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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第1章 終わりの始まり
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第39話 ニア


  ゼオルクの街は中世ヨーロッパの様な美しい街で周辺国に知られている。

 だが、ただ美しいだけではない。

 街の周りは強固な砦で守られており。その砦には自衛隊が交代で日夜守っている。

 ゼオルクから少し離れた所には、その自衛隊の基地があり。戦車や武装ヘリ等があり、有事の際にはそれらを使ってゼオルク、並びに友好国を守る為に出動することもある。

 そんな自衛隊基地に、とある知らせがその日、舞い込んで来た。


『巨大なモンスターがゼオルクに向け一直線に進行中!』


 知らせを受けた陸将は、直ちに自衛隊に出撃命令を出し。それぞれの部隊にゼオルクの街を守れと指示を出した。

 街に駐屯する自衛隊がその知らせを受け。ゼオルクの街に大きな音でサイレンが鳴り響く。

 街に住む人々はサイレンが鳴ると言うことが、どう言う事なのかを前もって知っていた為、直ぐに避難を開始。

 冒険者ギルドから腕自慢の冒険者やハンター達が街を守る為、各々の武器を手に取り、モンスターが現れる地点へと走る。

 武装した夜城組も、モンスターが現れる地点へと集まり。

 多くの自衛隊がジープに乗って慌ただしく集まると、その自衛隊の手にはアサルトライフルが握りしめられている。そこへ戦車数台と、武装ヘリが5機、街の上空を飛んで集結。

 砦からは和也が持っていた幾つもの機関銃がセットされ、何時でも来いとばかりに皆、モンスターが今か今かと待ち受ける。

 こんな完全武装された街に、好き好んで攻めて来る馬鹿は居ないだろうが。皆、真剣な表情だ。

 何故ならそこまでしてでもSランクのモンスタークラスになら潰されかねないからだ。

 故に、ふざけた態度でこの場にいる者は誰一人としていない。

 そして、砦の上から双眼鏡で見ていた者から知らせが舞い込んで来た。

 モンスターの推定サイズ、100。

 それを聞いた者達は絶句した。

 それ程の大型モンスターだとSランクのモンスターに間違いないと思ったからだ。

 一瞬にして空気はより一層張り詰め、汗が滲み出てくる。


 距離、800。750。


 距離が縮まるにつれて皆は自然と手に力が入る。

 そして誰もが思った。

 こんな時に和也が居てくれたらどれだけ心強かった事だろうと。

 集結地点には、ニアもいた。

 ニアは仲間達と共にこの街を守る為、共に戦う事を決意し、戦いに挑む。


「(もし、私が死んだら、和也様は怒るかな……)」


 ニアは和也に怒られたくは無かった。しかし、その和也はこの街が好きだ。それはニアも一緒だった。だから守りたいと心から強く想った。

 その集結地点の後ろから騒めきが生しょうじた。

 ニアは(おもむろ)に後ろを見ると、そこにはとんでもない助っ人がやって来る。


 現在知られている中で最強のモンスター、骸だ。


 その傍らには七海、ではなく刹那と。ベヘモスが青紫色の凶悪な形をした大斧を持ち。人々を掻き分けながらやって来る。

 骸達はニアの直ぐ真横を通過し、ついには最前線にまで出て足を止めた。


「いやぁぁ、なかなか賑わってるねぇぇ」


 ベヘモスは呑気な顔で大斧を肩に担ぎながら後ろを見渡す。


「非常事態」


 刹那は相変わらず無表情で前だけを見る。


<ハアァルルルルルルッ>


 骸は目をギラギラと光らせ、唸っていた。


「(す、凄い……)」


 ニアは感動した。あの骸が和也の指示が無いのに出てきてくれた事に。そして、その傍らにいる刹那がどれ程の実力者なのかニアは知っている。だが、ベヘモスの事は知らない。その為、そんな骸と刹那と対等に立っている、見たことも無い軍服姿の少女に目が離せなかった。


「んん?」


 その時、ニアはベヘモスと目が合った。


「ねえねえ。君って確か和也さんに抱かれた事がある子だったよねえ?」


 それは余りにも突然の出来事だった。

 ニアとベヘモスの距離は10メートルは離れている。にも関わらず、ニアが瞬きした瞬間にベヘモスが直ぐ目の前に来ていた。それも顔と顔の隙間が10センチあるか無いかの距離でそう言われ、ベヘモスはその黄色い目を大きくし、ニヤッとした顔でニアの顔を覗き込む。

 ニアは背筋が凍った。


「(な、なにこの子。いつ? いつの間にこんな至近距離まで移動したの?!)」


 ベヘモスはニアの肩を掴み、耳元で囁く。


「君の体から、あの人の匂いがプンプンするね」


 ベヘモスはニアの首筋を軽く嗅ぎ。ニアの体から和也の匂いを嗅ぎ取った。


「君、あの人に随分と可愛がってもらってるんだねえ」


 そしてベヘモスは不気味な笑顔でニアの顔を真っ直ぐ見つめる。


「(こ、怖い!)」


 ニアは恐怖した。

 だが、恐怖するにはまだ早かった。


「いたっ?!」


 ベヘモスは掴んでいる肩に少しづつ力を込め始めていた。


「羨ましい……、本当に羨ましいよ」


「ヒッ?!」


 ベヘモスはニアを、憎悪に満ちた目で睨みつけていた。

 だが。


「あれ?」


 そこへ骸がベヘモスの真後ろに立ち。ベヘモスの(えり)を器用に、まるで犬が猫の首を(くわ)えるようにして、刹那がいる場所へと戻る。


「面目ない」


 刹那はニアに謝ると、今度は骸が軽く喉を鳴らして頭を下げた。


「い、いえ……」


 ニアはどう反応したら良いのか分からず、ただ呆然と立ち尽くす。


「後で先輩に怒ってもらう」


 刹那がそう言った途端。


「そ、それだけは御勘弁(ごかんべん)下さい〜!!」


 余程怒られるのが嫌だったのだろう、ベヘモスは泣きながら刹那の足にしがみついて懇願(こんがん)した。


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