第324話 学園祭デート
「さて、グレイはあのまま放っておいて。イリスも休憩なのか?」
「うん、俺も休憩になった」
「そっかぁ、んじゃ一緒に学園祭廻るか」
「んっ」
イリスと手を繋ぎ、俺は学園祭を一緒に楽しむ事にした。
この学園都市には今さら言う事でもねえけど、キャットピープルやコボルト、その他にも数多くの亜人種が通っている。
偏見や差別めいた事は無い。
でももしそんな事をするような馬鹿がいたらと思うと…………。
これは以前、俺達がこの学園都市に来る前の話しらしいんだけど、どこかの馬鹿がとある種族を差別したりイジメたりしたらしく、それを知ったここの人達がボコボコにした挙げ句、裸にして吊るしあげるとロープで馬に繋げての……、市中引き回しの刑にされたらしい……。
もうそりゃズタボロのボロ雑巾だよ。
その後どうなったのかなんて知りたくねえし聞きたくもねえからその先は想像に任せる。
「おい憲明! "わたあめ"あるぞ"わたあめ"! あっちには"りんご飴"!」
「うん、旨そうだな」
「おーっ! 唐揚げ串食いたい唐揚げ串!」
「はいはい」
唐揚げ串を買い、それをイリスが受け取ると。
「ほら憲明! 口開けろ!」
うん、旨い。
俺の口に運んでくれた唐揚げ串が旨い。
学生がと言うより、なんだかちゃんとした料理人が作ったんじゃないかと思えて中を覗くと、そこには唐揚げ作りに情熱を捧げた学生達が燃えながら作っていた。
「旨いな!」
「うん、そうだな」
次に俺達がよったのは"たこ焼"を出してるクラスの屋台で、そこはデカいタコが入っていて歯応えがあって旨い。
その後は"クレープ"。
「おー! クレープの種類が豊富でどれにしようか迷う! 憲明は何にする?!」
「ん~俺は無難にチョコバナナかな」
「んじゃチョコバナナ1つと、アーモンドチョコホイップ1つ」
アーモンドチョコホイップか、なんか旨そうだな。
頼んでから数分後に2つのクレープをイリスが受け取ると、目を輝かせながら喜んだ。
俺はイリスの喜ぶ顔を見るだけで幸せを感じる。
「にひっ」
いやマジで幸せなんだが?
「あっ、俺にひとくちくれ」
許可する前に持ってるチョコバナナクレープに顔を近づかせて食べる。
「うん、こっちはこっちで旨いけど、やっぱ俺のアーモンドチョコホイップのほうが旨いかな。食べてみるか?」
「んじゃひとくち貰おうかな」
「にひひっ、どうだ? こっちのほうが旨いだろ?」
大好きな彼女に満面の笑みでニコッと言われてみろ。
周りにいる他の女子なんざ"もやし"にしか見えなくなってくるぞ。
……可愛すぎて死ぬ。
「ど、どうした? お前の口には合わなかったか?」
いやまてそんな困ったって顔で見つめられても可愛いから心臓が破裂しそうになる。
「ち、違うんだ、ただ、幸せそうな顔をするお前が可愛すぎて、俺の思考がバグりそうになってたんだ」
「あっ、え? いや、こ、こんな所でそんなこと言うなよ……、馬鹿。お、お前はカッコいい……よ」
はい大好きです!! 今すぐこのまま抱き締めたいです!!
って思ってると逆にイリスのほうから抱き付いてくれて、見上げるようにして微笑むからもう、もう俺は死んでも良いってくらい幸せな気分になりつつイリスの頭を撫でた。
「へへへっ」
「「(店の前でイチャつくな店の前で)」」
「……はっ!」
そこでクレープを販売してるクラスの代表が何かを思いついたって顔をした。
「フェルミーナ君! この2倍大きい鉄板を錬成してほしい!」
「はい!」
ん? なにするんだ?
クラスの代表に頼まれた"フェルミーナ"って女子生徒が裏に行き、鋼鉄で大きな鉄板を錬成する。
へ~、あの娘、無駄の無い錬成の仕方をするな。
「出来ました!」
「ありがとう! よし、空いてるスペースでこの鉄板を使い、試しに特製クレープを作るぞ!」
「「おーー!!」」
そうして出来上がったクレープは。
「さー見てって下さい寄ってって下さい! カップル専用ラブラブクレープだよー!!」
普通のクレープの2倍はある大きさのクレープが出来上がり、中にはストロベリーチョコとキャラメルアーモンドが一緒に挟まれている。
これはこれで綺麗に飾り付けされてるし旨そうだな。
「おい、カップル専用だと? それはそれで旨そうじゃねえか」
おや、イリスさんが食いついた。
「勿論御注文時にはどのようなメニューをミックスするか言って下さいねー! 勿論! カップルの方限定ですので! カップルの方がコレを御注文されれば御安くさせて頂きます!」
そんな事を言われるとなんだか欲しくなってくるじゃねえか。
「俺欲しい!」
「ははっ、俺も欲しいかな」
2人でそう言うと。
「はいはい、お二人さんには今作ったコレをサービスさせて貰うよ」
おっ、気前が良いじゃねえか。
「ありがと」
「へへっ、サンキューな!」
「うん、君達のおかげで新メニューのアイディアが出来たからそのお礼だよ。だから……」
「憲明ほら、一緒に食べよう」
「そうだな」
クレープ店を出してるクラス代表が何か言いかけていたけど、イリスが笑顔で俺の前に貰ったクレープを持ってくるから一緒に食べることにした。
「……あの」
「お~! ストロベリーチョコも旨い!」
「うん、キャラメルアーモンドも旨いな」
「あの、聞いてる?」
「おい、ほっぺにホイップついてるぞ」
イリスのほっぺにホイップがついてるから指で取り、その指を舐めると。
「えへへ、憲明もほっぺにホイップついてるぞ?」
「マジで?」
「ほら、取ってやるよ」
「あの聞いてます?」
なんだよさっきから。
2人してクラス代表を睨むと。
「あの、早く店前からどいてくれないかな? 店前でずっとイチャつかれるのも迷惑なんだけどな」
「「あっ……」」
言われてみれば確かに俺達は店前でイチャついてる。
しかも、周りを見たら俺達2人は邪魔になっていた。
「……やっちまった」
「別に良いだろ、周りに俺達がラブラブだってとこを見せつけるチャンスじゃねえか」
お前はそれでいいかもしんねえけど、……なんか、なんか恥ずかしくなってくるんすよ。
でもだ。
「ここかな? ずっとラブラブでいられるクレープが売ってるクラスって」
「見て見て! あれってノリアキ君とイリスさんだよね? あの2人があんなにラブラブになってるのもあのクレープのおかげなのかな?」
「んじゃ俺達も買うか」
ありゃ? これはもしかして、俺達2人が宣伝効果に一役買ってる?
それからはカップルが集まる集まる。
学生だけじゃなく、祭りを楽しみに来た大人のカップル、夫婦も来ては一緒に食べていた。
「まっ、これはこれでよかったかな?」
「それもそうだな。んじゃ、次に行くとしますかイリスさん」
「そうしますか憲明さん」
さて、次はどこに行こうかな。
「憲明、はいアーン」
「アーン」




