第328話 愚直に君が好きだから
カズとゼストは楽しげに話をしてるけど、こっちとしてはそんな余裕がまったく無い。
特に美羽が問題かもしれなかった。
美羽はカズが何処にいるのかたった1人で探し続けていた訳だし。まぁ、銀月やステラ、アクアやバウもいたから別に1人ってことも無かったけど。
「泣くなよ美羽、俺を1人で探してたんだろ? ほら、俺はここにいるぞ?」
「……」
「悪かった、俺が悪かったから許してくれ。ほら」
そう言ってカズが両手を広げて美羽が来るのを待つと、美羽は我慢の限界がついにきて完全に泣きだし、カズに抱き締めてもらう為に飛び付いた。
「よしよし、……悪かった、本当にゴメンな。だからと言って1人で無茶な事しないでくれ。なんで憲明達に相談もしないで行動したのか今更俺は聞かねえが、もう戻っても良いだろ」
「……」
「……まっ、俺が注意しても聞かねえか」
「そりょそうだ、お前が美羽を怒らせて泣かしたのが原因なんだからよ」
「ククッ、痛いことを言ってくれるじゃねえか一樹。確かにその通りだ。全部俺が撒いた種だ。しかもまさかクラスの連中全員がこうして来るなんて思っちゃいなかったな」
「相手がお前なんだから当然だろ」
そこでグレイが呆れながらカズに言うと。
「そうよ! 最初、アナタがあの冥竜の生まれ変わりって知った時は恐ろしかったけど」
「うん、よくよく考えてみれば君は君だし、私達皆、君に色々とお世話にもなった訳だし」
「そうだよ。あのね? 確かに今でも怖いよ? だけど、和也君がどんな人なのか私達知ってるもん。だから、君がどうして敵にならなきゃいけないのか、私達聞いたの。それで決めたんだよ? 君を、和也君を助ける為に、クラスの皆、君と戦うって」
「絶望だか終焉だかなんだかしらねえけど、俺達は仲間なんだしその仲間を助ける為ならどんな協力でもするぜ?」
「「そうだそうだ!」」
「……お前ら」
クラスの連中、皆が皆、俺や美羽とかさ、一樹やヤッさんとかカズと深く関わってる訳でもねえのに、こうして協力してくれるって言ってくれるのが俺としては嬉しかった。
「私達全員、貴方が放つその独特なオーラを覚えていますもの。ほんの些細な違和感には敏感に感じられますわ。ましてや、貴方があの竜の姿になった時の恐怖を皆忘れられる筈も無いですもの」
「そりゃそうだ、レイナの言う通りだ。……ククッ、……ありがとな、お前ら。そうだ、礼と言っちゃあれなんだが、……一緒に歌わねえか? 美羽」
「……」
「イリス、お前もどうだ? 3人で歌おう」
「……美羽姉が良いなら」
「……うん、良いよ……」
「決まりだ。歌いたい曲を言ってくれりゃピアノでその曲を弾く」
カズがピアノを弾きながら美羽とイリス、3人が一緒に歌うのは何気に初めてだったと思う。
何時もはどちらか2人だけってのが多かったし、練習と言ってもその場にカズがいない事だってあったから時間やタイミングがなかなか合わなかった訳だし。
「美羽姉が決めて良いぜ?」
「……なら」
そこで美羽が歌いたい曲名を口にした時、どこか、カズの様子が変わる。
その曲名は。
"Prominence Love"
「……良いのか? その曲、嫌いになったんじゃねえのか?」
「大丈夫、ちゃんと歌えるから」
「……わかった」
「あの、それでね? カズには悪いけど、歌詞、少し変えさせてもらった」
「……お前がまた歌ってくれるなら多少変えても良いさ」
その曲に何かあったのか?
"Prominence Love"って曲は初めて聞くから、俺はその曲で何があったのかなんて、全然何も知らないでいた。
【 愛しています心からそう伝えたい
正直な気持ち 直接言えなくて 本当にゴメンね
|他の人を愛さないでね《(他の人を愛していいよ)》
君は僕にとっての太陽で月なんです だから誰にも奪われたくないのが本音です
|君がいるから私がいる《(君がいるから僕がいる)》
だけどそんな私のワガママを どうか 聞いてください
何度目かの あの夏の夜を私は忘れない
好き その言葉を聞いて私は嬉しかったしずっと一緒にいたいと思えたよ
君に出会えてよかった 心から
君に出会わなければ私はどんな生き方をしてただろう 本当によかったと思えるよ でも行かなきゃいけない私を どうか許して
好きです 大好きです 愛してます 誰よりも愛してます (君の事を)
忘れないで 覚えておいて 私が君の事が好きなことをどうか 忘れないで
(Prominence Love Prominence Love)
君を背に乗せどこまでも飛んでいきたい
君と一緒にどこまでも どこまでも旅に出たい 何もかも忘れて2人だけで 手を繋いで一緒に出たい
生まれ変わっても|きっと君をみつける《(きっと君をみつける)》(きっと)
生まれ変わっても君を愛したい 生まれ変わっても 君に愛されたい(約束しよ)
Prominence Love 離したくないよ 君の手を 君の手を でも離さなきゃ(好きだから)
抑えきれない感情を殺し行かなきゃいけない私を許して下さい 嫌いになったわけじゃないよ(本当に) 本当は側にいたいよ 君の瞳をずっと見ていたいよ(行きたくないな)
君に抱かれて飛んでいきたい 君と一緒に生きたい
あぁ 時間が来て私は消えてしまう それまで私は君の側に (いさせて) 】
正直、聴いていてなんだかせつなくなってくる。
俺はどこら辺を変えたのかサッパリ解らねえけど、お互い好きで愛し合ってるのに離れなきゃいけなくなったってイメージがある。
それって美羽の別の曲、"To remember love"って曲に。
「……美羽、お前……」
ん? どうしたんだ? カズが動揺してる?
「ずっと考えてたの。カズ、私と一度別れよ」
…………は?
「お、おまっ! お前なに」
「ずっと考えてたの、……そうする事が今のカズにとって一番良いんじゃないかって」
「だからって、別れるなんて簡単に言うなよ! カズがどんな気持ちかお前が一番分かってるんじゃねえのかよ?!」
「分かってる。分かってるから別れるの」
いや……意味わかんねえし。
「……わかった」
「お前はなんでそれを受け入れんだよ?! あぁア?! ざけんなよおい!! 俺は認めねえぞ!!」
俺はブチギレた。美羽の言葉は勿論、それを受け入れるカズに。
「怒んないでよ……」
「は?! 怒るに決まってんだろ!!」
勿論怒のは俺だけじゃない、その場にいるクラスメイト全員だ。
「言ったじゃん、一度だって。別に嫌いになった訳じゃないの。だから勿論、その時が来たら寄りを戻すつもりよ」
「その時が来たらって何時の話だよ?!」
「そんなのカズを殺してからよ!」
「え、おまっ、……え? あっ……、なるほど……」
「はぁ……、鋭いんだか鈍いんだか」
「あっ、あはは、だってお前、な~?」
周りに同意を得ようと見渡したけど、その意味をちゃんと理解してるのは何時もの連中だけで、他のクラスメイト達は理解していなかった。
「だからカズ、その時が来たら私はアナタを殺しに行くから。その後寄り、戻そうね」
「……分かった。だったらちゃんと俺の所まで辿り着け。だがよ、俺の前に先ず、ゼスト達凶星十三星座を退けてからだ」
「うん、勿論分かってる」
「まっ、美羽に関しては問題無いだろ。あるとすりゃ他の連中だな」
確かにそりゃそうだ。
「お前を好きになってよかったよ」
「でしょ? 私、諦めが悪い女だから」
「クククッ、それな」
「あっ、でも一度別れる前に、……ひ、久し振りにさ? その、ほら、……ずっとしてなかったし?」
「はいはい、0時までには戻らなきゃならねえからそれまでタップリ可愛がらせて頂きますよ」
「やった!」
「「(やったじゃねえよオイッ!)」」




