俺達は微笑んだ。
「いいなあ……、凄いなあ……、憲明先輩が羨ましい……。え? でもなんでよりによって憲明先輩がテイムしてんの? なんで? どうして? 普通こうゆうモンスターは女の子がテイムするもんじゃないの? え? 違うの?」
軽くディスりやがる……。
俺は天を仰いで泣きたい気持ちを押し殺した。
「憲明先輩この子下さい」
は?! なに言ってきやがるんですのこの子?!
俺は思わず驚いた。
「だ、ダメだってセッチ! そいつ、なんか知んねえけど俺に懐いてさ。テイムしてくれみたいに頭をこっちにやったから本当にテイム出来て俺も驚いてよ。それに、俺が好きな古生物に似てるからダメだって!」
そう言って俺は両手をクロスして、バツを作った。
「……ケチ」
「はうぅ……」
セッチに無表情でそう言われ、俺はまた天を仰ぐ。
「でもホントだね。なんでこの子はノリちゃんにテイムして欲しかったんだろ?」
美羽の疑問はよく分かる。
今の今まで絶滅したと思われていた生物とたまたま出会い。そしてテイムして欲しそうにやって来たからな。
「それで? 名前はどうするんだ?」
一樹が名前をどうするんだと言うから俺は考えた。
メス、シカ、絶滅していなかった古代種、う〜ん……。
悩んだ……。でも思い浮かばない……。
そこで一向に決まる様子が無いからか、美羽が「取り敢えず水を確保したし、ベースキャンプに戻ろうよ」と言うから戻った。
戻る時はモンスターに襲われる事無く、無事にベースキャンプへと辿り着き。俺は今だに悩みながらも、器用に夕飯をどうしようかとも悩む。
すると、そこへ思わぬお客様が現れた。
<クルッ! クックックッ>
この鳴き声は……。
「ダリア? もしかしてダリアなのか?」
鳴き声の方へ顔を向けると、そこには黒い模様を持つヴェロキラプトルのダリアが1匹だけたたずんでいた。
「どうしたんだよダリア? カズは?」
<クルルッ、グアウッ!>
「ん?」
ダリアにハーネスが付けられ、そこには何か荷物も一緒に括り付けられている。
荷物を見るとそれはリュックだった。
セッチがダリアに近づき、そのリュックを外すとダリアはまた軽く鳴き。来た方向へと走り去って行く。
俺達が中に何が入っているのか確認した時。俺達は泣きながら今はもう姿が見えないダリアに対して敬礼をし。感謝の言葉を述べた。
「ありがとう、ダリア。ありがとう、カズ!」
<グアウッ! クルックックックッ……>
俺の言葉が聞こえたのか、ダリアの鳴き声が遠くから聞こえた。
リュックの中にあった物。それは!
「感謝の気持ちを忘れずに。頂きます!」
「「頂きます!」」
俺達がそう言って食べるのは。
カレー。
そう。カズはカレーを作り。ワザワザそれを一度冷ました物をダリアに持たせて届けてくれたんだ!
ありがたい、マジでありがたい!
でもダリアだけで来たとは考えにくいな。
恐らく一緒にアリスとヒスイも来て、近くまで来たところをダリアだけで来させたのかな?
だがそれを考える前に今は目の前のカレーだ!
「美味い! 御代わり!」
「自分でよそいなさいよ」
俺は一皿目を即効で食べ。美羽に空の皿を渡そうと前に出したけど。美羽に自分でやれと言われ、俺は自分で白米を乗せ、その上にカズ特製のカレーを掛ける。
「あっ! おいちょっと待てお前! 憲明お前乗せすぎだろ! カレーもかけ過ぎだ!」
「うるへぇ〜! 早いもん勝ちだこのヤロー!」
多く取りすぎるって、一樹が俺に怒って言うと、取りすぎた分を寄越せと言い出した。
「全くキミ達は。食事はもう少し静かに楽しむべきじゃないのかい?」
Bにそう言われ、確かに食事中はもう少し静かにすべきだと反省し、俺達は「すまん」と口にした。
……が!
「B! お前いつの間にそんな大盛りにして食ってんだよ?!」
いつの間にかBの手元にあるカレーが、誰よりもかなりの大盛りにされ。それを黙々(もくもく)と食べていた!
「ぼ、僕のカレーがあ!!」
どうやらヤッさんが気付かないうちに、Bが少しづつ奪っていたのか!
「なに? 今憲明が言ったじゃないか。早い者勝ちだとね」
目を光らせ、Bは容赦無く食べやがる!
「て、テメー!」
「おっと〜」
俺はBのカレーを奪おうと飛び掛かる。
しかし、Bは食べながら木の上にジャンプし。美味しそうに食べ続けるじゃねえか!
「あっ! チクショー……、降りて来い!」
「ふっふっふっ。そんな事を言ってて良いのかい?」
「なに?!」
不敵な笑みを見せて食べるBが、スプーンで俺にとある方向を指す。
そこには。
「あ〜〜〜!! 俺のカレー!!」
俺がよそったカレーを、今度はヤッさんと一樹の2人が奪っていた。
「このヤローー!」
恐竜が生き残ってるのだから、その後の時代に生息した古生物も生き残っていても、なんら不思議は無いでしょう。
どうも皆さん、Yassieですよ✨
皆さんは生き残ってくれてたら嬉しい古生物はいますか? 感想とかに書いてくれたら、もしかしたらそれを採用して、どっかのタイミングで出すかもです✨
ちなみに僕の中ではこれは絶対に出す! って古生物が結構いますねwww
では、面白かったり続きが気になるなら、いいね、ブックマーク、⭐、感想を宜しくお願いしますね♪