第34話 熊肉料理
その日、美羽はカズの下準備の手伝いをし始めた。
「なにすれば良い?」
「取り敢えずそこに出した調味料ケースを持ってきてくれ」
カズのユニークスキル"空間収納"されていた調味料ケースを、美羽は落とさない様にカズの元まで運ぶ。その間、カズは"デーモンズ・ベアー"の肉を叩いて柔らかくしている。
肉を柔らかくした後、美羽はそれからどうすれば良いのかを聞いた。
「どんなモンスターも動物に変わりは無い。だからこういったモンスターでもきちんとした下処理をしないと食中毒の原因になる」
「うん、だよね」
「だからまず冷凍します」
「ほう、冷凍ですか」
「はい冷凍です。まずはこちら、"氷獄手"って魔法で、触れた物全てを凍らせるこちらの魔法でこの熊肉を触り、冷凍します」
「ほう、そんな魔法があるんですか」
「あるからこうして凍ってるんですよ?」
「成る程」
「こうする事で熊肉の中にいる虫を殺せます」
「え? 虫がいるんですか?」
「います。確実にいます。だからジビエ料理でもそうですが、しっかりと下処理した方が効果的です」
「成る程」
「虫も生き物です。だから取り敢えず冷凍しちまえば死にます」
「ほうほう」
「では、このまま暫く放置します」
「え? このまま放置しても大丈夫なんですか?」
「はい大丈夫です。と言っても、一応こちらに入れておきます」
「先生こちらは?」
「こちら、氷魔法で作った箱です」
「成る程、氷の箱ですか」
「はい。ではその間更に下準備をしましょう」
「はい先生」
「まず、ボウルに蜂蜜を入れます。そこにマスタードを同じくらい入れます。ではこちらをよくかき混ぜてください」
「はい分かりました」
「その間、レモンを皮ごと微塵切りにします」
「うわぁ、やっぱり先生の切り方は手際が良いし綺麗ですねえ」
「お世辞はいいからよくかき混ぜてください」
「あっ、はい」
「そのかき混ぜているのがハニーマスタードになります。ではそろそろこの微塵切りにしたレモンをそちらに入れますので、ゆっくりこぼさない様にかき混ぜて下さい」
「はい」
「そして次に用意する物はコチラです」
「先生、それは?」
「こちらの世界で取れる珍しい種。"クリーシェ"と言う植物から取れる種です。一つどうぞ」
「あっ、頂きます。……! コレ、スッゴく爽やかな味がしますね。それに若干甘いです!」
「でしょ? その種を軽く叩いて砕きます」
カズは"クリーシェ"と呼ばれる赤い種をどこで見つけてきたのか大きな石の上に置き、その上から違う石を握って叩き潰し始めた。
「……まぁこんなもんか。ではコチラをそのボウルの中に入れて、また混ぜて下さい」
「はい先生」
「次に取り出すはコチラ。"ニッカの実"です。こちらはちょっと苦味がある実ですので、ほんの少量だけを使います」
「先生、それも砕くんですか?」
「はい、コチラも種ですからそのまま食べたら硬いですし、苦いだけですから砕きます」
"ニッカの実"と呼ばれる黒い実を、クリーシェ同様に石で叩き割る。
「……ちょっと少ないか? まぁいいか。ではコチラもその中に入れますのでよくかき混ぜて下さい」
「は、はい」
今、ちょっと少ないって言ってたよね? 大丈夫なのかな?
「はい、では次に取り出すのはコチラ。必殺の"ニンニク"。こちらはすり下ろしますので暫くお待ちください」
「はい」
「その間、バルサミコ酢を大匙一杯入れて混ぜておいて下さい」
……それから数分後。
「はいではお待たせしました。こちら擦りたてニンニクです。ではコチラも入れますので混ぜて下さい」
うわぁ、スッゴいニンニク臭だなぁ……。
「うん、そのくらいで良いと思います。これで下準備の一つが完了です」
「あの先生。コレ、どんな味なんですか?」
「気になるならちょっとだけ舐めてみて下さい」
「あっ、はい……。ならちょっとだけ……ッ!」
「どうです?」
「え?! うそ?! なんで?! 甘くてめちゃくちゃ美味しい! それに擦りおろしたニンニクがいいアクセントになってる!」
ゴクリ……。
聞いてるだけで腹が……。
「でしょう? 向こうの世界では味わえない味でしょう? コチラで取れた2種類の調味料が合わさる事で化学反応を引き起こし、更に旨味が増します。そこに擦りおろしたニンニクを加える事で、より、旨味が合わさります。最初は単なるハニーマスタードでしたがその3種が合わさることによってハニーマスタードでは無く、ロイヤルクイーンと言うコチラの世界限定のソースが出来上がるのです」
「え、普通に凄い……」
美羽が驚愕している……。
一口でいいから俺も舐めてみたい……。
「ではそろそら冷凍した熊肉を解凍するとしましょう」
「どうやって解凍するんですか?」
「ここでは私だけが使えるスキルを使います。スキル、"変換"発動」
「うわぁ、一瞬で解凍しちゃった……」
「ではこの熊肉を真ん中からギリギリまで包丁で切ります。そして肉を開き、また両方ともギリギリまで切ります」
カズは熊肉を完全に切り離さない様注意しながら半分に切り、更にもう半分も慎重に切る。
「……こんなもんだな、よし。ではそこに今作ったソースをタップリと塗り込みます」
切ったところに、ここではロイヤルクイーンと呼ばれるソースをたっぷりと塗り込んでいく。
ヤバいって、マジで旨そうなんですけど?
「……よし。ではこのまま暫く氷の箱に入れて寝かせます」
「はい。どの位寝かせるんですか?」
「約1時間程寝かせればいいでしょう」
「はい」
その後、カズはタバコを吸ったりしてながらアリス達と遊び、時間を潰す。
……そしてそれから1時間後。
「はいそしたらそろそろいい頃でしょう」
「次はどうするんですか?」
「ではここで一旦この鉄板に塩を盛り、その上に軽く砂糖を惹きます。その上に熊肉を乗せ、砂糖を軽く塗った上に今度は塩で熊肉を埋めます」
カズは馬鹿デカい鉄板を出し。塩に白卵を混ぜてから使い始めた。
「まさか先生?!」
「はい、そのまさかです」
ん?
「熊肉の塩釜焼きです。ちなみに何故砂糖を使うのかって言いますと、砂糖の力で熊肉の臭みを出来るだけ取るためです。そしてこれで必要な塩分も吸収し。内部に熊肉の旨味を閉じ込めます」
なるほどなるほど。
「おおぅ」
美羽は目を輝かせながらどんな風になるのか楽しみで仕方がない。
俺も楽しみで仕方がない。
「では先程1時間の間、私がアリス達と遊びながら作った土釜の中には既に炭火を入れ。内部の温度が良い感じになっているのでその中にぶっ込みます」
「おお!」
「はっ! しまった! 塩で固める前に各種ハーブを乗せるの忘れてた!」
「せ、先生?!」
ハーブを乗せる事を忘れていたカズは頭を抱え、膝から崩れ落ちた。
ん~、今日はちょっと調子が悪いようですね~、はい~。
「お、俺とした事が……。し、仕方ありません。ここは取り敢えずこれでいいとし、完成した時に取って置きを使用することにしましょう……」
「そ、それはそれで楽しみです!」
もしやアレなのかな?! アレだったらオールOKです!
「で、ではこのまま10分程焼きます」
「なんかあそこ楽しそうだな」
カズと美羽のやり取りを一樹は見ていて楽しそうと言い、その光景に微笑みつつも、口元には涎が垂れていた。
うん、実にけしからん!
「一樹やめてとけよ? 邪魔したら今晩の御馳走が美羽のせいでパーになるかも知れねえぞ」
一樹がなんか行きそうにしていたのを止める。
しかし、俺も口元から涎が垂れていた……。
「そ、それは大変だな。よし、俺達は見守ることに専念しよう」
せっかくの御馳走が台無しなるのが絶対に許せない俺はクロと遊びつつ。
……やはり口元から涎が垂れるのを止められない……。
「それが一番だよね〜」
沙耶もピノと遊びながらカズ達が作る肉料理をチラチラと見ている。
残念なのは沙耶も口元から涎が垂れていた事だ……。
「うん、間違いない」
ヤッさんはヤッさんで口元から涎を垂らして直立不動になって立っている。
お前……。
……10分後。
「では次に焼けた塩を砕きます」
あっ、カズの奴まだそれ続けるのか。
「は〜い!」
美羽は元気に返事をして楽しそうだな。
「では砕きます。えいっ」
「……はっ? なんでチョップしただけで簡単に割るの?!」
確かに……。まさかチョップで砕くとは思っていなかったから、美羽も驚いている。
「ほら、そこは……ね? ……取り敢えず続けましょうか。さて、邪魔な塩を取り除きますと……。ほら、こんなに美味しそうな色をしていますよ」
美羽のツッコミから逃げたな? アイツ……。
「うわ〜っ! ほんとだ〜!」
でも、うん……。同時に漂ってくる香りに俺達全員、とろけそうな顔になる……。
「はいでは美羽さん、そこの紐を取ってください」
「え? あっはい!」
カズに言われ、正気に戻った美羽は長い紐を取ってカズに手渡す。
あっぶねえ……、香りだけで満足しそうになっちまったぜ!
「はいどうも。それではこの紐でこの熊肉を今度は軽く結んで行きます」
「それは……、どうしてですか?」
「こっから和也式ローストベアーにする為です」
「ほぅっ?!」
ろ、ロースト、ベアー、だと?
「では美羽さん、そこにある赤ワインを鍋に入れておいて下さい」
「あ、はい!」
「はい、ではこうして。ここをこう結んで。はい、はい、はい、はあぁぁあい!」
「え? 今の必要ありました?」
突然カズが意味不明な叫びをしたから、美羽は思わず冷静にツッコんだ。
「……はいではこの位に結べばいいでしょう」
絶対恥ずかしがってるだろ!
カズは顔を赤く染めて逃げた。
美羽はそんなカズの顔を見て、可愛いと思ってんのか作業の手伝いを続ける。
「次にフォークで何箇所も突き刺します」
「それはどうしてですか?」
「より、赤ワインが染み込みやすくするためです」
「ほうほう」
「そうしましたら、次にコチラを赤ワインが入ったお鍋の中に入れ、赤ワインを弱火で暫く煮ます。しまった……、コレを煮るための火を用意してなかった」
カズは土釜は作っていたが鍋を置いて煮る場所を作っていなかった。
「先生、一応コチラで焚き火の準備を完了させております」
ふっ、任せろカズ。伊達にお前らを観察してはいねえぜ?
準備をしていなかった事に気づいていた俺は火を用意してあると伝えた。
「ほう、なかなか良いですね。分かってるじゃありませんか憲明君」
それを聞いてカズは微笑んだ。
……けど。
「ちっ、邪魔しないでよノリちゃん!」って言いたげな顔で美羽が俺を睨んでくる……。
カズと2人で作っているのを邪魔したからだ……。
えっ、あの、ごめん……。
「でもこのお鍋を乗せれるだけの物がありませんね」
火はあれど置く所が無い。カズはちょっと困った顔で俺を見た。
「ハッ?! 申し訳ありません先生! 今準備させます!」
そこまで用意していなかった俺は固まった。
準備させますと言ったけど、実は沙耶達も一緒になって準備していた。
あっ……「ふふふ、ほらぁ、急に邪魔するからそうなるのよ」って言いたげな顔で美羽は俺達のその失態にどこか御満悦な様子。
コイツ、カズの事になると性格が悪くなるんだよな……。
「いや結構ですよ? スキル"変換"発動」
カズはつま先で地面を軽く叩いただけでかまどを作ってしまい、俺達全員が驚いた。
「どうしました? 何か驚く事がありましたか?」
「あっ、いえ、別に」
俺は口元をヒクヒクと引き攣らせているのが自分でも解った。
「はいでは準備が整ったのでそろそろ次のメニューを作りたいと思います」
はっ?! 次って、今日はもう少し先に行くんじゃなかったのか?!
カズが既に料理人モードに入ってしまっているため、すっかりその事を忘れてしまっている。
結局その日、俺達はそこで野営する事にし、テント等を準備した後は和也シェフが作る料理を待つのみとなった。
「うっし、完成だ。待たせたなお前ら」
やっといつものカズに戻ったか。
「今夜のメニューはこれだ。熊肉のロースト赤ワイン煮込み(デーモンズ・ベアー)。旬の彩野菜とオニオンソース。キノコスープ。後は塩パンだ」
「めっちゃウマそう!」
俺達はテーブルに並べられた料理を見て大喜びした。
でも、あぁ、せっかく今日はアレを出してくれると思ったのにな……。
俺達はとあるものが出ていない事で少し落ち込んだ。
「んで、熊肉のロースト赤ワイン煮込みの上に、コレだ」
カズが何やら透明でほんのりピンク色のソースを軽くかけた。
「俺特製、薔薇のウオッカソースだ」
キターーー!!!
もう待ってました!! そのソースを全員待っていた様で、天を仰ぎながら物凄く喜んだ顔でガッツポーズをしている。
俺もそうだ!
「んじゃ、頂きます!」
「「頂きます!」」
俺が「頂きます」と言うと、カズ以外の全員が両手を合わせて一斉に頂きますと言って食べ始めた。
「おう、味わって食え」
カズはそんな俺達を微笑みながら眺めている。
俺達は早速熊肉料理に手を出し、口の中に入れた。
「ん?! こ、これは!!」
その時、俺の脳内ではある意味幻覚、または夢の様な世界が広がる。
な、なんて美味さなんだ……、噛む度に旨さが増して行く!
甘辛いタレからの野生身溢れる味わいからサッパリとした味に変わる!
何よりこの柔らかさだ!!
その柔らかい熊の肉から溢れ出る旨さがその味を更に高めて行く!!
これは、野生……。そうか野生か!
俺の中の野生が目を覚ませと叫んでいる!!
『ハーハッハッハッハッハッ!! さあ、目覚める時が来たのです! アナタの野生の本能を解き放つのです!』
脳内で、薔薇の花弁が舞う世界の中、熊の毛皮を頭から被った筋肉マッチョな男が俺を誘う。
あぁ! 熊になってしまいそうだ! 遠くで熊が俺を誘っている!
『さぁ、君も今日から一緒に熊になろうよ』
はあ〜! この美味さには逆らえ無い!
『なっちゃう? なっちゃうの? ねえなっちゃいなよ、歓迎するよ〜? あっはっはっはっは!』
「どうだ?」
「ハッ?! いやうっま! なんだコレ?! めちゃくちゃ美味い!」
「そうか、そりゃよかった」
危なかった! カズの一言が無ければ精神的に熊になってたぞ俺!
でもそれは俺だけじゃなく、他の皆んなも同じみたいだ。
「お前天才か!」
「何言っていやがる。向こうだったらどうか知らねえが、この料理にはここでしか手に入らない珍しい調味料を使ったりしてるんだぜ? ましてやこの肉だ。デーモンズ・ベアーはその種族名は怖えかもしんねえが、コイツの肉自体が高級食材になってる程だから美味いんだ」
「いやでも凄えよお前、コレお前が考えた調理法だろ? ましてや料理人スキルを持ってんだから絶対失敗しないだろ!」
もう大絶賛するしかないウマさだから仕方ない!
「うん! そうだよ!」
美羽もそのウマさから目を煌めかせている。
「最後に熊肉を軽く強火で炙ってるし。薔薇のウオッカソースに数種類のハーブを混ぜてあるからな。サッパリとした味わいになったと思う」
前に薔薇のウオッカソースをかけたサラダや肉料理を食ったことあるけど、あれから更に改良されてウマさが段違いになっていやがる。
「最初甘辛い味わいから野性味溢れる味が口の中に広がり、お前の特製ソースで最後はサッパリとした味へと変わる。ほんと、なんだこれ?! って感じで美味い! よし、俺が死ぬ時はこの料理を最後の晩餐の一つとして出してもらお」
縁起が悪いかもしんねえけど、それだけウマい!
俺と一緒で美羽達も頷いている。
「クククッ、そこまで気に入ってもらえて何よりだ」
「このキノコスープも美味しい……。なんか優しい味わい」
美羽は次にキノコスープを飲んでいた。
「使用しているキノコは2種類でどちらもここの世界に自生しているキノコでな。"ホウヨウキノコ"、"シュピテルタケ"って奴を使用している。ただバター焼きするだけでも美味いぞ」
「え〜、私それも食べたい〜」
バター焼きをしただけでもウマいぞと言われ、沙耶は純粋にそのバター焼きが食べたくなってみたいだ。
「クククッ、今度やってやるよ沙耶」
「カズ、このサラダのオニオンソースも相変わらず美味しいね」
美羽は次にサラダに手を伸ばしていた。
「だろ? そのオニオンソースを考えた時は結構こだわったからな」
「それとカズ、ギルにもあげてくれてありがとう」
「そうだクロ、美味いか?」
カズは自分達だけじゃなく、ギルやクロ達にも熊肉を軽く調理して与えてくれていた。
「クククッ、俺達ばかり美味いものを食うわけにはいかねえからな。モンスターの殆どは俺達人間より味覚が鋭かったりするからな、味付けは俺達が食べても薄いぐらいが丁度良い。亜人種の味覚は俺達となんら変わらないから心配はいらねえが。モンスターに与える時はよく考えてから与える事を忘れるなよ?」
カズのその話は今後の餌を考えるのにとても参考になる。
「アリス、ヒスイ、ダリア、お前達もどうだ? 美味いか?」
<グルッククククッ!>
「クククッ、まだあるからな」
「お前ってほんと、モンスターを討伐する時は容赦ねえけどよ。そうやって可愛がってるモンスターや動物には優しいよな。つーかお前、家にいる爬虫類とか魚の餌、大丈夫なのかよ?」
俺は何気なく、カズの家にいるペット、いや、家族を心配した。
「ああ大丈夫だ、問題無い。そうだ、七海達にもこのデーモンズ・ベアーの肉を食わせないとな」
「おっ、優しいねぇ、お兄ちゃん」
「しばくぞテメェ」
少しからかっただけなのに、カズは俺を睨みつける。
「だってそうだろ? ナッチはお前の義理の妹になるんだからよ」
「……まあそうだがよ」
「でもなんでまだ苗字を篠崎のままにしているの?」
美羽はナッチの苗字がまだ夜城に代わっていない事を気にしていた。
確かに……、なんでだ?
「それは七海って言うより、刹那の気持ちだ。親父がアイツを引き取る事になって家族として迎え入れても。アイツの心は今も昔も変わらない。まっ、別にいいさ。親父もそんな事で強要したくねえからな」
「だよな。それにしてもあの子がお前の所に来て何年になる?」
ナッチが義理の妹になってそれなりに経つけど、俺は何年経ったのか覚えていなかった。
「今年で6年になる」
「もうそんなになるんだぁ。月日が経つのって早いね」
月日が経つのは早いと、美羽は寂しげではあるけど微笑んでカズの料理を口に運ぶ。
「そうだよなあ。しかし、まさか二重人格で刹那って方が本当の人格なんだろ? 俺はずっとナッチしか知らなかったなぁ。俺はてっきり、右目に大きな傷があって人に見せたく無いから眼帯してるんだとばかり思ってたぜ」
まっ、右目に酷い怪我がある訳じゃなくてよかった。
「だよねぇ。でも眼帯していてでもあの可愛らしい性格だし、顔も可愛いからすっごく人気あるんだよねぇ」
美羽もずっと右目を気にしてたのか。
この時、カズの眉毛がピクリと反応していた事を俺は気が付かなかった。
「そうそう、この間のワームの時、お前の家に行った時にさ。実は今日、また告白されちゃいました。なんて言ってた位だしな」
俺が笑ってそんな事を言った後……。
「……なんだと?」
あっ……、また余計な事言っちまった……。
その瞬間、まるで鬼みたいな形相になったカズが、凶々しいオーラを全身から放出させていた。
う~ん、熊肉料理がますます食いたくなってきますね~。
皆さんはどんな料理がお好きですか? 僕はやっぱり肉料理ですね。シンプルにステーキや馬刺しが
ってなわけで今回は如何だったでしょうか?
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