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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第12章 悪魔の仮面
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第321話 薬


 気がつくと、俺と一樹は夜城邸の大水槽前ホールにあるソファの上で寝ていた。


「生き……てる……?」


「当たり前だ馬鹿者。(われ)がお前達を運んだのだからな」


「……ぅえ? ッ?!!」


 バニラが俺の顔を覗き込み、同時に我慢できない程の悪臭(あくしゅう)が鼻の奥に刺激して気持ちが悪くなる。


「くあぁ…………」


 鼻をつまんでも(すで)に手遅れ。

 俺の鼻は悪臭(あくしゅう)麻痺(まひ)した……。


「おいバニラ、その(にお)いなんとかならねえのか、(くさ)くて迷惑だ」


「いやだが組長殿、この(にお)いもまた薬であり」


「やかましい、さっさとなんとかしろ。じゃなきゃテメェ、その(にお)いが消えるまで中に入らせねえぞ」


「なんとか致しましょう!」


 ……親父さんには素直になるよなコイツ。


 まぁ親父さんに強烈で極悪な(にら)みをされたら誰だってしたがっちまうんだろうけど。それからバニラはその(にお)いの元凶(げんきょう)になっているモンスターの素材を、いそいそとギルドに持って行って依頼(いらい)を完了させて戻ってくると、消臭剤(しょうしゅうざい)やらなんやら使って悪臭(あくしゅう)を消すのに必死になった。


「おい、まだクセーぞ」


「申し訳ありませぬ! 只今(ただいま)!」


(くすり)になるのはわかるがよ、()けるなら()けるで周りに迷惑かけるようなことすんじゃねえよ」


「はい!」


「のうバニラ、お(ヌシ)()()った依頼のモンスターじゃが、(にお)いからして"エリムル・レレラ"かの?」


 ジャオルのおっちゃんが聞いてきたモンスターの名前は正解だ。

 "エリムル・レレラ"。

 その見た目から想像しにくいくらい全身が(くすり)になるモンスターで、なんにでも()く。

 最近だとその"エリムル・レレラ"から取れる内臓(ないぞう)の1つが、(がん)特効薬(とっこうやく)になりえるかもってことで(ぼう)大手企業に頼まれてバニラがその依頼を引き受けた。

 ちなみに依頼料は日本円で3000万。

 けどそれは()()()()()の話しであり、バニラは頭を潰して()()()()から減額されての1200万になった。


「ぬぅ、捕獲したつもりでいたのだがなぁ」


 あれのどこが捕獲したって言えるんだよ。

 それよりもクセえから早くなんとかしてくれよ。


 親父さんに怒られながらやっと掃除を終えたバニラはその後。外に出してある"エリムル・レレラ"の亡骸(なきがら)を取りに来た、(ぼう)大手企業に引き渡して風呂に入って(にお)いをおとした。


 14:10


「お前ら、ちっと俺に付き合え」


「あっ、はい」


 午後2時過ぎ。親父さんに呼ばれ、俺達はゼオルク郊外(こうがい)まで行くと。


「これからお前達には俺のパートナーと訓練してもらう」


 親父さんの、パートナー……。

 ……親父さんのパートナーなんだからきっと、とんでもなく(いか)ついモンスターが出てくるんだろうな。


 前にいないと言ってたけど、それは親父さんてきに隠しておきたかったから秘密にしていたんだと思う。

 結果(けっか)てきに"デスタニア"のココとリクがいたんだから、他にいてもおかしくない。


「出てこい。"牛鬼(ぎゅうき)"」


 呼ばれて親父さんの後ろの空間が(ゆが)み、"牛鬼(ぎゅうき)"が(えが)かれた(ふすま)が開くとそれはゆっくりと出てくる。

 牛みたいな頭、体は蜘蛛(くも)のデカいモンスター。

 "牛鬼(ぎゅうき)"。

 大妖怪の1体で、不死身の怪物(かいぶつ)としてでも知られる存在。


「頼むぞ"牛鬼(ぎゅうき)"」


<お任せ下さい>


 そこで俺はあることを思った。


 あ~……、もしかしてこの間"がしゃ"とか言ってたのってもしかしてぇ……。


 そいつも大妖怪と呼ばれている奴だ。


 ははっ、この人マジで鬼だなぁ……。


<では始めるとしようか>


 うん……、絶対ボコボコ決定だな。


 その後はもう、言うまでも無いよな?

 だって親父さんのパートナーだぜ? 大妖怪で有名な奴だぜ?

 でもまぁ良い訓練にはなったとは思う。

 オルカルミアルの討伐(とうばつ)をしてからもう2週間。

 次になんとかしてくれと言われている"埼玉エリア"を奪還(だっかん)する為に動いちゃいるんだけど、それが難航(なんこう)している。

 "デスタニア"のルークを先生が連れていったんだから簡単に終わると思い、まずは状況確認をするために行ったらそこで俺達は逃げるようにして戻ることになった……。


「親父さん、親父さんならアイツをどう討伐(とうばつ)します?」


 "牛鬼(ぎゅうき)"にボコボコにされて仰向(あおむ)けになりながらそう聞くと。


空自(くうじ)に頼んで空中からのミサイル攻撃。次に陸自(りくじ)地対空(ちたいくう)ミサイルをぶちこむ。まっ、それでもアイツには効果(こうか)はねえだろうがな」


「ですよねぇ……」


「相手はあの"()()()()()()()()"だからな」


 "茨木エリア"を縄張(なわば)りにし、一目(ひとめ)見ただけで今の現状(げんじょう)で手を出したらマズイって判断(はんだん)したモンスター。

 そいつが"埼玉エリア"にいて、空から()りてくると20~30メートルはあるモンスターを一口(ひとくち)で飲み込む場面に遭遇(そうぐう)した。


「どうします親父さん、アレはさすがにマズイっすよ」


「"鑑定(かんてい)"で奴のステータスは見れたんだったか?」


「うす、最初はSS(ダブルエス)ランクだと思ってたんすけど、近くで確認したらSSS(トリプルエス)ランク。しかも、あのオルカルミアルよりもめちゃくちゃ強いってのがわかったっす。親父さん……はアイツの事も知らなかったんすよぉ……ね?」


「当たり前だろバカやろう。知ってたらお前らに何かしらの情報を与えられただろうが」


「す、すいません、そっすよね……」


 俺に怒ってもなぁ……。


「奴にぶつけるとしたら……。"がしゃ"か」


 "がしゃ"ってやっぱアレだな。


 おそらく、いやきっと、親父さんが言ってる"がしゃ"ってのは、"餓舎髑髏(がしゃどくろ)"って妖怪の事だと思う。

 人の怨念(おんねん)とかが集まって生まれた存在で、骨だけの妖怪。


「親父さん、"がしゃ"ってやっぱ"餓舎髑髏(がしゃどくろ)"なんすか?」


「あぁ、よく解ったな」


「ちなみにランクやレベルはどれだけなんすか? "牛鬼(ぎゅうき)"にすら俺達全員が相手してもボコボコになるんすから、やっぱ"牛鬼(ぎゅうき)"や"餓舎髑髏(がしゃどくろ)"ってSランクじゃないっすよね?」


「ん~、まぁ、そうなるな」


「ぶっちゃけどれだけなんすか?」


「……SS(ダブルエス)になる……な」


「ってことは、(ムクロ)以外にもSS(ダブルエス)ランクがいたってことになりますよね? なんで黙ってたんすか? まぁ……、結局のところ(ムクロ)SS(ダブルエス)ランクなんかよりもっと上だった訳っすけど」


「まぁいるにはいたが、コイツらを使ったところでアイツを倒す事は出来なかったろうしな。それにコイツらの事は政府連中は知ってたさ。他には"火車(かしゃ)"、"(さとり)"、"雷獣(らいじゅう)"、"猫又(ねこまた)"って連中を俺は使役(しえき)してる」


 さ、さすがだ……。


「見た目は恐ろしいかも知れんが皆、本当は根が良い連中でな。その見た目から尾ひれがついて色々と恐れられちゃいるが、確かに恐れられる程の力は持ってはいる。試しにコイツと訓練してもよさそうだな」


 そう言って親父さんが次に呼び出したのは。


「呼ばれて来てみればこれはまた面白い」


「頼むぞ"安吉(やすきち)"」


「へい、お(まか)せ下さいお(やかた)(さま)。あっしはお(やかた)(さま)使役(しえき)されている"猫又(ねこまた)"の"安吉(やすきち)"って(もん)です。以後、()しなに」


 まるで大正時代(たいしょうじだい)の和服を着た超絶イケメンがキセルを持ち。"猫又(ねこまた)"の絵が(えが)かれた(ふすま)から出て来きた"安吉(やすきち)"って"猫又(ねこまた)"が俺達に挨拶をしてくれた。


「ぼんの御友人(ごゆうじん)方ですか。ほほぅ、良い面構(つらがま)えをしてらっしゃる。して、どこまでやれば良いんですかい?」


手加減(てかげん)出来る限りどんな事をしても(かま)わん」


(おお)せのままに」


 "猫又(ねこまた)"の"安吉(やすきち)"。

 真面目そうなんだけど、なんだか飄々(ひょうひょう)としててつかみどろこが無い感じがする。

 でもその実力は本物だった。

 手加減(てかげん)されてるのに俺達はまた簡単にボコボコにされ、"安吉(やすきち)"はそんな俺達を見て不適(ふてき)に笑い。


「あっしに()かされるようでじゃ、ぼんに辿(たど)()くなんて夢のまた夢ですよ?」


 な、なんかムカつくな。


 その後、何度も"安吉(やすきち)"に挑戦(ちょうせん)したけど結果は同じ。

 強いのは強いんだろうけど、強いって言うより、……なんて言ったら良いんだろ。

 合気道(あいきどう)に近い感じで俺達の攻撃は()(なが)され、即座(そくざ)にカウンターをされるばかり。


「どうしました? もう少し手加減(てかげん)しましょうか?」


 ……ブッ殺す!


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