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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第1章 終わりの始まり
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第32話 初依頼


 木々が生茂る密林の中を、太古の殺戮兵器3匹が颯爽(しっそう)する。


 ヴェロキラプトルのアリス、ヒスイ、ダリアの3匹だ。


 彼女達の上では木から木へと移動するカズが、両手をポケットに入れたまま余裕でついて行っている。

 その後ろから俺達も全力で追い駆けるものの、全然追い付けていなかった……。

 カズはギルドから指名依頼を受け、現在その依頼された目標へと進んでいた。


 ーー依頼。


 つまりそれはクエストの内容だけど。


 【 未確認生物の調査 】


 カズはこの(たぐ)いが大好きだ。

 俺達もたんなる調査なら訓練がてら手伝いたいと言って、現在なんとか頑張っている。

 カズだけの訓練が大変なのに、そこへ遂にベヘモスが来てからと言うもの毎日毎日ベヘモスとカズ、更には骸にまでしごかれ続け、体が悲鳴を上げていた。

 そこで気分転換に手伝うと言ったのが運の尽きだった。

 出発してからずっとジメジメした密林の中を全力疾走し続けている……。

 ちなみにナッチとベヘモス、そして骸は留守番中……。


「か、かずゥゥ、い、いい加減休も……」


 息も絶え絶えに、俺はカズにそう伝えた。


『あ? なんだもうへばったのか? ……仕方ねえな』


 俺達2人は無線インカムでそんなやり取りをして、ようやく休憩をする事が出来た。

 インカムを付けているのは俺、カズ、美羽の3人。

 ちなみに付けているインカムはカズオリジナルで、カズが作った小型のインカムだ。


「はぁはぁはぁ……はぁ」


「もう少しついて来れると思ったから連れて来たのに。これじゃ予定より遅い時間に到着する事になるな」


「す、すまん……はぁはぁ」


「まぁいい、どのみち急いでる訳じゃねえんだ。だがまさかヤッさんが野球部を辞めてたなんてな。なんかおかしいとは思ってたんだよなぁ、なんでこんなに長い休みを貰ったのか不思議だったんだ」


「ごめ……、はぁはぁ。ごめんな。……ふうぅぅぅぅぅ……。すうぅぅぅぅぅぅ……はあぁぁぁぁぁぁぁ……。だってこんな面白い場所に来れるなら、野球部を辞めてでも来る価値はあるでしょ。それにほら、ウチの高校の野球部って弱小で予選敗退してるし……」


「それを言うなよ……、そんな事先輩達が聞いたら泣くぞ?」


「うっ……」


 痛いところを突かれたヤッさんは、その申し訳なさに言葉が出ない。


「まっ取り敢えず水を飲め水を。でも大量に摂取するなよ? 走るのがキツくなるからな」


「「は〜い」」


 俺達は疲れてダルそうな返事をしてからカズに言われた様に水を少し呑む事にした。


「アリス、ヒスイ、ダリア、お前達も飲んでおけ」


 カズはスキル"魔法操作"を使って大量の水を3匹に与える。


「おいダリア、そんな急いで飲まなくても誰も取らねえよ」


 それでもダリアはガブ飲みし続けた。


「よっぽど喉が渇いていたのか? ん? ほら、飲んだならこっち来て休め。お前らもだ」


 カズの言葉にダリアは真横で丸くなって体を休ませ、アリスやヒスイも近くで体を休ませる。


「しっかし凄えよなあ、あのラプトルが今俺達の目の前にいて、カズにテイムされたからかスッゲェ懐いてんだぜ? これ、他の連中が知ったら凄い事になるな」


「馬鹿言わないでよノリちゃん。こっちの世界なら良いけど、下手にこっちの事を話したら大変な騒ぎになるじゃない」


 まぁ、確かに? その通りなんだけどよ……。

 騒ぎになるのを恐れてと言うより、美羽はカズの為に黙っていたかったと言った方が正しいかも知れないな。


「流石に言わねえよ。これは今ここにいる俺達やここを知る人達だけの秘密だ」


「でも良いな〜、私も恐竜欲しい〜」


 沙耶はアリス達を見て目を輝かせている。


 俺も欲しいよ! でもなんだかんだ言ってお前にはアイツがいるだろ!


「沙耶、お前は大好きな骸と一緒にいるだけで満足してるじゃねえか」


 俺はこの時、いらない事を言うから怒られる事になる。


「なんでよ! 確かに骸の事は大好きだけど、それとコレとは別じゃん! だから馬鹿明ってカズに言われたりするの分かんないの?」


 ウグッ?!


「ヒッデっ! そこまで言う事ないだろうが」


 そんな軽い口喧嘩をしていると、視界の隅でカズが1人微笑んでいたのが見えていた。


「おい、あんまし喧嘩してると、余計な体力を消耗しちまうぞ?」


 それでもカズは微笑んで、俺達に注意した。


「うっ、悪い」


「えへへ、ごめんカズ」


 俺と沙耶は苦笑いしながらカズに軽く謝るけど、どこかそれに楽しいってのがあった。


「ハッ、まあそんな口喧嘩出来るって事はそれだけ今が楽しいって事だ。だからせっかくこっちの世界に来たんだからもっと楽しめよ」


「カズ……、お前……」


 俺はカズのその優しさに、何故か感動しそうになっていた。


「まっ、だからと言って訓練の量は今のところ変えるつもりもねえけどな」


 俺達は地面に両手をついてガッカリした。


 くそぉ……、気分を上げておきながら落とすなよな。


「クククッ、もう少ししたら動くぞお」


「せ、せめてあと10分。いや5分で良いから休ませてくれ……」


「あ? 何言っていやがる」


 俺達は当然ガッカリした。


「後30分休憩すんぞ」


 まさかの延長?!


 俺達は一斉に立ち、今度は喜んだ。

 休憩してる間、カズは依頼内容を再確認する為に(ふところ)からクエストの紙を出して見ている。

 俺はその依頼内容が気になり、カズの横に座ると質問した。


「なあカズ、確か内容は未確認生物の調査だったよな?」


「あぁそうだ」


「どんな未確認生物なのか情報は書いてないのか?」


「詳しくは書かれていない。だが、ある程度の情報なら書いてある」


「どんなのだ?」


「ええと、目撃された時間は深夜。馬鹿デカいモンスターで体全体がヌメヌメしいる。体のあちこちには緑色の苔が生え、そこには見た事も無いキノコ等があちこちに生えており、その全てのキノコが光る。その光が消える頃には別のキノコが光り出したりと点滅を繰り返す。色は緑、青、赤、紫、白、黄色と光る。モンスターは四足獣でとても大きな頭を持ち、その口はとてもデカく、目が小さい。だとさ」


「ふ〜ん、んで? そいつは凶暴なのか?」


「いやそこまでは書いてないが、深夜の水辺付近で冒険者数人が出くわしたそうだ。あまりの巨体に驚いて逃げて来たそうだぞ」


「は? 冒険者が逃げんなよなぁ」


「まあそう言うな、その冒険者達はランクDでお前達よりは先輩だ。だからそんな巨大なモンスターと戦った経験がないんだろ。仕方ない事だ」


「なら俺達もそうなんだけど?」


「は? お前等は違うだろ、骸がお前らの相手になって散々ボロ雑巾みたいにされてるじゃねえか」


「うっ……。つぅか骸はよせよ……、俺達が骸の相手になれる訳ねえだろうが」


「はぁあ? 骸程今のお前らの戦闘訓練してくれる奴がどこにいるよ? 俺か? ベヘモスか?」


「どっちかと言うとまだベヘモスが良いような……」


「よし、戻ったらベヘモスにもっと本気出して良いって言っとく」


「や、やめろー!」


 クソッ! また余計な事を言っちまった!


 カズと戦闘訓練をすれば、カズは本を読みながらゼイラムだけを操って俺達を簡単に全滅させる……。


 骸だと、周辺を最強技の1つ、"アイス・エイジ"で誰も近づけさせなくしてから次々と大きな氷塊を作っては飛ばし。小さい氷塊を何十何百と作れば弾丸の如く飛ばしてくる為、ただ防戦一方を続けられた後に突然骸が凶悪な尾で薙ぎ払ったり、突進によって俺達は吹き飛ばされ続ける事になる……。


 でもベヘモスは違った。

 ベヘモスは何時もニコニコしながら俺達の攻撃を軽く受け流し、「いいねぇ今の」、「ちょっと力み過ぎかな?」、「ほらほらちゃんと狙わないと狙った所に攻撃が行かないよ?」、といったアドバイス等を言ってくれる。

 そして俺達全員が疲れ果てるまでベヘモスはずっとそのまま付き合ってくれる。


 俺はカズにその事を説明すると、他の皆んなも同意見で、うんうん、と何度も頷いて共感してくれた。


「ちっ、めんどくせぇなぁ。俺や骸がそこまで本気になれる訳ねえだろ? 良いのか? 次から体術を取り入れるぞ? 良いのか? 次からもっと肉弾戦しろって骸に言っても?」


「うっ……、いや、だからさ……、こう……もっとまともな訓練? を、してほしい訳であってな? そ、その……。美羽、バトンタッチ!」


 上手く説明する事が出来ない俺は、そこで美羽にバトンタッチしてやった。


「え?! ちょっ?! もおぉぅ……。あのね? 私達はカズがどれだけ強いのかもう知ってるじゃない? だからさ、私達もどうやったらカズみたいに強くなれるのかって悩んだりしてるの。だからもっとカズ自身からアドバイスしてほしいって思うしさ。もっと色んな闘い方を学びたいって思うの」


 そうそう、その通りだ。


「それに私達はカズの本気になった本当の戦いを知らない」


 うん、間違いない。


「知っているのはあの特殊な巨大ワームの時に見た時だけ。私は知りたい。カズの本当の強さを」


 そうだそうだ! もっと言ってやれ!


「それにカズは私達がどんな風に連携すれば良いのかも分かってるよね? だからそれを私達にだけ考えさせるんじゃなくて、カズ自身がキチンと教えてくれた方が効率が良いと思うの」


 マジそれな。


「その辺、ベヘモスは分かってくれてる。だからアドバイスしながら私達の訓練をしてはいてくれるけど。私はやっぱりカズが良いよ……、カズは私達に容赦無く訓練してくれる。だからこそ、そこにもっとアドバイスが欲しいの。だってカズったら、何時も本読んでばかりでただ私達をボロボロにするだけなんだもん。もっと真剣になって欲しい」


 そうだぞこのヤロー! もっと真剣に俺達に教えてくれてもいいじゃねえかバカヤロー!


 っと、口には出せないから心の中で俺は訴えた。


「わ、分かった。分かったからちょっと離れてくれ……」


 美羽はどんどん熱く語る度にカズへと近づいて行き、気づけば顔と顔が残り数センチまで迫っていた。


 美羽が……、カズに迫ってる……だと?


「ご、ごめん!」


 余りに近かったから美羽とカズはお互い照れた。


 照れんなよそこで! そこはもっと攻めろよ美羽!


「いや、俺の方こそ悪い……。そうだよな、確かに美羽の言う通りだ。俺は俺で、本当に俺に追い付けるのか? って気持ちがあって、お前らの訓練に手を抜いていた。本当にすまない、今度からちゃんと訓練相手になる事を約束する」


「うん!」


 カズにそう言って貰えた美羽は嬉しそうだ……。


「んじゃ取り敢えず今度、俺が考えたいくつかの技を見せるとしよう」


 マジか?!


「っしゃっ!」


 カズが技を見せてくれる事に、俺は喜んだ。


「そういやお前ら、魔導書(グリモワール)はどうなってんだ? まだ何も変化無しか?」


「あぁ実はそうなんだよ。お前も魔導書(グリモワール)で自分に合った魔法を発現させたんだろ? どうやったかもっと詳しく教えてくれよ」


「ん? おかしいな……、使って直ぐに発現する筈なんだが……。まぁ良い、取り敢えずそれはクエストを終わらせて、さっさと帰ってからじっくり考えるとしようぜ」


「あぁ、頼むぜカズ」


 俺は横にいるカズに拳を向けると、カズも拳を出し、お互いその拳を軽くぶつけて微笑んだ。

 その時、アリス達が急に頭を上げ、鼻で何かの匂いを嗅ぎ始めた。


「どうしたんだ急に?」


未確認生物、UMAって、ロマン溢れるワードですよね✨

ここからはそんな謎の生物調査へ行く話になります。

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