第304話 事件です!
「オルカルミアルが小笠原諸島に?」
15:53
「護衛艦"もがみ"を轟沈させた後、姿を消してたが数時間後に小笠原諸島近海に姿を現したそうだ」
「んじゃ先にオルカルミアルをなんとかしねえとマズイって事っすね?」
「そうなる」
夜城邸に戻った俺達は親父さんからそう伝えられ、どう対処したら良いか話し合いを始めた。
問題は相手が水中にいる場合、どう攻撃をしたらいいかだ。
兵器を使うとするなら爆雷や魚雷ってあるけど、それを使わずにどうにか陸に引っ張り出せねえかなぁ。
陸に引っ張り出せれば討伐する事が格段に成功しやすい。
だからと言って油断は出来ねえから頭を悩ませる。
19:47
ーー 大水槽前ホール ーー
「んじゃ、飯も食ったしまた話し合いをしようぜ。取りあえず一樹、お前は何が有効だと思う?」
「そりゃ勿論、水中兵器だろうな」
いやそれは俺も考えたけど。
「例えば?」
「機雷や魚雷」
「んじゃどこからそれを撃つ?」
「やっぱ船からじゃねえか?」
「ちょっとまてよ、相手は海の中だぞ? 撃つ前に攻撃されたら船が沈むぜ? そうなりゃ犠牲が出る事になるぞ?」
「……そうだな」
そんな話を2人でしてると。
「対潜ミサイルはどうかしら?」
対潜ミサイルとな?
「それってなんすか?」
発案したのはミラさんだ。
ミラさんは現役軍人だし、海中戦にも詳しい筈だ。
「アメリカの対潜兵器にASROCって兵器があるの。射程は12キロ。それなら相手の鼻先に向けてミサイルを撃ちこんでも、なんとか対処する事が出来るんじゃないかしら?」
それはそれでアリなのかもな。
でもそれで果たして討伐出来るのかはまだなんとも言えねえんだよなぁ。
相手は海中を泳ぐSランクのモンスターだし、下手をすれば被害が拡大するかもと思うと、なんか判断に欠ける気がする。
「ちなみにさ、水中戦が出来る奴っている?」
「「……」」
「いるとすりゃ俺とダークスぐらいか?」
あぁ……、コイツらだけかぁ……。
「……私のヴィラも水中戦が出来るんじゃないのかな?」
……ヴィラか、確かに蛇型モンスターは水中戦も出来る筈だ。って事は?
そこで佐渡に目線を向けると、頬杖しながら話を聞いていた佐渡が体をビクッと反応させ、俺から目を背けた。
なんだ今の反応……、なにか隠してるのか?
「な~んで俺と目を合わせねえんだ? 佐渡?」
「うっ……」
コイツぅ、あからさまに何か隠してますって反応しやがって。
当然それは俺だけじゃなく、全員で佐渡に目を向けた。
「何を隠してるか知らねえけどよぉ、何かあるなら全部はいちまえよ佐渡」
「えっ……と、その……」
「そういやブチはどこ行ったんだよ?」
「あの……ですねぇ……」
「んあ?」
聞くと、佐渡とブチが大喧嘩をして、ブチは家出をしてるらしい……。
「なにしてんの? お前」
「だ、だって仕方無いじゃん! 私が大切に残してたオヤツをあの子が黙って食べたのが悪いんだし!」
お、オヤツで喧嘩したのかよ……。
可愛いと言うか馬鹿と言うかなんて言うかさ、それはそれでなんか幸せそうだなって思えるんだけど呆れて何も言えなくなった。
「はぁ……、他には誰かいねえの?」
<カロロッ>
「ノワール? ……そうか、確かお前にはワニのDNAが組み込まれてたんだっけな」
<カロッ!>
これで水中戦が出来るパートナーは2匹か。
他には……、いなさそうだな。
「んじゃ取りあえず水中戦が出来る俺のノワールと、一樹のダークス、それに志穂ちゃんのヴィラを主軸にしてどう動くか考えようぜ」
「そうするか」
これでメンバーが3人決まったけど、まだまだ足りない。
本当なら全員参加がよかったんだけどな……。
中には水耐性が低かったり、レベルが低すぎて逆に足を引っ張りかねないから全員参加は難しい。
その代わり、自衛隊とかの援護があったら嬉しいとこだけどそれは難しいかも知れない。
まっ、ミラさんが対潜ミサイルとかを提案してくれたって事は、もしかしたら米軍の協力を得られる可能性が高いんだけどな。
相手が相手なだけに、下手に動けば殺られるのはこっちだ。
岩美や里崎はまだトラウマから克服してねえし……、どうすっかなぁ……。
「憲明、私もメンバーに入れなさい」
「ミラさんマジっすか?!」
って事は米軍の協力は確実だな!
「えぇ、勿論よ。私がメンバーに加われば米軍からの協力は容易になるでしょうし」
うしっ! って事はその対潜ミサイルで海中にいるオルカルミアルに攻撃をしやすくなる!
「ふふっ、貴方、それが狙いだったんじゃないかしら?」
「やっぱお見通しかぁ、でもその通りっすよ。自衛隊はきっと動けないかも知れない。だったら、ミラさんが加わってくれればおのずと米軍が協力する為に動いてくれるかもって、ちょうど思ってたとこなんすよ」
「ふふふっ、でしょうね。顔に出てたからすぐ解ったわ」
あら、顔に出てましたか。
「それで自衛隊自体は動いてくれそうなんすか?」
俺としては動かなそうに思えたからそれを親父さんに聞くと。
「まっ、動くだろうな。なんせ自国の船がやられたんだ、動かなきゃ面子がねえ」
まぁそれもそうだけど、相手はSランクのモンスターだから危険と判断して動かないと思うんだよなぁ。
って思いながらその話はそこで終わるんだけど。
……この後それとは別の、とんでもない事件が発生する。
「……最近少し痩せたか?」
「え? そうか? 俺は別にそこまで痩せたとは思ってねえんだけどな」
最近のイリスがなんか痩せたように見える。
腰は前より細くなってるし、なんだか凄く綺麗になってるんだ。
だがそれじゃない!
「エへへっ、お前がそう言うならそうなのかもな。なんか、嬉しいなぁ」
可愛い。
勿論これでもない!
「イリスさんに対して本当にデレデレになりますよね~」
ニコッとしながら岩美にそう言われると、なんだか恥ずかしい。
そんな岩美に、イリスは学園都市で誰か好きになった奴や告白してくる奴はいねえのか? って質問されると。
「い、いるわけないじゃないですか……そんなの……」
なんだか顔が赤くなるとそそくさとどっかに逃げた。
こりゃ好きな奴がいるな。
そう思うとなんだか応援したくなる。
しかし問題はこれでもない!
「は~あ、カズは行っちゃうし、私もそろそろ新しい恋でも見つけようかな~……」
そう言って志穂ちゃんがテーブルの上に、たわわに実った胸を起き、両手で頬杖をした。
それを見た俺達男は自然とそっちに視線が行く……。
しかーー~ァし!! それでもない!!
「テメェは……、俺に……、……喧嘩売ってんのか?! あァ?!」
「なッ?! ちョっ?! イヤァッ!!」
志穂ちゃんの後ろにまわったイリスが、たわわに実った見事な胸を揉むもんだから嫌でもそっちに視線が行くと。
「ここでそんなふしだらな事をするなイリス」
書類を持った犬神さんが通りかかり、イリスを注意した後。志穂ちゃんはソファから身を乗り出して犬神さんを呼び止めた。
「はぁ……、ね~司さ~ん、私と付き合ってみない?」
その瞬間、大水槽ホール全体が静まり返った……。
……そう、これこそ事件が発生する瞬間だったんだ。




