第50話 新たな出会い
時刻は昼3時過ぎ。
俺達は手慣れてきたからなのか、ベースキャンプの設置に手間取る事なく余裕で終わらせる事が出来た。
次に、夕飯の支度に取り掛かる。
そして、カズの存在がどれだけありがたかったかを認識する事になる。
「晩飯って言っても何にするよ?」
俺の質問に、美羽達は悩んだ。
「やっぱ鳥か何か捕まえて焼く?」
美羽は良く、カズが沙耶に頼んだり自分で鳥を捕まえてはそれを捌き。夕飯のご馳走を用意してくれていた。
しかし、今はそのカズが不在だ。
「食料は何を持ってる?」
俺がヤッさんに聞くと。
「取り敢えず、パンと米。後は一応、干し肉」
ヤッさんは食料の入った鞄の中を確認。
「水はいつもカズが魔法で用意してくれたり、川を見つけてそれを使ったりしてくれていたからなぁ……」
今持っている水は人数分用意してある水筒の中にある水のみ。
うん、足りないな。
「水ならある。ここからもう少し登った所の奥に、小さな渓流がある」
「「おお〜!」」
以前、セッチがカズに連れられて来た時に、その場所をカズが見つけ。その場所でベースキャンプを設置したとも話す。
「んじゃそこにベースキャンプを設置すりゃよかったんじゃね?」
そう思った俺はセッチにそう質問すると。
「先輩が居れば可能。でも、いないから難しい」
「なんでだ?」
「行けば分かる」
ん~? 何があるんだ?
セッチは行けば分かると言って、その場所を案内してくれる事になった。
……そして、その道のりはそれなりに険しかった。
「沙耶!」
「了〜解!」
俺は沙耶に指示を出し、アーチェリーで攻撃させる。
俺達は足場の悪い山の中腹で、"コマンドウルフ"って呼ばれる狼型モンスターの群れに囲まれていた。
「コマンドウルフ。Eランク。個々の能力は低い。でも統率のとれた群れだから厄介」
と、セッチが説明をする。
灰色の毛に、体長は訳120センチ程の小型モンスター。
そのモンスターに襲われても、Bは俺達の手伝いをしなかった。
「手伝っても良いけど、それじゃキミ達の為にはならないからね。だからいざと言う時しかボクは助けないから頑張ってね」
Bは俺達の邪魔にならないようにと、木の上で俺達を応援してくれる。
「逆にありがてえよB! そうじゃなきゃ俺達が強くなれねえからな! うおぉぉりゃあぁぁ!」
俺はBに感謝し。両手剣でコマンドウルフを真っ二つにする。
美羽は素早い動きで翻弄しながら、2本のナイフで攻撃。でも浅かったからか、コマンドウルフに反撃されそうになったところをヤッさんがハンマーで叩きのめす。
一樹は槍のリーチを生かし、飛び掛かって来たところを串刺しにしたり。槍を回転させて棒の部分で他のコマンドウルフを殴ったり、距離を縮めさせないよう考えて立ち回っている。
沙耶はガルを使えば足元が崩れて大変な事になると考えてか。木の上からアーチェリーで狙いを定めて皆んなの援護に徹する。
セッチは素早い動きで2本の日本刀で斬り倒しながら銃も使って攻撃。
Bはそんな俺達を見て関心してくれていた。
「へ〜、凄いな。ちゃんと周りの動きを見て応戦してる」
へへっ、伊達にあの凶悪無慈悲なカズに、毎日シゴかれてねえよ。
俺が剣でガードしていると、指示を出してもいないのにクロがチェーンを使って援護をしてくれる。
「助かったぜクロ!」
<ガウッ!>
最近、俺がクロにして欲しいことを理解してくれているな。
勿論ギルもだ。
「ギル!」
<ギギギ>
体から無数の触手を伸ばすと、コマンドウルフ数体を薙ぎ倒す。
「はあぁぁぁ!」
そこへ美羽が走り。ナイフでコマンドウルフを倒す。
「ありがとうギル!」
<ギウギウ>
そうしてようやくコマンドウルフの群れを倒し。生き残ったコマンドウルフ達は逃げて行った。
「いや〜、なかなかよかったよ」
Bが微笑みながら拍手し、俺達を労う。
なんかBに誉めてもらうと、嬉しいな、へへっ。
その後。大きな岩を越えたり、崖の上を歩き。道のりがこんなに厳しいとは思ってもいなかったけど、どうにか渓流にたどり着く事が出来た。
「到着」
「こ、ここか~」
俺は目を輝かせた。
「なんて綺麗なんだろう……」
美羽はその美しさに感激している。
「うわ〜、これじゃここにベースキャンプは無理そうだね〜」
沙耶は何故ここにベースキャンプが張れないのか理解した。
そこはとても美しい渓流で。表現するなら、日本のマジで山奥とかに行ったらようやく見れそうな、幻想的な場所だった。
でもその周りには大小様々な岩が転がり。大小問わず、色々なモンスターが水飲みにやって来ている。
スライム。頭にユニコーンみたいな一本の角を生やした小さい熊型のモンスター。
そしてそこには大きな角を持つ、シカみたいなモンスターと、ここに来る途中で戦ったコマンドウルフの別の群れと思われるのもいるし、様々だ。
ここにいるモンスター達は争う事はしないで、互いに穏やかに過ごしていた。
「先輩だったら周りのモンスター達に。今夜はここで過ごさせろと言える。それだけモンスター達も。先輩を敵に回したく無いと。本能で分かるから。だから先輩がいれば。他のモンスター達と。ここで仲良く過ごす事が出来る」
「あぁ、そりゃ間違いねえな」
セッチの説明に、俺は素直に納得する事が出来た。
ただここを独り占めするんじゃない。ここは元々モンスター達の憩いの場だ。
もし、下手に俺達がここでベースキャンプを張れば、たちまち周りのモンスター達に怒られるだろうな。
ベースキャンプを貼りたいなら、周りのモンスター達を納得させる事が出来るだけの力が必要だろ。
カズはそれが出来る。
そして、ただ力でその場を奪うのでは無く。力を示してその場を借りる事を選択する筈だ。
簡単に言えば、アパートの部屋を1日貸してくれと言ってるようなもんだろ。
そうする事でお互い干渉し合わない。
今の俺達では到底出来ないと理解出来た。
「はは、やっぱアイツには敵わねえな」
俺はそう言って笑い。渓流へと向かうとモンスター達に水を分けてくれと頼み込んだ。
「え? 何してんのアイツ……。普通に黙って水を汲めば良いのに……」
なんだか一樹が俺に呆れてるようなことを言ってんな。
その言葉に、皆んなも苦笑いしてるし。
でも、どうして俺がそうしたのか。Bは理解してくれていた。
「そう。それもまた1つの選択だよ。キミはこの場にいるモンスター達と仲良くしたいんだよね」
勿論そうだ。
こんだけ綺麗な場所にいるモンスター達と、なんでわざわざ喧嘩してまで水を取らなきゃなんねえんだって話だ。
すると俺の元に、1本角の小さい熊型モンスターが近付いて来て、その場で座り込んで俺の顔を見上げる。
「ん? どうした? お前1人なのか?」
<クウ>
俺は出来るだけ優しく尋ねると、小熊のモンスターは俺の言葉を理解出来るのか、コクりと頷く。
「そっか。んじゃ俺と来るか?」
小熊のモンスターはスッと立ち上がり、俺の足元までやって来る。そこで俺はその小熊のモンスターを、その場でテイムすることにした。
暫くした後、俺は嬉しさの余り、満面の笑みを浮かべながら戻ると。
「あ、アンタ……」
「ん? どうした?」
戻ると美羽は口をあんぐり開けている。他の皆んなもそうだ。
どうしたんだ?
俺がキョトンとした顔になると。
「あはっ! あはっ! アッハハハハハハハハ!」
Bは腹を抱え、涙を流して思いっきり笑い転げる。
「な、なんだよ……、どうしたんだよいったい」
どうして皆んなが唖然とした顔で驚き。Bはどうしてそこまで笑うのか不思議だった。
「だっ、だってアンタ……」
「ん?」
美羽は手を震わせながらとある方に指を指す。
「だってアンタ……」
「だからなんなんだよ?! 早く教えてくれよ!」
美羽が「だってアンタ」を連呼するので俺は軽く苛立ち。早く教えてくれと頼んだ。
「アンタ! その2匹はなんなのよ!」
「ん?」
後ろを振り向くと。そこにはテイムしたばかりの小熊モンスターがちょこんと座り、その横に大きな角を持つシカ型のモンスターもいた。
「あっコイツ等? うん、テイムしちった。ははははははは!」
俺は右手で後頭部を押さえながら笑った。
「アンタそれ! デーモンズ・ベアーの子供よ?!」
「ははは……は……、……え?」
デーモンズ……ベアー?
……よく見れば小熊のモンスターには腕が4本……、ある。それに目が……、6個。
あんれ~? ……え? ……マジで?
普通の小熊型モンスターかと思えばまさかの……、ですが。それで憲明は新たなパートナーが増える事が出来るんですね。
どうも皆さんYassieですよ✨
この後の話が続くにつれて、衝撃的な展開がこの後待ち受けています。
果たして、憲明達はその衝撃に耐えられるのでしょうか? そして、和也もまたその衝撃に耐えられるのでしょうか?
面白い、次回も気になるって方々は、いいね、ブックマーク、⭐、感想を宜しくお願いします!!