第30話 羨ましすぎる……
「どんだけ金かかってんだ……」
中は中で凄かった。
天井から豪華なシャンデリアが幾つも吊り下げられ、至る所にガラスケースに入った様々なスクロールや魔導書が展示されていて煌びやかな店内になっている。
そしてその値段は驚く程の高額から普通の人でも手が出せる安価なものまで様々。
そんな商品を色々な冒険者達が眺め、買おうかどうしようか悩んだり。「これを買う!」と言ったら仲間にやめろ買うなと止められている人の姿もある。
他には貴族風の人が店員に何かオススメはないかと聞いて、オススメのものを出してもらってそれをじっくり見ていたり。展示してあるスクロールを見て、これを貰うと言って買う貴族等色々といる。
そんな店内で、カズの姿を見た冒険者や貴族達は騒ぎ始めた。
「お、おい、アレ」
「ん? なっ?! 和也?!」
「本物か?!」
「あんな独特な武器を装備してるのは和也しかいないだろ!」
男の冒険者達は口々にそう言い、カズを恐れている様だ。
でも……。
「はぁ〜……和也様〜……」
「和也様〜!」
「ヤバイ! 女共が発情しやがった!」
女性冒険者や令嬢達はその逆で、カズとお近づきになりたい様子……。
カズはカズで周りの声を一切無視し、懐からブラックデビルと言うタバコを取り出すと火をつけ、タバコを咥えて店内を歩きだす。
冷静だなお前……。
タバコの独特な甘い香りが一気に店内に広がり、その香りで更に女性達は興奮し始めた。
「か、和也様、こ、今夜お時間ありませんか?」
「今度私とデートして〜!」
「ちょっとアナタ達! ズルいですわよ?! こんな冒険者の女より、貴族の私と今度お食事でも……」
「ちょっと! 貴族様だからってなによ! 和也様はそんな不平等が大っ嫌いなの知らないの?!」
カズを見る女性達の目は既にハートになっていた……。
「あぁ、なんて事を私は言ってしまったのでしょう……。申し訳ありません和也様お詫びに私のこの体をお好きなだけ弄んで下さいまし!」
1人の令嬢がそう言い、カズにその豊満な胸を押しつける。
う、羨ましい!!
「なによそれ! 和也様はアンタみたいなデカパイ好きじゃないのよ!」
デカパイ?!
「「そうだそうだ!」」
それを見た1人の令嬢が批判すると、周りの女性達がそろってそうだと言い始める。
「きいいぃぃ! なによこの貧乳共!」
いや貧乳でもそれなりにあるように見えますけど?!
令嬢は周りの女性に対し、貧乳だのなんだのと罵倒し始めた、その時だった。
「でも和也様はそんなの関係無く、私を可愛がってくれた……」
「「なっ?!」」
なんだって?!
そこへとんでもない爆弾を投下した女性冒険者が現れた事により、女性陣の熱い戦いが更にヒートアップした。
そしてそれを聞いていた美羽もその場に参戦する。
いやいやお前まで参戦してどうするよ?!
「いいでしょう……、でしたら決闘で決着を付けようじゃありませんか」
令嬢が他の女性に決闘をしようと言うと。
「望むところよ!」
女性冒険者はその決闘に応じた。
「カズは誰にも渡さないんだから!」
美羽もその決闘に参加を表明した。
だからやめろって!
頭に血が昇った女性程、怖いものは無い…。
あわや大惨事かと思った時、それが自分の責任と感じたのか、カズが動く。
「あのさ、俺達は買い物をしに来たんだ。その買い物を邪魔しないでくれるか? そんなに抱いて欲しいなら後で1人ずつ抱いてやるから大人しくしてくれ、俺は騒がしいのは嫌いなんだ。騒がしくするなら俺はお前ら全員嫌いだ」
「「?!」」
その衝撃的な発言により、女性に恋心を抱いていた冒険者仲間の男性達や一切モテなそうな冒険者仲間の男性陣達のほとんどを……、敵に回した。
同時に女性陣は頬を赤く染めてウットリとした表情でカズの言葉に従い、一人一人、自分の名前と何処の宿屋を借り、その宿屋の部屋番号を書いた紙を手渡して去っていく。
俺は目から血の涙を流しながらカズ睨み、その様子を黙って見ていることしか出来なかった……。
「あっ、ところでさ」
カズはその中の1人の女性を呼び止めた。
「こんな所でやめろよ"ニア"」
ニア。
髪はミディアムヘアーで、顔にはちょっとだけソバカスがあるけど可愛い。いや、普通にめちゃくちゃ可愛い。
短剣と盾を持ち、軽い装備をした女性冒険者だ。
「御免なさい、つい」
「あれから調子は?」
「全然大丈夫です。それに、今は仲間が出来ましたし」
ニアちゃん? さん? どっちでも良いけど、その仲間と呼ぶ人達に顔を向けると、ニアちゃんに恋心を抱いているように見える男性冒険者が悔しそうに泣きながらカズを睨む。どうやら数人の男女で構成されたパーティみたいだ。
なんか……、ごめんなさい……。
「よかったじゃないか」
カズは仲間が出来た事に微笑んだ。
「はい! 皆んないい人達ばかりですよ」
「クククッ、まっ、何か緊急の時にはまた助けるから頑張れ」
「はい! それと……」
「ん?」
「また……、私と……」
ニアちゃん?!
カズに軽く抱きつき、下から見上げる様にしてカズの顔を見つめている。
「……ニアの誘いを俺は断らねえよ。だから、今度行く時に連絡するから、待っててくれるか?」
「はい……」
話が終わったニアちゃんは顔を赤くして仲間達の元へと戻る。
しかし、そんな話を聞いて苛立ちを隠せない美羽がカズの足を踏み付け、さっさと買い物を済ませて帰ろうと促す。
「なんで怒ってんだアイツ?」
お前マジか……。
俺は絶句した。
俺達は知っている。カズがどれだけモテるのかを。
だから嫉妬することもある。昔からの付き合いだから慣れちまったけど、せめて身近にずっと恋心を抱いている美羽の気持ちに気づいてやってくれと、俺達は思った。
カズはその後、奥にあるカウンターへと進む。そこにはカウンターの向こう側に、何人もの店員が立っているけど、カズはその中の1人に向かって真っ直ぐ進む。
「い、いらっしゃいませ和也様! 本日はどの様な物をお求めですか?」
店員の女性も可愛い……。きっとこの女性もカズに惚れてるんだろうな……。
「今日は今のコイツらでも使えそうな魔導書を買いたい。あとスクロールも」
「攻撃系でしょうか? それとも支援系か状態異常系でしょうか?」
「とりま攻撃系で」
「かしこ参りました。では、幾つかご用意致しますので少々お待ちください」
店員はそう言ってその場から離れた。
「魔法には幾つか種類がある。取り敢えず今日は攻撃系魔法が封じられたスクロールと魔導書を買うからそれはまた後で説明する。んで、魔法の種類だけで百以上はある。全部覚えるのは流石に無理だろ」
「そ、そんなにあるのか?! ゲームみたいに一定のレベルに達したら覚えられるんじゃ無いのかよ?」
俺はその種類の豊富さに驚いた。
「魔法にも適正がある。その適正が無けりゃまず覚える事が出来ない。仮に覚えようとその適正を伸ばすにしても、いったいどれだけの時間がかかるか分かったもんじゃ無い」
「魔法の道具とか使ったらどうなんだ? あるんだろ? そう言うのも」
「あるにはあるし使えなくも無いが、その殆どが高額で使用制限が掛けられている。例えば火の魔法攻撃、ファイアーボールを使えるロッドがここにあったとしよう。そのロッドは全部で10発使う事が出来る。その10発全部放ったら、そのロッドからはもう二度とファイアーボールを撃つことが出来ないただのお飾りでなんの価値もなくなる」
「成る程……、つまり持っていてもそれはいざって時の為の道具でしか無いってことか」
「そのとおり。他に使用制限が無い魔道具はある。治癒の効果を高めてくれる指輪とか、自分の魔法攻撃の威力を高めてくれる指輪やロッドが。だがそう言った物は使用制限がかけられている魔道具に比べて段違いに高額だ。下手をすれば家一軒……、いや、広大な土地を買うことも出来る」
「ち、ちなみに幾らぐらいだ?」
「今、俺が知ってる魔道具は最強の無属性魔法の一つ。"アステラ"と言う攻撃魔法の指輪だな。アステラってのは俺達の世界でもある言葉で、"星"を意味する。その魔法は遥か上空で、どの属性にも当てはまらない光の球体を作り上げる。そして、敵に向かって一気に放たれる。まさに流星。とんでもない高威力の魔法だ」
「そ、そんなものがあるのかよ?」
「ただしそれを使用すると馬鹿みたいに魔力を削られるからな。魔力を回復する為の回復薬を使用するか、自然と回復するまで使えなくなる」
「え? お前それ見たのか? どの位の威力なんだ?」
「見たから話してんだろうが。威力はこの街くらい跡形も無く吹き飛ぶ」
「は、はあぁ〜?」
なんつーとんでもない破壊力だよ。
「んで値段だが広大な土地どころかちょっとした国の国家予算の値段だ」
「ここここ国家予算?!」
「つっても向こうの国家予算程じゃないぞ? 日本の国家予算だとだいたい百兆円ちょいだが、こっちの国でどれだけデカくてもそんな日本と比べても低い。せいぜい日本円で五十兆円あるかないかじゃないか?」
「ちょっとまってカズ、それだとおかしいよ」
そこへ美羽が俺達の会話に割り込み、おかしいと言い始める。
「それだと国の経済の事を考えるとおかしいよ。だってそうでしょ? 国の維持費に軍隊やその他諸々の事を考えると、ここでの値段が不合理過ぎる!」
「まて美羽、言ったはずだぞ? ここはどこの国にも属していない街だと」
「あっ……」
「ここは確かに日本から管理されてはいるが、ほぼ独立した街。国じゃねえ。お前の言いたい事は分かるさ。だがそれはここじゃ無い別の国の話だ。ここの物価は他の国に比べたら高い。それは元々日本が管理し、向こうと同じ物価レベルにしているからだ。だからこの街は周りの国から金持ちの街とも呼ばれているがそうじゃねえ。それはこの街が金の無い連中にそれだけの支援をし、支援無しで普通に暮らせる様に頑張ったからこそ暮らせる。だから勘違いすんなよ美羽? お前らもだ。この街は現在この世界において重要な場所の一つだってことを忘れるなよ」
「もう一ついい?」
美羽はまだ質問があるのか、カズにもう一つ教えて欲しかった。
「なんだ?」
「たしかここに来る為のゲートはカズの家で管理してるものの他にもあったよね?」
「あぁ、日本ではここに来る為のデカいゲートが2箇所ある。後は小さいのが幾つかな。他にも世界中に何ヵ所かあるが、その殆どが現在使えない状況になっている」
「え? なんで?」
「一つ例えるなら中国だ。中国はこちらの世界に来て支配しようと考え、そこで大量の移民計画を立て、他にも軍事施設を作ろうとした。だがそれら全てがおじゃんになっちまった。こっちの住民が怒り狂い、中国を撃退しちまったからな」
「えっ? でも銃とか使ったら逆にこっちの人達が負けるんじゃないの?」
「確かにそうだ。だが俺がさっき言った魔法の威力を考えてもみろ。向こうは兵器を使わないと何も出来ないがこっちは身一つで国一つ滅ぼせる可能性がある魔法があるんだぞ? それに移動を考えてみろ。兵器を運ぶのにどれだけ時間がかかる? その逆で魔法を使える者はただ移動手段を考えるだけでいいんだぞ?」
「あっ……、確かに」
「それで中国は一瞬で敗北し、ゲートを破壊されたがためにこちら側に来れなくなった。んで、生き残った軍人なんかは野生のモンスターや盗賊の格好の餌食さ」
「うっわ」
悲惨な末路を想像した美羽は、顔が暗くなる。
そりゃそうだ。そんな末路、俺でも嫌だねそんなの。
「他にもいろいろな理由でダメになった国が幾つもある。今こうして発展出来ているのは日本、アメリカ、イギリス、イタリア・ローマにあるバチカンの四ヵ所だけだ」
「バチカン?! バチカンもこの世界を知っているの?!」
まさかの名前に美羽は驚いた。
「あぁ……」
「えぇ……」
「でもさカズ、なんで僕達がこっちに来ても言葉や文字が分かるんだ?」
次にヤッさんがカズに質問を投げた。
「それは俺にも分からねえんだ。恐らくゲートを潜る際、なんらかの作用で分かるんじゃねえかと考えられている」
「へ〜……」
「あの、和也様、お待たせいたしました」
話が終わるのを待っていたのか、店員の女性が戻っていた。
「あっ、申し訳ない……。まずは魔導書だな、これ5冊分貰うよ。次はスクロールだがさて、どれがいいかなぁ」
「初めてでしたらやはりこちらかと思い、お待ちしたのですが」
「確かにコレが妥当だな」
「あとはこちらもお待ちいたしております」
「ん? これはまた面白いのを用意してくれたな」
「和也様はこういった変わりだねがお好きでしたよね?」
「なんだ、覚えてんの?」
「勿論に御座います。あと、好みのお料理もちゃんと覚えておりますよ?」
担当の女性は頬を赤くし、何か物欲しそうな顔でカズを見つめた。
「「(この女性もかお前!)」」
俺達はその店員の女性にも手を出していると確信した。
「流石だな、ティディ」
ティディ。
茶色いロングヘアーがよく似合う女性で、豊満な胸を持っている。
「それにしても、いつ見ても和也様はモテますね」
「なに、妬いてんの?」
「当たり前です! でも、そんな和也様には、本当は好きな方が居られるのは存じておりますので、そのお心を独り占め出来ないのは悔しいですが。抱いて貰うだけで幸福を感じられます」
そう言ってティディさんは頬を更に赤く染めた。
「「(お前やっぱりか!)」」
俺達は同時に頭を抱えた。
「まっ、その話は置いといて、スクロールだ」
「「(いや置くなよ!)」」
「んじゃ、コレとコレと、コレを貰う」
「かしこ参りました。他は宜しかったですか?」
「他は取り敢えず今は良いな。いくら?」
「では魔導書5冊、こちらのスクロールを3つを合わせまして、金貨59枚と大銀貨6枚になります」
「ん」
金貨59枚と大銀貨6枚? ってことは……、えーーっと、日本円で……596万円?!
まさかそれだけの値段になるとは思ってもいなかった俺達はもう、驚き疲れた……。
「ま、まぁ、ここはほぼ日本と同じ位の物価だって言うし? うん、あは……あはははは」
美羽はもう何も考えたくも無いしツッコミたくないといった疲れた顔をしている。
「いや幾ら何でも高過ぎだろ……」
それでも俺は幾らなんでも高いと言った。
「あ? 仕方ねえだろ? 今回買った魔導書っての、お前らに合った魔法を一つ発現させるのに必要不可欠な魔道具だ。スクロールに関してはほぼ使い捨てではあるが、お前らの為に役立つ魔法だから買ったんだ。スクロールに関しては妥当な値段だが、魔導書はまだ安い方だぞ?」
「え? なんでまだ安いの?」
美羽のその質問に、ティディさんが答えた。
「本日お買い求め頂いた魔導書ですが、本来なら一冊、金貨30枚します」
「さ、30?!」
まさかの金額に目が飛び出そうな程驚いた。
「ですが本日、セールをしておりましてお安くなっているのです。それに、オーナーの意向もありましてそれから更にお安くさせて頂いたしだいに御座います」
すると、奥からオーナーと思われる黒髪で髭を生やした男性が挨拶をしにやって来た。
「本日はお買い求め頂きまして、誠に有難う御座います、和也様」
「こちらはここの商会のオーナーだ」
「オーナーの"ラルフ"に御座います。どうか皆様、お見知り置き下さいませ」
丁寧に挨拶され、俺達も挨拶をし。何故更に安くしたのかオーナー自ら説明してくれた。
「実は先日、盗賊から和也様に助けて頂きまして。その御礼を兼ねて本日は安く提供させて頂いたしだいに御座います」
「盗賊に?」
成る程、だから安くしてくれたのか。
「はい。私を含め、当商会の者4人と、護衛として冒険者の方々を5人雇っていたのですが。その護衛の方々が盗賊にやられてしまい、あわや命の危機が迫った所に和也様がお救い下さったのです。ですからその御礼を兼ねている訳に御座います」
「成る程ねぇ」
顔に似合わず人助けをする奴だからな。
「和也様、本当に先日は助けて頂きまして感謝の念が絶えません。その節は本当にありがとう御座いました。それでは本日は誠に有難う御座いました。また当商会の御利用をお待ち申し上げます。では」
オーナーはまた丁寧に挨拶し、今度は別のお客の元へと挨拶しに行った。
「んじゃ、行くか」
買い物も終え、カズは次に向かおうとした時だった。
「有難う御座いました。それと和也様」
「ん?」
ティディさんがカウンターから出て、カズにその豊満な胸を押しつけて来た。
わーーお……。
「今度また、ゆっくりとしたお時間を私に下さいね」
「ん、了解。また時間あったら連絡する」
カズはティディさんにそう言うと、軽く耳たぶを甘噛みしやがった。
「は……はい……、んあっ! お……お待ちしております」
耳たぶを甘噛みされ、ティディさんはそれで軽く感じたのか、いやらしい声を出す。
こ、このヤロー……!
そうして買い物を済ませ、商会から出るまでティディさんは俺達を外まで見送ってから中へと入った。
それにしてもカズが羨ましくて仕方ない……。
いったいどれだけの女性と関係を持っているのか知りたくて知りたくてしょうがない。
「なあカズ、お前っていったいどれだけの女性と関係をもってるんだ?」
「あ? なんで教えなきゃなんねえんだよ?」
カズは澄ました顔で歩き続ける。
「いやだってよ……」
「ちっ、今日知り合った女を含めりゃ15人だよ」
言わないとまためんど臭くなると感じたのか、カズはめんど臭そうに答えてくれたが……。
「1……5……?!」
まさかの数に頭の中が白くなる。
「あ、アンタ……」
数を聞いて美羽は最早呆れ返っていた。
「なんだよ、教えろって言うから教えたんだろうが。だが俺の心は別の所にある」
カズの心は別にあると聞き、そこで美羽の顔は暗くなる。
美羽は知っている。それは俺達全員が知っている事だった。
カズには昔から好きな女性がいる……。
でも、それはお互いに叶わぬ恋だと知っている。
だから、その心を埋める為にいろんな女性と関係を持っているのかと思えてしまう。
「おいどうした? さっさと行くぞ」
俺達はそれを聞いて思わず立ち止まっていた。
「お、おぉぅ」
俺は返事をして、また歩き出す。
カズとその女性の想いはお互い報われない。
どれだけお互いが好きでいてでも、その気持ちをお互い口にする事は決して出来ない程の関係にやるせない……。
その女性は昔から心臓が弱く、心臓移植をしなくては長く持たないと言われていた。
幼少の頃その女性はカズの親父さんに勧められ、気功を習う様になり。その女性は気功により、自身の体の中に流れる気を操れる程までに成長、早く移植しなくてはならなかった程に心臓が弱っていたけど、そのお陰で長い間持ち堪えることが出来た。
逆にスゲーよな。
同時にその女性は武術を習う様になる。
心臓が弱く、何があるか分からないからと周囲から猛反対されたけど、テレビや雑誌等から武術に関する資料を集め、気付けば独自の技を会得してしまっていた。
基本となるのは合気道。その合気道を織り交ぜた独特の技の前に、流石のカズですら勝った試しが無いんだよなぁ……。
そして一年前にようやく心臓移植することが出来たその女性は、より技を磨き続けている。
カズだけでなく、俺達5人もその女性とは幼少の頃からの知り合いで、高校も同じだ。
そしてその女性こそ、学園の美女トップ3の1人でもある。
周囲はカズとその女性が昔から親しい事を知り。下手に手を出すとカズが激怒すると噂されている。
噂では他校の不良がその女性を気に入り、付き纏っていたのをカズが半殺しにしたんだっけか? どこぞの公園の池で全裸となって警察に発見されたんだとか。
その異常な怯えかたを見ていた奴がその場にいて、たちまち学校中の噂となった。
俺は前にそんな事があったのを思い出し。カズがそこまで恐れられる理由がここの世界なんだなと、改めてその強さを知った。
そして、そんなカズが次に俺達を連れて行ったのは。
さぁもう一話いっちまいましょう!
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