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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第12章 悪魔の仮面
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第331話 夢に溺れたい


 どことも()れない場所(ばしょ)に、和也(かずや)美羽(みう)の2()姿(すがた)があった。

 ……いや、どことも()れないと()うのは(すこ)(ちが)う。

 その場所(ばしょ)には満点(まんてん)星空(ほしぞら)()え、その(そら)には不気味(ぶきみ)()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ねぇカズ、(いま)何時(なんじ)かな」


「11時を(まわ)ったとこだ」


「……もっと一緒(いっしょ)にいたい」


(かな)えてやりてえが無理(むり)だ」


「……わかってる」


 (かた)()()いながら(すわ)る2()姿(すがた)はどこかせつない。

 お(たが)(あい)(あい)され、(たが)いに(ころ)()わなければならない(いと)しい存在(そんざい)

 美羽(みう)としては和也(かずや)(たお)し、永遠(えいえん)(むす)ばれたい。その(ねが)いを成就(じょうじゅ)させる(ため)美羽(みう)は、一度(いちど)(わか)れる選択(せんたく)()った。

 和也(かずや)はその(こと)()づいてるからこそ、それを承諾(しょうだく)した。

 だが和也(かずや)本心(ほんしん)(ちが)っていた。

 和也(かずや)は、このまま美羽(みう)()れて()きたい気持(きも)ちがあるが、(いま)(さら)それをすれば(ぎゃく)美羽(みう)(いか)りに()れると(おも)ってそれが出来(でき)ないでいる。

 だが(たと)えそれが出来(でき)たとしても、きっとゼスト(たち)()からぬ(こと)美羽(みう)利用(りよう)するんじゃないかと心配(しんぱい)してしまう部分(ぶぶん)があった。

 和也(かずや)()っている。

 ゼスト(たち)美羽(みう)(なに)をしようとしていたのかを。


「……2()きりだね」


「そりゃそうだろ、ここには俺達(おれたち)しかいないんだから」


()()()()()2()()()()。なんか、それも()いね」


「……なぁ美羽(みう)


「ん? な~に?」


「……あの(とき)(わる)かった」


「もぅ(おこ)ってないよ。だって、()いに()てくれたんだから」


 そこで美羽(みう)(よこ)になり、和也(かずや)膝枕(ひざまくら)をしともらうと(やさ)しく微笑(ほほえ)み、和也(かずや)()()ると両手(りょうて)(ほほ)()てる。


「カズの()、あったかい」


「ふっ……」


 ()れる()感触(かんしょく)(ぬく)もり、そこから(つた)わって()和也(かずや)(やさ)しい(こころ)、それら(すべ)てが美羽(みう)にとって(なに)よりもかけがえのない世界(せかい)

 だからこそ美羽(みう)はより(つよ)く、それを()(もど)(ため)和也(かずや)(たたか)決意(けつい)(かた)めた。

 (あい)する(もの)(ころ)決意(けつい)を。

 だが(いま)時間(じかん)にそのような(はなし)無粋(ぶすい)

 (いま)(なに)より、2()でいるこの時間(じかん)大切(たいせつ)にしたいと(おも)っている。


今度(こんど)()えるのは(はる)になるんだっけ?」


「そうなる予定(よてい)だ」


「……アナタが何処(どこ)にいようと、今度(こんど)(わたし)()いに()く」


「あぁ、()いに()てくれ」


「その(とき)はステラ(たち)一緒(いっしょ)


大歓迎(だいかんげい)だ」


「……ずっとこうしていたいなぁ」


(おれ)もそう(おも)う」


 美羽(みう)()(うつ)るは和也(かずや)

 しかし、彼女(かのじょ)()にはまた(べつ)存在(そんざい)()えていた(こと)和也(かずや)()づく。


「……その()、お(まえ)には(いま)(なに)(みえ)えてる?」


「……邪魔(じゃま)(もの)。あ~あ、せっかく2()っきりの時間(じかん)だったのに、なんで(いま)になって()てくるかな。でも()てきたなら丁度(ちょうど)()いかも……、(わたし)絶対(ぜったい)()()()()()()()()()()()()


 "支配眼(しはいがん)"。

 それはその()支配(しはい)する(こと)出来(でき)るものであれば支配(しはい)してしまう(ちから)

 彼女(かのじょ)場合(ばあい)可能(かのう)(かぎ)りの「未來(みらい)」、その()()(こと)出来(でき)る「存在(そんざい)」、(とき)には相手(あいて)(からだ)(こころ)すらも支配(しはい)してしまう(まさ)最強(さいきょう)クラスの究極能力(アルティメットスキル)だろう。

 だが彼女(かのじょ)はその(ちから)究極能力(アルティメットスキル)だとは()づいていない。

 (ゆえ)に、そんな彼女(かのじょ)だからこそ和也(かずや)(かげ)(かく)れている()()()()()(こと)出来(でき)た。


「……()えちゃた」


「……()えたなら(いま)()にすんな、(おれ)だけ()てろ」


「ふふっ、ちゃ~んと見てますよぅ?」


「んなこと()って(おれ)以外(いがい)(やつ)()てたのは(だれ)だ~? ん~?」


「キャー! あははっ! きゃはははは! ゴメン! ゴメンって! あーーっ!」


 まるでお仕置(しお)きだと()わんばかりに和也(かずや)美羽(みう)脇腹(わきばら)をくすぐり、美羽(みう)一緒(いっしょ)(わら)う。


「ひーっ! ダメ! そこは! あーーっ!」


反省(はんせい)したか?」


反省(はんせい)! 反省(はんせい)したからもうやめて!」


「よし」


「もーっ! 脇腹(わきばら)(よわ)いって()ってるのに」


「だからこそだろ」


意地悪(いじわる)。あっ、そう()えばね?」


 美羽(みう)憲明(のりあき)とイリスの関係(かんけい)について(はなし)、それを()いて和也(かずや)(おだ)やかな表情(ひょうじょう)()かべる。

 その(とき)和也(かずや)は2()仲良(なかよ)くしてる(こと)に、とても満足(まんぞく)していた。

 喧嘩(けんか)もするだろうが心配(しんぱい)はいらない。

 あの2()なら何時(いつ)までもずっとお(たが)いを(おも)()えると(しん)じているからだ。


「でもビックリだよね、あのイリスとノリちゃんが恋人(こいびと)になるなんて、(いま)でも(しん)じられない」


「そうだな。お(まえ)(おれ)(えら)んだように、(ひと)ってのはどこでどう人生(じんせい)()わるかわかんねえな。アイツらが(しあわ)せになってくれりゃ()いんだが」


(わたし)ね、カズに出会(だあ)えて(しあわ)せだよ? だからノリちゃん(たち)(しあわ)せだと(おも)う」


 和也(かずや)(ほほ)()れ、美羽(みう)(やさ)しい()みを()かべる。

 和也(かずや)としても(しあわ)せを(かん)じているのは間違(まちが)いない。


「……ねぇカズ」


「ん?」


(わたし)()て」


「……()てるよ」


「うん」


 それから美羽(みう)(のこ)(すく)ない時間(じかん)和也(かずや)()()()う。

 (わか)れる選択(せんたく)()したとは()え、それはお(たが)いのこれからの(こと)(かんが)えての選択(せんたく)であり、(きら)いだから(わか)れる(わけ)では()い。

 (ぎゃく)()きだからこその選択(せんたく)

 (ゆえ)彼女(かのじょ)選択(せんたく)する。


「ねぇカズ、お(ねが)いがあるの」


「なんだ?」


「カズを(たお)すその(とき)まで、……(わたし)(なか)からカズを()()()()()()()()()()()


 そう()われ、ギュッと美羽(みう)()きしめる和也(かずや)()(ちから)(はい)った。


「……お(ねが)い」


「なんの(ため)に……、いや、そうだよな……」


 もしかしたら和也(かずや)()(しん)(てき)である、和也(かずや)(なか)にいる(もの)美羽(みう)()けるかもしれない。そうなればそれは()だ。

 和也(かずや)ならまだ(よみがえ)らせる手立(てだ)てはある、しかし、(おそ)らくそれは出来(でき)ないだろう。

 (ゆえ)美羽(みう)和也(かずや)()きだと()記憶(きおく)()してほしかった。

 和也(かずや)()(もど)(ため)とは()え、いざその(とき)()たら美羽(みう)()(ゆる)めてしまうかもしれない。

 ……それを美羽(みう)危惧(きぐ)していた。


()きだよ? でもね? ()かってほしいの」


「……()かってるさ」


「……そんな(こわ)(かお)にならないでよ」


 (くる)しい。()かってるからこそ(なや)み、それが表面(ひょうめん)()てしまう。


「これはね? カズを()(もだ)(ため)必要(ひつよう)なの」


()かってるって()ってるだろ……」


「ほら……、もう、時間(じかん)()いよ?」


「クソッ!」


 (いか)()じりの(かな)しみに、和也(かずや)(からだ)(ふる)え、(なみだ)()かべる。

 和也(かずや)としては到底(とうてい)容認(ようにん)する(こと)出来(でき)ない。

 なぜなら、(あい)してくれているならそれを(ちから)()え、(かなら)()てくれると(しん)じる(こと)出来(でき)るから。

 だが美羽(みう)(ちが)う。

 ()きだからこそそれが邪魔(じゃま)をし、和也(かずや)とまともに(たたか)(こと)勿論(もちろん)、その(とき)()たら(たお)(こと)躊躇(ちゅうちょ)してしまうんじゃないかと(おも)っている。


「……お(ねが)いカズ」


「ここでそんなふざけた(こと)()いやがって……」


「カズと()()ってた記憶(きおく)、それが(ゆめ)だったと(おも)っていたいの」


「クッ……、お(まえ)馬鹿(ばか)だよ美羽(みう)大馬鹿(おおばか)だ」


「うん、()ってる」


「クソッ! だったら(おれ)(たお)したらちゃんと記憶(きおく)(もど)るようにしてやるよ!」


「うん……、ありがと」


(かなら)()い! じゃなきゃ記憶(きおく)(もど)せねえぞ!」


「わかった、カズ……、大好(だいす)き」


 (あらた)めて美羽(みう)(くちびる)(かさ)ねる。

 そして、そのまま和也(かずや)は"変換(へんかん)"の(ちから)使(つか)う。


「(ありがとうカズ、大好(だいす)き、大好(だいす)…………)」


 (かさ)ねる(くちびる)(はな)れ、美羽(みう)はそのまま(ねむ)りについた。


「……(いま)はゆっくり(ねむ)れ。美羽(みう)……、(おれ)もお(まえ)大好(だいす)きだ……。だから、いつまでも(ゆめ)(おぼ)れて()てんじゃねえぞ? ……()てこい八岐大蛇(ヤマタノオロチ)


 ()ばれ、美羽(みう)(かげ)から八岐大蛇(ヤマタノオロチ)(かお)()すと。


憲明(のりあき)()んできてくんねえか?」


<承知(しょうち)した。しかし、それで本当(ほんとう)()かったのか? 本体(ほんたい)(おく)ってやったら()いのではないか?>


「……下手(へた)(おく)っていってみろ、(おれ)はコイツの記憶(きおく)(もど)しちまうかもしんねぇ。んなことしたら美羽(みう)にブチギレられちまうよ」


<くははっ、美羽(みう)ならそうするな。()ってろ、憲明(のりあき)がバイクに()って(いそ)いでここに()る>


「……ありがとな」


<……本体(ほんたい)美羽(みう)(ため)だからな、(われ)()(おく)ったところで迷惑(めいわく)しかかけんよ>


「んなことねえと(おも)うが」


 事実(じじつ)下手(へた)八岐大蛇(ヤマタノオロチ)(そと)()れば余計(よけい)天候(てんこう)がおかしくなり、(ひど)くなる(おそ)れがある。

 これまで()てこれたのは美羽(みう)制御(せいぎょ)していたからだ。

 だからと()って現状(げんじょう)天気(てんき)操作(そうさ)する(こと)出来(でき)ない理由(りゆう)がある。


「んじゃ()るか」


 (いま)までいた空間(くうかん)()れ、(くだ)()って()()()()()()()


 ーー 東京(とうきょう)スカイツリー展望台(てんぼうだい) ーー


「んじゃ(すこ)()つか」


 "ゼイラム"で(ふところ)からブラックデビルを()して()()けて()い、和也(かずや)美羽(みう)両手(りょうて)(やさ)しく、お姫様(ひめさま)()っこをしながら憲明(のりあき)()るのを()ち、(そと)(なが)める。


「……今日(きょう)()(あめ)だよちくしょう」


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