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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第11章 荒れ狂う海
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第310話 空の巨影<玲司Side>


 憲明と一樹が喧嘩をしてから(しばら)くして、僕は恵梨佳と一緒にネイガルさんの所に行くことにしていた。

 恵梨佳が僕達"夜空"の一員になってから初めて足を踏み入れる場所。そこに飛行タイプのモンスターがいないかなって思って恵梨佳を誘い、いたら僕か恵梨佳でテイムしようと思ってるんだけど、そう簡単に都合よくいる筈無いかなって思いつつ、不安と期待が入り交じる。


「おやいらっしゃいませ。貴方が来るとはまた大変珍しい」


「こんにちはネイガルさん。今日はネイガルさんに聞きたいことがあって来たんです」


「聞きたいことですか? (うかが)いましょう」


 僕は飛行タイプのモンスターで何かいませんかって聞くと、ネイガルさんはニヤッと不適な笑みを浮かべながら(しばら)く僕と恵梨佳を交互に見つめる。


 この顔は何かいるのかな?


 でもこの時の僕達はまだ、まさかとんでもないモンスターを紹介されるなんて思ってもいなかったからただ何かいるんだって事ぐらいしか思っていなかった。


「飛行タイプをお探しになっている理由をお聞きしても宜しいですか?」


 飛行タイプを探してる理由は"オルカルミアル"戦に必要だからなんだ。

 "オルカルミアル"戦は学園都市の皆にも相談していて、それを聞いたレイナが"空挺騎士団(スカイライダーズ)"を率いて手助けしてくれるって言ってくれてるけど、僕らもどうにか飛行タイプのモンスターをパートナーに加えてしっかりと対策したいから探している。

 そのことをネイガルさんに説明すると不適な笑みが深くなった。


「なるほどそんな理由がおありなんですね。フフッ、貴方は大変運が宜しい」


「と言う事は」


「はい、つい先日、とあるモンスターが新たに入荷したところに御座います」


「やった!」


「和也様が冥竜王として御復活してから直ぐなのですが、あのゴジュラスやアリス達を捕獲した場所から少し離れた山岳地帯でそれを見つけ、どうにか捕獲する事に成功しましてね」


 えっ?! それってまさか?!


「では御案内すると致しましょう」


 ネイガルさんに案内されるのは良いんだけど、その流れは前にカズを案内した時と同じだから、僕は「まさか!!」って気持ちになりながらどこかワクワクしていた。


「さあ、こちらのモンスターは貴方様にこそ相応(ふさわ)しいかと」


 そこには案の定、巨大な(おり)が一つだけ静かに置かれ。中には予想通りのモンスターが静かにこっちを見ていた。


「ま、マジですか…………」


 僕はその生き物を目にして心の底から驚愕(きょうがく)して言葉を失い。それを見ていたネイガルさんは満足そうに微笑んだ。


「如何です? 和也様から(たまわ)った恐竜図鑑を見るに、こちらはそちらの世界では絶滅した太古からの生き残り。"プテラノドン"と呼ばれるモンスターです」


 "プテラノドン"。

 恐竜が好きな人ならその名前を知らない人はいないくらい有名な翼竜の代名詞。

 そんな存在が静かに鎮座(ちんざ)しながらこっちを見ている。


 ま、まさかこのタイミングで?!


「フフフッ、こちらの"プテラノドン"はミスリル金貨10枚。っと、申したいところではありますが、今回は少々勉強させて頂きますがどうです?」


「え?! お、おいくらですか?」


「ミスリル金貨5枚」


 ミスリル金貨5枚?!! 5枚少なくしてくれただけでもそれはそれでかなり安い!!


 だって生きた翼竜が日本円でたったの5千万ってことなんだし。


「如何でございしょう?」


「…………か」


 買おうかどうしようか迷う。


「……い」


 そんな僕をネイガルさんはジッと見つめるから(ひたい)から汗が滲み出てきて垂れるのを感じた。


「マっ……! ……」


 ネイガルさんもその(ひたい)から汗が流れ、2人してなんだかよくわからない緊張が走る。


「…………」


 どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう。


 ネイガルさんは僕の口からどんな答えが出るのか緊張してるからか、かなり力んでいるし。僕達の回りに商会の人達や何故か"プテラノドン"まで緊張した様子でこっちをジッと見ているし。


 そんなに見られてたらなかなか答えがでないよ!!


「「…………」」


 2人でグググッて(しばら)く目を合わせた後、ついに僕は悩みに悩んで買う事を選んだ。


「買います!!」


「ありがとう御座います!!」


 み、ミスリル金貨5枚なんて、人生で初めて使う金額だ…………。


 初めて高額な金額を使う事になるけど、これまで討伐クエストとかで金貨は貯まりに貯まってたから全然払えるけど、ミスリル金貨なんて普通こっちの世界でも滅多に持ってる人なんていないし、持ってるとしたら王族や超がつく程のお金持ちだけ。

 だってミスリル金貨は1枚、日本円で1千万の金額になるんだし。それを普通に持ってるカズが特殊だったって事だよね。


「ではこれでこの"プテラノドン"は貴方様のパートナーとなります」


「は、はい!」


 テイムを無事に済ませた後は名前を考える時間。

 それもまたテイムした時の楽しみなんだよね。


 さてどうしようかな。


 18:15


 ーー 夜城邸 ーー


「で、お前はこの"プテラノドン"を買ってテイムしたと」


「……うん」


「…………まっ、良いんじゃねえの?」


 親父さんに、今度はお前かって目をされたけど、まぁそこまで文句も言われずに僕は"プテラノドン"を屋敷の中に連れて戻った。


「名前は決めたのかよ?」


「ま、まだだよ」


 一樹がどんな名前にするのか楽しみにしながら間近で見る生きた化石に夢中になっている。


「まさかネイガルさんの所にプテラが入荷されてたなんてな」


「僕も驚いたよ、流れからもしかしたらって思ったけど、まさか本当に古生物がいるなんて思ってなかったし」


「でもこれでお仲間が増えたから俺は嬉しいぜ」


 憲明にはノワールってハイブリッド恐竜がいるからか、僕がプテラをテイムして喜んでいた。


 それで2人とも仲直りしたのかな?

 まあ仲直りしたのか解らないけどそれは良いとして。


「恵梨佳はどんな名前が良いと思う?」


「う~ん、この子は男の子? それとも女の子なのかな?」


「話しによると女の子らしいよ?」


 ネイガルさんの話だとプテラは(メス)でレベルは47。

 トッカーは基本的に地面タイプだけど、カズがくれたクジラのヒレを食べて水中でも動けるし、タッグを組ませたら面白い事になりそう。


 "ステゴウロス"って変わった草食恐竜の化石も食べて進化したトッカーの攻撃方法に色んなバリエーションが増えてるし。そこにプテラとコンビを組ませたら本当に面白いと思えてならない僕は、それを想像するだけでなんだかワクワク感が止まらなくなっていた。


「名前どうするの?」


「よかったら恵梨佳が決めてよ」


「私?!」


 僕としては恵梨佳ならきっと良い名前にしてくれそうな気がしたんだ。

 良い名前って言っても別に面白さを求めてはいないんだけどね。


「本当に私が決めて良いの?」


「うん、恵梨佳ならきっと良い名前にしてくれそうだし」


「う~ん……、女の子だし……、ん~…………"ジル"、とか?」


「"ジル"……、うん、いいじゃん。それじゃぁ今日から君の名前は"ジル"だ。宜しくね、"ジル"」


 (くちばし)に触って宜しくって伝えると、ジルは喜んでいくれているのか頭を(こす)り付けてくる。


 これで戦力が少しは良くなったかな?


 自衛隊とアメリカ軍がどれだけの戦力を出してくれるか解らないけど、航空戦力がもう少し増えたら楽になるのかなあって思ってしまう。

 それでもジルが来てくれただけでも僕は嬉しいんだけどね。

 だけど残念。

 僕達は"オルカルミアル"の恐ろしさをまったく知らないでいたんだ。

 アレに手を出す事自体、まだ早かったんだ。


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