第44話 2人の過去<和也side>
俺はその時、夢を見ていた。
それは過去。
サーちゃんとの、思い出の記憶。
今から12年前の3月。桜が咲き乱れるとある日。
その日、俺達は初めて出会った。
俺は3歳。サーちゃんが4歳。
その日はサーちゃんの誕生日だった。
俺達2人の父親はお互い友人同士であり。親父の元にお互いの子供を会わせようと言う話しがあってその話を承諾し、待ち合わせの場所へ俺を連れて出かけた。
初めて会った時、俺とサーちゃんは出会って早々喧嘩をして、サーちゃんを泣かしてしまった。
それでも俺達の関係がここで終わる事は無かった。
幼少の頃、サーちゃんの心臓が弱かったことを俺は知らなかったが、時間があれば度々遊びに来て、俺と2人で遊んだ。
「ねぇ、なにしてあそぶ?」
サーちゃんが俺に尋ねると。
「かいじゅうゴッコ!」
俺は幼少の頃から爬虫類や恐竜、怪獣が大好きだからよ、何時もそんな遊びばかりをしていた。
勿論、ゲームもしていた。
「え〜、わたしはイヤ……」
女子が流石に嫌がるのは当然だけどな。
「おママごとしてあそびたいよぉ」
サーちゃんにそう言われ、俺は何時も遊ぶ時は必ずおママごとをさせられていた。
「え〜? ボクはイヤだよぉ」
そう言いながら、俺はついつい付き合っちまってたがな。
「ワタシがママ、カッちゃんがパパね」
「わかったよ……」
サーちゃんは持って来た人形を俺達の子供役にして、満面の笑みを浮かべて何時も楽しんでた。
それから少し月日が流れ、お互いが小学生になってもサーちゃんは相変わらずおママごとをして俺と遊んだ。
小学生にもなって、おママごとは無いだろって思うけどよ。サーちゃんは体が弱ェんだ、走りたくても走れねえし、おもいっきり体を動かす事が全然出来なかった。
だから俺は、出来るだけサーちゃんに負担が掛からねぇようにしてやりたかった。
「だ〜る〜ま〜さ〜ん〜が、こ〜ろ〜ん〜……だっ!」
「うっ……」
「はいサーちゃん動いたあ!」
「え〜? 動いてないよ〜」
クククッ、い~や、間違いなくあの時は動いてた。
その頃には2人で「ダルマさんが転んだ」や、2人で「隠れんぼ」をしたり。時には憲明達とも遊んで、笑ったな。
「あはは!」
「ははっ!」
憲明達とサーちゃんも、幼少の頃からの知り合いだった。
夏には俺の家で花火をしたり、水鉄砲でお互い水をかけ合って遊び。冬には東京でもほんの少し積もった雪を集めて雪だるまを作ったりしながら庭を駆け回って楽しんだ。
駆け回ったって言っても、出来るだけ負担が掛からねぇようにしてだ。
サーちゃんと遊ぶ時は決まって何時も俺の家。
だからそんな俺達が誰よりも仲よかったことを、憲明達は知っている。
どこへ行くにしてでも、俺達はお互い手を繋ぎ。絶対に離れない。
そんなある日のことだ。
「ねぇ、カッちゃんの将来の夢ってなに?」
手を結んだ状態で、子供特有の質問を無邪気にしてきた。
俺は最初悩み、将来の夢など考えていなかったから、歯を剥き出しにした笑顔で「わかんない」と答えた。
「ワタシにはあるよぉ」
微笑みながら青空を見上げるサーちゃんには、夢があった。
「どんな夢?」
俺はそれがどんな夢なのか、ワクワクした顔で聞いた。
「それはねぇ。将来、カッちゃんのお嫁さんになる事!」
サーちゃんは満面の笑みでそう答えた。
俺は思わずキョトンとした顔で「ボクのお嫁さん?」と答えると。
「そう! イヤ……だった?」
サーちゃんが俺のお嫁さんになると言った事を思い切って言ったものの、もしかしたら俺が嫌だったかなと心配そうな顔をしていた。
「でも、大人になったら心がかわるって、聞いた事あるよ?」
子供の心なんてもんは、大人になるにつれてその心は変わって行く。
「大丈夫。ワタシの心はずっとカッちゃんのモノだから」
サーちゃんが俺の顔を見つめながらそう言ってくれて、嬉しかった。
「それじゃボクの心はサーちゃんにあげるよ」
サーちゃんは顔を赤く染め、目の前にいる俺から目を離さないでいる。
「うん!」
この時。俺は小学2年生。サーちゃんは4年生。
この頃、俺はサーちゃんよりまだ小さかった。サーちゃんが俺の後ろに回ると、後ろから抱きしめ、2人で幸せを感じていた。
そんな俺達を、骸が優しい目をしながら少し距離を置いたところでずっと見ていた。
この頃、骸は俺の元に来て2度目の熱い夏の日差しを全身に浴びながら日光浴をしていたな。
それから数年後。
サーちゃんが中学校の入学式を控えていたある日。
サーちゃんは誰よりも先に、俺に中学校の制服を見せに来てくれていた。
「どうかな?」
制服を着たままクルリと回転して。俺はそれを見て「可愛いよ」と微笑む。
「ほんと?!」
俺の目の前で笑顔でしゃがみ込み、顔を近づけてそう聞いてくる。
本当に可愛かった。
「ホントホント」
俺は胡座で足首を掴んでいる形で座り、微笑む。
「じゃ証明して」
サーちゃんが照れた様子で微笑み、更に俺へ顔を近づけた。
「いいよ……」
だから俺は、サーちゃんに軽いキスをした。
「カッちゃん……、好き。大好きだよ」
サーちゃんはそう言って俺にキスをする。
「知ってる。オレも大好きだよ、サーちゃん」
互いが互いの頬に手を当て。暫くの間、俺達はキスをし続けた。
ガキのくせにって思うだろうが、んなもん、経験してる奴は他にもいる筈だ。
この時、俺達がお互いに好き合っている事を、当然親父達は知っていた。
同時に2人の親父達は頭を抱え、悩んでいたことを俺達は知らない。
一方はヤクザ。もう一方は……。
でも、誰も俺達の関係を邪魔したくは無かったのか。誰も何も言わなかった……。
その年の夏は近くの祭りに出掛けて行った。
付き添い人としてその日、犬神が付き添ってくれる。
その周りに、何人もの護衛が俺達の安全を守る為、隠れ潜んでいることなんざバレバレだったけどな。
「あっ! わたあめだ!」
そんなことを知らないサーちゃんは、段々と体が弱くなっていたからもう、そこまで走る事は出来なかった為、俺達はゆっくりと歩き。色々な出店を見てははしゃぎ、心の底から楽しんでいた。
「サーちゃんカステラ。ベビーカステラ一緒に食べよ」
「うん!」
犬神にベビーカステラを買って貰い。買ってくれた犬神にお礼を言って、2人仲良く頬張る。
旨かったな、あの時のベビーカステラ。
「あっ、おーい! カズー! サクラちゃーん!」
そこに手を振って俺達を呼ぶ声が前から聞こえてくる。
「へへへっ」
憲明だ。そこには美羽、沙耶、一樹、ヤッさんもいる。
俺達も手を振り、手を繋いだまま憲明達の元へ歩く。
「遅かったじゃん。また2人でラブラブだったのか?」
憲明が意地悪そうな笑顔でそう言うから。俺とサーちゃんはワザとらしく繋いだ手を見せた。
「アッタリ〜!」
サーちゃんが満面の笑顔で応える。
「向こうに射的あるんだ。勝負しようぜカズ」
「いいね」
憲明が親指を立てて後ろを指すから、俺も勝負しようと答え。射的がある場所へと進む。
「負けねえからなカズ」
「こっちこそ」
そして勝負をするが結果的に。
「チクショー……、また負けた……」
憲明が肩を落としてガッカリしていた。
「はい、サーちゃん」
「ん?」
俺は射的で取った景品の1つを、サーちゃんに手渡した。
「これは?」
中身が何なのか分からないサーちゃんに、俺は開けてと言い。紙に包まれた箱を開けさせると。
「ふわ〜!」
サーちゃんは満面の笑みで喜んでくれた。
「付けてあげるよ」
「うん……」
サーちゃんが頬を赤くして喜んでくれる。
「これでどうかな?」
「……ありがとう、カッちゃん」
それは桜の花弁の形をしたヘアピン。
「うん。可愛いよ、サーちゃん」
俺は目を細めて微笑み、サーちゃんを見つめた。
「大事にするね?」
「いいな〜、サクラちゃん」
そう言って美羽は羨ましがる。
「仕方ないだろ? カズとサクラちゃんは2人とも好きなんだから」
一樹がそう言って美羽を宥める。
だけど、そんな事を美羽は言いつつ、俺達の姿を憲明達と一緒に笑顔で見守ってくれていた。
その後も、憲明達と共に屋台を巡って楽しみ。共に花火が上がるの見物した。
「カッちゃん」
「ん?」
花火が上がっている最中に、サーちゃんが俺の顔を見て呼ぶ。なんだろうと思って顔を向けると。
サーちゃんがキスをしてきた。
「ヘアピン。本当にありがとね」
可愛かった。
よっぽど嬉しかったんだろ、キスをした後に改めてお礼の言葉を聞いた。
「サーちゃん……。本当に可愛いよ」
そして俺達はまたキスをする。
好きだった。心の底から俺は、サーちゃんが好きで好きで、誰よりもサーちゃんを愛していたと言える。
そのキスを、美羽が見ていたとをこの時、俺は知らなかった。
そしてもう時期、夏が終わる。
幼少の頃からの付き合いで、更に、2人はお互い両想い。
誰もそんな2人の関係を邪魔出来なかった過去がありますが、それでも2人の関係は崩れてしまうんですね。
次回はどうしてそうなってしまったのか、和也と桜の過去編をお楽しみに。
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