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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第10章 始まる滅びの時
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第297話 柳と言う男


「困った事になりましたねしかし」


 柳は夜城邸の地下に降りると、車で"特別対策本部"が設置されている場所まで戻った。

 その場所があるのは"防衛省"。

 本来、公安と言っても一介いっかいの捜査官が簡単に入る事は出来ないのだが、柳は"特別対策本部"の室長と呼ばれる立場にある。

 "特別対策本部"にいる者のほとんどが自衛隊であり、その中の数人が柳と同じ公安の人間で構成されている。


「お疲れ様です室長」


「お疲れ様です、外はどんな感じか解りますか?」


依然いぜんとして雨が降り続けてますので、最早もはや東京は……」


「私が知りたいのはそんな事ではなくモンスターです」


「あっ! 申し訳ありません! モンスターですが現在確認されているだけで14種、その他に確認されたことの無い種が26程おります」


 つまり未確認生物と呼ばれるたぐいだ。

 水没してしまったエリアには、その見た目が"ダンクルオステウス"と呼ばれる古代に生息していた魚に似たモンスターがいる。

 ヒレ状の手足を持ち、まるで両生類のように地上に出てくる体長約7メートルのモンスター。

 その種族名、"ダグルモルシウス"。

 肉食性の魚型モンスターで、その強力な顎でなんでも噛み砕いて食べる。

 他に"カブルビウス"。これはその見た目が"カブトガニ"だが、甲羅の下からカマ状の手があり、尻尾はまるで剣状の体長約5メートルのモンスター。

 獲物となる生き物を見つけると、その鋭利なカマや剣状の尾で切り裂いて食べる。

 "ペルカルニウム"。カラスのような頭を持つ、まるで蛇のような長い首を持った鳥型モンスター。

 翼開長よくかいちょう約8メートルもある、不気味なモンスターだ。

 どれも古代種と呼ばれ、太古の時代に絶滅したモンスター達だが、どうしてそんなモンスター達がどこに生き残っていたのか不明で解らないが、大量にゲートから出現していた。

 その中には種族名の解らないモンスター達が多く徘徊はいかいしている。


「和也氏が持っていた古代種に関する文献ぶんけんではどうですか?」


「依然として未だ不明なモンスターが多く、又、文献ぶんけんも多い為に時間がかかります。ですが今しがたもう1種、判明したモンスターがいました」


「それは?」


「それはこちらです」


 柳は夜城邸にある和也が大切に保管していた向こう側の文献ぶんけんを預かり、未だに種族名が解らないモンスターを自衛隊に調べてもらっていたが、新たに判明したモンスターがいると言って自衛隊は画面にそのモンスターを映し出した。


「こちら、"チスイ"と呼ばれるモンスターだと判明致しました」


 "チスイ"。

 それはまるで人間と猿が合わさった姿に、赤く大きい不気味な目を持つ体長約1.5メートルのモンスター。

 特徴的なのは口の中であり、大口を開けると中からまるでヒルのようなモノを伸ばして獲物の血を吸い取る。


「まるで"チュパカブラ"ですね」


「血を吸う事は一緒ですが、種族が違います。"チュパカブラ"は爬虫類ですから」


「そうですね。他に解ったのはいますか?」


「すいません、今は"チスイ"しか」


「わかりました、では引き続きお願いします。他の皆さんは生きてる監視カメラでモンスター達の監視を続行して下さい」


「「はい!」」


 "特別対策本部"が設置されている防衛省があるのは東京だが、防衛省は万が一にそなえて地下には自家発電する事が出来るようにし、水等も確保出来る様にしてある。

 もっとも心配されるのはモンスターの侵入だが、こちらも夜城邸と同じく、周りに結界を張ったお陰で多くの職員が防衛省に残って対策出来る様にされていた。


「室長、やはりここは夜明さんに頼んで八岐大蛇ヤマタノオロチで見回りしてもらうのは如何でしょうか?」


「今それは難しいですね」


<なんだ? 我に行ってほしいなら行ってやるぞ?>


 突然、柳の影から八岐大蛇ヤマタノオロチの頭が1つ現れた事でその場は困惑した。


「ど、どうして貴方がここに?!」


<暇潰しに外に出たくてな>


 暇潰しに来るような所でもないだろうが、その場にいる者としては八岐大蛇ヤマタノオロチの申し出は嬉しかった。


「他の頭はどうしたんですか?」


<他? ふんっ、我1体だけで十分だろうよ>


 その答えに八岐大蛇ヤマタノオロチは分裂出来る能力があるのかと考えた柳は、「では少し手伝って頂けますか?」と聞くと、八岐大蛇ヤマタノオロチは軽く承諾しょうだくして何をすれば良いのかを聞いた。


<成る程、ではお前達は外にいるモンスターの種類と行動を今、調べているんだな?>


「その通りです」


<ふむ……、ではその、しゃしん? とやらにその姿も写したいのだろう? ならば誰か我と一緒に来れば良いだろう>


 一緒に行くぞと言われても、外にいるモンスターがどれだけ危険なのかも解らないまったくの未知である為、誰も行きたがらない。


<はぁ……、腰抜け共が。おいそこの女、一緒に行くぞ>


「えっ?!」


 八岐大蛇ヤマタノオロチに声をかけられたのはまだまだ若い女性自衛官。

 彼女の名は"波須はす真里奈まりな"。

 見るからにまだ入りたてと思われる。


「なんで私が?!」


<つべこべ言わずにさっさと用意しろ>


「え~!」


 八岐大蛇ヤマタノオロチ催促さいそくされ、しぶしぶ準備を済ませた波須はすはその後、周りに見送られながら外へと出ていった。


「はぁ……、八岐大蛇ヤマタノオロチから手伝いを申し出てくれて助かりましたねぇ」


 見送った後、柳は1人喫煙室きつえんしつに入り、一点を見つめながら静かに煙草を吸い始めた。


「ふぅ……」


 今、この男の頭の中は目まぐるしく回転している。

 被害にあったエリア。凶星十三星座(ゾディアック)の動き、中でもゼスト達の不審な動き。憲明が隠している何か。朱莉の裏切り。元陸将の稲垣が放った言葉の理由。そして最大の謎とも言える、冥竜が放った真の敵。

 真実が見え隠れするようでいて全然届かない。

 ただ今のところ解っているのは朱莉が何故、裏切ったかだ。その理由は柳にとってなんとなく理解出来る為、他の事を考える事にした。


「(このままエリアが拡大すればいずれは被害拡大を防ぐ為に大規模作戦を考えなければならない、そうすればどれだけの人員が必要となる? 防ぐにしてもエリアが広すぎる。それに"竜の民"とは一体?)」


 そう考えていると、煙草を吸おうと喫煙室きつえんしつに入ってきた、同じく公安から来た部下が声をかけた。


「お疲れ様です室長」


「……」


「室長?」


「ん? ああ、これは失礼しました、少し考え込んでたもので」


「少し休まれてはどうです?」


「そんな訳にもいきませんよ、皆さんだって頑張っているのに私1人だけ休むなんて出来ません。そう言う貴方こそここに残っても良かったんですか? 奥さんとお子さんは避難したんでしょ?」


「はい、なんとか無事に嫁の実家に着いたそうです」


「そうですか、確か奥さんの御実家は大阪でしたね」


「はいそうです」


 そんな世間話をしつつ、柳の頭の中では先ほどの事をずっと考えていた。


 15:30


 それから柳は大阪に避難した総理大臣や桜の父、辰巳官房長長官等とリモート会議し。現在、八岐大蛇ヤマタノオロチが協力してくれたお陰でエリアを調べてもらっていると話し、これからどうするかを話し合った。


 17:00


 その時間になると柳は夕飯に、カップラーメンを食べる。


 18:00


「今現在の状況はどんな感じですか?」


 "特別対策本部"となる作戦室に戻ると早速、柳は外の様子を聞いた。


「20分程前、早瀬憲明、山本玲司、イリス、佐渡恵梨佳、雨宮志穂の5名がパートナー達を連れて警備に出ました」


「そうですか。では、彼らの行動を監視カメラで追跡しつつ、彼らときちんと連絡を取り合って下さい」


「了解」


 その後も、柳は夜の0時まで仕事をし。0時過ぎに交代してからシャワーを浴びて仮眠室で朝7時まで寝る。

 それがこの男、柳の1日だ。


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