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『終焉を告げる常闇の歌』  作者: Yassie
第10章 始まる滅びの時
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第294話 訪れる終焉の時


 それはゆっくりと、しかし、ほんの少しだけ出てきただけで周囲の空間が(ゆが)む。


「来たか」


 和也はその存在を見ていなくとも直ぐにそれがなんなのか理解した。

 それは"エリア51"で眠っていた、かつての和也。

 いや、冥竜王・"アルガドゥクス"。


「なに……これ……、嘘でしょ……?」


 美羽はその存在を知ると、圧迫されそうな程の重たい空気に吐き気を感じた。


「どうやら兄者(あにじゃ)に反応しておられるようですね」


「そりゃそうだ、アレは俺だぞ? ……魂が無いにしても肉体は生きている」


 故に美羽は歯を鳴らして震えた。

 救いようが無い程の、圧倒的なまでの恐怖に。

 美羽は八岐大蛇(ヤマタノオロチ)と融合し、更には和也から"竜種之種"を貰って竜になったからこそ、その力量の差を瞬時に理解する事が出来たからだ。


「(ゴメン……、これは……無理だよ皆……)」


「美羽、お前はそこにいるか? それとも、俺ともう1つの肉体が1つになるところを特等席で見るか?」


「わ……わた……し……」


「無理そうだな」


 美羽が"支配眼"で見た未来が後少しでやってくる。

 それはどう足掻(あが)こうが変えられない未来。

 だが()()()()()()()()()

 しかしその恐怖はこれまでのとは比べることが出来ない、尋常ならざる異常な恐怖。

 美羽は考えた。そんな昔の体と和也が1つになったら、いったいどうなってしまうのかと。

 その答えこそが終焉だ。

 到底理解する事が出来ない圧倒的な死を振り撒く絶望。

 それ故に、その存在は間違った存在だと言える由縁だと言える。

 そしてその存在を遠くで感じた冥竜軍達が急いで夜城邸へと向かい始めると、それを追い、憲明はバイクに股がって急いで走り、守行は勿論、冥王軍や冥獣軍も後を追う。


兄者(あにじゃ)、皆が外に集まりつつあります」


「あぁ。……じゃあな、美羽」


「まっ……!」


 待ってと言いたいがその言葉が上手く出ない。


「(早く! 早く来てノリちゃん! カズが行っちゃう!)」


 その頃バイクを走らせる憲明は。


「やっぱ出てきやがった!」


 憲明は知っている、冥竜・アルガドゥクスが如何(いか)に恐ろしいのかを。


「ん? よう(ムクロ)! もう体は良いのかよ?!」


 後方から人の姿に戻ったレヴィアタンを背に乗せ、バランが地響きをたてながら走ってくる。

 

<既に再生は完了している>


 ノワールに切り落とされた"触腕(しょくわん)"は既に再生を完了し、元に戻っていた。


「みてえだな! その背中にいるのってレヴィアタンだよな! なんで泣いてるんだ?!」


<暴走して私が怒ったからだ>


「あぁ……さいですかぁ……」


 どう怒って泣かしたのかは知らない憲明だが、バランの事だからきっと和也の様に怒ったに違いないと考えた。


<あの方が外に出てくるぞレヴィ、いい加減泣くのをやめてあの方を出迎える準備をしろ>


「……うん」


<憲明、私達は先に行く>


「おい待てよ! おい!」


 だがその言葉は届かず、バランはレヴィを背に乗せて颯爽(さっそう)と走って行ってしまう。

 そうしてる間にもかつての和也だったアルガドゥクスの遺体がゆっくりと降りてくる。

 それを、多くの竜達は勿論、冥竜軍は深々と頭を下げてその時が来るのを待つ。


 ー 魂は十分集まった ー


 唐突(とうとつ)に和也の声が静かに響く。


 ー 始めよう、俺達の本当の戦いを ー


<クオオオオオオオオオオオン!!>

<ガアアアアアアアアアアアアアア!!>

<グルァッルアアアアアア!!>


 空気を大きく震わせる程に多くの竜達が一斉に雄叫びを上げ、その瞬間が来ることに歓喜した。


「ヤバイヤバイヤバイヤバイ! アイツが起きる! 急ぐぞお前ら!」


 そう急いだところで時既に遅し。

 和也が外に出るとそこには凶星十三星座(ゾディアック)達が集まっていた。


「酷いありさまだなルシス、ベル、マー、沙耶。沙耶の相手をしたのは美羽だから仕方ねえとして、まさかルシス、お前がそこまでボロボロにされてたなんてな」


「申し訳ありません……」


「確かお前の相手をしに行ったのはダージュだっけか? まっ、仕方ねえか。それで? お前は結局どうするんだ? ダージュ」


 そこにはダークスターの姿もあった。

 ダークスターとしては和也の元に戻りたいといった気持ちが無いわけでもないが、今の和也を、かつてのアルガドゥクスを慕っているダークスターはそれでも憲明の元にとどまって共に戦う事を選んだと答えた。


「それがお前の出した答えなら良いんだ。ダージュ、今までありがとう、もう、俺の命令に従わずに憲明の力になってやってくれ」


<……陛下>


(つら)い想いをさせて本当に悪かった」


 悲しげに、されど感謝してるからこそ和也は笑顔でダークスターにお礼の言葉を口にした。

 その瞬間ダークスターは疑問を抱いた。

 何故、陛下は(みずか)ら復活する事を選んだのかと。

 ダークスターだけではない。和也が演技をしていた事を知っているのはゼストを含めて極少数だけしか知らない事実。

 そこへバランとレヴィアタンが遅れてやって来ると、バランは和也の顔を見て直ぐに悟った。


<もう宜しいのですか? まだ少しだけですが時間が御座います。最後に美羽や憲明と話をしては如何ですか?>


「……お前は昔からそうだ、だから俺はお前を信用出来る……。分かってるだろ? ()()()


 (ムクロ)ではなくバラン、そう口にするとバランは涙を流し、「仰せのままに……陛下」と言って(かしず)いた。

 バランもまた真実を知る数少ない1人。

 故に和也は何もかも捨てる覚悟が出来たからこそ、もう何も語ることは無いとバランは(さと)った。


「……時間だ。稲垣さん達も来たことだしそろそろ始めよう」


「「はっ!」」

<<はっ!>>

<ハッ!>


 上空には戦艦"イクシオン"が戦闘機や軍艦から放たれるミサイルを迎撃する為に、静かに待機していた。


「さぁ、遂に始まるよ皆……。王が、我らの真なる神が目覚める! ははは、ひひっ……、……っくくく、あっはっはっはっはっはっ!」


 眼前には完全に姿を現したアルガドゥクスの遺体が注に浮き、和也との融合を静かに待っていた。

 そこへ和也は宙に舞うと、静かにかつて自分の体だった遺体に近づき、胸にある凶悪な口の中にある巨大な目玉の様なコアに触れる。


「数千万年ぶりだ……。さぁ、そろそろ俺の元へ戻ってこい……」


 和也の左目が凶悪な竜の目へと変わると、遺体が闇色の光を放ちながら動きだし、和也を()(かか)えるとコアの中へと入っていく。

 それを凶星十三星座(ゾディアック)、冥竜軍、多くの竜達が再び(こうべ)()らしながら融合が終わるのを静かに待つ。

 だがそこにそれを阻止する為に多くのミサイルが飛んでくるが。


「やらせる訳、無いでしょ」


 稲垣は"イクシオン"で全てを迎撃させつつ、融合する場面を見て涙を流していた。


「我らの悲願(ひがん)成就(じょうじゅ)しようとしている……、その邪魔を誰だろうと許すな」


「「了解!」」


 冥獣軍、冥王軍、そして天界軍もまたそれを阻止しようと多くの兵達が剣を抜いて動くが。


兄者(あにじゃ)の邪魔はさせんよ」


 動くことのなかったゼストが動き、近づくもの全てを(またた)く間に迎撃。

 同時にダークスターを(のぞい)いた全凶星十三星座(ゾディアック)達も動き、和也に近づくことが困難となった。


『こちらラプター1(ワン)! 凶星十三星座(ゾディアック)達が壁になって近づけない!』


『こちらラプター2(ツー)! エンジンがやられた! これより緊急脱出する!』


 近づく戦闘機は全て迎撃され次々と地面に落ちて爆発。

 天使達も次々と凶星十三星座(ゾディアック)達に殺されて地面へと落ち、冥獣軍と冥王軍の兵達は命をかけて特攻するが全て(むな)しく散るばかり。

 そこへようやく憲明が到着した時だ。周囲一帯の空気を大きくはねのけるような、大きな鼓動(こどう)が鳴り響くと支配した。


「……おはよう御座います、兄者(あにじゃ)


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