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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第12章 悪魔の仮面
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第327話 ピアノの旋律


大丈夫(だいじょうぶ)か?」


「……(わる)い、迷惑(めいわく)かけちまって」


()にすんな、あんなの、(だれ)にも予想(よそう)出来(でき)ねえよ」


「……うん」


 "(うらな)いの(やかた)"で(たお)れた連中(れんちゅう)保健室(ほけんしつ)(はこ)(ため)に、(おれ)一機(かずき)やレイナ(たち)()んで(たの)んで(おれ)(おれ)でイリスを中庭(なかにわ)(はこ)んで()かせていた。

 正直(しょうじき)(おれ)もその()(たお)れそうになったけど、(おれ)まで(たお)れたら(だれ)かが()るまでそのままになってただろうし、必死(ひっし)にどうにか意識(いしき)()えるしか()かった。


(みず)()むか?」


「……いらない」


 流石(さすが)のイリスでも()えられない圧力(あつりょく)に、(おれ)はよく()えられたなって自分(じぶん)()めてやりたい。


「イリスの調子(ちょうし)はどう?」


美羽(みう)……、()ての(とお)絶賛(ぜっさん)ダウン(ちゅう)だ」


 ダウンしたイリスを心配(しんぱい)して()()てくれた美羽(みう)は、その()(みず)用意(ようい)してくれていた。


()める?」


「……(わる)美羽(みう)(ねえ)、ちょっと(いま)無理(むり)……」


「そう……みたいだね、んじゃ()りあえず()みたくなったら()めるように、ノリちゃんに(わた)しておくね」


「……うん」


「んじゃノリちゃん」


「ん、ありがとな」


 美羽(みう)から(みず)()()り、それを芝生(しばふ)(うえ)()いた(とき)

 (おれ)美羽(みう)の2()はある違和感(いわかん)(かん)じた。


「おい美羽(みう)……」


「……わかってる」


 (そら)快晴(かいせい)時間(じかん)昼過(ひるす)ぎ。

 どこかで喧嘩(けんか)(あらそ)(ごと)(とく)()し。

 けど空気(くうき)一瞬(いっしゅん)()わった。

 (ほか)連中(れんちゅう)には(かん)()れてないのが不思議(ふしぎ)(ほど)圧迫感(あっぱくかん)


「これって……、いやでも、……アイツはまだ()てる(はず)だよな」


「だよね……。じゃ、この圧迫感(あっぱくかん)は……、何?」


 俺達(おれたち)(かん)じている圧迫感(あっぱくかん)独特(どくとく)で、それはカズから(ただよ)ってくる気配(けはい)とも()える感覚(かんかく)(ちか)い。


「……おい美羽(みう)、これってやっぱり」


「たぶん……、そう」


 でもカズにしてはどこか不安定(ふあんてい)って(おも)える。

 するとそこで、急にピアノの(おと)()こえ(はじ)めた。


「この音色(ねいろ)は……」


「……! "遺作(いさく)"?!」


 "遺作(いさく)"?


 ピアノの(きょく)がその"遺作(いさく)"だって()った途端(とたん)美羽(みう)は、(あわ)てた様子(ようす)音楽室(おんがくしつ)()けて(はし)()した。


 まさか! 本当(ほんとう)にアイツなのか?!


(わる)いイリス! ここにいてくれ!」


「まって! (おれ)も! (おれ)()く!」


「……無茶(むちゃ)だけはすんなよ?」


「わかってる」


 それから(おれ)はイリスと一緒(いっしょ)に、美羽(みう)()いかけて音楽室(おんがくしつ)(はし)った。

 途中(とちゅう)美羽(みう)()っていた(きょく)、"遺作(いさく)"って(きょく)が終わり。今度は(おれ)でも知ってる"月光(げっこう)"が()かれ(はじ)めて、もしかしたらやっぱりアイツなんじゃって、不安(ふあん)期待(きたい)()()じった感情(かんじょう)になって(いそ)ぐ。


憲明(のりあき)!」


「お(まえ)()づいたのか一樹(かずき)!」


()づかねえ(はず)ねえだろ! これ絶対(ぜったい)アイツだろ!」


「たぶんそうだ! (いま)美羽(みう)(さき)()ってる!」


「おいおい! 大丈夫(だいじょうぶ)なのかそれ?! アイツを1()でいかせて()った瞬間(しゅんかん)喧嘩(けんか)()ったらどうすんだよ?! ましてや本当(ほんとう)にアイツなのかすら(わか)らねえのに!」


 一樹(かずき)もカズだって(おも)ってるけど、本当(ほんとう)にカズなのか(わか)ってない。

 でも、(なが)れてくる(きょく)をカズはよく()いていたし()きかたの(くせ)圧迫感(あっぱくかん)もカズに()ている。それだけで断定(だんてい)するのはまだ(はや)いけど、(ほか)(かんが)えられない。


「! 美羽(みう)!」


 四階(よんかい)まで階段(かいだん)()がって()くと、()ぐの(ところ)(かお)をうつむかせて()っている美羽(みう)がいた。


「どうしたんだよ?!」


「ゴメン、ちょっと、(こわ)くなって……。だからノリちゃんが()るの()ってた……」


「……そうか。んじゃ、一緒(いっしょ)(はい)るか」


「……うん」


 音楽室(おんがくしつ)()()(まえ)

 (おれ)美羽(みう)(うし)ろに()ち、美羽(みう)(とびら)()けて(なか)(はい)ると。


 ! やっぱお(まえ)だったか。


 (くろ)仮面(かめん)(かお)(かく)しちゃいるが、(まぎ)れもなくそこにいるのはカズだ。

 しかも(まど)(ほう)にはゼストまで仮面(かめん)()け、(うで)()んで(しず)かに()いている。


 ……ここで(さわ)いだら問題(もんだい)になるな。


 そう(おも)って(おれ)(しず)かに(ある)き、カズが()いているピアノ(まえ)にある椅子(いす)(すわ)る。

 美羽(みう)(なみだ)ぐみながら()きそうになるのをこらえるために(うえ)()き、(はな)をすすって我慢(がまん)しつつカズの(ちか)くで()った。


 (ひさ)しぶりに()くカズのピアノ。それに(ひさ)しぶりに()るカズになんだか(おれ)()きそうだ。


 そんな(おれ)(だま)って()(つむ)り、カズの演奏(えんそう)(おわ)わるその(とき)まで()()っていると、カズの演奏(えんそう)(つい)に終わる。そこで()()けると、いつの()にか(ほか)(みんな)まで音楽室(おんがくしつ)集結(しゅうけつ)し、クラスの連中(れんちゅう)まで(しず)かに()ていた。

 まっ、全員(ぜんいん)どこか(こわ)(かお)をしてるけどそりゃ当然(とうぜん)だよな。


「……(ひさ)しぶりだなお(まえ)ら」


「……おぅ、(むくろ)(はなし)だと来年(らいねん)(はる)()きる予定(よてい)じゃなかったのかよ?」


「クククッ、色々(いろいろ)としなきゃならねえ(こと)があったもんだから一度(いちど)な」


 (くろ)仮面(かめん)()けてはいるけどやっぱカズで間違(まちが)()い。


「どうしてそんな仮面(かめん)()けてんだ?」


「あ? こうでもしなきゃエルピスにバレちまうからよ。まっ、()たところでアイツに(おれ)をどうこう出来(でき)(こと)なんざ皆無(かいむ)だが」


「カズ……」


美羽(みう)元気(げんき)にしてたか?」


 ()くのをこらえながら(なに)()えば()いのか(わか)らないって(かお)をする美羽(みう)は、(かお)(うえ)()け、必死(ひっし)言葉(ことば)()そうとしていると。


覚悟(かくご)出来(でき)てるんだよね?」


 瞬間(しゅんかん)美羽(みう)左手(ひだりて)に"青い彼岸花(リコリス・ラジアータ)"が(あらわ)れてカズの(くび)目掛(めが)けて(ちょう)高速(こうそく)攻撃(こうげき)仕掛(しか)けた。


 おっ(ぱじ)めやがったコイツ!!


邪魔(じゃま)して(もう)(わけ)()いがそれはさせんよ」


 けど同時(どうじ)にスッと、親指(おやゆび)人差(ひとさ)(ゆび)、その2(ほん)(ゆび)だけで"青い彼岸花(リコリス・ラジアータ)"をゼストは簡単(かんたん)()まんで()める。


 マジかよ、美羽(みう)攻撃(こうげき)をアイツ、簡単(かんたん)()めやがった……。


 美羽(みう)攻撃(こうげき)(いま)俺達(おれたち)でやっと、ほん(すこ)しだけど()()()けるようなレベル。

 つまり、(ほか)連中(れんちゅう)にしてみりゃ(いま)一瞬(いっしゅん)(なに)()きたのか理解(りかい)出来(でき)ないってことだ。


「……ねぇ、これが(いま)(わたし)実力(じつりょく)だと(おも)ってる……?」


「ふふ、(たと)本気(ほんき)()したとて、(わたし)()てるとでも?」


「……(ため)してみようか?」


「よかろう」


 美羽(みう)はゼストを(した)から(にら)み、ゼストは仮面(かめん)表情(ひょうじょ)()えねえけど、そんな美羽(みう)(たい)して笑ってるような(かん)じがする。

 そんな2人が(しず)かに(にら)()っているだけで(まわ)りの空気(くうき)(ふる)え、(まわ)りにいる連中(れんちゅう)から異常(いじょう)緊張(きんちょう)(はじ)めてるのがわかる。


「よせゼスト、美羽(コイツ)本気(ほんき)(おれ)()ると(おも)ったか?」


(もう)(わけ)御座(ござ)いません兄者(あにじゃ)。しかし流石(さすが)ですね、兄者(あにじゃ)御作(おつく)りになられたこの短剣(たんけん)、"青い彼岸花(リコリス・ラジアータ)"と()いましたか、手袋(てぶくろ)()しでもその潜在能力(せんざいのうりょく)未知数(みちすう)(はか)()ることが出来ません」


「そうか、そりゃよかった。美羽(みう)次第(しだい)でどんな(ふう)成長(せいちょう)するかマジで(たの)しみだ」


「コレだけで(われ)らと対等(たいとう)(たたか)える(こと)(たし)かです。正直(しょうじき)(わたし)としてはこの()でコレを破壊(はかい)したいところではありますが、それをしてしまうと……」


「クククッ、間違(まちが)()(おれ)がお(まえ)をブチ(ころ)すから絶対(ぜったい)にするな」


「はははっ、兄者(あにじゃ)場合(ばあい)それが(うそ)じゃないので本当(ほんとう)(こわ)いですよ」


 カズからは戦意(せんい)ってのを(かん)じられない、むしろ、わざわざ俺達(おれたち)()いに()てくれた(かん)じを(おれ)(かん)じていた。

 けどそれを(かん)じられないクラスの連中(れんちゅう)からしたら、恐怖(きょうふ)でしかないみたいで。


「それでなにしに来たんですの?」


 レイナだ。

 レイナは委員長(いいんちょう)(てき)立場(たちば)でもあるから、クラスを代表(だいひょう)してカズに()く。


(べつ)にお(まえ)らと喧嘩(けんか)したくて()たんじゃねえからそう身構(みがま)えんなよ。(おれ)はただ、季節外(きせつはず)れの学園祭(がくえんさい)をしてるって()いたから()ただけだ。なんてのは(うそ)で、本当(ほんとう)学園祭(がくえんさい)をしてるなんて()らなかった。ただ、お(まえ)らに()いたいから()たんだ。それ以外(いがい)理由(りゆう)があるとするならそりゃ、お(まえ)らが(かんが)えてる(こと)になっちまうぞ?」


 その(とお)りだ、ここでコイツが(あば)れでもしたら(だれ)(たす)からないと(おも)うし、コイツがその()ならとっくに殺戮(さつりく)(はじ)まっててもおかしくない。

 いや、むしろカズならこれから(はじ)めるって(とき)にわざとピアノを()いて、恐怖感(きょうふかん)増大(ぞうだい)させるだろうな。だけど今回(こんかい)はマジでそんな()がしないから安心(あんしん)する(こと)出来(でき)る。


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