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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第11章 荒れ狂う海
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第311話 荒れる海 1


 11月21日


 それは突然動き出した。


『特別偵察中の哨戒機(しょうかいき)より入電、1120(ひとひとふたまる)時、浦賀水道にてオルカルミアルを確認』


 自衛隊の哨戒機(しょうかいき)が浦賀水道から東京湾に入ろうとしているオルカルミアルの姿を確認し、運悪く横須賀から偵察に出ていた第7艦隊と鉢合わせするとオルカルミアルに対して攻撃を開始。

 その情報は1時間遅れで俺達に入ってきたけど、知る頃には第7艦隊の(ほとん)どが轟沈(ごうちん)して海底に沈む。


「くそっ!」


「仕方ねえだろ、相手は何を考えてるか解らねえんだから何時こうなってもおかしくなかったんだし」


「それでも作戦が台無しじゃねえか!」


「まぁ……、そうだけどよぅ……」


 勝手に攻撃を始めた海上自衛隊に俺はムカつき、一樹は仕方ないって言うけど俺は納得出来ない。

 だってそうだろ? 偵察するだけならなんでおとなしく手を出さずにそのままにしなかったんだ? 何の為の作戦だ? これじゃせっかく用意していた装備が台無しじゃねえかって。


「それにアイツはまだ小笠原諸島の近くにいるんじゃなかったのかよ?! くそっ!」


「落ち着きなよ、この間Sランクのルークをあそこまで追い込んだんだし、きっとオルカルミアルだってどうにか協力し合えば倒せる筈だよ」


 ヤッさんは協力し合えばどうにか出来るって思ってるけど、本当にそうなるか解りっこない。

 その後、昼過ぎになると海上自衛隊の幹部や米海軍の幹部が数人来ると、俺達は改めて作戦会議を始めた。


 11月23日


 10:00


『これより作戦を開始する』


 無線からそう聞こえた瞬間、オルカルミアルがいる場所に向けて米海軍と海上自衛隊が同時にアスロックミサイルって対潜ミサイルを数発射ち、激しい水飛沫(みずしぶき)を上げる。

 正直いきなりそこまでするかってぐらいの数だ。

 だけどそうまでしなきゃオルカルミアルにダメージを与えられないだろうって結論が出たから皆、出来るだけ多くの兵器を初っぱなから使っている。


<クオオッオォオオオオン!!>


「鳴き声はまんまクジラだな」


 赤い目を光らせ、真っ白な体に薄紫色の腹を見せるオルカルミアルの巨体が海上に飛び上がる姿を見て、怒ったかな? って思ったけどそうじゃないみたいだ。


「アイツ、あれだけのミサイルをくらってるのに全然ダメージを感じてねえのかよ」


 俺達はって言うと、"海ほたる"でその光景を見ていた。

 俺達チーム"夜空"、レイナ率いる"空挺騎士団(スカイライダーズ)"。それに俺達をサポートする為に、夜城組、御子神のおっさん達警察やマーク達が協力し、その指示を犬神さんと御子神のおっさんの2人が出し合っていた。


「ここから下手に攻撃すれば狙われるリスクが高くなる。故に我々はサポートに徹するぞ。バニラ、悪いが君には別の事を頼みたいから少し待機していてもらいたい」


「ぬ? 承知した!」


「おい村中! ビビってる前にしっかり働けよ~?!」


「ひ~!! 死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!」


「相変わらず往生際がわりい奴だな……」


 いやいやいや、アンタはその兄ちゃんに何させるつもりだよ。


「全"空挺騎士団(スカイライダーズ)"拝聴(はいちょう)!!」


 少し離れた場所では副リーダーらしい人が拝聴(はいちょう)する様に声を上げると、レイナが出てきて皆の前に立った。


「これより、我々は未だ経験したことの無い戦いのサポートをする為に出ます。相手はかつて絶滅したと思われていた古代種、オルカルミアル。ランクは確認されているだけでもSランク。生半可な相手ではありませんわ。素直に逃げたいと思われる方がいれば今、この場で名乗り出て下さい。私はその事に対し、怒るようなマネは致しませんと誓います。だって私自身、この場から逃げたいと思ってますもの。相手はそれだけ強大な力を有しているから当然です。ですが私は逃げません。友人達がその命を賭けてでもあのオルカルミアルの討伐を成し遂げようとしてるからです。でしたらその手助けだけでもしたいじゃありませんか。さぁ、逃げるなら今の内ですわよ?」


 レイナの演説を聞いて俺は胸が熱くなる気分になっていた。

 そして、その演説を聞いて他の空挺騎士団(スカイライダーズ)の皆は逃げるどころか逆にレイナに、「誰も逃げたりしませんよ」、「この討伐戦に俺達も出ていたんだって名前を刻み付けてやりましょう!」と言って皆が皆、笑っていた。


「ふふふっ、そうですわね。では誰1人として欠けること無く! この討伐を見事成し遂げましょう!! 空挺騎士団(スカイライダーズ)出陣!!」


「「応っ!!」」


 それぞれパートナーの背に乗り、空挺騎士団(スカイライダーズ)が先行して飛んでいく。


「ノリアキ!!」


「ん? どうした?!」


 サポートをしに来てくれているグレイが俺の所に走って来ると。


「トンネルの向こうからテオ王子が来た!!」


「テオが?!」


 何しに来たんだよアイツ! 来たってサポートぐらいしかやることねえぞ!


「憲明!!」


「何し来たんだよお前は!!」


「すまない! 何も出来ない事は重々承知しているがそれでも何か手助け出来ればと思って兵士数人と()(さん)じた!」


「……バカが、だったら馬から降りて物資を運ぶのを手伝ってやってくれ!」


「承知した!」


 何しに来たんだって思うけど、こうして来てくれた事に俺は嬉しかった。


「俺達は俺達でそろそろ出る!! それぞれ装備をもう一度確認したら出発だ!!」


「あいよ」

「了解!」

 「遂にかぁ……」

「はいは~い」


「岩美と里崎はここで俺達のバックアップを頼む! 何かあればお前ら2人でここの皆に指示を出して援護してくれ!」


「はっ! はい!!」

「わかった!」


「さて、んじゃ始めるとするか」


 特殊討伐クエスト


 【荒れる海】開始


「行くぞ!!」


 俺は海上自衛隊が密かに開発していた1人乗り用の海上ボードに乗り、オルカルミアルに向かう。

 開発されていた海上ボードの名前は"Skylla"。どうしてギリシャ神話に出てくる海の怪物の名前にしたんだって思うけど、そこはどうでもいい。

 Skyllaがどんな乗り物かって言うと、見た目はサーフボードなんだけど、そこに小型エンジンが装備され、エンジンはバッテリーで動くようになっている。稼働時間は1時間半ぐらいだけど、予備のバッテリーがもう一つ付いてるからそれを合わせりゃ3時間は動く。

 オマケに小型魚雷が2つ装備されてる。

 それを初めて乗ったけど、はっきり言ってじゃじゃ馬過ぎるからよっぽど運動神経が良い奴じゃなきゃ乗りこなせないだろうな。

 下手に乗ったら事故に遭って怪我、あるいは死亡事故に繋がるんじゃねえか?

 そんなSkyllaは潜航も可能としているから小型酸素ボンベを口に咥えれば潜れる。

 時速は38ノット。

 それを両足だけじゃなく全身で操縦するようにして進むからさ、はっきり言ってマジで怖い。


「憲明!! レイナ達が攻撃を始めたぞ!!」


「了解!! 一樹!! お前はダークスと一緒にレイナの援護に回ってくれ!!」


「お前はどうすんだ?!!」


「俺は潜って腹の下からヴァーミリオンでぶっ刺してくる!!」


「分かった!! ただ無茶だけすんじゃねーぞ!!」


「お互いな!!」


 一樹が俺から離れると、その直ぐ後ろからダークスが物凄い勢いで泳いでくる。

 かと思えばいきなり"超電磁砲(レールガン)"を撃ち、一樹が「早すぎだ馬鹿!!」って叫んでダークスを怒る。


 ……大丈夫かなぁ。


「ノワール!! 水中だと砂は操れねえから"触腕"に"凶爪"を生やしての近接戦だ!! ソラは逃げながらありったけの弾薬をブチかましてやれ!!」


<ガウ!>


 ソラも器用にSkyllaを乗りこなし、海上からオルカルミアルを攻撃するように指示を出すと、俺はノワールと一緒に潜る準備をした。


「行くぜノワール!!」


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