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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第2章 哀しみ
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第47話 寂しさゆえに……<和也side>


 部屋に誰かが入って来る。

 気配を感じた俺はその気配に。


「今は1人にさせてくれないか? ()()()()


 今は放っておいて欲しかった。


「どうかしたんですか? 和也さん……。何故泣いているのですか?」


 ……何も聞かないでくれよ。


 俺が泣いている事を察したベヘモスは、心配そうな顔で見つめてくる。


「……ちょっとな……。大丈夫だ、(しばら)くすれば落ち着く……、だから今は放っておいてくれないか……」


「………」


 それでもベヘモスは離れ無かった。

 ベヘモスは俺の側に来ると。俺の腹の上に置いた左手をそっと握り、そのまま頭も置く。


「何があったのか存じません。ですが、どうか此処(ここ)にいさせて下さい」


「……分かった」


 俺は顔に乗せていた右手を動かし、ベヘモスの髪を優しく撫でると、ベヘモスはとても嬉しそうな顔をしやがる。


「ベヘモス」


「はい」


 俺はただ一言、「すまない」と言って起き上がり。ベヘモスを抱きしめた。


「か、和也さん?」


 唐突(とうとつ)だったからかベヘモスは少し驚きつつ、それでもどこか喜んでいる。


「あっ……」


 俺はベヘモスの首筋にキスをすると、ベヘモスの顔が紅葉していく。


 可愛いなお前……。


「ベヘモス」


「あっ……はっ、はい……」


 ベヘモスが右手で俺の頭を抱き。左手で俺の肩甲骨に置いて抱き締めてくる。


「ベヘモス」


「んっ……」


「ベヘモス」


「はあぁ……、はあぁ……」


 何度もベヘモスの名を呼びながらその首にキスをしたり舐めたりして、その度にベヘモスの息が荒くなっていく。

 俺は頭を離し、ベヘモスの目を見つめ。


「ベヘモス。可愛いよ、ベヘモス」


「う……れしい……です」


 ベヘモスの唇と重ね合い、舌を絡ませる。

 ベヘモスは両手を離し、着ている軍服をゆっくりと脱ぎながら俺に声をかけてきた。


「ボクはアナタが好きです。大好きです。心からお(した)い申し上げます。ボクの心と体は全てアナタだけの物です。だからお願いです。もうそんな寂しい顔をしないで下さい」


 俺……、寂しそうな顔をしてたのか……。



 ……夜の7時頃。


 既に裸になっているベヘモスを、ソファの上で俺は抱きしめながら胸にキスをしていると。


「なによ、心配して来てあげたのに、もう他の女に乗り換えたの? カズ」


 夢中になっていた俺達は、そこにいる女の気配にまったく気がついていなかった。

 俺は思わずビックリして、すぐにその女を(にら)みつけた。

 なんせそこにいたのは(まね)かれざる客だからだ。


「何しに来たんだ? お前とは()()()()()()()()()筈だろうが。"志穂(しほ)"」


「相変わらずね」


 "雨宮志穂あめみや しほ)"、17歳。

 髪を茶髪にしたゆるふわパーマのセミロングで、モデルの様な美人。だが性格は勝ち気で我儘(わがまま)

 志穂はサーちゃんの親友であり、俺達の先輩。


「なに? せっかく()()()が心配して来てあげたのに、そんな事を言う訳?」


 そう……、コイツは俺の元カノだ。

 コイツの性格は組員全員が知ってて、恐らくそれ故に組員達は余り強く言えなかったから部屋まで通しちまったんだろ。

 もう一つの理由は、志穂によって結構な数の組員が泣かされていると言うのもあるな。

 なんせコイツを怒らせたら酷いことになる。


「元カノだからって普通に来るかよ?」


「なに? お楽しみ中に邪魔したから怒った?」


 は? なに言ってんだコイツ? 普通別れた男の家に黙って来るか?


 志穂は不敵な笑みを浮かべ。腰を左へくの字にし、右手を腰に当てて色気を出した立ち方で俺とベヘモスを見る。


「和也さん……」


 当然、ベヘモスは怒っていた。

 黄色い瞳を若干縦に細くし、目を見開いて志穂を睨む。その目はこの女を殺して良いですかと言っていた。

 それに気づいた俺は、志穂を見ない様にベヘモスの頭を軽く自分の首に押し付けた。


「帰れ志穂。俺とお前はもう関係無いだろ。俺が何をしていようと、お前が何をしていようと、お互い関係無いだろ」


「だから心配して来てあげたって言ったでしょ? 桜にボコボコにされた挙句、フラれたんでしょ?」


 ……喧嘩を売りに来たのかコイツ?


 志穂は見下している様な目で俺を見て。どこで聞いたのかサーちゃんとの事を出してきやがった。

 俺はその時、思わず殺気立ち。今度は逆にベヘモスが俺を落ち着かせる為に頭を抱きしめてくれた。


「まっ、心配して損した気分ね。それとその子、まだ幼い様に見えるんだけど大丈夫なの?」


 幼い。その言葉にベヘモスは反応し、再び志穂を睨みつけた。それも殺気を放って。


「ボクを幼いって言ってくれるなよ? ()()()()が」


「下手にそんな事を言うな。B()


 俺はベヘモスを、あえてBと呼んで落ち着かせようとした。


「ねえ、今なんて言ったの? 小娘風情? 私より年上だとでも言うの?」


 志穂も自分より年上には見えないベヘモスを睨む。


「なに? 童顔で年上には見えないんですけど? それになに? ビーって。あだ名かなんかな訳? 蜂ですか?」


 志穂は更にそう言うと鼻で笑い。ベヘモスを馬鹿にし始めた。


「ましてやそんな体型でよく年上だって言えるわね。貧相な体してさ。胸が無い様に見えるのは目の錯覚かなにかかしら? そんな幼児みたいな体型をした女を、アンタはよく平気で抱けるわよね?」


 ……正直、その口を糸で()ってやりてえ。


「私の方を抱いた方がよっぽどアンタは喜ぶと思うんだけど? そんなまな板みたいな女と違って、私はFカップよ?

Fカップ。付き合ってた頃みたいに私のオッパイを揉んでも良いのよ? そんな女より私のほうがアンタを気持ちよくしてあげられるんだから」


 志穂はそこまで言うと。自分の胸を両手で揉み、ベヘモスを更に挑発する。

 挑発されたベヘモスは鬼気迫る顔を浮かべ、先程とは比べ物にならない程の殺気を解き放つ。

 流石に志穂は驚いて、その場に腰を抜かしそうにしやがった。


「お前のせいだぞ? コイツをここまで怒らせやがって……。なぁ志穂。俺はコイツが好きで抱いてんだよ。お前じゃなく、Bを抱きたくて抱いてんだよ。なんで俺がお前みたいな女をまた抱かなきゃなんねえんだよ? あ? 俺をキレさせんじゃねえぞ? だから完全にキレる前に出て行け。俺はお前に興味が無い」


 志穂は何故自分じゃなく、そんな女を選ぶのかって言いたそうな顔で悔しがり、ベヘモスを睨んでいる。

 俺は志穂を無視し、その目の前でベヘモスと濃厚なキスをまた始める。

 ベヘモスはこんな女より自分を選んでくれた事が嬉しそうで、嬉しさの余り満面のドヤ顔をした微笑みで志穂を見る。


 お前もそんな挑発すんな。


「クッ……! 私は諦めたりしないんだから。桜と結ばれないのなら私が必ずアンタをもう一度振り向かせてやるんだから!」


 志穂はそう怒鳴って部屋を出ていった。

 志穂が出て行くと。俺はベヘモスを抱き抱え、ベットの上に連れて行った。


「アッ……、アッ……ンッ!」



 俺は志穂に告白され、(しばら)くの間付き合った。

 別れたのは今年の春過ぎ。

 別れてから俺は、志穂を見ようとしなかった。

 俺としてはたんなる暇潰しだったし、そこまで興味が無かったと言える。

 ただ、サーちゃんと志穂は同級生で、そのサーちゃんと友人でもあったから、俺はただ(しばら)く志穂と付き合う事にしただけだ。

 別に好きでもなければ嫌いでもない、本当にどうでも良かったんだ。


 志穂を通して、サーちゃんの体の状態を知ることが出来たからな。

 でも、その情報がこっちに入ってこなくなった以上、それ以外に利用価値が無いし、飽きてもいたし、俺は志穂と別れることにしただけだ。


 全てはサーちゃんの為だけだったからな。


それは寂しさゆえなのか、それとも……。

今回のお話は、皆さん目にどう写りましたか?

寂しさ? 愛しい? それともそこには別の何かがあるからなんでしょうか?

では、面白かった、続きを早く読ませろ! って方々は、いいね、⭐、感想やブックマークを宜しくお願いしますね✨

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