第46話 すれ違い<桜side>
私は暗い自室で泣いていた。
「カッちゃんゴメン……、ゴメン、カッちゃん……」
私は知っている。
カッちゃんがいつも、私の事を想って、裏で動いてくれていたことを。
私の事を想って、いつも冷たい事しか言わなくなったのも全部知ってる。だから距離を置いていたのも全部気づいてた……。
私はそれを知ってて、いつもカッちゃんを困らせてばかりいた。
最低だな、私……。
そうすることでしか、私はまだカッちゃんに愛されているって実感を、感じていたかったから……。
でも、それももう終わる。
「カッちゃん……」
でも、カッちゃんの顔を思い出す度に、顔と体が熱くなる……。
「カッ……ちゃん……」
……その想いが頂点に達した時、私はベッドに上がり、布団の中に潜る。
暫くの間、私はカッちゃんに抱かれている想像をしていた。
「ハッ……アッ……」
カッちゃんはワザと私に嫌われようとして、色んな女性と遊んでいることも全部知ってる。
「アッハッ……」
一度で良いから、カッちゃんに抱かれたかった……。
「ンッ……フッ……」
私の親友が、やっぱりカッちゃんの事が好きになったって言って。どうにか付き合えないかなって相談もされた事もあった。
「ンハッ……」
結果的にその親友はカッちゃんと付き合うことが出来て、カッちゃんとの夜は凄かった、忘れられないって言ってたけど。その親友とは数ヶ月しかもたなかった。
「アァッ……ンッ……」
私も、カッちゃんにおもいっきり抱いてほしいよ……。抱いてメチャクチャにされたい。
「アフッ……」
一人でするより、私はカッちゃんに抱かれてイキたいよ。
「アッ! ハアァァッ! ……」
……暫くした後、美羽ちゃんから連絡が来て。私はなんだろうと思いながらその内容に目を通すと。そこには、カッちゃんが何を書いていたのかを教えてくれる内容が書かれていて、私は絶望した。
同時に、美羽ちゃんから最後に、これから本気で攻めるって……。
美羽ちゃんなら、私は全然良いと思う……。凄く悔しいけど……。
「どうして……、こうなるの……?」
私はベッドから降りて、幼き日のカッちゃんが写る写真を持ち、また涙が溢れだす。
「ねぇ……、どうして言ってくれなかったの……? 私……、勝っちゃったじゃない……。私が勝たなければ、本当の気持ちを伝えてくれていたの?」
写真を見つめながら私はもっと泣いて、涙が止まらない。
……カッちゃんが勝負する時に書いた賭けは。
[ 俺はサーちゃんの事が大好きだ。だから全てを捨てて、もう一度やり直したい。 夜城 和也 ]
それは、待ちに待ってずっと聴きたかった言葉だから。
今すぐカッちゃんに会いたい、話をしたい、抱きしめて欲しい、そしてまた優しいキスをして欲しい。
大好きな人の胸に抱かれて眠りたい!
でも……、もう後には引けない状態にしちゃった……。
お互いがお互いを想っていて。本当は愛し合っていたのにどうして……。
私のせいですれ違っちゃった……。
私とカッちゃんとの勝負の賭けは、絶対ルール。
そのルールを破る訳にはいかない。
それがお互いに交わした約束だから……。
「こんな事になるなら……、あんな事……、書かなければ良かった……」
私は最後の勝負に出した賭けの内容に、後悔した。
後悔先に立たず、って単語があるけど。今回はまさにそれが当てはまる言葉だよね……。
カッちゃんに多くの生徒達の前で勝って、そしてフっちゃった……。言わば公開処刑に等しい事を私はしでかしてしまった。
でも、後悔してでも私はきっと、カッちゃんを突き離していただろうなぁ……。
どうして今になって、カッちゃんがどうして私を突き放そうとしていたのか、理解できる。
だって……、だって私は……。
「私……、もう……、長くないんだってさ……」
涙が枯れること無くずっと頬に流れる。
なんとか必死に微笑んで、私は写真に写るカッちゃんに語りかけるけど、写真に写るカッちゃんが何かを言ってくれる訳が無いんだけど……。
「カッちゃん……、会いたいよ……。会って話をしたい、なんでもっと早く言ってくれなかったの? 私はもう……、時間が無いよ……。私ね……、病院の先生から、後……、1年ももたないだろうって、言われちゃった……」
私……、余命宣告されちゃった……。
「カッちゃん……、会いたいよ……。なんで……、どうしてこうたったの……?」
……つらい。
「……どうして後1年しか生きられないの?! どうして?! どうして私は普通の家庭に産まれてこれなかったの?! 普通の家ならカッちゃんと結ばれていたかも知れないのに! どうしてこうなるの?! どうして私は! 私は……。なんで病気になっちゃったんだろ……。ねぇ……。どうして……、どうして……? 神様……。私が……、何か悪いことでもした?」
どうしようもない哀しみから。
「憎い……」
初めて、あらゆるものが憎くてたまらなくなった。
「なんで? なんでこうなるの? ……憎い、何もかも、憎いよ……。カッちゃんと結ばれない……、憎い。この病気が憎い。……後、1年しか生きられないのが……、憎い。あの時だってそう……、カッちゃんを奪った彼女も憎い。お父さんが政治家にならなければ、こんなことにはならなかったかも知れないのに……。憎い……、お父さんが憎い。何もかも全て憎い! 私とカッちゃんとの幸せを邪魔するもの全てが憎いよ!」
私の心は怒りと憎しみで染まった。
どうしようも出来ない怒りが私の心を支配し、なにもかも壊したくなった。
だから私はその時、カッちゃんを奪った親友ですら憎くて憎くてたまらなかった。
でも、この怒りを隠さなきゃ……。
もし……、私のこんな醜い心を彼に知られてしまったら……。
でも、美羽ちゃんと沙耶ちゃんなら……、私は許せる……。
それ以外であるならば……、私は……、きっと死んだら彼女達以外なら呪い殺してしまいそう……。
でも……、私の我儘が許されるなら……、カッちゃん……、アナタの胸に抱かれて眠り、最後を迎えたい……。
カッちゃん……、カッちゃん……。
カッちゃんに抱かれながら死ぬことすら私は許されないのかな……?
あぁ……、私、なんて酷い顔してんだろ……。
鏡に映る私は涙をながしながら、なんとも言えない、とても醜い笑顔をしていた。
全部、壊れてしまえばいいのに……。
……時を戻せれば良いのに。
すれ違ってしまったことと、余命が残りいくばくもないという状態であるが為に、桜の心はひっそりと壊れ始めてしまう。
皆さんが同じ状況だったらどうなってしまうと思いますか?
では、面白かった、続きを早よ! 早よ! って方は、いいね、⭐、感想やブックマークを宜しくお願いします(圧圧)✨