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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第11章 荒れ狂う海
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第317話 荒れる海 7


 ヴァンパイアモードになっている先生は本当に手強かった。


「遅い! それでよくあの子を救うって言えたものね!」


 先生のステータスを見るまでは魔法も扱えるけど、どちらかと言うとパワータイプだとこれまで思っていた。

 でもそれは間違いで先生はカズ並みの速さで動き回る。

 そこにいたはずなのに次の瞬間には真後ろに移動して攻撃を交わされる。

 いくら(すき)を狙い、皆で協力しようとも全然当たらない。


「"血まみれの体(ブラッディーボディ)"」


 俺達の攻撃が当たりそうになると体を赤い霧状に変えて無効化される。

 それだけじゃねえ。体を小さいコウモリにして分裂すると、空中に移動してその状態で攻撃までしてくる。


「貴方達の攻撃が私に通用するとでも思ったのかしら? 伊達(だて)凶星十三星座(ゾディアック)のナンバーズに選ばれた私を()めないでちょうだい!」


 別に()めちゃいねえけど本当に強い。

 全然俺達の攻撃が通用しねえし、離れたと思うと両手に銃を持って撃ってくる。

 俺達はただそれから逃げるか防御するしか出来ないでいたけど、それに対抗出来るのはやっぱ、アイツだけだった。


「先生こそ私を忘れてませんか?」


 銃には銃を。引き金を引いて打ち出された弾丸を、美羽も銃を使って撃ち落とす。

 そんな芸当を簡単にやっちまうのは、俺が知ってる奴でもカズか美羽とイリスだけだろうぜ。


「あら、よく撃ち落とせたわね。ではこれはどうかしら?」


 先生が持つ2丁拳銃は前に見た物と違って見たこともない大口径の銃。

 きっとそれもカズが魔改造した代物なんだろ。

 そんな物騒(ぶっそう)な銃を簡単に扱い、弾がなくなれば即座に装填(そうてん)して美羽と真正面から撃ち合う。

 激しい銃撃戦をしながら2人して普通に歩いて近づいていくもんだから、見てるこっちとしては流れ弾に当たらないようにヤッさんの大盾の後ろに隠れる。

 そんな俺達なんかに気づかないまま2人の距離が残り(わず)かになると、お互い銃撃戦をしながら蹴りの応酬(おうしゅう)を繰り広げつつ、弾が無くなるたびに装填(そうてん)してまた撃ち合う。

 はっきり言ってその中に入るなんて自殺行為もいいとこだ。


「「…………」」


 しかも無言。

 アクション映画やミリタリー映画が好きで、よくガンアクションものの映画も観てたけど……、2人の戦闘は映画で言うところのラストバトルってシーンでしかもとんでもないくらい激熱って言えるくらいヤバい動きをする。

 これが映画で、男なら胸熱するくらいワクワクするんだろうけどこれは現実。

 先生が俺達を裏切り、どうしてそこまで何を隠していてるかなんてそんなもん、俺達はなんとなく分かってる、分かってるんだよんなもんとっくに。

 でも本当は、別に聞かなくてもいいんだ。

 分かってるから。


大蛇(オロチ)


 八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を呼び出し、その目が一瞬赤く光ると先生は両手でガードしながら強烈な爆炎に包まれて押される。

 それはカズがよく使っていた魔眼の力、"瞬炎(しゅんえん)"。

 当然っちゃ当然だ、八岐大蛇(ヤマタノオロチ)はカズの分身なんだし、アイツと同じ能力を持っててもなんら不思議じゃねえ。しかも、今の八岐大蛇(ヤマタノオロチ)は美羽と融合までしてんだし、その力を使ったところで別に反則じゃない。


「……正直驚いたわ、そこまで八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の力を引き出せるようになっていたのね」


「だって私は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)であり、カズの力で竜になったんですよ? このくらい出来てようやくじゃないんですか?」


「言うようになったものね。……何も知らないくせに」


 その時、先生が小さな声で「何も知らないくせに」って言ったのが聞こえて、俺はそれがどういう意味なんだって思った。

 その声は俺より近くにいる美羽にも聞こえただろうし、皆にも聞こえた筈だ。

 先生は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)の本当の恐ろしさを知ってるから出た言葉なのか。それとも、俺達が気づいてる事の他に、何かを隠しているんじゃないかともとれるその言葉は。

 後になってそれがとんでもない答えだったことを知ることになる。


「先生、それで本気なんですか? それで本当にカズが(ひき)いる最強のナンバーズの1人なんですか? ノリちゃん達が先生にてこずるのは分かりますけど私には通用しませんよ? だって私、カズに竜にしてもらったし先生が怯えていた八岐大蛇(ヤマタノオロチ)と融合してるんですから」


「…………言ってくれるじゃない」


 なんでお前はそこで先生をあおる?!!


「はぁ……、()められたものね……。まさか貴女(アナタ)にそんな事を言われる日が来るなんて……。いいわ……、だったら見せてあげる。私の本気を見せてあげるわ」


 赤黒い頭と腰の羽が、青に近い翡翠色(ひすいいろ)になるとほのかに光る。


「ノリちゃん達はこのままオルカルミアルを追って」


「そうしてえけど、まだ(ムクロ)とかいるんだぜ? 行けって言われてもそう簡単に行けねえだろ」


「ではこうしましょうか? もし、美羽ちゃんが私に勝てたら通してあげる。それでいいわよね?」


<……承知した>


 先生は美羽に勝てる、それだけの自信があるからんなことを言い、(ムクロ)に確認するとそれを承諾(しょうだく)した。


「では、私が勝てば今回はこれで引き上げなさい。私が負ければここを通ってメルヒス討伐を成し遂げればいいわ」


 あれ、なんかいつの間にか俺が出した条件を変えられてる。


貴方(あなた)もそれで良いですよね? 組長」


「…………本来なら俺の手でお前を止めたいとこだがな」


 海ほたるから怒りをこらえてるって顔で先生を睨み付ける親父さんの後ろに、なにか不穏(ふおん)な影が渦を作って(うごめ)く。


 アレがなにか知らねえけど、絶対よくない存在だな。


「美羽ちゃんの代わりにって言われなくてよかったです。貴方達の相手をするのは骨が折れますから。それに、今の"()()()"はオーガ達の怨念(おんねん)などが集まり、より強化されてるでしょうし」


 ……がしゃ?


 どんな存在だとろうと敵にならなきゃいい。その"がしゃ"って奴がどんな姿なのか気になるとこだけど、親父さんの後ろから放たれる重圧(プレッシャー)はあきらかに尋常(じんじょう)じゃない殺気を先生に向けている。

 下手に刺激(しげき)したら味方の俺達ですらヤバいレベルだ。

 それなのに先生は、「貴方達の相手をするのは骨が折れますから」ってことは、親父さんやその"がしゃ"とか言う奴を同時に相手する事が出来るって事なんだろ。

 でもそんな先生と互角(ごかく)に渡り合える美羽が、純粋(じゅんすい)に凄いと思える。


「お(しゃべ)りしてていいのか? お前もそう思わないか? 美羽」


「そうですね。……おじさんには悪いけど、今ここでこの人を殺しても文句を言わないでくださいね?」


「言うじゃないか。なら、殺れるならやっちまって構わねえよ」


 殺すって簡単に言うところが本当に凄いよ。

 そんなやりとりをして、先生は不気味に微笑(ほほえ)みながら美羽と向き合い、再び激しい火花を散らす戦闘を繰り広げる。

 お互い撃った銃弾(じゅうだん)銃弾(じゅうだん)で撃ち落とし、どれだけ頑張っても目で追い付けない速さで近接戦闘をしながら超至近距離で弾丸を撃ちまくってそれを避ける。

 腰から生えた翼をいくつもの槍のような物に変えて美羽を攻撃すれば、それを八岐大蛇(ヤマタノオロチ)が迎撃し、超至近距離から"瞬炎(しゅんえん)"で先生を爆炎に包み込もうとするけど槍状の翼でその視線の向きを無理やり変えて回避。

 そんな激しい攻防戦を繰り広げていると、お互いに撃った銃弾が少しずつ当たり始める。


 お互い疲れ始めてきている。


 それでもお互い不気味な笑みを崩さない。

 でも終わりってのは必ずやって来るもんだ。


「"雷煌(らいこう)雷渦(らいか)雷滅(らいめつ)"」


「ぐッ!!」


 足下から突然、強力な雷が発生したかと思うとそれに先生は捕えられ、渦巻く雷で動けなくなった先生の頭上から今度は別の雷が落ちるけどそれは一瞬じゃなく、ずっと落ち続ける。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ゛!!」


「さよなら、先生」


 【美羽 圧勝】


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